August 2006 のトップ・ストーリー一覧

7月、107.0だった消費者信頼感指数は、8月、99.6に下落した。ビジネスウィークの報道によれば、これほど極端に下がったのは、去年メキシコ湾岸州を襲ったハリケーン・カトリーナ以来初めてになる。このニュースを深刻に受け取ったのは小売業界だ。消費者がこう悲観的では、クリスマスの売上が予想以下になってしまう可能性がある。

小売業界にとって、クリスマスギフトを中心にした年末の売上は重要だ。約40%の年間売上は年末に集中しているから、ここで消費者が倒れてしまったらどうしようもない。8月の売上は、年末の売上を予想するために使われるが、1ドル均一の安売り専門店から、高級品を扱う店まで、どこも8月は満足な結果でないようだ。

やはりアメリカは不景気に陥るのだろうか?たしかに、国内総生産や住宅市場には冷えこみが見えるが、消費者は本当にデジカメ、大画面薄型テレビ、それにビデオゲームなどを買わなくなってしまうのだろうか?ウェルズ・キャピタル・マネージメントのマーケット戦略家、ジェームズ・ポールソン氏はこう語っている。

「住宅市場の落ち込みは否定しませんが、商業用不動産は現在も好調です。それにサービス業や製造業も健全な状態ですから、雇用状況がいきなり大きく悪化することはありえません。更に、平均労働時間も長くなっていますから、消費者の収入は増えています。

アメリカが不景気になることはありません。連銀は17回連続で金利を引き上げましたが、現在の5.25%は歴史的に見て、まだ低い水準です。安いドルも好材料です。海外へ輸出される米国製品の需要増大に結びつきます。また、米国企業は多額な現金を保有していますから、少し経済が下向きになった程度では企業に痛手を与えることはできません。」

米国経済に大した心配がないなら、これから積極的に株を買えるだろうか?経済コラムニスト、マイケル・ブラッシュ氏の意見を紹介しよう。

「8月から10月の半ばにかけて、テクノロジー銘柄は低迷する傾向があります。しかし、今年は例外になるかもしれません。理由はテクノロジー銘柄の空売り残があまりにも多いのです。ですから、空売りの買い戻しがマーケットラリーの発端になることが考えられます。

有望な銘柄の一つはアカマイ・テクノロジーズ(AKAM)です。皆さんの中には、インターネットでワールドカップを見た人がいると思います。これには、アカマイのサーバーが使われています。スポーツだけでなく、アカマイの製品はアップル・コンピュータやマイクロソフトでも使用されています。

家庭には高速インターネットが急ピッチで広がり、オンラインでのビデオや音楽の需要はこれから益々増えることでしょう。それだけでなく、インターネット電話も普及していますから、これもアカマイに好材料です。もちろん、アカマイにはグーグルやヤフーの競争相手がいますから、サン・マイクロシステムズ(SUNW)の投資も面白いでしょう。」

格上げよりも良いニュース!?

アナリストを株投資にうまく使う方法はないだろうか?マネー誌のマイケル・シビー氏は、こんなことを述べている。「買い推奨、売り推奨、と毎日忙しいアナリストですが、特に大型優良銘柄に出される推薦はあまりパッとしません。もちろん、それだけの理由でアナリストを完全に無視することはありません。なぜなら、賢いアナリストの利用法があるからです。

大型優良銘柄の買い推奨がパッとしない原因は何でしょうか?一番の理由は、大型優良企業を追っているアナリストの数が、あまりにも多すぎるためです。ありとあらゆる情報がチェックされ、正に調べつくされていますから、新材料を見つけることは先ず無理です。

もう一つの問題は推奨が出されるタイミングです。個人投資者たちは、どのようにして買いや売り推奨ニュースを得ているでしょうか?ほとんどの場合、CNBCなどの株番組やインターネットが情報源です。頭に入れておいてほしいのは、今朝買い推奨が出たからといって、それが今朝初めて出されたとは限らないのです。場合によっては、既に数週間以上も前に出されている可能性があります。(注:とうぜんながら、大衆が一番最後に格上げニュースを入手する。重要な発表は、先ず機関投資家などの優先客に公表される。)

格上げは、新資金を流入させる結果になりますから、株にとって好影響です。しかし、単なる格上げよりも更に強力なものがあります。それは、アナリストによる収益上方修正です。ザックス社のアダム・コーエン氏は、こう述べています。「アナリストによる収益上方修正は、企業の来年度の利益が伸びる可能性が高いだけでなく、長期的な収益上昇スピードも加速することが予想されます。それに、一人のアナリストが収益上方修正を発表すると、他のアナリストも後を追うように収益上方修正をする傾向があります。」

それでは、具体的にどんな銘柄が狙えるのだろうか?シビー氏は次の二銘柄をあげている。(注:これらは投資アイディアであり、買い推奨でないことをお断りしておきたい。)

FedEx(FDX):5月31日に終了した会計年度の収益は25%増だった。FDXは宅配会社だが、特別料金を設けて、急騰するオイル問題を適切に解決した。今後の課題は2004年に買収した印刷・コピー店のKinko'sの収益を改善することだ。

メリルリンチ(MER):大手証券会社メリルリンチの第2四半期収益は、44%の大幅な伸びを記録した。停滞気味の株式市場の影響を受けて、まだMERの株価は4月の高値から14%ほど下だ。2007年度の予想収益を使って計算した株価収益率はたった10.1だから、割安な株価も魅力だ。

なぜ移動平均線を使うのか?

株の勉強を始めてしばらくすると、だれでもぶつかるのが移動平均線だ。アメリカでは20日、50日、そして200日移動平均線が広く使われているが、投資心理研究で知られるブレット・スティーンバーガー氏は、こんな質問をする。「二本の移動平均線がクロスした、株価が移動平均線を突破した、といったことをよく耳にしますが、移動平均線を利用する価値は本当にあるのでしょうか?」

移動平均線ほど人気のある指標は他に無いのではないだろうか?現に、移動平均線が入っていないチャートブックを見つけるのは難しい。あまりに一般的になりすぎているから、今さら改まって移動平均線を使う意味があるか、と聞かれても返事に困ってしまう人もいることだろう。スティーンバーガー氏の話を続けよう。

「実際にS&P500指数を1950年までさかのぼって調べてみました。使った移動平均線は50日移動平均線です。50日を選んだ理由は、それが中期トレンドを見るために、多くの投資家たちが使っているからです。

1950年から今日までの取引日数は14290日あり、S&P500指数が50日移動平均線より上で引けたのは9044回、そしてそれより下で引けた回数は5246回でした。S&P500指数が50日移動平均線より上にある場合、次の50日間で平均1.65%の伸びがあり、逆に指数が移動平均線より下の場合は、次の50日間で平均1.85%の伸びがありました。ですから、指数が50日移動平均線の上か下では大した差がありません。

しかし、顕著だったことがあります。1995年から1999年のようなブルマーケットの場合、指数が50日移動平均線以上なら買いに徹することが正しく、2000年から2002年のようなベアマーケットでは、たとえ指数が移動平均線より上になるようなことがあっても、買い手に分はありませんでした。

指数が移動平均線より上か下かだけに気を配るのではなく、何パーセントほど離れているのかに注目すると、面白いことが見つかります。たとえば、指数が5%以上50日移動平均線より上にあると、次の50日間で指数は平均で2.46%の上昇です。反対に指数が50日移動平均線より10%以上離れて下にあると、マーケットは一時的な底である可能性が高く、次の50日間で約5%の伸びです。

指数が50日移動平均線から2%以内にある場合は、はっきりと強気とも弱気とも結論することはできません。重要なことはこれです。指数が50日移動平均線より上か下かは問題でありません。二本の移動平均線のクロスにも大した意味はありません。大切なのは、どの程度指数が移動平均線から乖離しているかです。極端に離れている時が売買チャンスです。」

不動産のことを英語でリアル・エステート(real estate )という。リアルには本物という意味があり、エステートは財産だから、不動産は本物の財産ということになる。いかにも確実な投資、という雰囲気があるが、この本物の財産が下げ始めている。

90年代末、インターネット株が異常に上げていた時、言い方を換えれば天井をつけていた時、投資者たちは安心しきっていた。「これからは新経済の時代だ。古い尺度でインターネット銘柄の価値を測ることはできない。新しい株には新しい物差しが要る。」そんな意見が主流だったことを思い出す。

不動産警戒論が全く無かったわけではない。あくまでも少数派だが、一年ほど前から不動産バブルを警報するアナリストやエコノミストが目立ち始めた。しかし、大衆の信じていたことはこれだ。「たしかに住宅市場は天井に近いかもしれない。金利が上がっているから、専門家たちが言うようにアメリカ経済が下向きになることも考えられるが、不況に陥ることは無いだろう。経済成長速度が少しにぶる程度だから、住宅市場は悪くても毎年6%の上昇を維持するはずだ。」

先日発表されたレポートによれば、7月分の新築住宅中間価格は23万ドルだったから、去年の同時期と価格は変わらない。だが、6月分と比較すると1.6%の下落だ。更に4月分と比べれば、中間価格は10.5%も下がっている。もう一つ付け加えれば、新築住宅販売件数は21.6%減、とも発表されているから、誰の目にも不動産の下向きは明らかだ。

「需給バランスが完全に崩れています」、とエコノミストのポール・カスリエル氏は指摘する。「供給量が需要を大きく上回っていますから、住宅価格は下がる必要があります。向こう二年間ほど下げ基調が予想され、その後は直ぐ上げに転じるのではなく、しばらく横ばいになるでしょう。」

最近の傾向を見てみると、新築住宅を購入する理由はそこに住むためでなく、あくまでも投資が目的だった。CNNニュースによれば、下向きが顕著になった今日、投資家たちがいっせいに物件を売りに出し、これが住宅価格下落の一因になっている。現在アメリカには、売りに出されている住宅数は56万2000件あり、一年前より22%も増えている。

不動産の冷えこみは、とうぜん米国経済にダメージを与える。労働省の統計によれば、住宅建築ブームだった2005年、新規雇用の10%は不動産関連職だった。しかし、住宅市場がスランプになた今日、建築業界は既に今年だけで2万5000人以上の人員を解雇している。

「住宅市場ブームで、不動産が米国経済の重要な一部になりました。恩恵を受けたのは、不動産業界に従事する人たちだけではありません。住宅価格が急ピッチで上がりましたから、消費者たちは不動産ローンの借り換えをして、多額な現金を手に入れました。これが強かった個人消費の原因です。しかし、住宅市場に陰りが見え始めた今日、消費者たちは以前のように簡単に現金を手に入れることができません。個人消費が衰えることになりますから、アメリカ経済も下降します」、とカスリエル氏は言う。

中国経済がアジアを救う!?

アジア経済は、いつになったら米国から独立できるだろうか?こんな質問をするのは、経済コラムニストのウィリアム・ぺセック氏だ。「中国の急成長だけでなく、インドも力強い伸びを展開し、東南アジアの経済成長には目をみはるものがあります。しかし、アメリカが崩れたらアジアもダメになる、という考え方がいまだに多いのはなぜでしょうか?」

たしかに、昔の話だが、アメリカがくしゃみをすると、日本は風邪をひく、という言葉があった。もっと極端な例なら、アメリカが風邪をひくと、日本は肺炎にかかる、などと言う人たちもいた。もちろん、今日の日本は全く違う。きびしいデフレから立ち直っただけでなく、内需も大きく改善させ、アメリカへの輸出ばかりに頼る必要が無くなった。ぺセック氏の話に戻ろう。

「中国経済が伸びた、と言っても、そのサイズは米国経済の五分の一にも及びません。ですから、日本は含めませんが、全アジアの経済はアメリカ国内総生産の40%以下です。アジアの国々に共通していることは貿易黒字です。これが意味することは、アジアは完全に外需型経済、ということになります。

そんなわけで、世界最大の貿易国家アメリカの経済が冷え込めば、外需型国家であるアジアも低迷する、というわけです。もちろん、この考え方に反論する人たちもいます。DBS銀行のエコノミスト、デビッド・カーボン氏はこう話しています。「アメリカ経済の減速は、皆が予想するような打撃をアジアに与えることはありません。向こう5年間を考えてみると、急成長するアジア経済は内需も大きく好転させます。ですから、アメリカの低迷は、以前のようなダメージをアジアに及ぼすことはありえません。」

スタンダード・チャータード銀行の、カルム・ヘンダーソン氏も同様な意見です。「中国経済を考慮すると、米国経済が下向きになっても、今回はアジア経済が大きな影響を受けることはないでしょう。」更に、ATRキム・エング・キャピタル・パートナーズのルズ・ロレンゾ氏は「米国への輸出が重要なアジアにとって、アメリカ経済の下降はたしかにマイナス材料です。しかし急成長する中国、それに上昇が始まった日本経済がありますから、アジア全体が大きく冷え込むことはありません。」

本当に中国経済がアジアを救えるのでしょうか?2兆2000億ドルに及ぶ中国経済は、肝心な金融システムがしっかりしていません。それだけでなく、ますます悪化する公害や政治不安もあります。クレディ・スイス・グループのエコノミスト、タオ・ドング氏はこう述べています。「現在の中国で需要が高いのは原料や機械です。しかし、これらは外需に応えるために使われますから、アジアが恩恵を受けることはありません。中国はアジアの国々から家電製品を買っていますが、これも最終的にはアメリカへ向かいます。米国経済が落ち込めば、間違いなく中国経済も減速します。」

いつかアジア経済が米国から完全に独立できる日が来るかもしれません。しかし、それを実現するには、まだアメリカからの助けが必要です。」

複雑、頻繁、無計画

トレード計画無しでマーケットに臨むのは、トレード失敗計画をたてたのと同じことだ、とベテラン・デイトレーダーのハービー・ウォルシ氏は言う。ナスダック銘柄を中心にトレードする氏は、時おり新人トレーダーの個人指導もしている。「多くの人たちをコーチしてきましたが、ほとんどの新人は同様な間違いを犯します。失敗から学ぶ重要性が強調されていますが、なにもそれは自分の失敗に限られたことではありません。他のトレーダーが犯しやすい間違いを、あらかじめ知っておくことはトレードの向上に役立ちます。」ウォルシ氏の指摘する、トレーダーが失敗する原因のいくつかを見てみよう。

1、トレード方法が複雑すぎる。
あまりにも末梢的なことを気にするトレーダーが多い。すべての細かい点まで考慮していたら、トレード方法が複雑になり、トレードを必要以上に難しくしてしまう。最初は簡単な方法で始めるのだが、一度損を出したり、思ったような成果が上がらないと、トレーダーはさっそく手法の改善を試みる。これが結局トレードを複雑にしてしまうわけだ。

どんなに優れたトレード方法でも百発百中はありえない、という当たり前な事実を覚えていてほしい。一度や二度の失敗で、簡単にトレード方法に手を加えることはやめた方が無難だ。それよりも徹底的に同じやり方でペーパートレードを重ねて、手法の確実さを検証しよう。二連敗、三連敗ということが起きても、通算でプラスならそのトレード方法は使いものになる。

2、トレード手法の頻繁な乗り換え。
これは上記1に関連し、ほとんどの場合、損がきっかけになる。繰り返すが、この世の中にパーフェクトなトレード方法は存在しない。しかし、損が続くと多くのトレーダーは完璧な手法探しを始める。セミナーからセミナーへ、新ソフトウェアの購入、ニュースレターの新規購読、幻のトレード方法を求めて出費ばかりが増えていく。

なぜトレーダーは、こんな無駄な努力に金と時間を費やすのだろうか?簡単に言ってしまえば、現実を直視できないのが問題だ。ソフトウェアから出される買い、売りシグナルだけで、マーケットは簡単に儲けさせてくれない。この事実を受け入れられない限り、永久に手法探しが続くことだろう。勝率の高い方法を手に入れたら、それを完全に自分のものにすることが重要だ。

3、トレード計画が無い。
細かいトレード計画をたてる前に、トレード目標を明確にしてほしい。ただ、漠然と儲けたいでは困る。あなたは儲けた金で何をしたいのだろうか?

トレード方法によってチャートパターンは異なるが、事前にエントリーポイント、脱出ポイント(損切りも含める)を決め、実際に日誌の形で記録しよう。ノートに書き残すことでマーケット終了後に復習することができるから、トレード上達に有益であることは言うまでもない。売買ポイントだけでなく何株買うのか、といったポジションサイズもあらかじめ決めておこう。

宗教と富

どうやったら金持ちになれるだろうか?「そのヒントは、聖書の中にあります」、と言うのは不動産セミナーで有名なロバート・キヨサキ氏だ。さっそく少し話を聞いてみよう。

「金持ちになれない最大の理由は、それなりの努力を怠っているからです。次の理由は、よこしまな心が金持ちになることを妨げています。お断りしておきますが、私は聖書の専門家ではありません。それに、あまりに宗教熱心な人も苦手です。宗教を信じる信じないは個人の問題であり、だれからも強制されるべきものではありません。

少しそれましたが、新約聖書にはよこしまな心と富に関する記述があります。もちろん、聖書の解釈方法は一つだけではありません。あくまでも私流の解釈ですから、皆さんを批判するつもりは全く無いこともお断りしておきます。

物語は、マタイによる福音書にあります。ある一家の主人が、長い旅に出ることになりました。出発前に主人は、ある召使に5枚の金貨を与えました。次の召使には2枚の金貨、そしてもう一人の召使には1枚の金貨を与えました。

旅から戻ると、5枚の金貨を受け取った召使は、金貨を倍の10枚に増やしていました。2枚受け取った召使も同様に倍に増やし、枚数は4枚になっていました。これを見た主人は大喜びです。「よくやった。あなた方は忠実な召使だ。少ないものに忠実だったから、これからはもっと多くのものをお前たちに管理させよう。」

さて、三人目の召使はどうなったのでしょうか。この召使は、主人を恐れていましたから、金貨を増やすことは考えず、与えられた1枚の金貨を土の中に埋めました。主人はこう言いました。「よこしまな心を持った怠惰な召使だ。もしお前が、私が蒔かないところから刈り取ることを知っていたなら、私の金を銀行に入れておくべきだった。そうすれば、利息付きで返してもらえたのに。」

けっきょく主人は、何もしなかった三人目の召使から1枚の金貨を取り上げ、それを金貨を10枚に増やした召使に与えました。これが物語ですが、聖書はこうしめくくっています。「だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまで取り上げられる。」

私の解釈はこうです。人々が貧乏になるのは、よこしまな心を持ち怠惰だからです。私の好きな箇所は「少ないものに忠実だったから、これからはもっと多くのものをお前たちに管理させよう」です。この主人が神だとすれば、神は怠惰な、よこしまな心を持った貧乏人が嫌いです。」

さらにキヨサキ氏は、こんなことを付け加える。「多くの教会リーダーは、金を邪悪なものと決め込み、貧乏な人々を擁護します。しかし、聖書は逆です。主人が好むのは、少ないものを忠実に増やせる召使です。」

不景気より恐ろしいもの

米国経済悲観論なら、ニューヨーク大学のノリエル・ロビニ氏の話を聞くのが一番だ。「金利引き上げ政策の結果、住宅市場は単に冷え込むだけではなく、暴落の可能性があります。オイルやエネルギー価格の上昇は、スタグフレーションを引き起こすことが考えられます。借金だらけの消費者、それに膨大な貿易赤字もありますから、ドルは大きな下落になるでしょう。」

「ロビニ氏の暗い予想は、昨日今日に始まったものではありません」、と言うのはエコノミストのマイケル・マンデル氏だ。「2004年、氏は世界的な不況を予測し、今回の予想はアメリカ経済が2007年までに極度の不景気に陥る、というものです。もう長いこと悲観論を唱えているロビニ氏ですが、今度も予想は外れるのでしょうか?」

マンデル氏は、ロビニ氏ほど米国が不景気に陥ることを気にしていない。マンデル氏の話を続けよう。「エコノミストたちは、経済がどの程度落ち込むかを正確に予測することはできません。しかし、短期金利や貨幣供給量を調整することで、下向き経済にどう対処すべきかは心得ています。

歴史を振り返ってみると、1987年の株式市場暴落は、皆が思ったほどの悪影響を米国経済に与えることはありませんでした。そして2001年の不景気、ナスダック市場の大幅下落も、米国経済活動を大きく減速させる原因にはなりませんでした。言うまでもありませんが、他のエコノミストと同様に、バーナンキ連銀議長も経済減速にどう対応すべきかは十分に分かっています。

経済の浮き沈みは悪いことではありません。経済の低迷は企業にとって苦しい状況ですが、弱い会社はつぶれ、画期的なアイディアを持った、順応性のある会社だけが生き残ることができます。山火事は多数の木を焼き尽くし、山を裸同然にしてしまいますが、こんな環境から次世代が生まれます。不景気も山火事と同じです。弱体企業は倒れますが、こんな厳しい状況から次世代を代表する企業が生まれるのです。

私には経済低迷より怖いものがあります。それは生産性(プロダクティビティ)の下降です。現在アメリカの生産性は、毎年約2.5%の伸びがあります。今後もこの伸び率を維持できるなら、極端な不景気を心配する必要はありません。プロダクティビティの向上は個人所得の上昇に結びつきますから、ある程度雇用状況が悪化しても、経済全体が下向くことはありません。

経済の下向きには、減税や金利引下げの対処方法があります。しかし、生産性の下降には効果的な対処方法がありません。今のところ、米国の生産性に問題は見られません。もちろん、問題が起きないことを祈るばかりです。」

つい1カ月ほど前、オイル価格は1バレルあたり80ドルを目前にしていた。そんな状況だったから、1バレル100ドルを唱えるアナリストも多かった。現在72ドル近辺でオイルは取引されているが、ビジネス・ウィーク誌にこんな一文があった。「上を見るのではなく、50ドルの可能性を考慮するべきだ。」下げ材料があるのだろうか?少し記事を読んでみよう。

クルード・オイルが100ドルに達する危険性が消えたわけではない。不安定な中東情勢、それに2005年アメリカを襲ったリタとカトリーナのような大型ハリケーンが再来すれば、オイル価格は急騰することだろう。しかし、向こう1年から2年を考えると、1バレル100ドルより50ドルの方が現実的だ。

最近のオイル市場を振り返ってみよう。イスラエルとヒズボラの軍事的衝突、そしてBPアラスカのパイプライン腐食問題にもかかわらず、オイルは80ドルに接触することはなかった。78ドル付近まで上昇したが、8月17日には70ドル6セントまで下げている。そして、オーク・アソシエーツのエド・ヤーデニ氏や他のアナリストが指摘するように、原油だけでなく、好調だったオイル関連銘柄にも失速が観測できる。

ウィードン・アンド・カンパニーのベテラン・オイル・アナリスト、チャールズ・マックスウェル氏はこう述べている。「ファンダメンタル的にも、オイル価格の下落が予測されます。たとえば、世界で最もオイルを消費するアメリカでのオイル需要が和らぎ始めています。」

夏休みの旅行シーズンも大詰めになり、車の運転が最も頻繁な季節が終わろうとしている。8月16日、米国石油協会からの発表によれば、7月のクルード・オイル在庫量は去年の同時期を5%上回る3億3500万バレルだった。更に、毎年7月に減少するガソリン在庫量は、逆に今年は増えている。

最近ではイランの核問題、北朝鮮のミサイル実験、それに上記したイスラエル/ヒズボラ紛争で分かるように、オイル価格は地政的要素に大きく左右される。それに本格的なハリケーン・シーズンが訪れようとしている今日、相変わらず投機筋からの資金がオイルに流れ込んでいる。あるウォールストリートのアナリストによれば、投機資金額は750億ドルから1000億ドルにおよび、数年前のレベルを1500%以上上回っている。

「もし、中東とアジア情勢がある程度安定するようなら、膨大な投機資金は他のセクターに移動するしかありません」、とチャールズ・マックスウェル氏は言う。投機家の心理状態が変わり、本当に資金の流出となれば、影響を受けるのはオイル株だ。80%の確率で原油価格を追従するオイル株だから、エクソン(XOM)やシェブロン(CVX)などの値動きに注目したい。

2006年1月11日、475ドル11セントだったグーグルの株価は、先週金曜383ドル36セントで取引を終えた。約19%の下落だが、なぜ今年グーグルは低迷しているのだろうか?「原因は経営陣です」、と言うのは経済コラムニストのマーク・ギルバート氏だ。経営陣?何かヘマをおかしたのだろうか?少し説明を聞いてみよう。

2005年2月14日を境に、自社株売りの制限が無くなったグーグルは、会社関係者たちによる持ち株の投げ売りが顕著だ。8月9日現在、会社インサイダーたちが処分した株数は、なんと2300万株に及んでいる。ドルに換算すれば74億ドルにのぼり、2004年8月、一株85ドルの新規公開で集められた資金の約三分の一が売られたわけだ。

自社株売りは、もちろん犯罪ではない。グーグルを1190億ドルの企業に成長させた幹部の功績は、称賛されるべきであり、持ち株を売って新居の購入、一家揃っての旅行に使うのは当たり前の行動だ。

しかし、一つ気になることがある。ブルームバーグ社の調べによれば、2005年2月14日以来、グーグルの会社内部者は自社株を売ることはあっても、誰一人として自社株買いを実行していない。グーズマン・アンド・カンパニーのアナリスト、フィリップ・レメック氏は、グーグルに売り推奨を出す極めてまれなアナリストだ。しかし、氏の意見を圧倒的に支持しているのは、グーグルの内部者ではないだろうか。

自社株売りに、最も積極的なのは、会社を創立したラリー・ページ氏とサーゲイ・ブリン氏の二人だ。売り総額は、ページ氏が20億ドル、そしてブリン氏が19億ドルだ。他には、上級副社長オミッド・コルデスタニ氏が11億ドル、役員のラム・シリラム氏が6億5000万ドル、そして最高財務責任者のジョージ・レイエス氏が2億ドル相当を手放している。

グーグルに売り推薦を出すアナリストが少ないことは上記したが、今月の様子を見ると、強い買い推奨を出しているアナリストは11人、買いが21人、ニュートラルが3人、売りはたった2人だ。これだけ強気意見が多いのは、サーチエンジン業界では、グーグルがなんと言ってもナンバー1だからだ。2005年、36.9%のサーチエンジン市場を占めていたグーグルは、今年44.7%まで率を上げている。

低迷する株価も、アナリストはグーグル買いの一理由にあげている。2007年度に予想される一株利益を使って計算すると、現在のPER(株価収益率)は29だ。グローバル・クラウン社のアナリストによれば、PERが40になるまでは買えるというから、少なくとも525ドルの株価を予測しているわけだ。

季節的にグーグルは買える、と言うアナリストもいる。まだ歴史の浅いグーグルだが、ここまでの株価推移を振り返ってみると、2004年第4四半期は+50%、そして2005年の第4四半期は30%以上の上昇だ。はたして今年も同様な結果となるだろうか?

豪華ヨットは危険信号

レッグ・メーソンのファンドマネージャー、ビル・ミラー氏に危機が訪れている。15年間連続で、S&P500指数以上の成長率を記録してきたが、いよいよ連続記録がストップしそうだ。モーニングスター社の調べによれば、今年ここまでミラー氏が指揮をとるバリュー・トラスト・ファンドは10.14%の下落を示し、+2.78%のS&P500指数を下回っている。

なぜ、ミラー氏は今年不調なのだろうか?間違った銘柄を選んだからだ、と当たり前な回答をすることもできる。しかし、バロンズ誌は変わった見方をしている。バリュー・トラスト・ファンドが低迷しているのは、ミラー氏が超豪華ヨットを買ったからだ、というのだ。

言うまでもなく、ファンドマネージャーは投資者たちに利益を与えることが最も重要だ。そんな立場にいる人間が、投資者を優先させることを忘れ、船内のインテリア選びに忙しくしているようなら、そのファンドからは大した利益を見込むことができない。だから早々に解約した方が得策、というわけだ。

アメリカでは昔から、豪華ヨットが贅沢度のモノサシとして使われてきた。豪華ヨットを買う人は、単に金持ちというだけでなく、金が有り余っている。だから、もうこれ以上稼ぐ必要はいっさい無い。多くの企業が小型ジェット機を購入しているが、これは遊びのためではない。素早く移動して、ビジネスを効率化させるのが目的だ。豪華ヨットはノンビリと浮いているだけだから、暇人以外には使い道が無い。

1940年に発行された「Where Are the Customers' Yachts? (顧客のヨットはどこ?)」は、証券業界を痛烈に批判した一冊だ。もしこの本が今日発行されたなら、たぶん題名は「ミューチュアルファンド加入者たちのヨットはどこ?」、になったことだろう。

アメリカで一番大きな豪華ヨットを所有するのは、オラクル社の最高経営責任者、ラリー・エリソン氏だ。豪華ヨットを購入した2004年から、オラクルの株価とS&P500指数を比べてみると、オラクルは常にS&P500指数に負けている。(下がチャート。赤がS&P500指数。)

0818orcl.gif

二番目に大きな豪華ヨットを所有するのは、マイクロソフトの共同創立者、ポール・アレン氏だ。もう一つ付け加えれば、アレン氏は全米で四番目に大きな豪華ヨットも所有する。1998年以来、アレン氏はチャーター・コミュニケーションズの会長を務めているが、株価の方は目もあてられない状態だ。2000年1月、チャーター・コミュニケーションズは17ドル75セントで取引されていたが、今日現在株価はたったの1ドル40セントにしかすぎない。

バリュー・トラスト・ファンドは本当に見込みがないのだろうか?バロンズ誌によれば、使っていない時は、ミラー氏は豪華ヨットを貸して料金稼ぎをしているようだ。そんなことをポール・アレン氏はしていないから、バリュー・トラスト・ファンドにはまだ希望があるかもしれない。

(注:上記はバロンズ誌とスレート・ドット・コムの要約です。)

素朴な質問

あまりにも単純な質問をされると、意外と回答に窮するものだ。投資心理の研究で有名な、ブレット・スティーンバーガー氏の元には、毎日様々なメールが送られて来る。その中の一つに、こんな質問があった。「株のトレードで損を出すことは、どうしてこうも簡単なのですか?」それは、あなたのやり方が間違っているからです、と技術的な面を強調することもできる。しかし、ブレット・スティーンバーガー氏は少し違った見方を発表している。早速いくつか見てみよう。

1、銘柄が大衆に馴染み深いものであればあるほど儲けが低くなる。

アメリカの個人投資者が最も好むのは大型成長株だ。たとえば、2003年の5月に大型成長株に投資する上場投信を買ったとすると、今日現在22%の利益がある。もし小型株に投資する上場投信なら、74%の利益が上がっている。アメリカ人に馴染みが無いのは外国株だ。しかし、日本株の上場投信を買っていれば+101%、そしてドイツ株の上場投信なら+99%の儲けがある。

2、増え続ける上場投信数はマーケットに悪影響。

スパイダー(SPY、S&P500指数の銘柄に投資する上場投信)で説明しよう。2000年以来、スパイダーの出来高はコンスタントに増えているが、逆にボラティリティは減少している。なぜだろうか?出来高が増えると裁定取引も増し、これがボラティリティを低下させる原因になった。そのためマーケットに、はっきりしたトレンドが現れにくくなり、トレードが難しくなった。

3、マーケットにマイナーリーグは無い。

野球の場合なら、大リーグに行く前には先ずマイナーリーグで実績を作る必要がある。だから初日から、大リーグのピッチャーに遭遇するようなことは決して無い。しかし、トレーダーはいきなり最初から大リーガーと対戦することになる。素人トレーダーには、ヘッジファンドのような膨大な資金、情報網、それにコンピュータを駆使した高度な売買手法が無い。こんな不利な条件で始めるのだから、とにかく徹底的にトレード知識で武装することが肝心だ。

トレードのヒントとして、スティーンバーガー氏はこんな統計を付け加えている。二人のトレーダーがいたとしよう。両者ともスパイダー(SPY)を買うのだが、一人はSPYが上がっている時だけにマーケット終了間際に買い、他者は下がったいる時だけに大引けで買う。どちらが良い成績を残しただろうか?

正解は下がった日に買う方法だ。1996年から今日までを見ると、上がった日に買うと一回平均の利益は0.01%、そして下がった日に買う場合は、一回平均の利益は0.20%だ。とかくマーケットが上がると買いたくなるが、実際は下げた日に買った方が効果的なわけだ。

責任感の無い会社役員たち

アメリカは不景気に陥るのだろうか?それとも、一時的に軽い経済低迷を経験するだけだろうか?こんな議論が盛んなだけに、株主たちは企業の金使いに敏感になった。具体的に言えば、サラリー以外に支払われる、トップ経営陣への特典が問題になっている。マイケル・ブラッシュ氏(経済コラムニスト)が指摘する、いくつかの実例を見てみよう。

・ナイキは退職が決まった経営責任者に、自宅の改造費として57万9649ドル(約6700万円)を支払う。

・イーベイは、もし新最高財務責任者が自宅を思ったとおりの値段で売ることができない場合、新最高財務責任者に70万ドル(約8100万円)を支払うことを約束した。

・スターウッド・ホテルは、新社長に就任一年目の飛行機代として150万ドル(約1億7300万円)を支払うことを決めた。スターウッド・ホテルの本社はニューヨークにあるのだが、新社長は家族をカリフォルニアから引っ越させる気はない。だから、頻繁に自宅へ帰りたい、というわけだ。

「ひどい無駄使いです。いったい役員たちは何を考えているのでしょうか?こんな金を使っても、企業収益向上には全く結びつきません」、と米労働総同盟産業別組合(AFL CIO)のダニエル・ペドロティ氏は言う。ファンド会社社長の、ドン・ホッジェス氏はこう語る。「問題は責任感の無い会社役員たちです。まるで役員に就任することを、高級カントリークラブに入会するのとカン違いしているようです。役員は株主の利益を優先させなければいけません。しかし、役員が最も気を配っているのはトップ経営陣のことだけです。」

実績のある経営陣なら、それなりの高給を払っても株主は文句を言わない。単に有能な人材を確保する、という理由だけで、会社資金が湯水のように使われることを、株主は疑問視しているわけだ。「この状況を解決するのは簡単です」、とチャック・コリンズ氏(企業監視グループ代表)は言う。「役員会議でトップ経営陣のサラリーや特典が決定されていますが、それを廃止して、それらを株主総会で決定すれば良いのです。」

上記したように、ナイキは退職が決まった経営責任者に、自宅の改造費として57万9649ドル(約6700万円)を支払う。しかし、話はここで終わらない。マイケル・ブラッシュ氏の説明を記そう。「この経営責任者は、ウィリアム・ペレズ氏のことです。1月に辞めましたが、就任期間は1年ほどでした。

ペレズ氏の退職条件は破格です。支払われた金額は550万ドル(約6億3690万円)、そして1100万ドル(約12億7300万円)に相当するナイキ株です。さらに、ナイキはペレズ氏の自宅を300万ドル(約3億4700万円)で引きとっただけでなく、57万9649ドルの自宅改造費までペレズ氏に返したのです。」呆れた話だ。

爆発するノートブック

「ノートブック型コンピュータ爆発」、まるでテロ活動を思わせるような見出しだ。次の行に進むと、古いトラックが破壊されたことが説明されている。コンシューマー・アフェアズ・ドット・コムの報道によれば、最近デル・コンピュータのノートブック型コンピュータ爆発が所々で起きている。

なんとなくユーモラスな出来事だから、テレビでは面白半分に取り扱われているが、先ず破壊されたトラックの写真を見てほしい。

0815tr.gif

トラックの持ち主はトマス・フォークランさん。爆発が起きたのは、先月、友人とネバダ州のミード湖での釣りを終え、帰りのしたくをしている時だった。フォークランさんは、デルInspironノートブックを助手席の上においた。友人のロッド・リドルさんは、何かが弾けるような音を聞いたというが、無視して帰りのしたくを進めた。

しばらくすると、二人は嫌な臭いに気がついた。「手を止めて顔を上げると、助手席の窓から炎が吹き出ているのが見えました」、とフォークランさんは言う。「助手席の方ではなく、私は運転席側に駆け寄りました。トラックの中は、完全に火に包まれていました。悪いことに、グローブ・ボックスの中には三箱の弾丸も入っています。」

古いトラック、と上記したが、ファークランさんにとっては単なるトラックではない。1966年型のフォードF250、「ジェニー」という名前までつけた、フォークランさんが可愛がっている年代物トラックだ。

「トラックの後ろにいましたが、とにかく凄まじい炎でした。もうトラックはダメだ、と思った時です。ピストルを乱射するような音が聞こえ始めました」、とリドルさんは言う。もちろん、乱射の音は過熱した弾丸が原因だ。二人は事がおさまるまで、地面に伏せた。

言うまでもなく、フォークランさんの例は極端な一例だが、6月21日付けのInquirer誌にも、デルのノートブック爆発が報道されている。事件が発生したのは日本だ。目撃者の話によれば、会議に使われていたノートブックが小さな爆発を数回起こし、テーブルクロスを燃やした。火は数分以内に消された。

爆発の原因はバッテリーだ。8月15日、デルは400万個におよぶバッテリーのリコールを発表した。デルにニュートラルの格付けをしたJPモルガンのアナリスト、ビル・ショップ氏はこう語る。「今回のリコールは、デルの収益に大きな影響はありません。しかし、現在苦しいデルですから、悪いタイミングでのリコールです。」デルは木曜に決算発表を控えている。22セントの一株利益が予測されているが、さてどんな結果が出るだろうか?

免税店は被害を受けた?

イギリスでのテロリスト逮捕ニュースは、空港の警備体制を一段と厳重にさせる結果となった。夏休みの観光シーズンに起きたテロ未遂だけに、アメリカの主要国際空港は大混雑だ。

報道されたように、テロリストは液体の爆発物利用を計画していたから、水気のある物は、手荷物として機内へ持ち込むことが禁止された。だから、ウイスキー、香水、うがい液、日焼けローションなどは全て持ち込むことができない。手荷物検査がされる場所には、大きなゴミ箱が設置され、シャネルなどの高級香水が投げ捨てられている場面が放映されていた。

もちろん、手荷物として機内に持ち込めないだけだから、あらかじめスーツケースに入れてチェックインしていまえば問題は無いらしい。しかし、ここで気になるのが免税店だ。アメリカからのおみやげとして、ワインやウイスキーを買う人が多い。ご存知のように免税店で買い物をすると、品物は飛行機の登場ゲートで受け取る仕組みになっている。液体の持ち込みは完全に禁止された今日、いったい免税店はどうしているのだろうか?

260億ドルにおよぶ免税店業界の扱う品物は、アルコール飲料、タバコ、香水だけに限らず衣料品や家電製品も取り扱っている。国際免税店協会のマイケル・ペイン氏はこう語る。「たしかに免税店は多くの品物を販売していますが、何と言ってもアルコール類と香水が人気商品です。全売上の半分以上は、アルコールと香水です。今回の手荷物規制で、ブラジルとアルゼンチンの免税店は、アルコールと香水の販売を中止しました。」もう一つ付け加えれば、テロリストが逮捕されたイギリスでは、ロンドンのヒースロー空港でアルコールや香水の販売が規制されただけでなく、英国航空はそれらの機内販売も中止した。

それでは、アメリカの免税店はどうだろうか?ロンドンやブラジルを見習っているだろうか?答えは「ノー」だ。極端な言い方をすれば、米国の免税店は、手荷物規制を完全に無視している。手荷物検査で、好きなウイスキーを没収された人でも、免税店で購入すれば以前と同様に搭乗口で受け取って、機内へ持ち込むことができる。CNNニュースのインタビューで、国土安全保障局のアン・デービス氏は、「登場口で品物を受け取るのではなく、機内で受け取るようにするべきだ」、と述べている。

国際免税店協会のペイン氏も、デービス氏の意見に賛成だが、さらにこんな提案もしている。「旅行客は出発する空港の免税店を利用するのではなく、降機する空港の免税店で買い物をするようにすれば、テロ問題を防ぐことができると思います。あるいは出発する空港で買い物をして、実際の品物受け取りは降機地の免税店で行うことも可能だと思います。」

連銀の大きな間違い

連銀も認めるように、インフレの危険性は依然として存在する。しかし、減速する米国経済がインフレを抑制する結果になる。これが金利据え置きになった要点だ。「この考え方は大きな間違いです」、とトレンド・マクロリティクス社で投資アドバイザーを務める、ドナルド・ラスキン氏は言う。さっそく氏の意見を紹介しよう。

「12カ月以内に、アメリカは不景気に陥ることでしょう。短期的に見た場合、株はラリーの展開が予測されますが、最終的には現在のレベル以下に下がります。

連邦公開市場委員会後に発表された声明の中には、たしかに経済の「和らぎ」、という表現が使われています。経済が冷えこみ方向ならインフレ問題も解消する、と連銀は結論していますが、危険な考え方だと思います。どちらにしても、連銀は判断の間違いに気がつき、執拗な金利引き上げ政策に戻ります。そして、米国経済は単に和らぐだけでなく、正真正銘の不景気に転落します。

先ず指摘したいのは、現在のアメリカに顕著な経済の冷えこみは見えません。三年前から私は、米国経済に対して強気な意見を発表してきましたが、今もこの考え方に変わりはありません。アメリカ経済は、いたって健康な状態です。

多くの人たちは、低金利が米国経済を発展させた、と強調しますが、低金利政策が経済を上昇させた主要原因ではありません。二年間近い金利引き上げがあった、今日の金利を見てください。決して高レベルではありません。80年代と90年代を振り返れば、現在の水準は平均以下です。

経済成長速度が和らいでいるから、インフレは解消する、という連銀の見方ですが、現実には経済は減速していないのですから、インフレ問題は無くなりません。十歩ゆずって、たしかに米国経済が冷え込んでいるとしましょう。歴史を見る限り、経済成長速度とインフレには何の関係もありません。

インフレが起きるのは、有り余る金が、ごく限られた物を追い回すためです。経済の浮き沈みが決定できることではありません。思い出してください。数年間続いた低金利政策時代、連銀は膨大な量の紙幣を印刷しています。印刷じたいは悪いことではありません。問題は、印刷を止める時期があまりにも遅すぎました。これでは17回連続で利上げをしても、大したインフレ退治にはなりません。

先日発表されたGDP(国内総生産)には、経済の冷えこみが見える、と多くのアナリストが言います。実際は正反対です。第1四半期の個人消費は+2.1%でしたが、第2四半期は+2.9%に上がっています。現に、第1四半期の数値に対して「高すぎる」、というのが連銀の見解でしたから、+2.9%は極めて強いレベルです。

連銀は18回連続の利上げを実行して、金利を5.5%に引き上げるべきでした。そして次回を最後の利上げにすれば、インフレ問題がうまく解決したと思います。」

初めて買った株は兄の勤める会社だった、とトレード・ザ・ムーブ・ドット・コムのカーナン氏は言う。「1990年代のことでした。初戦からいきなり40%以上の儲けでしたから、完全に株の虜になってしまいました。」もちろん、今日までの道のりは全てが順調だったわけではない。カーナン氏の話を続けよう。

「株を始めたのは90年代ですが、フルタイムのトレーダーになったのは2000年です。トレーダーになる前は、大手会計会社でビジネス・コンサルタントをしていました。

株をやるほとんどの人たちが経験することですが、私も株を始めて間もない頃、大きな損を出しました。ある株アドバイザーなのですが、この銘柄は超割安だから爆発的な伸びが期待できる、と自信たっぷりに言うのです。よし、勝負してやろう、私は決意しました。

しかし、株価はなかなか上がらず下がる一方です。心配になりましたが、アドバイザーはますます株が割安になった、と自信に揺らぎはありません。私は下がるたびに買い増しを実行しました。気がついた時は株価は1ドルを割り、具体的な金額は言えませんが、大きな穴を口座に開けてしまいました。このアドバイザーのおかげで、株投資では絶対に人を頼ってはいけないことを学びました。自分流のやり方を身につけない限り、株での成功はありえません。」

大手会計会社で、ビジネス・コンサルタントの経歴があるカーナン氏だから、株アドバイザーの言うことを鵜呑みしていたわけではない。自ら決算報告書などを調べて、明らかに株が割安であることを確認した上での買いだ。違った言い方をすれば、カーナン氏はファンダメンタルズを使って株を売買していたことになる。

氏の成功は、ファンダメンタルズ重視をやめてテクニカル分析に的をしぼったことだ。「新製品の開発や売上動向などの情報は、全ての投資者が平等に入手できるものではありません。しかし、テクニカル分析に必要な情報は、だれでも簡単に入手できます。ですから、株で利益を上げる秘訣は適切なテクニカル分析をすることです。」

一口にテクニカル分析と言っても、トレンドライン、サポートレベル、レジスタンスレベル、移動平均線などと利用されるものは多数ある。カーナン氏のお気に入りは何だろうか?「トレードはシンプルなやり方が一番です。フィボナッチは分かりにくい、と言う人たちもいますが、私にとってフィボナッチほど重要なものはありません。」

フィボナッチは複雑に説明しようと思えば、いくらでも難しくすることができる。カーナン氏が利用しているのは、主要値戻しレベルの38.2%、50%、そして61.8%だ。「自分流のやり方を身につける」、と氏が言っているように、どんなにフィボナッチが優れていても、あなたの肌に合わなければ何の意味もない。

どうやったら自分に合った方法が見つかるだろうか?これはカーナン氏も実行したことだが、先ず徹底的にありとあらゆるテクニカル分析の本を読むことだ。特に、「スイングトレード入門 (アラン・ファーレイ著)」は氏に大きな影響を与えたようだ。

神は六日間で天地万物を創造し、七日目に休んだ。しかし、連銀が金利引き上げを停止するには二年の月日がかかった、と経済コラムニストのキャロリン・バウム氏は言う。この停止は単なる一時停止なのか、それとも金利引き上げ政策が完全に終了したのかは、現時点ではだれにも分からない。

次々に発表される、大手証券会社のアナリストたちの意見を読んでみると、考え方は二つに分かれる。先ず、ゴールドマンサックスのジャン・ハットズィウス氏が述べる、「金利引き上げサイクルは終わり、連銀は来年早々に金利を引き下げる」、というもの。そして、ベアスターンズのエコノミストが主張する、「今回の停止は単なる一休みで、連銀は早ければ10月に再び利上げを実行する」、という見方だ。

どちらにしても、18回連続の金利引き上げが無かったことは事実だから、私たちの投資姿勢も変える必要があるだろうか?そんな質問に対する回答が、いくつかビジネスウィーク誌に載っているから、さっそく見てみよう。

マーケットは不透明感を嫌う。米国経済は減速の兆しが見え、先日発表された声明の中でも、「インフレ圧力は減退するだろう」、と連銀は述べている。しかし、この景気冷え込みが、どの程度企業収益に悪影響をもたらすかがハッキリしない。連銀はインフレに対して楽観的な見方を示しているが、連銀の見解が間違っていることも考えられる。

インフレ、米国経済、それに企業収益の三つに、明確な見通しがたたない今日、投資者は攻撃的な投資をするのではなく、守りを固めることが重要だ。「警戒姿勢を崩してはいけません。強い向かい風ですから、マーケットは方向性の無い横ばい状態が続くことでしょう」、とスタンダード・アンド・プアーズ社のアレック・ヤング氏は言う。

どのセクターに投資するべきだろうか?中東問題、数日前はBPアラスカ油田閉鎖、ということで引き続きエネルギー・セクターが狙えるようだ。エクソン、シェブロンなどの大オイル会社は既に高値をつけているが、まだ割安なオイル銘柄がある、とファースト・アメリカン・ファンズのデービッド・チャルプニック氏は言う。「アパッチ・オイル(APA)はまだ比較的割安です。現在オイル価格は76ドルほどですが、アパッチはオイルが45ドルに下がっても大丈夫です。」

7月31日、ワコビア証券のアナリストがヘルスケアセクターに関する好レポートを発表したように、ヘルスケア銘柄は保守的投資の代表だ。エリックバーデン氏(ファンド・マネージャー)によれば、コベントリー・ヘルスケア(CVH)、ユナイテッド・ヘルスグループ(UNH)、それにエトナ(AET)が魅力的だと言う。個別銘柄に投資したくなければ、ヘルスケアの上場投信、ヘルスケア・スパイダー(XLV)を買うのも一案だ。

夏本番、しかし北米の小売業者はクリスマスの心配をしている。理由は中国だ。当てにしていた低労働コストが見込めなくなり、おもちゃ、服、靴などを安く入手するのが難しくなってしまった。カナダの玩具メーカー、スピンマスターのハロルド・チズィック氏はこう語る。「第4四半期の需要は予想以上に伸びそうなので、クリスマスシーズン用の玩具増産を検討していました。しかし、中国の人件費問題が浮上し、増産計画を中止する可能性が出てきました。」

特に影響を受けるのは、スピンマスターのような玩具メーカーだ。統計よれば、全世界の90%以上の玩具が中国で製造され、更に53%の履き物、50%の衣料品、そして16%の家電製品も中国で生産されている。正に世界の工場だ。

11月、12月は玩具業界にとって、最も重要な季節だ。年間に製造される70%以上の玩具がこの二カ月間に小売店に発送され、おもちゃの年間売上の50%以上が11月、12月に集中している。それだけに、中国の労働コスト問題は、玩具業界に大きな打撃を与えそうだ。

中国政府の発表によれば、玩具工場や家電製品工場での人件費が上がっているのは、頼りにしていた出稼ぎ労働者数の減少が原因だという。

衣料品と履き物業界を代表する、アパレル・アンド・フットウェア協会のネイト・ハーマン氏は、「中国の労働コスト上昇が顕著になった今日、アメリカの企業は製品の製造を中国からベトナムに移し始めています」、と述べている。もちろん、全ての業者がベトナムに工場を確保できているわけではないから、多くの玩具業者はクリスマスシーズンがギリギリになるまで、中国の工場への注文を遅らせるようだ。しかし、そうなると中国側からの発送も時間どおりにいかなくなることが考えられるから、どちらにしても北米の玩具業者は頭が痛い。

なぜ出稼ぎ労働者不足が中国で起きているのだろうか?ニューヨークのチャイナ・レーバー・ウォッチ社のレポートによれば、第一の原因は中国政府が農業政策を改善したためだ。そのため農業に従事する労働者の賃金が上がり、農村に住む労働者たちは、玩具工場などに出稼ぎに行く必要がなくなった。もう一つの理由は、1970年代の終わり頃から実施された出産数の制限だ。子どもは一人だけ、という中国政府の指示で、明らかにに若い世代の労働者が減っている。そのため2015年に労働者数がピークになり、それ以後は減少基調に入ることが予想されている。

安い労働コストを求めて、外国企業は中国から本格的に撤退して、ベトナムに進出するのだろうか?「米国企業は、インフラ投資、技術投資といった形で、膨大な資金を中国に投入しました。そう簡単に撤退することはありえません」、とビジネス・コンサルタントのヘリエット・ワイス氏は言う。

アラスカの油田操業を一時停止させたBPは、なぜパイプラインの腐食に、もっと早く気がつかなかったのだろうか?老朽化するパイプラインは、BPだけの問題ではなく、他社にも広がっているのだろうか?「こんなことが起きるのは、以前から分かりきっていたことです」、と言うのは天然資源保護協議会のチャールズ・クルセン氏だ。「オイル会社は、設備投資を怠っていましたから、今回の事故は当然な結果です。」

オッペンハイマー社のアナリスト、ファデル・ガイト氏もクルセン氏に同意する。「オイル会社が、インフラ投資に消極的なことは有名です。パイプラインだけに限らず、他のプラットフォームや油田機器を十分に管理していくだけの必要経費を欠いているのが現状です。BPはアラスカで、もう30年以上も操業しています。パイプラインが古くなり、腐食するのは自然な成り行きです。これは、他のオイル会社への警報になったはずです。」

ここまで事態がひどくなるまで、何の処置もしなかったBPに対して、オイル業者は驚きの声をあげている。「最後にパイプラインを検査したのは、いつだったのでしょう?こんなに遅くなるまで、腐食を発見できなかったのが不思議です」、とエネルギー・コンサルタントのジョン・ヘロルド氏は言う。

BPのスポークスマン、スコット・ディーン氏の説明はこうだ。「我が社は2006年度だけでも、アラスカ油田のパイプラインに7100万ドルの資金を設備費として投入している。これは、2005年度の金額を15%上回るものであり、2001年度を80%も上回っている。」

ディーン氏によれば、BPが最後にパイプラインの内部を、スマート・ピッグと呼ばれるセンサーを使って検査したのは1992年のことだ。通常、スマート・ピッグは地下を走るパイプラインに使用され、アラスカのように地上を走るパイプラインに利用されるのはめずらしいことだという。パイプラインの外面は頻繁に点検されていたようだから、今回の事故はBPにとっても驚きであった、とディーン氏は言う。

最終的に、BPは16マイル(約26キロ)におよぶパイプラインを取り替えるが、工事に必要な日数や経費に関しては、何の発表もされていない。エネルギー情報局の推定によると、BPのアラスカ操業がフル回転に復帰できるのは、2007年の2月頃になるようだ。

なぜオイル会社は積極的に設備投資をしないのだろうか?ガイト氏の説明を記そう。「以前のように、オイル価格が低い時は、オイル会社は設備投資をしたくありません。資本収益率が悪くなるからです。今日のように、オイルが高くても設備投資はできません。こんなにオイルが値上がっているのですから、一時操業を止めて設備の点検などしたら、大きな利益を逃がしてしまいます。」

ベン・スタイン、と聞いただけでは首をかしげる人もいる。しかし、コマーシャルに出演している氏だから、アメリカ人にはお馴染みの顔だ。コマーシャルに出ているからといっても、スタイン氏の本業はタレントではない。どことなく気難しそうな雰囲気が示すように、氏の肩書きは弁護士、そして経済学者だ。

先々週、経済番組の討論会に参加したスタイン氏は、その時の模様をこう語っている。「今、株を買うべきか、が司会者の発した質問でした。悪化する中東情勢、そして不透明な金利政策などを理由に、出席者のほぼ全員が株に対して消極的な意見を述べました。特に、中東での戦争が更にエスカレートして、オイルの輸送網に支障を与えるような事態が起きれば、オイルは大幅な上昇になりますから、株はますます買えない、というわけです。

もっともらしい意見ですが、私にはどうもシックリしません。株を買う良いタイミングは、株価が安い時に買うことです。売り手がマーケットに殺到し、皆が狼狽している時こそが、絶好の買いチャンスです。恐怖に包まれた投資者は、株価の正当評価額などを気にしているヒマはありません。とにかく持ち株を投げることだけに専念していますから、株価は超格安レベルに下落します。

イスラエル上空を、ミサイルが飛んでいてはB社の株は買えない、と人々は言います。たしかに投資心理は変わりましたが、B社の内容には変化がありません。どちらにしても、遅かれ早かれ、投資心理が好転する日がやって来ます。永久な停戦はありえないにしても、中東紛争も停止する日がやって来ます。そして、投資者も株式市場に戻って来ます。しかし、そのような状況下では、割安な株を手に入れることは無理です。

もちろん、高いところで株を買っても儲けることはできますが、割安株を買ったほうが有利な投資になることは言うまでもありません。次のことを、ぜひ覚えておいてください。「大砲の音は買い、勝利のトランペットは売り。」

マネー・マネージャーの、フィル・デムス氏はこんな統計を発表しています。第二次大戦後、米国が体験した不景気時の安値で株を買ったとすると、株は10年以内に倍になっています。逆に、好景気のピークで株を買ったとすると、10年で得られる利益は75%程度です。

いや今回は違う。中東での紛争は世界大戦に広がり、人類は滅亡する、と主張する人もいます。もちろん、人類が滅亡してしまえば株など無意味ですが、そんな極端な状況が訪れないかぎり、「大砲の音は買い、勝利のトランペットは売り」が鉄則です。」

スタイン氏は、更にこう付け加える。「もしあなたがアドバイザーなら、相場環境の悪い今こそ積極的に、株の買いを大衆に勧めるべきです。」

8月、9月はハリケーンの季節だ。去年はカトリーナのおかげで、石油精製所の集中している、メキシコ湾岸州が大きな被害を受けた。おかげで全米のガソリン価格が値上がり、1リットル90円以下は昔の話になってしまった。そこで注目されるハリケーン銘柄だが、何を買ったら良いだろうか?もちろん、アナリストは既にあれこれと銘柄をあげている。しかし、いつもアナリストの話を聞くだけでは面白くない。

証券会社やファンド会社に勤務していなくても、個人投資者の中には、ユニークなアイディアを持っている人たちがいる。ブログでハリケーン銘柄を紹介している人も多いから、アナリストは幼稚なことが言えなくなった。経済コラムニストのジェームズ・アルツシャー氏は、ヤサー・アンワー氏のブログを土曜のコラムで取り上げた。

アンワー氏はカナダに在住する、ヨーク大学の学生だ。2004年から株を始め、メリルリンチで実務研修、そしてカナダの証券ライセンスも取得した。ブログで、アンワー氏は五つのハリケーン銘柄をあげている。アルツシャー氏は、「excellent(素晴らしい)」と形容したくらいだから読んでみる価値がありそうだ。

さて、肝心な五つの銘柄を見てみよう。全て小型株だ。先ず、ホーム・ソリューションズ(HSOA)、ゴールドフィールド(GV)、グローバル・インダストリーズ(GLBL)、インペリアル・インダストリーズ(IPII)、そしてブーツ&クーツ(WEL)だ。

ここで話題を今週の焦点に移そう。なんと言っても、火曜のFOMC(連邦公開市場委員会)が目玉だ。金利引き上げ無し、を期待するマーケット関係者が多いから、今回のFOMCは特に注目されている。世界最大の債券ファンドマネージャー、ビル・グロス氏も金利引き上げ無しを主張する一人だ。

グロス氏によれば、米国住宅市場の冷えこみが更に加速するようなら、連銀は2007年早々、金利を引き下げる可能性がある。これまでの歴史を振り返ると、連銀は金利を上げ過ぎる傾向があり、一番最後の利上げから6カ月後に金利引下げが始まる。

金利引き上げ一時停止論が主流になった一原因は、金曜に発表された雇用統計(7月分)だ。非農業部門新規採用者数は+11万3000と発表され、アナリストが予想していた14万2000に満たなかった。失業率も4.6%から4.8%に上がり、米国経済の冷えこみが見えている。

金利引き上げが終了すれば、マーケットは上昇基調に入るだろうか?投資戦略家の、バリー・ハイマン氏はこう語っている。「金利問題の心配が無くなるのは、投資者にとって嬉しいことです。しかし、マーケットの下げ基調は変わらないことでしょう。一転反落した金曜のマーケットが示すように、投資者たちは経済減速の現実に直面することでしょう。」

最悪なパターンでの損?

株式投資で成功するには、二つの鉄則がある。第一のルールは、決して資金を減らさないこと。第二のルールは、第一のルールを決して忘れないこと。これは、大投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉だ。もちろん、損を絶対に出すな、と言っているわけではない。問題は、どんないきさつで損を出したかだ。

「株式市場には、損がつきものですから、投資者は損を100%防ぐことはできません。正しいやり方で失敗するのは仕方ありません。しかし、最悪なパターンでの損は絶対に出してはいけません」、と語るのはフール・ドット・コムのデービッド・マイザー氏だ。最悪なパターンでの損?氏の話を続けよう。

「資金を減らすな、とバフェット氏は強調していますが、これは短期的な口座残高の浮き沈みを指摘した言葉ではありません。最近のマーケットは、変動率が高いですから、とうぜん口座残高も影響されます。バフェット氏が言っているのは、株式投資参加不可能になるような、大きな穴を口座に開けるな、ということです。

こんな統計があります。個人投資家は、小型株(時価総額16億ドル未満)に集まる傾向があります。テレビやニュースレターで、頻繁に小型銘柄が推奨されますから、当たり前の結果かもしれません。ノースウエスタン大学の調べによれば、人気番組「マッド・マネー」で買いが推薦される小型株は、なんと12日間で6.6%の下落です。言うまでもありませんが、こんな買い推奨に2度3度と投資していると、損は急ピッチに増大していきます。

「マッド・マネー」を非難しているのではありません。人気番組で株が紹介されると、翌日買いが殺到し、株は一日で割高になってしまいます。これでは急落するのが目に見えています。先ずバフェット氏のように、銘柄を徹底的に分析しなければいけません。テレビで見た、という衝動的な買いでは、肝心な分析が全くされていません。これでは、株価が割高になっても気がつくことはないでしょう。

資金を減らさないためには、三つのことを実行する必要があります。1、銘柄を徹底的に調べること。2、割高になったら直ぐ売ること。3、割安になるまで買わないこと。」

ここで思い出すのが、木曜に起きたスターバックスの下げだ。アメリカは、異常な暑さに襲われている。冷たい飲み物が飛ぶように売れているから、スターバックスのコールド・ドリンク好売上を期待しての投資者が増えていた。しかし、会社からの発表は正反対だった。

スターバックスの売上7月分は、たった4%の伸びで、予想された6%から7%増に満たなかった。会社側は、こんな説明をした。「売上不振は、この猛暑です。フラップチーノ系のコールド・ドリンクにお客さんが集まりましたが、コールド・ドリンクはコーヒーより時間がかかります。そのため店内に長い列ができ、急いでいる人が店を避けたようです。」

欧州中央銀行、そしてイングランド銀行による金利引き上げ。金曜は米国雇用統計の発表、更に来週はFOMC(連邦公開市場委員会)もあるから投資者は心配だ。こんな不安定な状況で、投資アドバイザーは、どんなことを推薦しているのだろうか。ビジネスウィーク誌に掲載された、クリス・ジョンソン氏(シェイファーズ・インベストメント・リサーチ)の意見を少し見てみよう。

7月末、インフレに関するバーナンキ連銀議長のコメント、それに第2四半期のGDPはマーケット上昇材料になった。これで8月に利上げは無い、と判断した人が増えたためだが、それでは8月に利上げが実施されたらどうなるだろうか?失望売りを呼ぶのではないだろうか?まだマーケットは20月移動平均線に支えられているが、失望売りが強烈なら、ブレイクダウンの可能性がある。

全体的に、投資者たちは悲観的だ。ミューチュアルファンドへの資金流入量、株オプションのプット・コール・レシオ、ボラティリティ指数などからも分かるように、大衆は株式市場に対して悲観的な見方をしている。ファンダメンタル的に買える材料も乏しいから、連銀による金利引き上げ政策終了が大きな鍵になると思う。

決算シーズンもほぼ終わり、65%に近い企業は予想以上の利益を発表した。今年後半の見通しも思ったほど悪くないが、投資者の目から見ればガッカリな内容だ。それだけに、来週のFOMCから、はっきりとした連銀の金利政策が読めれば、投資者はマーケットに戻ってくるだろう。もちろん、たとえFOMCが好材料になっても、多くのレジスタンスレベルが控えているから、一本調子の上げはありえない。

現在のマーケットが不安定だからといって、買えるものが全く無いわけではない。人気の無いセクターだから、買いを推薦するアナリストが少ないが、電話会社や電力会社には魅力的な銘柄がある。例えば、電話ならAT&T(T)とベル・サウス(BLS)の二社、そして電力ならアメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)だ。

テクノロジー銘柄は買えるだろうか?かなり下げた銘柄も目につくが、大型テクノロジー銘柄は、まだ買い時期が来ていない。たとえば、95%のアナリストが買い推奨をマイクロソフトに出していたが、その数値は70%台に下がっている。しかし、まだ高すぎる。半数以上のアナリストが、ホールド(中立的立場)以下の格付けをしないかぎり、完全に売り物は出尽くしたとは言えない。

マイクロソフト以外でも、インテル、シスコ、デル、ヤフー、グーグルなどは空売り残が少なすぎる。これらの銘柄に、現在ある空売りを全て買い戻すには二日とかからない。買い候補になる銘柄には、空売り買い戻しに、通常6日から7日の日数が必要だ。

注:「マーケットは20月移動平均線に支えられているが」、とジョンソン氏が指摘するマーケットはS&P500指数のこと。しかし、既にナスダック指数は20月移動平均線を割っているため、氏はS&P指数のブレイクダウンを心配している。

1999年に戻ってみよう。インターネット銘柄の棒上げで、口座残高は予想以上に膨れ上がっている。この辺が潮時だろう。いくらなんでも、この上げ方は普通ではない。明日売ることにしよう、と思案していると、テレビからはアナリストの強気論が流れてくる。おまけに、自分の持つ株にも机を叩きながらの買い推奨だ。もうしばらく売りは控えよう。それより、少し買い足したほうが良さそうだ。

投資の秘訣は安く買って高く売ることだ、という言い古された言葉がある。なぜ、それを実行するのは難しいのだろうか?根本的な理由は、安く買い高く売るには、大衆との逆行動が要求されるからだ。安いものには悪材料が多いから、買うにはかなりの勇気がいる。高い株のほとんどは人気銘柄だから、どうしても誘惑に負けて買ってしまう。

冷静になることが重要なのだが、感情を支配するのは容易なことではない。そこで、心理学者が教える、感情の犠牲にならない方法を、二つ紹介しよう。

90年代末のインターネット銘柄人気でも分かるように、興奮した投資者たちは、現在ホットなものだけに手を出すようになる。言い方を換えれば、バックミラーばかりに気を配って、全く前を見ない投資者になってしまう。

今日の人気株が人気株になったのは、過去の成績が優秀だったからだ。1年間で3倍、などと大々的に報道されると、どうしても買いたくなるが、報道されているのは以前の華々しい結果にすぎない。しかし、人気株やホットな投資を追うようになると、投資に肝心な将来性を忘れてしまう。多くの投資者は、最近の成績が優れたミューチュアルファンドばかりに投資するが、これでは高値をつかむだけで、決して良い結果が得られない。それでは、どうしたらよいのか?

ファンドの説明書にも明記されているが、過去の好成績は今後も続く保証は無い、という事実を思い出そう。そして、資料を集めて、投資の将来性を冷静に判断しよう。ファイナンシャル・アドバイザーのマーガレット・スターナー氏も述べているが、去年のスターは今年もスターになる確率は低い。

個人投資家、特に男性に顕著に見られるのが自信過剰だ。ブラッド・バーバー氏と、テランス・オデアン氏がまとめたレポートによれば、自信過剰は頻繁すぎる売買につながる。現に、男性の取引回数は女性投資家を45%上回り、当然の結果として手数料が利益を2.45%減らしている。

男性投資家は、自信過剰を指摘されることを好まないが、バーバー氏はこんな提案をする。「長期的な視野で、頻繁な取引が口座に与える悪影響を理解することが先決です。1万ドルで始めた投資に、毎年7%の利益があったとしましょう。典型的な女性投資家なら、30年後には4万6400ドルになっています。しかし、売買の激しい男性の場合は3万8000ドルにしかなりません。」

マーケットがパッとしなくても、買収ニュースなら、株価は大きく跳ね上がる。どうやったら、買収ターゲットになりそうな銘柄を見つけることができるだろうか?投資アドバイザー、ハリー・ドマッシュ氏の方法を紹介しよう。

最近、二つの買収ニュースが大々的に報道されたが、この二つは同質な買収ではない。アドバンスト・マイクロ・デバイシーズ(AMD)が、ATIテクノロジーズ(ATYT)を買ったのは、あくまでも戦略的な理由だ。ATIの製品が手に入れば、AMDはライバルのインテルに、更に接近することができる。

投資グループが、病院を経営するHCAインク(HCA)を買ったのは、将来的に期待できる大きな利益だ。全く戦略的な買収ではないが、私たちが探し当てたいのはHCAのような銘柄だ。いったいHCAには、どのような魅力的要素が隠れていたのだろうか?言い換えれば、買収される銘柄には、どんな共通点が存在するのだろうか?

先ず指摘したいのは、企業サイズだ。IBMのような大企業では、投資グループによる買収など考えられない。最近買収された企業の時価総額を見てみると、ほとんどが10億ドルから50億ドルの間だ。

投資グループは、できるだけ短い期間で利益を上げることが目的だから、現在収益状況の悪い企業を避ける。ここで問題になるのが、株主資本利益率(ROE)だ。この数値がプラスなら企業が儲かっている証拠になり、急成長中の企業なら、ROEが15以上の高水準に達することもある。買収される企業には、少なくとも5以上のROEがある。

ROEが良くても、キャッシュフローが悪くては話にならない。そこで投資者は、株価キャッシュフロー倍率が20以下の企業に焦点を合わせることが大切だ。

株価にも十分注意を払わなくてはいけない。人気株は超割高レベルにあるのが普通だから、どんなに好企業でも、連日高値更新では買収ターゲットにならない。投資グループも、割安株を手に入れたいから、株価は最近5年間の高値から30%以上の下げていること、しかし高値から60%以上下げているものは無視する傾向がある。

更に、株価売上高倍率は2以下、アナリストによる格付け平均はホールド(買いと売りの真ん中)以上、向こう5年間の一株利益成長率は年間10%以上、しかし15%以下、そして負債株主資本比率は0.5以下であることが好ましい。

それでは、上記条件を満たす銘柄を記そう。

Applebee's International (APPB), Avnet (AVT), BJ's Wholesale Club (BJ),
Borders Group (BGP), Brunswick Corp (BC), Dollar General (DG),
Family Dollar Stores (FDO), Henry Schein (HSIC), Hewitt Associates (HEW),
J.B. hunt Transport Services (JBHT), JLG Industries (JLG), Komag (KOMG),

(注:これらの銘柄は買い推奨ではなく、投資の一アイディアであることをお断りしておきたい。)

ビジネス・トリビア

トリビアを辞書で調べると、くだらないこと、瑣末なこと、雑学的な事柄や知識、という説明がされている。知っていても役にたたない事かもしれないが、けっこうトリビアには面白いものがある。そんなわけで、ビジネス・ウィーク誌に載ったビジネス・トリビア・クイズをいくつか紹介しよう。(正解は一番下)

1、優良企業100リストに入る企業で、初めて有名人をスポークスマンとして採用したのはどこ?

A、ナイキ
B、コカコーラ
C、ティファニー
D、アメリカン・エクスプレス

2、トップ企業100リストの中で、最も古いブランド名はどれ?

A、コカコーラ
B、マルボロ
C、Moet & Chandon ドンペリニョン
D、JPモルガン

3、トップ10企業の中で、一番新しいブランド名はどれ?

A、ノキア
B、マイクロソフト
C、インテル
D、IBM

4、商標価値が、ここ1年間で最も大きく上昇したのはどれ?

A、グーグル
B、スターバックス
C、イーベイ
D、モトローラ

5、ここ一年間で、商標価値が一番下がったのはどの会社?

A、ギャップ
B、フォード・モーター
C、コダック
D、ハインズ

6、最近6年間で、最も成長率の高かった企業はどれ?

A、アップル・コンピュータ
B、ノキア
C、サムスン
D、インテル

7、アメリカ以外の国で、最も多くのブランド名を生み出した国はどこ?

A、フランス
B、日本
C、スイス
D、ドイツ

8、1906年に発売された商品には、会社創立者のサインが入っていた。それはどの会社?

A、コカコーラ
B、ケロッグ
C、リグリー
D、ディズニー

9、ブランド商品は、どの製品に多い?

A、コンピュータ・ハードウェア
B、自動車
C、ダイヤモンドなどの高級品
D、金融商品

10、ピアノで有名なスタインウェイだが、スタインウェイが重要な役割を果たしたのはどの企業?

A、モトローラ
B、メルセデス・ベンツ
C、Moet & Chandon ドンペリニョン
D、ソニー

解答

1、Bのコカコーラ。
1893年、ミュージック・ホールで活躍していた、ヒルダ・クラーク氏がスポークスマンに選ばれた。

2、CのMoet & Chandon ドンペリニョン。
創立されたのは1743年。

3、Bのマクロソフト。
ビル・ゲイツ氏が、マイクロソフトを始めたのは1975年。インテルが創立したのは、その7年前だ。

4、Aのグーグル。商標価値は46%の上昇だ。2位はスターバックスの+20%、3位イーベイとモトローラが、それぞれ18%の伸びだ。

5、Aのギャップ。商標価値は22%の下落だ。2位はフォード・モーターの16%減、3位コダック12%減、そして9%減のハインズへと続く。

6、Cのサムスン。総合成長率は154%だ。

7、Dのドイツ。日本は2位。

8、Bのケロッグ社。コーンフレークの箱には創立者、W.Kケロッグ氏のサインが印刷されていた。

9、Bの自動車。最近仲間入りしたのはレクサスだ。

10、Bのメルセデス・ベンツ。1888年、スタインウェイは米国での販売権を買い、ニューヨークのロング・アイランドに、ダイムラー・モーターを創立した。

本マガジンは客観的情報の提供を目的としており、投資等の勧誘または推奨を目的としたものではありません。各種情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負いかねます。

発行:株式会社ブレイクスキャン 監修:株式会社デイトレードネット