つい1カ月ほど前、オイル価格は1バレルあたり80ドルを目前にしていた。そんな状況だったから、1バレル100ドルを唱えるアナリストも多かった。現在72ドル近辺でオイルは取引されているが、ビジネス・ウィーク誌にこんな一文があった。「上を見るのではなく、50ドルの可能性を考慮するべきだ。」下げ材料があるのだろうか?少し記事を読んでみよう。
クルード・オイルが100ドルに達する危険性が消えたわけではない。不安定な中東情勢、それに2005年アメリカを襲ったリタとカトリーナのような大型ハリケーンが再来すれば、オイル価格は急騰することだろう。しかし、向こう1年から2年を考えると、1バレル100ドルより50ドルの方が現実的だ。
最近のオイル市場を振り返ってみよう。イスラエルとヒズボラの軍事的衝突、そしてBPアラスカのパイプライン腐食問題にもかかわらず、オイルは80ドルに接触することはなかった。78ドル付近まで上昇したが、8月17日には70ドル6セントまで下げている。そして、オーク・アソシエーツのエド・ヤーデニ氏や他のアナリストが指摘するように、原油だけでなく、好調だったオイル関連銘柄にも失速が観測できる。
ウィードン・アンド・カンパニーのベテラン・オイル・アナリスト、チャールズ・マックスウェル氏はこう述べている。「ファンダメンタル的にも、オイル価格の下落が予測されます。たとえば、世界で最もオイルを消費するアメリカでのオイル需要が和らぎ始めています。」
夏休みの旅行シーズンも大詰めになり、車の運転が最も頻繁な季節が終わろうとしている。8月16日、米国石油協会からの発表によれば、7月のクルード・オイル在庫量は去年の同時期を5%上回る3億3500万バレルだった。更に、毎年7月に減少するガソリン在庫量は、逆に今年は増えている。
最近ではイランの核問題、北朝鮮のミサイル実験、それに上記したイスラエル/ヒズボラ紛争で分かるように、オイル価格は地政的要素に大きく左右される。それに本格的なハリケーン・シーズンが訪れようとしている今日、相変わらず投機筋からの資金がオイルに流れ込んでいる。あるウォールストリートのアナリストによれば、投機資金額は750億ドルから1000億ドルにおよび、数年前のレベルを1500%以上上回っている。
「もし、中東とアジア情勢がある程度安定するようなら、膨大な投機資金は他のセクターに移動するしかありません」、とチャールズ・マックスウェル氏は言う。投機家の心理状態が変わり、本当に資金の流出となれば、影響を受けるのはオイル株だ。80%の確率で原油価格を追従するオイル株だから、エクソン(XOM)やシェブロン(CVX)などの値動きに注目したい。