連銀も認めるように、インフレの危険性は依然として存在する。しかし、減速する米国経済がインフレを抑制する結果になる。これが金利据え置きになった要点だ。「この考え方は大きな間違いです」、とトレンド・マクロリティクス社で投資アドバイザーを務める、ドナルド・ラスキン氏は言う。さっそく氏の意見を紹介しよう。
「12カ月以内に、アメリカは不景気に陥ることでしょう。短期的に見た場合、株はラリーの展開が予測されますが、最終的には現在のレベル以下に下がります。
連邦公開市場委員会後に発表された声明の中には、たしかに経済の「和らぎ」、という表現が使われています。経済が冷えこみ方向ならインフレ問題も解消する、と連銀は結論していますが、危険な考え方だと思います。どちらにしても、連銀は判断の間違いに気がつき、執拗な金利引き上げ政策に戻ります。そして、米国経済は単に和らぐだけでなく、正真正銘の不景気に転落します。
先ず指摘したいのは、現在のアメリカに顕著な経済の冷えこみは見えません。三年前から私は、米国経済に対して強気な意見を発表してきましたが、今もこの考え方に変わりはありません。アメリカ経済は、いたって健康な状態です。
多くの人たちは、低金利が米国経済を発展させた、と強調しますが、低金利政策が経済を上昇させた主要原因ではありません。二年間近い金利引き上げがあった、今日の金利を見てください。決して高レベルではありません。80年代と90年代を振り返れば、現在の水準は平均以下です。
経済成長速度が和らいでいるから、インフレは解消する、という連銀の見方ですが、現実には経済は減速していないのですから、インフレ問題は無くなりません。十歩ゆずって、たしかに米国経済が冷え込んでいるとしましょう。歴史を見る限り、経済成長速度とインフレには何の関係もありません。
インフレが起きるのは、有り余る金が、ごく限られた物を追い回すためです。経済の浮き沈みが決定できることではありません。思い出してください。数年間続いた低金利政策時代、連銀は膨大な量の紙幣を印刷しています。印刷じたいは悪いことではありません。問題は、印刷を止める時期があまりにも遅すぎました。これでは17回連続で利上げをしても、大したインフレ退治にはなりません。
先日発表されたGDP(国内総生産)には、経済の冷えこみが見える、と多くのアナリストが言います。実際は正反対です。第1四半期の個人消費は+2.1%でしたが、第2四半期は+2.9%に上がっています。現に、第1四半期の数値に対して「高すぎる」、というのが連銀の見解でしたから、+2.9%は極めて強いレベルです。
連銀は18回連続の利上げを実行して、金利を5.5%に引き上げるべきでした。そして次回を最後の利上げにすれば、インフレ問題がうまく解決したと思います。」