アジア経済は、いつになったら米国から独立できるだろうか?こんな質問をするのは、経済コラムニストのウィリアム・ぺセック氏だ。「中国の急成長だけでなく、インドも力強い伸びを展開し、東南アジアの経済成長には目をみはるものがあります。しかし、アメリカが崩れたらアジアもダメになる、という考え方がいまだに多いのはなぜでしょうか?」
たしかに、昔の話だが、アメリカがくしゃみをすると、日本は風邪をひく、という言葉があった。もっと極端な例なら、アメリカが風邪をひくと、日本は肺炎にかかる、などと言う人たちもいた。もちろん、今日の日本は全く違う。きびしいデフレから立ち直っただけでなく、内需も大きく改善させ、アメリカへの輸出ばかりに頼る必要が無くなった。ぺセック氏の話に戻ろう。
「中国経済が伸びた、と言っても、そのサイズは米国経済の五分の一にも及びません。ですから、日本は含めませんが、全アジアの経済はアメリカ国内総生産の40%以下です。アジアの国々に共通していることは貿易黒字です。これが意味することは、アジアは完全に外需型経済、ということになります。
そんなわけで、世界最大の貿易国家アメリカの経済が冷え込めば、外需型国家であるアジアも低迷する、というわけです。もちろん、この考え方に反論する人たちもいます。DBS銀行のエコノミスト、デビッド・カーボン氏はこう話しています。「アメリカ経済の減速は、皆が予想するような打撃をアジアに与えることはありません。向こう5年間を考えてみると、急成長するアジア経済は内需も大きく好転させます。ですから、アメリカの低迷は、以前のようなダメージをアジアに及ぼすことはありえません。」
スタンダード・チャータード銀行の、カルム・ヘンダーソン氏も同様な意見です。「中国経済を考慮すると、米国経済が下向きになっても、今回はアジア経済が大きな影響を受けることはないでしょう。」更に、ATRキム・エング・キャピタル・パートナーズのルズ・ロレンゾ氏は「米国への輸出が重要なアジアにとって、アメリカ経済の下降はたしかにマイナス材料です。しかし急成長する中国、それに上昇が始まった日本経済がありますから、アジア全体が大きく冷え込むことはありません。」
本当に中国経済がアジアを救えるのでしょうか?2兆2000億ドルに及ぶ中国経済は、肝心な金融システムがしっかりしていません。それだけでなく、ますます悪化する公害や政治不安もあります。クレディ・スイス・グループのエコノミスト、タオ・ドング氏はこう述べています。「現在の中国で需要が高いのは原料や機械です。しかし、これらは外需に応えるために使われますから、アジアが恩恵を受けることはありません。中国はアジアの国々から家電製品を買っていますが、これも最終的にはアメリカへ向かいます。米国経済が落ち込めば、間違いなく中国経済も減速します。」
いつかアジア経済が米国から完全に独立できる日が来るかもしれません。しかし、それを実現するには、まだアメリカからの助けが必要です。」