株の勉強を始めてしばらくすると、だれでもぶつかるのが移動平均線だ。アメリカでは20日、50日、そして200日移動平均線が広く使われているが、投資心理研究で知られるブレット・スティーンバーガー氏は、こんな質問をする。「二本の移動平均線がクロスした、株価が移動平均線を突破した、といったことをよく耳にしますが、移動平均線を利用する価値は本当にあるのでしょうか?」
移動平均線ほど人気のある指標は他に無いのではないだろうか?現に、移動平均線が入っていないチャートブックを見つけるのは難しい。あまりに一般的になりすぎているから、今さら改まって移動平均線を使う意味があるか、と聞かれても返事に困ってしまう人もいることだろう。スティーンバーガー氏の話を続けよう。
「実際にS&P500指数を1950年までさかのぼって調べてみました。使った移動平均線は50日移動平均線です。50日を選んだ理由は、それが中期トレンドを見るために、多くの投資家たちが使っているからです。
1950年から今日までの取引日数は14290日あり、S&P500指数が50日移動平均線より上で引けたのは9044回、そしてそれより下で引けた回数は5246回でした。S&P500指数が50日移動平均線より上にある場合、次の50日間で平均1.65%の伸びがあり、逆に指数が移動平均線より下の場合は、次の50日間で平均1.85%の伸びがありました。ですから、指数が50日移動平均線の上か下では大した差がありません。
しかし、顕著だったことがあります。1995年から1999年のようなブルマーケットの場合、指数が50日移動平均線以上なら買いに徹することが正しく、2000年から2002年のようなベアマーケットでは、たとえ指数が移動平均線より上になるようなことがあっても、買い手に分はありませんでした。
指数が移動平均線より上か下かだけに気を配るのではなく、何パーセントほど離れているのかに注目すると、面白いことが見つかります。たとえば、指数が5%以上50日移動平均線より上にあると、次の50日間で指数は平均で2.46%の上昇です。反対に指数が50日移動平均線より10%以上離れて下にあると、マーケットは一時的な底である可能性が高く、次の50日間で約5%の伸びです。
指数が50日移動平均線から2%以内にある場合は、はっきりと強気とも弱気とも結論することはできません。重要なことはこれです。指数が50日移動平均線より上か下かは問題でありません。二本の移動平均線のクロスにも大した意味はありません。大切なのは、どの程度指数が移動平均線から乖離しているかです。極端に離れている時が売買チャンスです。」