アメリカは不景気に陥るのだろうか?それとも、一時的に軽い経済低迷を経験するだけだろうか?こんな議論が盛んなだけに、株主たちは企業の金使いに敏感になった。具体的に言えば、サラリー以外に支払われる、トップ経営陣への特典が問題になっている。マイケル・ブラッシュ氏(経済コラムニスト)が指摘する、いくつかの実例を見てみよう。
・ナイキは退職が決まった経営責任者に、自宅の改造費として57万9649ドル(約6700万円)を支払う。
・イーベイは、もし新最高財務責任者が自宅を思ったとおりの値段で売ることができない場合、新最高財務責任者に70万ドル(約8100万円)を支払うことを約束した。
・スターウッド・ホテルは、新社長に就任一年目の飛行機代として150万ドル(約1億7300万円)を支払うことを決めた。スターウッド・ホテルの本社はニューヨークにあるのだが、新社長は家族をカリフォルニアから引っ越させる気はない。だから、頻繁に自宅へ帰りたい、というわけだ。
「ひどい無駄使いです。いったい役員たちは何を考えているのでしょうか?こんな金を使っても、企業収益向上には全く結びつきません」、と米労働総同盟産業別組合(AFL CIO)のダニエル・ペドロティ氏は言う。ファンド会社社長の、ドン・ホッジェス氏はこう語る。「問題は責任感の無い会社役員たちです。まるで役員に就任することを、高級カントリークラブに入会するのとカン違いしているようです。役員は株主の利益を優先させなければいけません。しかし、役員が最も気を配っているのはトップ経営陣のことだけです。」
実績のある経営陣なら、それなりの高給を払っても株主は文句を言わない。単に有能な人材を確保する、という理由だけで、会社資金が湯水のように使われることを、株主は疑問視しているわけだ。「この状況を解決するのは簡単です」、とチャック・コリンズ氏(企業監視グループ代表)は言う。「役員会議でトップ経営陣のサラリーや特典が決定されていますが、それを廃止して、それらを株主総会で決定すれば良いのです。」
上記したように、ナイキは退職が決まった経営責任者に、自宅の改造費として57万9649ドル(約6700万円)を支払う。しかし、話はここで終わらない。マイケル・ブラッシュ氏の説明を記そう。「この経営責任者は、ウィリアム・ペレズ氏のことです。1月に辞めましたが、就任期間は1年ほどでした。
ペレズ氏の退職条件は破格です。支払われた金額は550万ドル(約6億3690万円)、そして1100万ドル(約12億7300万円)に相当するナイキ株です。さらに、ナイキはペレズ氏の自宅を300万ドル(約3億4700万円)で引きとっただけでなく、57万9649ドルの自宅改造費までペレズ氏に返したのです。」呆れた話だ。