アラスカの油田操業を一時停止させたBPは、なぜパイプラインの腐食に、もっと早く気がつかなかったのだろうか?老朽化するパイプラインは、BPだけの問題ではなく、他社にも広がっているのだろうか?「こんなことが起きるのは、以前から分かりきっていたことです」、と言うのは天然資源保護協議会のチャールズ・クルセン氏だ。「オイル会社は、設備投資を怠っていましたから、今回の事故は当然な結果です。」
オッペンハイマー社のアナリスト、ファデル・ガイト氏もクルセン氏に同意する。「オイル会社が、インフラ投資に消極的なことは有名です。パイプラインだけに限らず、他のプラットフォームや油田機器を十分に管理していくだけの必要経費を欠いているのが現状です。BPはアラスカで、もう30年以上も操業しています。パイプラインが古くなり、腐食するのは自然な成り行きです。これは、他のオイル会社への警報になったはずです。」
ここまで事態がひどくなるまで、何の処置もしなかったBPに対して、オイル業者は驚きの声をあげている。「最後にパイプラインを検査したのは、いつだったのでしょう?こんなに遅くなるまで、腐食を発見できなかったのが不思議です」、とエネルギー・コンサルタントのジョン・ヘロルド氏は言う。
BPのスポークスマン、スコット・ディーン氏の説明はこうだ。「我が社は2006年度だけでも、アラスカ油田のパイプラインに7100万ドルの資金を設備費として投入している。これは、2005年度の金額を15%上回るものであり、2001年度を80%も上回っている。」
ディーン氏によれば、BPが最後にパイプラインの内部を、スマート・ピッグと呼ばれるセンサーを使って検査したのは1992年のことだ。通常、スマート・ピッグは地下を走るパイプラインに使用され、アラスカのように地上を走るパイプラインに利用されるのはめずらしいことだという。パイプラインの外面は頻繁に点検されていたようだから、今回の事故はBPにとっても驚きであった、とディーン氏は言う。
最終的に、BPは16マイル(約26キロ)におよぶパイプラインを取り替えるが、工事に必要な日数や経費に関しては、何の発表もされていない。エネルギー情報局の推定によると、BPのアラスカ操業がフル回転に復帰できるのは、2007年の2月頃になるようだ。
なぜオイル会社は積極的に設備投資をしないのだろうか?ガイト氏の説明を記そう。「以前のように、オイル価格が低い時は、オイル会社は設備投資をしたくありません。資本収益率が悪くなるからです。今日のように、オイルが高くても設備投資はできません。こんなにオイルが値上がっているのですから、一時操業を止めて設備の点検などしたら、大きな利益を逃がしてしまいます。」