米国経済悲観論なら、ニューヨーク大学のノリエル・ロビニ氏の話を聞くのが一番だ。「金利引き上げ政策の結果、住宅市場は単に冷え込むだけではなく、暴落の可能性があります。オイルやエネルギー価格の上昇は、スタグフレーションを引き起こすことが考えられます。借金だらけの消費者、それに膨大な貿易赤字もありますから、ドルは大きな下落になるでしょう。」
「ロビニ氏の暗い予想は、昨日今日に始まったものではありません」、と言うのはエコノミストのマイケル・マンデル氏だ。「2004年、氏は世界的な不況を予測し、今回の予想はアメリカ経済が2007年までに極度の不景気に陥る、というものです。もう長いこと悲観論を唱えているロビニ氏ですが、今度も予想は外れるのでしょうか?」
マンデル氏は、ロビニ氏ほど米国が不景気に陥ることを気にしていない。マンデル氏の話を続けよう。「エコノミストたちは、経済がどの程度落ち込むかを正確に予測することはできません。しかし、短期金利や貨幣供給量を調整することで、下向き経済にどう対処すべきかは心得ています。
歴史を振り返ってみると、1987年の株式市場暴落は、皆が思ったほどの悪影響を米国経済に与えることはありませんでした。そして2001年の不景気、ナスダック市場の大幅下落も、米国経済活動を大きく減速させる原因にはなりませんでした。言うまでもありませんが、他のエコノミストと同様に、バーナンキ連銀議長も経済減速にどう対応すべきかは十分に分かっています。
経済の浮き沈みは悪いことではありません。経済の低迷は企業にとって苦しい状況ですが、弱い会社はつぶれ、画期的なアイディアを持った、順応性のある会社だけが生き残ることができます。山火事は多数の木を焼き尽くし、山を裸同然にしてしまいますが、こんな環境から次世代が生まれます。不景気も山火事と同じです。弱体企業は倒れますが、こんな厳しい状況から次世代を代表する企業が生まれるのです。
私には経済低迷より怖いものがあります。それは生産性(プロダクティビティ)の下降です。現在アメリカの生産性は、毎年約2.5%の伸びがあります。今後もこの伸び率を維持できるなら、極端な不景気を心配する必要はありません。プロダクティビティの向上は個人所得の上昇に結びつきますから、ある程度雇用状況が悪化しても、経済全体が下向くことはありません。
経済の下向きには、減税や金利引下げの対処方法があります。しかし、生産性の下降には効果的な対処方法がありません。今のところ、米国の生産性に問題は見られません。もちろん、問題が起きないことを祈るばかりです。」