1999年に戻ってみよう。インターネット銘柄の棒上げで、口座残高は予想以上に膨れ上がっている。この辺が潮時だろう。いくらなんでも、この上げ方は普通ではない。明日売ることにしよう、と思案していると、テレビからはアナリストの強気論が流れてくる。おまけに、自分の持つ株にも机を叩きながらの買い推奨だ。もうしばらく売りは控えよう。それより、少し買い足したほうが良さそうだ。
投資の秘訣は安く買って高く売ることだ、という言い古された言葉がある。なぜ、それを実行するのは難しいのだろうか?根本的な理由は、安く買い高く売るには、大衆との逆行動が要求されるからだ。安いものには悪材料が多いから、買うにはかなりの勇気がいる。高い株のほとんどは人気銘柄だから、どうしても誘惑に負けて買ってしまう。
冷静になることが重要なのだが、感情を支配するのは容易なことではない。そこで、心理学者が教える、感情の犠牲にならない方法を、二つ紹介しよう。
90年代末のインターネット銘柄人気でも分かるように、興奮した投資者たちは、現在ホットなものだけに手を出すようになる。言い方を換えれば、バックミラーばかりに気を配って、全く前を見ない投資者になってしまう。
今日の人気株が人気株になったのは、過去の成績が優秀だったからだ。1年間で3倍、などと大々的に報道されると、どうしても買いたくなるが、報道されているのは以前の華々しい結果にすぎない。しかし、人気株やホットな投資を追うようになると、投資に肝心な将来性を忘れてしまう。多くの投資者は、最近の成績が優れたミューチュアルファンドばかりに投資するが、これでは高値をつかむだけで、決して良い結果が得られない。それでは、どうしたらよいのか?
ファンドの説明書にも明記されているが、過去の好成績は今後も続く保証は無い、という事実を思い出そう。そして、資料を集めて、投資の将来性を冷静に判断しよう。ファイナンシャル・アドバイザーのマーガレット・スターナー氏も述べているが、去年のスターは今年もスターになる確率は低い。
個人投資家、特に男性に顕著に見られるのが自信過剰だ。ブラッド・バーバー氏と、テランス・オデアン氏がまとめたレポートによれば、自信過剰は頻繁すぎる売買につながる。現に、男性の取引回数は女性投資家を45%上回り、当然の結果として手数料が利益を2.45%減らしている。
男性投資家は、自信過剰を指摘されることを好まないが、バーバー氏はこんな提案をする。「長期的な視野で、頻繁な取引が口座に与える悪影響を理解することが先決です。1万ドルで始めた投資に、毎年7%の利益があったとしましょう。典型的な女性投資家なら、30年後には4万6400ドルになっています。しかし、売買の激しい男性の場合は3万8000ドルにしかなりません。」