不動産のことを英語でリアル・エステート(real estate )という。リアルには本物という意味があり、エステートは財産だから、不動産は本物の財産ということになる。いかにも確実な投資、という雰囲気があるが、この本物の財産が下げ始めている。
90年代末、インターネット株が異常に上げていた時、言い方を換えれば天井をつけていた時、投資者たちは安心しきっていた。「これからは新経済の時代だ。古い尺度でインターネット銘柄の価値を測ることはできない。新しい株には新しい物差しが要る。」そんな意見が主流だったことを思い出す。
不動産警戒論が全く無かったわけではない。あくまでも少数派だが、一年ほど前から不動産バブルを警報するアナリストやエコノミストが目立ち始めた。しかし、大衆の信じていたことはこれだ。「たしかに住宅市場は天井に近いかもしれない。金利が上がっているから、専門家たちが言うようにアメリカ経済が下向きになることも考えられるが、不況に陥ることは無いだろう。経済成長速度が少しにぶる程度だから、住宅市場は悪くても毎年6%の上昇を維持するはずだ。」
先日発表されたレポートによれば、7月分の新築住宅中間価格は23万ドルだったから、去年の同時期と価格は変わらない。だが、6月分と比較すると1.6%の下落だ。更に4月分と比べれば、中間価格は10.5%も下がっている。もう一つ付け加えれば、新築住宅販売件数は21.6%減、とも発表されているから、誰の目にも不動産の下向きは明らかだ。
「需給バランスが完全に崩れています」、とエコノミストのポール・カスリエル氏は指摘する。「供給量が需要を大きく上回っていますから、住宅価格は下がる必要があります。向こう二年間ほど下げ基調が予想され、その後は直ぐ上げに転じるのではなく、しばらく横ばいになるでしょう。」
最近の傾向を見てみると、新築住宅を購入する理由はそこに住むためでなく、あくまでも投資が目的だった。CNNニュースによれば、下向きが顕著になった今日、投資家たちがいっせいに物件を売りに出し、これが住宅価格下落の一因になっている。現在アメリカには、売りに出されている住宅数は56万2000件あり、一年前より22%も増えている。
不動産の冷えこみは、とうぜん米国経済にダメージを与える。労働省の統計によれば、住宅建築ブームだった2005年、新規雇用の10%は不動産関連職だった。しかし、住宅市場がスランプになた今日、建築業界は既に今年だけで2万5000人以上の人員を解雇している。
「住宅市場ブームで、不動産が米国経済の重要な一部になりました。恩恵を受けたのは、不動産業界に従事する人たちだけではありません。住宅価格が急ピッチで上がりましたから、消費者たちは不動産ローンの借り換えをして、多額な現金を手に入れました。これが強かった個人消費の原因です。しかし、住宅市場に陰りが見え始めた今日、消費者たちは以前のように簡単に現金を手に入れることができません。個人消費が衰えることになりますから、アメリカ経済も下降します」、とカスリエル氏は言う。