September 2006 のトップ・ストーリー一覧

テクニシャンの中のテクニシャン、と呼ばれるマーチン・プリング氏は、テクニカル分析の第一人者だ。先日、チャールズ・シュワブのグレッグ・ミラー氏がプリング氏をインタビューした。その内容の一部を紹介しよう。(Gはグレッグ・ミラー氏、そしてMがマーチン・プリング氏)

G: トレーダーが、一番初めにしなければいけないことは何ですか?

M: 個別銘柄を検討する前に、トレーダーがしなくてはいけないのは、マーケットのトップダウン分析です。先ず、マーケット全体の様子をつかんでください。そして各セクターの分析です。個別銘柄を見るのは、それらが終わってからです。

G: トレーダーを待ち受ける罠には、どんなものがありますか?

M: スマートにトレードをするためには、客観的な態度でマーケットを見なくてはいけません。苦労して稼いだ資金ですから、冷静にトレードしろ、と言われてもなかなか難しいものです。トレーダーが最も陥りやすい罠は、感情に支配されてしまうことです。投資心理と株価には密接な関係があり、これを表したのがチャートです。簡単に言ってしまえば、冷静に客観的なチャート分析ができれば、適切な場所での売買が可能になります。

G: トレードに付き物のリスクにどう対応するべきですか?

M: リスクにどう対処するのか?言い方を換えれば、どうやって損を最小限におさえるか、ということになります。株価が逆に動いた場合、どこで損切るかを、あらかじめ決めておくことが大切です。買いを例にすなら、サポートレベルがどこにあるかを確認します。もし株価がサポートを割るなら、迷わず損切らなくてはいけません。サポートレベルができやすい場所は、以前の高値や安値、ギャップ、それに移動平均線やトレンドラインです。繰り返しますが、損は最小限におさえなければいけません。間違って50%の損をしてしまえば、次のトレードで100%の儲けを出さないと穴は埋まりません。

G: 利食いのポイントはどう決めたらいいですか?

M: リスク・リワード比の考慮が重要です。リスクが1なら少なくともリワードが3以上見込めない限り、そのトレードをしてはいけません。たとえば、20ドルで株を買い、19ドルに損切りを設定したとしましょう。リスクが1ドルですから、利食いの目標値は23ドルです。ですから、23ドル以下にレジスタンスレベルがあるようなら、その株は買えません。

G: 目標の23ドルに届かず、株価が勢いを失ってしまった時はどうしますか?

M: チャートパターンに注目してください。リバーサル・パターンが出来上がるようなら、直ぐ売ることが肝心です。

G: 多くの人たちは買いが中心ですが、空売りをどう思われますか?

M: 空売りが魅力的なのは、株価の下げは上げよりも速い、ということです。もちろん、空売りには怖い話もたくさんあります。たまに聞くのは、空売っていた株が突然買収されてしまうことです。一気に暴騰ですから、口座に大打撃を与えます。(理論的に、10ドルの株を空売った場合、最高に儲けても10ドルを超えることはない。しかし、買収なら10ドルが35ドルになってしまうこともある。)

G: プリングさんは、トレーダーの教育もされていますが、主にどんな手法を教えているのですか?

M: モメンタムトレードとスイングトレードです。トレンドやチャートパターンだけでなく、オシレーターも利用して、株価が買われ過ぎなのか、それとも売られ過ぎなのかを確認します。オシレーターの良い点は、大衆の心理を見ることができます。

G: 最後に効果的なスイングトレード方法を教えていただけませんか?

M: ブレイクアウトでの買いが効果的です。注意することは、オシレーターが既に買われ過ぎレベルなら、あまり大きな利益は望めません。

連銀はカン違いしている!?

アメリカ経済の70%を占めるのは消費者だ。だから、消費者が金を使わなくなると米国経済は落ち込んでしまう。もっともな意見に聞こえるが、「それは単なる神話です」、と言うのはトレンド・マクロリティクス社で、投資コンサルタントを務めるドナルド・ラスキン氏だ。いつも批判的な氏だが、少し説明を聞いてみよう。

「個人消費が冷え込むと米国経済も減速する、と信じている人たちが多いようです。現に、私のところへ相談に来る投資家も、それを疑いません。しかし困るのは、連銀までもが、その神話を信じているのです。たしかに、アメリカ経済の7割は個人消費と言われますが、だからどうしたというのでしょう?

真実は、生産者が100%のアメリカ経済です。考えてみてください。消費者が金を使いたくても、生産者が何も作らないならどうしようもありません。先ず物が生産され、そして個人消費の段階へ進みます。ですから、私たちは生産に目を向けなければいけません。アメリカは、十分に物やサービスを生産しているだろうか?そして、新規雇用も好転し、消費者の収入は上がっているだろうか?

なぜ皆、こうも心配なのでしょう?商務省から発表されたレポートを見てください。個人消費は10.2%の伸びを記録し、前回の+6.3%という高い数字を超えています。金額に直せば、2005年6月から2006年6月の間に、消費者は9兆2000億ドルの金を使いました。前年度を5550億ドル上回ったわけですが、この金はどこから来たのでしょう?言うまでもありませんが、それは労働によって得た金です。

多くの投資者はカン違いしています。過去3年間、個人消費が好調だったのは資産効果が原因、と思っています。住宅ブームで、家の値段が大きく上がりましたが、本当にこれが個人消費を大きく好転させたのでしょうか?資産効果に関する、こんなデータがあります。住宅の値段が100ドル上がると、個人消費が3ドル伸びます。ここ1年間で、アメリカの住宅市場は1兆7000億ドルの上昇です。その3%は510億ドルになります。しかし、実際の伸びは5550億ドルですから、資産効果だけで、個人消費の上昇を説明することはできません。

問題は連銀です。連銀も私たちと同じデータを持っていますが、下向きになった住宅市場が、個人消費を減速させ、米国経済成長も冷え込むだろう、と結論しています。事実は、個人消費に衰えはありません。米国経済は落ち込みません。2度連続で金利を据え置きましたが、これはインフレを悪化させます。手遅れになったところで、連銀は大幅に金利を上げることでしょう。もちろん、消費者には大打撃です。」

4つの心配ごと

1990年代、バブルと言えばナスダック市場のことだった。まったく利益の無い会社が、インターネット関連というだけで、一日で二倍になることが頻繁に起きていたから、とにかく異常だった。2003年から2005年は住宅バブル。現在、あちこちでバブルが弾け、住宅市場の冷えこみが顕著になっている。それでは、今日バブルが明らかなものは何だろうか?Money And Marketsのマイク・ラーソン氏の意見を紹介しよう。

マスコミがあまり取り上げないから、たぶん気がついている人は少ないと思う。今日、バブルが目立つのは国債だ。簡単に説明すれば、国債価格はインフレに大きく左右される。インフレの心配が無い状況なら国債は買われ、利回りが下がる。高インフレなら国債は売られ、逆に利回りは上昇する。

ここ数年間を振り返ってみよう。米国経済だけに限らず、世界経済は大きな伸びを展開した。住宅価格は、いまだかつて見たことの無いスピードで上昇し、オイルも1バレル25ドルから75ドルに達した。長期間、まったく冴えなかった金価格も2倍以上になり、消費者物価指数、そして生産者物価指数は明らかな上げ基調になった。その結果が、皆さんもご存知の17回連続の金利引き上げだ。

これだけ執拗な金利の引き上げだから、国債は大きく売られたことだろう、と思うのが普通だが、ほとんどの投資家は国債を売らなかった。そればかりか、国債の値段が下がるたびに買い足す動きも目についたから、現在の10年物利回りは4.6%しかない。(90年代の金利引き上げでは、利回りは6%を超えていた。)

インフレ問題があったにもかかわらず、なぜ国債は暴落しなかったのだろう?四つの事実がある。

1、アメリカは自分の稼ぎ以上の金を使う。

2、足りない分は国債を通して外国人から借りる。

3、経済をストップさせないように、政府は金の印刷を続ける。

4、以上三つの悪循環で、アメリカの赤字は増える一方。

連銀の金利政策など二の次だ。アメリカにとって一番怖いのは、外国人が国債を買わなくなることだ。もちろん、大量に売られるのも困る。説明したように、国債が売られると利回りが上がる。長期国債の利回りは、不動産ローンの利子を決めるから、長期国債利回り上昇は米国経済にマイナスだ。

もし、あなたの投資資金が長期国債に集中しているなら、その比重を減らしてほしい。長期国債の値段が10%下がると、毎年2回支払われる利子の2年分が消えてしまう。また、住宅市場が不安定になっているから、たとえ配当が良くても、不動産投資信託を避けてほしい。

膨大な損を出したヘッジファンド、アマランスから投資者は何を学ぶことができるだろうか?「90億ドルを運用するヘッジファンドは、砂の上に建てられた家のように崩れた」、とザ・ストリート・ドット・コムのジム・クレーマー氏は言う。「アマランスが教えてくれたことは、傲慢な態度が、いかに危険なものかということだ。自信を持つのは構わない。しかし、あまりにウヌボレが強くなると、今回のアマランスのようにトレードがいい加減になり、多くの間違いを積み重ねることになる。」

報道によれば、天然ガスの下落で、アマランスは35%以上の損を出している。当然、解約を求める投資者の殺到が予想されるが、2月1日以降に投資を始めた人たちは、25カ月間、資金をファンドから引き出すことができない。クレーマー氏の話に戻ろう。

「アマランスが大失敗した第1の理由は、資金をエネルギー・セクターだけに極端に集中させたためだ。一つのバスケットに、全ての卵を入れるな、という格言があるように、どんなことがあっても資金の20%以上を、一つの銘柄だけに投資することは避けたい。

信用取引を利用することは、もちろん罪ではない。しかし、アマランスのやり方は無責任すぎる。まだ投資を始めたばかりの人に、私は信用取引を勧めない。信用取引は、借金をして株を買うことだ。積極的な信用取引は、借金を増やすことと同じだから、もし思惑が外れると、アマランスのように膨大な損を出すことになる。安易な気持ちで、信用取引を絶対にしてはいけない。

マーケットを一番よく知っているのは、マーケット自身だ。アマランスは天然ガス市場で大損をしたが、この天然ガス市場をコントロールできる、と思い上がっていたようだ。自信過剰は、つまらない失敗を引き起こす。だから、ウヌボレは罪だ、と思った方が良い。

もし、あなたがミューチュアルファンドに投資しているなら、ファンド・マネージャーがいかに資金を運用しているかを調べよう。アマランスは資金の半分が天然ガス市場に投入されていたから、リスク管理が完全に無視されていた。あなたのファンドは、資金がうまく分散されているだろうか?

ファンドのポートフォリオを調べたら、ファンド・マネージャーの経歴も見てみよう。十分な経験があるだろうか?満足な成績を上げているだろうか?成績で重要なのは、上げマーケットだけでなく、下げマーケットでも良い成績を残していることだ。」

クレーマー氏もヘッジファンド・マネージャーの経験があるが、もう一つこう付け加える。「株と結婚するな、とよく言われるが、アマランスは天然ガスと結婚してしまった。間違ったら直ぐ損切るのが鉄則だが、あまりに自信がありすぎたアマランスは、結局最後まで天然ガスと手を切ることができなかった。」

犬を狙うヘネシー・ファンド

ドッグズ・オブ・ダウ(Dogs of Dow)をご存知だろうか?言うまでもなく、Dogsは犬のことだが、それは成績の悪い株を意味する。1991年、「Beating The Dow」(マイケル・オヒギンズ著)、という本の中で紹介されていらい、ドッグズ・オブ・ダウは、今日も注目される投資方法の一つだ。

簡単に説明すると、ドッグズ・オブ・ダウには二つの条件がある。

1、株価は低迷し全く冴えない。
2、平均以上の配当金があること。

そんな株を買って、本当に大丈夫なのだろうか?先週木曜、ブルームバーグに、こんな記事があった。

二ール・へネシー氏は、「ドッグズ・オブ・ダウ」を実践する、希なファンド・マネージャーの一人だ。氏の指揮するヘネシー・トータル・リターン・ファンドは1億400万ドルの資金を運用し、最近12カ月間で+18%を記録している。これは、126ある同種ファンドの中で一番の成績になり、平均リターンの+4.9%を大きく上回っている。

ヘネシー氏が選んだ、ダウ指数に属する犬銘柄は、製薬会社のメルク、そして長距離電話会社のAT&Tだ。ここ1年間で、両銘柄とも38%以上の伸びだから、成績の悪い犬から優秀な犬に変身したわけだ。「退屈な投資方法ですが、着実に利益を上げています」、とヘネシー氏は言う。

ペイデン・バリュー・リーダーズ・ファンドも「ドッグズ・オブ・ダウ」を実践していたが、去年11月、それをやめた。広報担当のキンバリー・ティップトン氏によれば、投資成績があまりにもばらつくためだという。

モーニングスター社の、デービッド・カスマン氏は「ヘネシー氏のやり方は、自動的に利益を生むわけではありません」、と述べ、ヘネシー・トータル・リターン・ファンドに星二つ(下から二番目)の格付けをしている。「シャープ・レシオという指数があります。この指数が高いファンドは、ポートフォリオのバランスがうまくとれています。ヘネシー・トータル・リターン・ファンドのシャープ・レシオは0.74ですから、同種ファンドの平均値1.24を下回っています。これは、ヘネシーファンドが、一部の銘柄に集中投資していることを表し、投資の危険度も上がります」、とカスマン氏は付け加える。

分かりやすい「ドッグズ・オブ・ダウ」には、こんな利点がある。「10倍、20倍といった華やかなリターンはありませんが、ドッグズ・オブ・ダウは下げマーケットで力を発揮します。2000年から2002年のベアマーケットで、ダウ指数は23%の下落になりましたが、この間ドッグズ・オブ・ダウは1.6%の上昇です」、とヘネシー氏は指摘する。

簡単にドッグズ・オブ・ダウ銘柄を見つける方法を記しておこう。MSNを利用するのが一番早い。あとはチャートを調べて、買いのタイミングをとらえよう。

クイズ、クイズ、クイズ

賞金は250ドル。円に直せば約2万9000円だ。先ず、何の賞金かを説明しよう。先週ラスベガスで、若いビジネスマン、ビジネスウーマンを対象にしたセミナーがあった。開始早々、参加者に配られたのは、8つの問題が載ったテスト用紙だった。めでたく全問正解なら賞金は250ドル。さっそくテストを見てみよう。(解答は一番下を参照)

1、フォーチュン1000社(売上規模全米上位1000社)の最高財務責任者は、平均でどのくらいの在職期間があるだろうか?

A、4.3年
B、9.5年
C、15年
D、2.2年

2、フォーチュン1000社の最高財務責任者の何パーセントが女性?

A、1.5%
B、22%
C、7.7%
D9.5%

3、フォーチュン1000社の最高財務責任者で、経営学修士号、公認会計士の資格のどちらも無い人は何パーセントいるだろうか?

A、92%
B、24%
C、10%
D、55%

4、最近4年間で、何人の最高財務責任者が、企業税法違反で逮捕されただろうか?

A、225人
B、30人
C、10人
D、5人

5、証券取引法違反で、ワールドコムの最高財務責任者、スコット・サリバン氏が実際に払った罰金額はいくら?

A、1300万ドル
B、2000万ドル
C、220万ドル
D、0(ゼロ)

6、アスベスト(石綿)で健康を損ねた人たちが訴訟を起こしているが、次のアスベストになる可能性があるのはどれ?

A、黄色の蛍光ペンに使われるインク
B、ベンゼン(化成品原料)
C、ジアセチル(ポップコーンの香料として使われる)
D、アスパルテーム(人口甘味料)

7、現在アメリカには、合計で何人の公認会計士と監査人がいる?

A、45万2000人
B、1000万人
C、120万人
D、200万人

8、証券取引法違反で有罪の判決を受けたマーサ・スチュアート氏が、生涯禁じられたことは何?(マーサ・スチュアート氏は、料理番組、雑誌、シーツや枕カバーなどの家庭用品を扱う会社の社長だった。)

A、どんな理由があっても、グルーガンを使ってはいけない。
B、自社株の保有をしてはいけない。
C、どの会社の最高財務責任者になってはいけない。


正解

1、平均在職期間は4.3年のA。

2、Cの7.7%。最近20年間を見ると、大学、大学院で会計学を専攻する女性の数が男性を上回っている。そのため、公認会計士事務所に勤務する女性の数が急ピッチに増えている。

3、Bの24%。3年前は41%だった。

4、Bの30人。

5、Dのゼロ。科せられた罰金はAの1300万ドルだが、支払い能力無し、と認められ証券取引委員会は全く罰金を受け取っていない。

6、Bのベンゼン。

7、Cの120万人

8、C。スチュアート氏は最高財務責任者になることを生涯禁じられた。

アメリカの地銀が危ない!?

「米国経済は心配されたような急激後退することなく、安定成長に移行できるだろう。だから、株式市場が高値を更新するのは時間の問題だ。そんなソフトランディングを主張する投資戦略家たちが目立ちますが、私は賛成できません」、と言うのはグローバル・マーケット・コンサルタンツ社のリチャード・サットマイヤー氏だ。話を続けよう。

「先日の会議で、連銀は金利を据え置きましたが、それ以外に選択肢が無かったのです。据え置きを実施することで、マーケット関係者や消費者に、連銀はソフトランディングのシナリオを考えていることが表明できます。逆に利上げだったらハードランディングを引き起こし、利下げなら連銀は金利を上げ過ぎたことを認めることになり、ほぼ間違いなくハードランディングになります。

国債利回りは、短期金利を0.5ポイントほど下回っています。これは何を意味するのでしょうか?国債投資者たちは、連銀は利下げするしかない、と読んでいます。私が一番気になるのは銀行、特に地方銀行です。住宅建築のために、銀行が貸し付けた金額は、現時点で約5140億ドルほどあります。

アメリカの国内総生産は13兆ドルです。ということは、住宅建築に融資された総金額は、国内総生産のほぼ4%になります。あまりにも大き過ぎます。時限爆弾を抱えているようなものです。

木曜、500の地方銀行の動きを見る、アメリカズ・コミュニティー・バンカーズ指数が高値を更新しました。ソフトランディングが買い材料です。連銀は、経済を安定成長に導くことができる、というわけすが、私はそう思いません。逆に今こそ、地方銀行株を利食うべきです。

迫っている中間選挙も注目です。もし民主党が巻き返して、下院と上院の過半数を占めるような事態が起きると、2008年の大統領選挙まで、株式市場に先行き不安感を与えることになるでしょう。」

「ヒットエンドラン株式売買法」の著者、ジェフ・クーパー氏の意見も記しておこう。

「高値が目前のダウ指数だが、まだシャンパンの栓を抜くには早過ぎる。指摘したいのは、1976年から始まった30年周期が終わりに近づいている。単にダウ指数は抵抗線に頭をぶつけているだけでなく、現在の位置は2002年の安値から計算すると、重要な1.618フィボナッチ・レベルだ。

更に、S&P500指数が、今週の安値近辺で引けるなら、週足チャートには反転パターンが出来上がる。実際にチャートを見てもらうと直ぐ分かることだが、先週の強気な線に後続が無いのだから、マーケットから発信されているメッセージは明瞭だ。」

綿、大豆、カカオ豆

天然ガスの急落で、あるヘッジファンドが大損を出していることを昨日書いたが、それ以外にもオイルやガソリンの下げが顕著だ。USグローバル・インベスターズのフランク・ホルムズ氏によれば、8月の初め頃から、資金をオイル市場からハイテク株に移すヘッジファンドの動きが目立つと言う。

ハイテク株はナスダック市場に集中している。特に最近買われているのが半導体銘柄だ。ここ5週間を振り返ってみると、毎週インベスターズ・ビジネス・デイリー紙の業種別リストで136位だった半導体は、一気に33位まで駆け上っている。どこまで半導体銘柄が買われるかは分からない。しかし、下落するエネルギー価格は、インフレ懸念を薄れさせるから株には好材料、と言うアナリストが多い。

オイルの下げは頻繁に報道されても、現在の商品市場全体的な低迷を耳にすることは滅多に無い。株投資者だけに限らず、先物市場で投機する人たちも人気商品に集まる傾向がある。「人の行く、裏に道あり花の道」、という有名な言葉が本当なら、商品市場は買いチャンスだろうか?商品市場アドバイザーの、ジェーク・バーンスタイン氏は、こう語っている。

「商品市場のブルマーケットが終わり、以前輝いていたスターが、光を完全に失ってしまいました。歴史が教えてくれることは、マーケットの底が近い時、往々にしてリングにタオルが投げ込まれるものです。だから、長いこと低迷している商品や、急落した商品を調べてみることは時間の無駄ではありません。

先ず、人気商品投機に伴う危険の大きさを説明しましょう。たとえば、オイルが40ドルだった時に、5%の損切りを設定して投機すると、1コントラクト(1枚)あたりの損額は2000ドルになります。しかし、オイルが人気化して80ドルの時に、同じ損切り幅の5%で投機すると、損額は4000ドルになります。5000ドルから1万5000ドルの口座資金がほとんどの個人投機家ですから、人気商品で利益を上げるのは楽なことではありません。

3つの商品が狙えそうです。

1、綿: 2003年以来、下向きだった綿市場は、2004年の7月から横ばいが続いています。フラット・ベースと呼ばれる、平らな底がチャートに形成され、このパターンから大きな上放れが起きる可能性があります。

2、大豆: 2005年にラリーがありましたが、現在安値圏で推移しています。いったん動き始めると、派手な値動きになりますから、大豆は注目です。

3、カカオ豆(ココア): 2000年から2003年のブルマーケットを最後に、長いこと横ばいが続いています。これもブレイクアウトが狙えそうです。」

もちろん、綿、大豆、カカオ豆がブレイクアウトするかは分からないが、バーンスタイン氏はこう付け加えている。「ハリケーンや中東問題などがキッカケになって、またオイルが急騰する可能性があります。それは商品市場を刺激する結果になり、大豆などにも買いが広がるかもしれません。」

なぜこんなことが起きた?

膨大な損が出ている、と大々的に報道されているが、いったいどのくらいの金額なのだろう?問題になっているのは、大手ヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズだ。コネチカット州に本拠地を構え、上昇するエネルギー市場にうまく乗って、去年、アマランスは10億ドル以上の利益を上げた。しかし月曜(18日)、天然ガスの先物投機に失敗して、アマランスは30億ドルを超える損を出していることが判明した。ニューヨーク・タイムズから、要点を拾ってみよう。

アマランスの顧客リストは、年金基金、寄付基金、銀行、保険会社、そして大手証券会社で占められている。インベストメント・バンカーとして有名な、モルガン・スタンレーも約1億2400万ドル(6月30日時点)をアマランスに投資している。

92億5000万ドルに及ぶ資金を運用していたアマランスに、決定的な一打を与えたのは、先週展開された天然ガスの12%下落だ。こんな事実があったにもかかわらず、先週、チャールズ・ウィンクラー氏(アマランス最高業務責任者)はマンハッタンの高級レストランで、アマランスは今年25%の利益が出ている、と顧客に話していた。それから数日後、アマランスは大きな損を出している、という噂が顧客の耳に入った。

12月から下げ始めた天然ガス価格が、急ピッチに損を膨らませることになった最大の原因だ。歴史的に見ると、天然ガスは3月、4月頃から下げ始める傾向があるから、12月に下げ開始は珍しい。アマランスは、3月限と4月限の価格が大きく広がることを期待していたが、天然ガスの下落で、6週間前は2ドル50セントあった両月の差額が75セントまで下がってしまった。

トレーダーたちから事情説明を聞いた関係者の話によれば、実際の損額は予想以上に大きいという。しかし現時点では、どの程度の影響を顧客金融機関や市場へ与えるかを推測するのは難しい。

エネルギー市場で失敗を犯しているのは、もちろんアマランスだけではない。異常な暑さに襲われた今年の夏、天然ガスは急騰していたが、これを空売りしていたのがマザーロック・エネルギー・ファンドだ。最終的に、ファンドは25%の損を出して経営破たんに追い込まれた。

なぜヘッジファンドは天然ガス市場に参入するのだろうか?答えは高い値動き変動率だ。ヘッジファンドは、短期間で優れた成績を出すことが要求されるから、値動きの荒い天然ガスのような市場はヘッジファンドに狙われやすい。エネルギー・コンサルタントのアーサー・ゲルバー氏によれば、天然ガスの値段変動率は株式市場の5倍以上だという。

以上が要約だが、掲示板やチャットルームでは、こんな疑問が多い。「なぜ天然ガスに、ここまで大きく集中投資したのだろう?どうして直ぐ損切りができなかったのだろう?だれもトレーダーの売買を監視していなかったのだろうか?」どちらにしても、ミューチュアルファンドのような規制が無いヘッジファンドだけに、議会が乗り出してくるかもしれない。

株式市場は住宅市場の後を追う?

下のグラフで分かるように、住宅着工戸数が顕著に減っている。

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8月分の住宅着工戸数は、年間ベースで167万戸と発表され、7月の数値を6%下回った。更に、去年の同時期と比較すると、ほぼ20%の落ち込みとなり、明らかに米国住宅市場はダウントレンドだ。冷え込む住宅市場は、米国経済に悪影響を及ぼす。ということは、株式市場も住宅市場の後を追うのだろうか?

こんな事実がある。代表的な株指数といえばS&P500だが、このチャートと全米住宅産業協会から発表される、住宅建築指数を比べると、面白いことが発見できる。S&P500指数は、住宅建築指数を追従する傾向があるのだ。追従といっても直ぐ後を追うのではなく、約1年間のずれがある。だから、S&P500が上げ始めるのは、住宅建築指数が上げ始めてから1年後、そしてS&Pの下げ開始は、住宅建築指数の下げが始まってから1年後に起きるわけだ。

嫌なことに、住宅建築指数が下げ始めたのは、ほぼ1年前だから、そろそろ株の下げが始まることになる。「歴史を参考にするなら、ここからの株投資は慎重にしなくてはいけません」、とスタンダード・アンド・プアーズ社のサム・ストーバル氏は言う。

JPモルガンの投資戦略家、アブヒジト・チャクラボーティ氏は、先日こんな見方を発表した。「夏に展開されたドラマ的なラリーで、ダウ指数は高値更新まで、あと169ポイントに迫った。その結果、多くの銘柄が割高になっただけでなく、既に企業の利益幅減少も予想されているから、株式市場は下げ方向の確率が高くなった。」

住宅市場のスランプで、個人消費の下落も予想されている。住宅ブームだった頃は、積極的なローンの借り換えが行われ、消費者は多額な現金を手に入れた。新車の購入、家族旅行などにその金は使われたが、住宅市場の下降に伴い、ローンの借り換えも大幅に減った。以前のように、派手な金遣いを消費者に期待できなくなったのだから、これも株には悪材料だ。

もっと直接的な話をすれば、住宅市場の落ち込みは失業率の上昇も引き起こす。家が直ぐに売れないから、不動産業者は以前のように多数のセールスマンは要らない。売れないものを建てても仕方が無いから建築業者も人員を減らす。銀行も不動産ローン部門を縮小することになるわけだ。

正反対の意見も記しておこう。「S&P500指数と住宅建築指数の関係が注目されていますが、解釈の仕方が間違っています」、とファースト・トラスト・アドバイザーズ社のボブ・カリー氏は言う。「株は住宅建築指数を追従する、と信じられていますが、それは最近10年間の話です。もっと長期的に見れば、それら二つには何の関係もありません。

株は割高、という意見もありますが、私はそう思いません。現在の水準でも、株はまだ20%から25%ほど割安です。企業収益も好調ですから、いきなり雇用状況が悪化することもありえません。住宅市場がこれ以上冷え込めば、連銀は金利を引き下げる可能性があります。これは株に好材料です。」

さて、水曜には連邦公開市場委員会がある。心配になる金利は、今回も5.25%に据え置かれることが予想されている。ガソリンやオイルの値下がりでインフレ懸念が薄れ、更に悪化する住宅市場を考慮すると、連銀が金利を今年再引き上げすることは無い、と言うアナリストが増えている。

空売り専門マネージャーの声

9月の相場は悪いはずなのに、いったいどうなっているのだろう、と頭を掻く投資者が多い。好調なのだから迷うことはない、と積極的に買っている人も当然いるが、あえてここで弱気論で有名なビル・フレッケンスタイン氏の意見を聞いてみたい。ひとつ付け加えておこう。フレッケンスタイン氏が弱気論で有名になった原因は、空売りを専門にするヘッジファンドでマネージャーを務めているからだ。

「このラリーは本物ではありません。ダマシです」、といきなりフレッケンスタイン氏は言う。「マーケットは上げていますが、これは希望的観測を基盤にしているだけですから、確かなファンダメンタルズの裏付けがあるわけではありません。

忘れてはいけないのは、私たちが相手にしているのはマーケットだ、という事実です。マーケットを作り上げているのは、投資家たちの感情ですから、決して論理的なものではありません。言い方を換えればマーケットは野生の動物です。

先ず、株を考えてみましょう。現在、私の空売りが本格的でないのは、以前から述べていたように、連銀の金利据え置きを予期していたからです。投資者にとって、連続利上げをしていた連銀の姿は、まるで悪魔のように見えましたが、この据え置きで完全にイメージが変わってしまいました。単なる据え置きではなく、金利引き上げは終わった、と言うアナリストも現れ始めましたから、買い手がいっそう元気になりました。

また、経済の下向きも予想されていましたが、ソフトランディング論が主流になり、これも買い材料になっています。しかし、全体的な立場から米国経済を見ると、ソフトランディングを単純に買い材料にするのは間違いです。第3四半期の企業収益は、投資者にとってガッカリなものが多く発表されると思います。更に、第4四半期の収益を下方修正する企業も増えることでしょう。肝心な収益が下がってしまうのですから、ここから株が大きく上昇するのは無理です。

金市場に目を移してみましょう。方向は逆になりますが、これも株と同様に一方通行です。チャートを見てください。まるで全ての友人を失ってしまったようです。それでは、同じ金チャートの5月の様子を見てください。高値に向けて棒上げです。これはファンダメンタルズに支えられているでしょうか?

繰り返しますが、私たちが相手にしているのは、感情に支配されているマーケットです。冷静な考えが、頻繁に無視されるところです。これは私の経験から言うのですが、人々はマーケットの頂点で最も強気になり、大底で最も弱気になるものです。」

モハメッド・イサ氏は、為替専門のトレーダーだ。「トレーダーというのは本当にユニークな職業です。毎日のトレードを通して、私たちはマーケットの動きを直接感じるだけでなく、自分自身を発見することができるのです。トレードを始めた頃は失敗ばかりで、全くうまくいきませんでした。」

だれでも最初は辛い。プロ野球の世界なら、いきなりメジャー・リーグでプレイするのではなく、先ず何年かマイナー・リーグで経験を積む。言い方を換えれば、初心者コース、中級者コースで成功しなければ、上級レベルのメジャーでプレイすることはできない。

しかし、株、先物、為替の世界は違う。今日初めて株をトレードするからといって、初心者用の証券取引所が存在するわけではない。高校でプレイしただけの新人が、いきなりメジャーのバッターボックスに立つようなものだから、ベテラン・ピッチャーに簡単に料理されるだけだ。イサ氏の話に戻ろう。

「私の大きな失敗を少し話したいと思います。ユーロ/ドルのトレードが専門ですから、私も他の為替トレーダーと同じように、毎朝国際ニュースに目を通します。その朝、私はフランスの金融政策記事を見つけ、これで完全にヨーロッパが有利になる、と判断しました。

しかし、私は致命的な間違いも犯しました。ヨーロッパが有利だ、と単に判断しただけでなく、私は自分の読みが完全に正しい、と信じきって、持っているポジションにあらかじめ付けてあった、万が一のための損切り注文も外してしまったのです。もうそれこそ自信満々の状態でしたから、更に買い増しも実行しました。

結果は無残な敗戦です。具体的な損額は言いませんが、口座に大きな穴を開けただけでなく、精神的に強烈なダメージを受けました。私は6カ月ほどトレードから離れました。」

金銭的、精神的に叩かれたイサ氏は、五つの重要なルールを学んだと言う。

1、適切なトレード訓練、トレード教育なしでマーケットに臨まないこと。トレードは、自分一人で簡単に習えるほど甘いものではない。実際に損を重ねながら、一人でトレードを習得することも可能だが、それではあまりにも時間と金が無駄になる。評判の良いセミナーに出席するのは、必ずトレードに役立つ。

2、計画なしでトレードをしないこと。いくらで買い、いくらで利食い、いくらで損切るのかを決め、その計画どおりにトレードすること。いったん決めた計画は、途中で変更してはいけない。

3、自分の声を聞け。感情ではなく、本当の自分の声に耳を傾けること。損が出ると、感情的な自分は難平買いを訴える。しかし、本当の自分はそれが間違っていることを知っている。

4、儲かっているポジションは、そう簡単に売らないこと。トレーリングストップを利用して、できるだけ多くの利益を確保すること。

5、プロになるには時間がかかる。一日で成功しようと思わないこと。トレードは長い道のりだ。

覚えておきたい8週間ルール

何もしないで待つことはつらい。伝説的な大投資家、ジェシー・リバモア氏はこんなことを言っている。「良いアイディアが相場で大きな利益を上げる秘訣ではない。最も重要なのは、絶好の時が来るまで静かに座っていることだ。」今日のトレーダーたちも、「手の上に座る」という表現で、我慢することの大切さを強調している。

さて、インベスターズ・ビジネス・デイリーに、関連した興味深い記事があった。要点を紹介しよう。

株が横ばいゾーンからブレイクアウトすると、そのまま一直線に上げるのではなく、以前の横ばいゾーンの上に、新しい横ばいゾーンを作ることがある。経験のある投資家なら、更なる上昇前の一休みであることを心得ているから、じっくりと次の動きを待つ。しかし、経験の浅い投資家は買い時を間違ったと早合点して、せっかく買った株を新横ばいゾーンで売ってしまう。

なぜ、多くの投資家は良い株をみすみす手放してしまうのだろうか?簡単に言ってしまえば、買いのタイミングが間違っていたからだ。どうしたら、こんな間違いを防ぐことができるだろうか?もし株が、横ばいゾーンからブレイクアウトしたら、横ばいゾーンの上辺から5%以内で買うことが肝心だ。

株がブレイクアウトした場合、棒上げになるのではなく、必ず一時的な戻し(下げ)がある。統計によれば、本当のブレイクアウトなら、戻しが8%を超えることは希だ。だから、どんなに悪くとも、買った値段から株が8%以上下げる時は、必ず損切ることもすすめたい。

これも珍しいケースになるが、ブレイクアウトした後、1週間から4週間で20%以上も伸びる株がある。そんな場合は、もちろん半分売っても構わないが、少なくとも8週間、その株を持ち続けよう。こんな勢いのある株は、短期間に2倍、3倍になる可能性があるから、ぜひ8週間のルールを覚えておいてほしい。

売りのタイミングをとらえるには、持ち株を指数と比較してみよう。たとえば、あなたがナスダック銘柄を買ったとしよう。この株の日足チャートと、ナスダック指数の日足チャートを見比べてほしい。指数は横ばい、または上げているのに、あなたの株が下げ始めた時は要注意だ。特に出来高を増大させながらの下げなら、機関投資家が売り逃げている可能性があるから、そんな場合は躊躇せずに持ち株を処分しよう。

その他には、持ち株の日足チャートに主要移動平均線を入れることも大切だ。20日移動平均線は短期トレンドを見るのに役立つから、株価がそこまで下げて反発しない時は注意しよう。50日移動平均線は中期トレンドを表し、多くのファンドマネージャーも見ている。だから、50日移動平均線を割る時は、持ち株を処分するのも一案だ。

その判断は正しい?

株や先物トレードで、あなたの犯しやすい間違いは何だろうか?一つの銘柄だけに、必要以上の資金を投入してしまう。損の出ている株を更に買い足してしまう。あらかじめ決めておいた株価で損切りができない。他人から聞いた情報を鵜呑みにして感情買いをしてしまう。損を取り戻そうと、躍起になってリベンジ・トレードをする。スリルだけを求めて頻繁なトレードをしてしまう。まだ他にもあると思うが、「トレードの心理」(The Psychology of Trading )の著者、ブレット・スティーンバーガー氏は、トレーダーはもっと根本的なところで間違いを犯している、と指摘する。話を聞いてみよう。

「判断の仕方に誤りがあることに気がつかないトレーダーがいます。たとえば、ある町の一角で、市民たちからアンケートを取りました。65%の人たちが現在の市長を支持し、次の選挙でも現市長に投票する、という返答が得られました。これと類似することが、トレードでも起きます。次の言葉を考えてみてください。

・マーケットは上昇基調だ。
・2対1の割合で上げ銘柄数が優勢だ。
・マーケットは1週間ぶりの高値を記録した。
・今日のボラティリティは今月の最低値だ。
・マーケットは横ばいゾーンからブレイクアウトした。

二番目の、「2対1の割合で上げ銘柄数が優勢だ」を例にとりましょう。この言葉を聞いたら、あなたはどう思うでしょうか?多くのトレーダーは、「マーケットは強い。今日は積極的に買える」、と判断することでしょう。このように、現状データを基に、トレーダーは判断を下すのですが、ここで注意が必要です。

市民の65%が現市長に再投票する、の例に戻りましょう。これだけで、現市長が再選される、と簡単に判断して良いのでしょうか?もちろんダメです。ある一角でのアンケートですから、他の場所でもアンケートを取らなくてはいけません。」

もっともな意見だと思う。A地区で市長の人気が高くても、B地区やC地区でも同様な結果が得られるとは限らない。「2対1の割合で上げ銘柄数が優勢だ」、という場合も、これはどこから得た情報か、先ず確認しないといけない。この数値は、ニューヨーク証券取引所の状況だろうか、それともナスダック市場だろうか?

あなたがナスダック銘柄の買いを考えていた場合、ナスダック市場の上げ銘柄数が2対1で下げを上回っていたら、買いを実行するべきだろうか?強いのだから買ってしまえ、と思われるかもしれないが、もちろんそれだけでは買えない。あなたの買いたいのは、ナスダック市場で取引される半導体銘柄だったとしよう。ナスダックが強くても、半導体指数が下げているなら、買いは控えた方が安全だ。

更にスティーンバーガー氏はこう付け加える。「2対1の割合で上げ銘柄数が優勢だった場合、明日もマーケットが上げる確率はどれほどあるでしょうか?そういったデータが無いまま、単に強いからといって買うのは危険です。」

ファンドの動きに注目

先ず下のチャートを見てほしい。2003年8月、40ドル以上だったクリスピー・クリーム・ドーナツ(KKD)は、現在たったの8ドル8セントで取引されている。

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アナリストはどんな見方をしているのだろうか?3カ月前の様子を調べてみると、1人が買い、1人がホールド(中立的意見)、2人が売り、そして2人が強い売り推奨を出していた。そして今月、6人いたアナリスト数が2人減って、2人が売り、そして2人が強い売り推薦だ。人気銘柄なら追っているアナリストの数は増える。クリスピー・クリーム・ドーナツは正にその反対だから、本当に見込みが無いのだろうか?

昨日、また悪いニュースが出た。現在、クリスピー・クリーム・ドーナツには証券取引委から取調べが入っている。決算内容に不審な点があるためだ。そんなわけで、7月に終了した四半期の決算報告が予定どおりにできなくなってしまった。ここで面白いのは、そんなニュースにもかかわらず株価は下げなかった。

「チャートを見てみろよ。ここまで下げたんだ。悪材料は全て織り込み済みさ!」「織り込み済み」、という言葉は非常に便利だ。上げても下げても使える。とにかく手っ取り早く株価を説明するなら、この「織り込み済み」で十分だ。冗談はこれくらいにして、株価が下げ渋っている原因を少し探ってみよう。

ジョージ・シュルツ氏が指揮をとるシュルツ・アセット・マネージメントは、約5.6%に相当するクリスピー・クリーム・ドーナツの株数を保有している。ここまで積極的に買っているのは、株価が極めて割安、と判断したからだ。シュルツ氏はこう説明する。「売上の悪い店の閉鎖も順調に進み、現会計年度の収益は5億ドルを超えることになるでしょう。取調べなどの悪材料で大衆から見捨てられている状態ですが、暗雲が消え去ってしまえば、買収のターゲットになる可能性もあります。」

アメリカ人は、通勤前に軽い朝食としてドーナツとコーヒーを買う。だから、強力なライバルはダンキン・ドーナツとスターバックスだ。ロサンゼルスで、18のクリスピー・クリーム・ドーナツ(フランチャイズ店)を経営するリチャード・レイニス氏はこう語る。「今年3月、クリスピー・クリーム・ドーナツに新最高経営責任者が就任しましたが、今のところ期待したような変化はありません。」

レイニス氏や他のフランチャイズ店経営者が期待していたのは、会社側が積極的にテレビや雑誌を通して、大々的な宣伝をしてくれることだった。たしかに新しいコーヒーになったが、これだけではスターバックスやダンキン・ドーナツに対抗できない。会社をあてにすることはできない、と結論したレイニス氏は個人的にある人気コーヒー会社と契約して、売上向上に必死だ。

さて、クリスピー・クリーム・ドーナツを買い増しているのは、ジョージ・シュルツ氏だけではない。発表された数字を見ると、ミューチュアルファンドも買い足している。たとえば、ロイス・オポチュニティ・ファンドは12万4100株買い増して、現在の保有数は98万4400株、そしてUSマイクロキャップ・シリーズは7万4100株買い足して、保有株数が54万3400株になっている。

債券投資は安全?

債券市場のブルマーケットが始まった。こんなビル・グロス氏(PIMCOファンドマネージャー)の言葉を信じて、7月に中期優良債券の投資を始めたら、既に2.5%の利益が出ている。なんだ、たったそれだけか、と思われるかもしれないが、中期債券でそれだけのリターンを得るには、通常約6カ月が必要だ。

「まだ、誰にも完全にアメリカの金利引き上げ政策が終了したかは分かりません。しかし、格付けの高い優良債券に、投資者たちが戻り始めています」、と言うのは経済コラムや投資コメンテーターとして知られるティム・ミドルトン氏だ。「キャピタルゲインを狙う株投資家にとって、債券はつまらない話かもしれませんが、今こそ債券に注目すべきです。」

債券、と一口に言っても社債、地方債、それに国債などがある。長さも30年物もあれば、3カ月物の国債もある。いったい、どれに注目すれば良いのだろう?ミドルトン氏の話を、もう少し聞いてみよう。

「先回の会議で、連銀は金利を据え置きましたが、リーマン・ブラザーズのアダム・トパリアン氏はこう述べています。「これは単なる一時停止であって、連銀は10月と一月に金利引き上げを実施するだろう。」こんな見解にもかかわらず、トパリアン氏は短期と中期債券投資を推奨しています。短期債券は4年以内に満期が来るもの、そして中期債券は5年から8年までの長さになります。

私たち個人投資者には、中期債券(社債、国債、地方債を含む)を中心に投資するミューチュアルファンドを利用するのが一番便利です。今年成績が良いのは、3.37%の利益があるメトロポリタン・ウエスト・トータル・リターン(MWTRX)です。また、ビル・グロス氏が指揮をとるピムコ・トータル・リターン(PTTRX)も有名です。」

多くのエコノミストやアナリストは、米国経済成長速度の減速を予想している。こんな環境では、投資してはいけない債券が二つある。やたらと利回りの高い債券は避けよう。経営の苦しい企業が、高リターンの債券を発行することが多いから、経済が下向きになったら倒産の可能性もある。先ず、債券の格付けを調べよう。

「住宅市場の冷えこみが顕著になった今日、住宅ローンをパッケージにした債券投資は危険です」、とタッド・リベレ氏(メトロポリタン・ウエスト・アセット)は言う。「米国経済の後退が本格的になれば、住宅市場へのダメージは更に広がります。たとえ利回りが魅力的でも、住宅ローンがパッケージされた債券に投資してはいけません。」

砂漠に向かう投資家たち

私はギャンブラーではない、とアシラフ・ファヒーム氏(小児科医)は強調する。ちょうど二年前、不動産バブル警報が出ていたにもかかわらず、氏はカリフォルニア州リバーサイド市にある自宅を担保にして、銀行から約40万ドルを借りた。目的は土地に投資するためだ。

ロサンゼルスからラスベガスまで運転をしたことのある人なら聞き覚えがあるかもしれないが、ファヒーム氏が選んだ場所は、バーストーという小さな町から20分ほど離れた砂漠の真ん中にある。連日40度を超える猛暑にみまわれ、人の住めるような環境ではないが、氏の目には大きな可能性を秘めた土地に映った。

「今思えば、何故あんなことをしたのかよく分かりません。何エーカーという広大な土地が、たった数千ドルで手に入るのです。超格安だと思いました。妻には何度も怒鳴られました。「どうして、そんなつもらない土地にお金を使うの?」適切な返事をすることができず、割安だから買うのだ、を繰り返しました」、とファヒーム氏は当時を思い出す。

ここで話は終わりではない。砂漠土地の次にファヒーム氏が目をつけたのは、カリフォルニア州ニューベリー・スプリングズの住宅と土地だ。偶然かもしれないが、これも暑いバーストーの近くにある。データクイック・インフォメーション・システムズの調べによれば、去年、ニューベリー・スプリングズの不動産売上は1560万ドルにおよび、2000年の約7倍を記録した。

なぜこうもニューベリー・スプリングズに人気があるのだろう?先ず、ニューベリー・スプリングズに近いバーストーはラスベガスから約1時間半ほど離れている。実はこのバーストーに、アメリカインディアンが経営するカジノ計画がある。既に、パームスプリングズやテメキュラではインディアンが経営するカジノがあり、毎日大盛況だ。

バーストーにカジノが建てば、職を求めて多くの人たちがやってくる。とうぜん住宅の需要も上昇するから、近くのニューベリー・スプリングズが注目されたわけだ。それに、南カリフォルニアの住宅市場が冷えこみ始め、新しい投資場所として、ニューベリー・スプリングズがいっそう魅力的に見える。

ニューベリー・スプリングズの不動産ブローカー、サンドラ・ブリッタン氏はこう語る。「15年間、まったく動かなかった物件が、2005年から突然上がり始めました。2004年、78000ドルだった物件が、18万ドルで他州に住む投資家が、実際に物件を見ないで現金で買っていくのです。とにかく、売りに出したら直ぐ売れてしまいます。

さて、小児科医のファヒーム氏、購入した土地を400万ドルで売りに出している。買った値段の57倍、ということだが、まだ買い手はいないようだ。

(上記は9月10日のロサンゼルスタイムズの要約です)

クリーネックスを知らないアメリカ人はいない。ティッシュペーパーのことだが、日常会話では「クリーネックス持ってる?」、と尋ねる人の方が圧倒的に多い。そんなアメリカ人に、「どの会社がクリーネックスを作っているの?」、と聞くと「クリーネックス社だろ?」、とおかしな答えが返ってくる。

クリーネックスを製造しているのは、ニューヨーク証券取引所に上場されているキンバリークラーク(KMB)だ。ティッシュペーパー以外にもトイレットペーパー、それにハギーズで知られる紙オムツなども作っている。消費者製品専門の地味な会社なのだが、「原油が値下がりしている今日、キンバリークラークは狙える」、と言うのは「マッド・マネー」(株番組)のジム・クレーマー氏だ。少し話を聞いてみよう。

「良い株を買うことが大切ですが、何故その株を買う必要があるのかを理解することも重要です。ティッシュペーパーが生活必需品であるように、赤ちゃんのいる家庭には、紙オムツを欠かすことができません。そんな理由でキンバリークラークを買う人たちが多いわけですが、もちろんその理由は間違っていません。

ノーブランドの安い紙オムツやティッシュペーパーもありますが、そんな環境でも、キンバリークラークは強い競争力を持っています。正に、クリーネックスやハギーズには熱烈な支持者が多数存在するわけです。さて、皆さんもご存知のように、最近オイルの下落が目立ちます。それなら航空会社が買える、と結論する投資家が多いですが、私はキンバリークラーク買いを薦めます。

紙オムツはオイルが無くては作れない化学製品です。オイルの値下がりは、紙オムツの生産コスト減に結びつきますから、とうぜん利益が上がります。アナリストの収益予想には、最近のオイル値下がりが含まれていませんから、低めの一株利益予測が発表されています。大した結果が期待されていないわけですから、キンバリークラークの決算は、アナリストたちを驚かせることになりそうです。」

今週の焦点として、クレーマー氏はこう付け加える。「大手証券会社、ゴールドマンサックス、リーマン・ブラザーズ、それにベア・スターンズの決算発表が控えています。場合によっては、マーケットラリーの起爆剤になる可能性があります。キンバリークラークと同様に、アナリストの一株予想は低いですから、大手証券会社を買える材料は揃っています。

長い出来高の少ない夏休みが終わり、9月は本格的な取引が始まる月です。秋から証券会社の収益が好転する傾向がありますから、ゴールドマンサックスなどの大手証券会社は注目です。もちろん、決算発表を聞いて直ぐ一度に全部買うのではなく、分散して買うことも忘れないでください。」

選挙と株式市場

11月は中間選挙だ。ちょうど大統領任期の二年目に行われることから中間選挙と呼ばれるようになったが、上院議員の三分の一と、下院議員の全員が改選される。そこで、選挙と米国株式市場の関係を少し見てみよう。

ネッド・デービス・リサーチによると、株式投資は、大統領選挙の周期に合わせることが効果的のようだ。1888年、ベンジャミン・ハリソン大統領から今日までを見ると、こんな統計がある。大統領選挙の年、S&P500指数は平均で8.4%の伸びがあった。大統領選挙一年前の年は、S&P500指数は平均で11.0%の上昇を記録した。

さらに、大統領選挙一年前の年がマイナスになったことは、1940年以来一度もない。ということは、2007年は株にとって良い年になる可能性が高い。ネッド・デービス・リサーチの説明によれば、大統領選挙一年前が好調なのは、候補者を当選させるために、政治家たちが様々な経済案を議会で可決させようとするためだ。

それでは、今年のような中間選挙の年はどうだろうか?これもネッド・デービス・リサーチからの資料だが、平均すると3.3%の伸びがあるようだが、マイナスになる確率も半々ある。そして、特に悪いのが中間選挙の年の第3四半期(7月、8月、9月)だ。ネッド・デービス氏(ネッド・デービス・リサーチ社長)は、こう語っている。

「マスコミは、中間選挙の年の9月相場は悪い、と大々的に報道していますが、これは誤解を招きやすい表現です。9月、10月にマーケットが低迷するのは、ほぼ毎年起きることですから、中間選挙の有る無しは関係がありません。中間選挙の年を振り返ってみると、先ず1月に下げ、続いて5月、6月の下げ、そして秋の下げですから、今年はこのパターンにあてはまりません。

9月、10月が下げ相場になるためには、新たな悪材料が必要です。今年マーケットは既に、200人近い被害者が出たインドでの爆破事件、イスラエル/レバノン問題、ロンドンでのテロ未遂などのニュースを経験してきました。打たれ強くなっていますから、ここから大きく下げるにはそれ相当のニュースが要ります。断言はできませんが、私は9月のマーケットは皆が予想しているような下げは無いと思います。

来年は大統領選挙の一年前の年です。経済を好転させるために、大統領は色々な計画を発表することでしょう。ひょっとしたら、来年早々に金利が引き下げられるかもしれません。歴史を振り返ると、連銀は最後の金利引き上げから6ヵ月後に金利を下げる傾向があります。」

1989年、証券取引所に初めて足を踏み入れた時、ピーター・ストルサー氏は相場の世界で一生食っていこう、と決心したそうだ。2001年まで証券会社で営業部長を務め、2002年、フルタイムのトレーダーに変身した。短期売買が中心のストルサー氏、いったいどうやって銘柄を選んでいるのだろうか?少し話を聞いてみよう。

「私はデイトレードやスイングトレードが専門ですから、とにかく速く株価が動いてくれないと困ります。ファンダメンタルズがとびきり優れた銘柄で口座をいっぱいにすることもできますが、ダラダラと横ばいされてしまっては食べていくことができません。

値動きが良い株を見つけるには、テクニカル分析が役立ちます。例を挙げましょう。200日移動平均線はトレーダーや投資家に広く活用されていますが、今日の位置と100日前の位置を比べてください。買いを考えているなら、今日の位置は100日前より高くなくてはいけません。移動平均線はトレンドを確認するために使われますが、ADX(アベレージ・ディレクショナル)でもトレンドの強さを見ることができます。もしADXが30以上の数値なら、強いアップトレンド/ダウントレンドを表します。」

勢いがある株を見つける方法として、ストルサー氏はいくつかの条件を挙げている。

1、ブレイクアウト/ブレイクダウン
最近10日間の高値/安値を更新した銘柄を調べること。ブレイクアウトは買い手を呼ぶ結果になるから、上昇速度に弾みが付きやすい。

2、ギャップ(窓)
一方的な勢いを示すのがギャップだ。ギャップアップの場合は、単に前日の終値より高く寄付くのではなく、前日の高値より高く寄付く銘柄を選びたい。ギャップダウンの場合は、前日の引値より安く始まるだけでなく、前日の安値より低く寄付くものに焦点を合わせたい。

ギャップが出来た日だけに注意を払うのではなく、数日間その銘柄を追ってみよう。直ぐに崩れてしまうこともあるが、しばらく横ばいして更なるブレイクアウトになることもあるから、忘れずに注目リストに入れておこう。

ギャップといえば、デイトレードネットの馬渕氏の得意技だ。興味のある方は「ブレイクスキャン・ドット・コム」を見ていただきたい。

3、グリーンライン(陽線)/レッドライン(陰線)
安い冴えない寄付きでも、終わってみたら長い陽線になっていることがある。特に安値圏で、前日のローソク足を包む陽線は注目だ。逆に、高く勢いよく始まっても、長い陰線で引ける時も注目だ。トレンドの転換になる可能性がある。

「一つ注意したいことがあります」、とストルサー氏は付け加える。「ADXなどでトレンドを確かめることができますが、肝心なのは指標ではなく値動きです。指標に頼りすぎて、大切なローソク足を見なくなってしまう人がいるので気をつけてください。」

礼儀を欠く企業

インテルのリストラが発表され、約1万500人が職を失う。解雇通知を受け取るのは辛い。それだけに会社側は、それなりの態度で、社員に解雇を言い渡す必要がある。しかし、CNNの報道によれば、解雇というデリケートな問題にもかかわらず、会社側のマナーがあまりにも悪いようだ。

「まったく信じられません」、とデール・クラムフォース氏(WJMアソシエーツ社)はあきれ返っているが、先週こんなことがあった。電気製品を販売するラジオ・シャック社は、400人を解雇したのだが、どのように社員に知らせたか察しがつくだろうか?正解はEメールだ。たしかにメールは便利だが、礼儀を欠いているとは思わないだろうか。毎日8時間、会社のためにつくしてきたのだから、上司から一言も無く、いきなりメールで「さよなら」では失礼だ。

メール以外にも、次のようなマナーの悪い方法が使われている。

いつもと同様に会社へ行く。9時に仕事を始めて5時に仕事を終える。帰宅すると、会社からフェデックス(宅配便)が届いている。何かと思って見ると、中に入っているのは解雇通知だ。なぜ上司は、会社で何も言ってくれなかったのだろう?いったい私を何だと思っているのだ!

体育館のような大きな会議室に、社員たちが呼び出される。入り口で色のついたカードが渡され、色別に社員たちが二つのグループに分けられる。一グループは仕事場に戻るよう指示され、もう一つのグループは上司の後について、正面玄関を通って外へ出る。そこで上司が一言。「会社の方針により、皆さんには辞めてもらうことになった。今後の皆さんの幸運を祈ります。」それだけ言うと、上司はサッサと社内へ戻って行く。

合併が決まった会社では、よくこのような手が使われる。トップが入れ替わり、会社方針も変わったから、社員はいったん解雇され、もう一度入社試験を受けることを言い渡される。最初から辞めさせるのが目的だから、入社試験を受けても、採用される可能性は低い。

警備員が利用されることもある。私服の警備員が、解雇通知を持って突然現れる。まったく感情の無い声で、社員は15分以内に荷物をまとめるように言い渡される。手早に箱へ荷物をつめ終わると、警備員は社員に付き添って外へ出る。まるで犯罪者扱いだから怒りをおぼえることだろう。

デール・クラムフォース氏によれば、上記のような方法で解雇された人たちは、次の職を見つけるのに非常な苦労をするそうだ。もう一つ付け足したいのは、他の社員たちに与える悪影響だ。同僚が非道な方法で解雇されたら、あなたはどう思うだろうか?そんな会社で本当に全力をつくすことができるだろうか?

投資は危険!?

「今日のアメリカ社会は、あまりにも差別的表現に敏感になりすぎ、本当のことを言うことができません」、と言うのは不動産投資セミナーでお馴染みのロバート・キヨサキ氏だ。「怠け者は金持ちになる資格が無い、と先日ハッキリと述べたように、今回も何故多くの人たちが金持ちになれないかを説明したいと思います。

嘘つきは、怠け者と同様に金持ちになる資格がありません。例を挙げましょう。投資は危険なものだ、と人々はさも当たり前のように言いますが、それはウソです。真実は、投資が危険なのではなく、無能な投資家が投資を危険なものにしているのです。もちろん、自分で何も調べない怠惰な投資家も投資を必要以上に危険にしていることは言うまでもありません。

無能な投資家は、太っている人が肥満の原因は遺伝子だ、と主張するのに似ています。少し前になりますが、体重が500キロもある人がテレビに出ていました。子どもの頃から太っていたそうですが、それは単なる乳児脂肪だから、時間が経てば自然に無くなる、と思っていたそうです。しかし、肥満問題は全く解決せず、結婚したら更に太ったそうです。だから、肥満の原因は妻の料理だ、と今度は言っています。

私自身も、この太った人のようにウソをついて、真実を直視することができませんでした。私はなぜ金持ちの家庭に生まれなかったのだろう?両親が金持ちだったら、私も楽ができたのに、とよくそんなことを思いました。なぜ人々は私の能力に気がつかないのだろう?これだけ私は知識があるのだから、私を認めない世の中が間違っている、とそんなこともよく思いました。ようするに私は、自分をあざむいて、自分自身で責任をとることができなかったのです。

これもよく聞くことですが、経営者たちは良い人材が見つからない、と口癖のように言います。本当でしょうか?多くのの場合、経営者たちは自分の無能さを認めたくないだけです。病院の経営者ですが、今の若い医者は全く昔の医者のように一生懸命働かない、とこぼしていました。しかし事実は、この経営者にはリーダーシップが欠けていたのです。若い医師たちを責めることで、自分の経営手腕の貧弱さを直視したくなかっただけです。

私が軍隊で学んだことは、ダメな兵士はいない、ということです。兵隊がダメなわけではありません。兵士をダメにするのは無能なリーダーです。現在のイラク状況は、その正しさを証明しています。

投資で成功するためには、自己責任という意味を本当に理解しなくてはいけません。繰り返しますが、投資自身が危険だから失敗するのではありません。問題は無能な自分です。もう自分をあざむくことはやめましょう。」

寄付き前、海外のマーケット結果や主な経済ニュースに目を通す人が多い。もちろん、偏見を持ってマーケットに臨みたくないから、ニュースは全く読まない、という人たちもいる。それでは、ここで質問。ニュースを読む読まないに関係なく、ほとんどのトレーダーたちが寄付き前に見ているものがある。それが何かお分かりになるだろうか?

アメリカで株チャンネルと言えばCNBCだ。マーケット開始15分前にスイッチを入れると、嫌でも画面右下に表示されている数字が目に飛び込んでくる。正解はこの数字、S&P500先物指数だ。それでは、ここでまた質問。なぜ私たちは、先物指数に注意を払わないといけないのだろうか?

「先物指数マーケットは、スポーツクラブのメンバーシップのようなものです」、とザ・ストリート・ドット・コムのトレーシー・バーンズ氏は言う。「スポーツクラブの会員になると、契約に毎月の会員費が100ドルと記されていれば、その通りに私たちは100ドルを支払います。2カ月後、3カ月後も費用の100ドルは変わりません。ですから、5カ月目だからといって、100ドルが105ドルになることもありえません。

先物指数もスポーツクラブと同様です。金の先物で説明しましょう。もし、あなたが宝石店を経営していた場合、クリスマスに金の値段が上がりそうだ、と予測するなら先物市場で金を買うことができます。こうすることで、将来の金価格に関係なくコストを一定させることができます。

株をやる人たちが気にしている、S&P500先物指数とはいったい何なのでしょうか?簡単に言ってしまえば、S&P500は株式市場が上がるか下がるかを賭けるゲームです。S&P500指数は、株式市場が始まる前から取引されていますから、S&P500の動きを見ることで、少なくとも株式市場がどう寄付くかが予測できます。」

インテル、マイクロソフト、ゼネラルモーターズなどのS&P500指数を構成する銘柄は、アメリカの株式市場だけでなく、海外の株式市場でも取引されている。だから、これらの銘柄が海外で買いを集めるとS&P500指数も上がり、米国株式市場は前日の終値より高く寄付くことになる。逆にマイクロソフトなどが海外で売られるとS&P500指数も下がり、米国市場は弱めな寄付きになるわけだ。

金の例を挙げたように、銘柄によっては先物商品市場に注意を払う必要がある。アドバイザーのジェーク・バーンスタイン氏はこう語る。「最近フェルプス・ダッジ社の株価が上がりましたが、これは先物市場で銅が値上がりしたためです。食品会社アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドに投資するなら、トウモロコシの先物市場にも気をつけることが大切です。」

早く仕事に行きたい!?

「なぜ働くのですか?」、と経済コラムやテレビでお馴染みのテリー・サビジ氏は質問する。月曜は労働者の日、アメリカは祭日だ。夏休み最後の週末だから、どこもかしこも混んでいる。仕事のことなど考えている人は少ないと思うが、サビジ氏の話を少し聞いてみよう。

「会社重役、ウェイトレス、セールスマン、起業家、私は先週、さまざまな人たちに働く理由を尋ねてみました。もっとも多かった答えは、ガス代、電気代、教育費、と色々な出費があるから働くのは当然だ、というものです。言い方を換えれば、働かなければ生きていけない、ということになります。

もちろん、全ての人は同じ理由で仕事をしているわけではありません。ある起業家ですが、「仕事をするのは勝つためだ」、という答えが返ってきました。ビジネスを始めてみると、思ってもみなかった難題にぶつかることがあります。そんな時チャレンジ精神を旺盛にして突き進めば、難問も解決方向に進みます。ですから、難題に勝つことは起業家に成功を約束します。

起業家のように、情熱を持って働くことのできる人たちはラッキーです。ほとんどの人たちにとって、仕事は単なる仕事であって、それ以上のものではありません。全く残念な現状です。

企業の経営陣たちは、なぜ働くのでしょうか?こんな回答が返ってきました。「とにかく大きなことを成し遂げたい。それが私の夢です。気の合ったメンバーといっしょに、ビジネスプロジェクトを推進していくことほど興奮するものはありません。」ある女性経営者は、こう語っています。「毎日仕事をするのは、チャレンジすることが楽しいからです。皆が一つになって、目標に向かって進みます。この過程で私たちは、すばらしい人間関係も築き上げることができます。」

これはウェイターが言ったことです。「家賃や食費だけのために働いているわけではありません。昼間は大学に通っているので、授業料を稼ぐのが一番の目的です。」

既に退職したのですが、現在パートで働く年配者はこう言います。「本当ならゆっくりと隠居生活を楽しみたいところですが、医療費が高いですから、そうも言ってはいられません。医療保険が十分でないので、パートで働くことにしました。」

小学校の教師はこう述べています。「やがて今日の子どもたちが、将来のアメリカのリーダーになるのです。アメリカの将来は子どもにかかっています。ですから、私も子どものために全力をつくします。」

皆さんは仕事に行くのが楽しいでしょうか?それとも嫌々出かけますか?もし嫌々なら労働者の日の今日、自分は本当に何に適しているかを考えてみることをすすめます。」

相場の名言

馬渕 一氏(デイトレードネット代表取締役)がステップアップ全国縦断セミナーを開催する。9月17日は名古屋、そして18日の大阪を皮切りに主要都市を回ろうというものだ。「リバーサルを食らって、ロスを出してもリベンジできる」、という未公開の手法も学べるから興味深い。

さて、「俺は相場師だ。相場に生き、相場に死ぬ。相場いがいのことに手をだすのは、すべて邪道だ」、の名言で知られるのは、「怪物相場師」の異名を持った近藤信男氏だ。ご存知のように、相場の世界には様々な名言がある。そこで今日は、米国ウォール街の名言をいくつか紹介しよう。

その前に、もう一つ日本からの名言を記そう。言ったのは有名人ではないが、前記した近藤氏の母親だ。氏が慶応大学に在学している時の話だが、既に株を始めていた氏は暴落で大穴を開けてしまった。金の工面がつかなくなり、仕方なく名古屋へ帰って父親に頼むことにした。しかし、父の顔を見たら何も言えなくなってしまった。

どうにでもなれ、と氏はヤケになって昼間から布団にもぐりこんだ。こんな様子を見ていた母親が部屋に入ってきて、強い調子でこう言った。「信男、よくお聞き。お前はそんなことで気がすむのかえ。逆境になりゃなるほど強くなるのが相場師というものじゃ。谷深ければ山高しともいうじゃないの。さあ、これでもう一度、勝負を張っといで。」

それでは、ウォール街の名言に移ろう。

「物事には二つの面があるという。しかし、株の世界にあるのは一つだけだ。買い、売り、と人々は自分の立場を強調するが、正しいのは片方だけだ。」(ジェシー・リバモア)

「私のトレード方法の全てを皆さんに公開しても構いません。ほとんどのトレーダーたちは、先ず感情をコントロールすることができませんから、完全に私のやり方を真似ることなどできません。」(リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ)

「株は芸術的なものであって科学ではない。数学的なやり方だけに頼るのは、わざわざ自分を不利な立場におくようなものだ。」(ピーター・リンチ)

「色々なセクターに分散投資するのは何も分かっていない証拠です。」(ウォーレン・バフェット)

「株式投資で財産を築くには、先ず資金を大切にすること。中途半端な銘柄に手を出すのではなく、本当のチャンス到来を待つことです。」(ビクター・スペランディオ)

「絶好の買いチャンスは皆が超悲観的な時、そして絶好の売りチャンスは皆が超楽観的な時だ。」(ジョン・テンプルトン)

「マーケットに生き残ることが第一、儲けを考えるのはその次だ。」(ジョージ・ソロス)

「成功しているトレーダーは相場心理を適切に読み、常に大衆の逆を行くものだ。」(WDギャン)

「トレードで成功するには現実を無視してはいけません」、と言うのはロス・フックで知られるベテラン・トレーダー、ジョー・ロス氏だ。私たちの意見とは無関係に、マーケットにはレジスタンスレベル、そしてサポートレベルなどが現実として存在する。どんなに威勢良く買いを入れても、直ぐ上にレジスタンスラインがあったら株は上がらない。遅かれ早かれ、トレーダーは間違いに気付くことになる。しかし、即座に持ち株を処分できなければ、これも現実を無視していることになる。ロス氏の話を続けよう。

「思惑が外れると、多くのトレーダーは適切な対応をすることができません。十分な分析をしたにもかかわらず、その結果が間違っていたことを認めるのは、決して嬉しいことではありません。自分をごまかすのはやめて、現実を直面してください。ただでさえトレードは難しいのですから、自分の意見を正当化することに時間をつぶすのではなく、値動きだけに注目してください。

私も中々マーケットを直視することができませんでした。そこで、一つ一つマーケットを無視した理由をノートに書いてみました。おかげで、本当の自分の姿を見ることができたようです。私のしていたことは、株価が自分の思った方向に動くことを強く希望しただけでした。いつも正しいのはマーケットだ、という言葉があるように、どんなに念じてもマーケットは自分の意思に関係なく動きます。私たちにできることは、マーケットに対する対応方法を変えることだけです。ああでもない、こうでもないと悩むのではなく、トレード技術を向上させるために時間は有効に使いたいものです。

思惑が外れてしまう原因を少し考えてみましょう。先ず、マーケット状況の変化があります。横ばい状態だったマーケットが、いきなりブレイクアウトなら、今までの手法は使えません。ベアマーケットのやり方を、ブルマーケットに適用できないことは誰でも知っています。しかしマーケットの変化、という現実が直面できないと損だけが大きくなっていきます。

不思議なことですが、トレーダーは良い結果を出していたにもかかわらず、他のトレード方法に乗り移ることがあります。それで更に利益が伸びれば問題はありませんが、多くの場合は失敗に終わります。うまくいっているなら、そう簡単にやり方を変えてはいけません。いったん手法を変え始めたら終わりがありませんから注意してください。」

トレード指導も行うロス氏は、こんなことも言う。「トレーダーという職に、引け目を感じている人が意外と多いのに驚きました。極端な例ですが、トレーダーはギャンブラーのようなものだから、世の中には何の益にもならない、というわけです。トレードで得た利益で家族を養い、そして教会などに寄付することは素晴らしいことです。参加者無しでは、マーケットは成り立ちません。トレーダーはマーケットを支える重要な一部です。」

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