ベン・スタイン、と聞いただけでは首をかしげる人もいる。しかし、コマーシャルに出演している氏だから、アメリカ人にはお馴染みの顔だ。コマーシャルに出ているからといっても、スタイン氏の本業はタレントではない。どことなく気難しそうな雰囲気が示すように、氏の肩書きは弁護士、そして経済学者だ。
先々週、経済番組の討論会に参加したスタイン氏は、その時の模様をこう語っている。「今、株を買うべきか、が司会者の発した質問でした。悪化する中東情勢、そして不透明な金利政策などを理由に、出席者のほぼ全員が株に対して消極的な意見を述べました。特に、中東での戦争が更にエスカレートして、オイルの輸送網に支障を与えるような事態が起きれば、オイルは大幅な上昇になりますから、株はますます買えない、というわけです。
もっともらしい意見ですが、私にはどうもシックリしません。株を買う良いタイミングは、株価が安い時に買うことです。売り手がマーケットに殺到し、皆が狼狽している時こそが、絶好の買いチャンスです。恐怖に包まれた投資者は、株価の正当評価額などを気にしているヒマはありません。とにかく持ち株を投げることだけに専念していますから、株価は超格安レベルに下落します。
イスラエル上空を、ミサイルが飛んでいてはB社の株は買えない、と人々は言います。たしかに投資心理は変わりましたが、B社の内容には変化がありません。どちらにしても、遅かれ早かれ、投資心理が好転する日がやって来ます。永久な停戦はありえないにしても、中東紛争も停止する日がやって来ます。そして、投資者も株式市場に戻って来ます。しかし、そのような状況下では、割安な株を手に入れることは無理です。
もちろん、高いところで株を買っても儲けることはできますが、割安株を買ったほうが有利な投資になることは言うまでもありません。次のことを、ぜひ覚えておいてください。「大砲の音は買い、勝利のトランペットは売り。」
マネー・マネージャーの、フィル・デムス氏はこんな統計を発表しています。第二次大戦後、米国が体験した不景気時の安値で株を買ったとすると、株は10年以内に倍になっています。逆に、好景気のピークで株を買ったとすると、10年で得られる利益は75%程度です。
いや今回は違う。中東での紛争は世界大戦に広がり、人類は滅亡する、と主張する人もいます。もちろん、人類が滅亡してしまえば株など無意味ですが、そんな極端な状況が訪れないかぎり、「大砲の音は買い、勝利のトランペットは売り」が鉄則です。」
スタイン氏は、更にこう付け加える。「もしあなたがアドバイザーなら、相場環境の悪い今こそ積極的に、株の買いを大衆に勧めるべきです。」