もしオイルが、1バレル100ドルになったら、世界経済は大打撃を受けるだろうか?そんな記事が、ビジネス・ウィーク誌に載っている。現在、約75ドル近辺で取引されているから、あと30%ほどの上げで100ドルだ。さっそく記事の要点を見てみよう。
現在の高い原油価格は、世界経済に大した影響を及ぼしていない。1970年代と1980年代のオイル危機の時とは、全く様子が違っている。しかし、オイルが100ドルに達した場合はどうだろうか?心理的な影響は言うまでもないが、もっとも経済的に被害を受けるのはアジア、そしてもっとも被害が少ないのはヨーロッパだ。
エスカレートする中東での紛争、それに8月、9月はアメリカのハリケーン・シーズンだから、1バレル100ドルの可能性を否定することはできない。こんなシナリオが考えられる。中東での紛争が更に広がり、ペルシャ湾からの供給量が減少するなら、オイルは間違いなく100ドルを突破する。
「メキシコ湾岸州に、去年のような大型ハリケーンが訪れるなら、原油は100ドルを記録するかもしれません」、とPFCエネルギーのアナリスト、サアド・ラヒム氏は言う。「BP、シェブロン、エクソンなどの製油所がメキシコ湾岸州にありますから、ハリケーンによる被害は需給関係を崩すことになるでしょう。」
1970年代と、1980年代のオイル危機は生産者側が問題になったが、今日のオイル高は生産者ではなく需要者側が作り上げたものだ。特に新興市場、中国を筆頭にして、アジア諸国でのオイル消費量は飛躍的に伸びている。輸出を主体にした経済で、アジア国民の収入が上がり、トヨタやGMの車が道にあふれるようになった。車があっても良い道路が無くては話にならない。政府は積極的に高速道路の建設に乗り出しただけでなく、高層ビル、電力発電所、と次々に新プロジェクトを展開している。もちろん、これら全てにはオイルが必要だ。
原油が100ドルになると、現在1ガロン(3.785リットル)あたり3ドルのガソリンは、5ドルに跳ね上がることが予測される。そうなれば、既に冷えこみの見られる米国経済は更に減速し、特に大手小売のウォルマートやターゲットの売上が下がることだろう。
海外のオイルに依存するアジアが、100ドルオイルで最も悪影響を受ける、と上記したが、全てのアジア諸国が同様な被害を被るわけではない。いまだにエネルギー消費の非効率的な工場が多い、タイ、マレーシア、そしてインドが大きな打撃を受けそうだ。
しかし、設備投資に力を入れてきた日本には、さほど影響は見れないことだろう。ほぼ100%のオイルを輸入する日本は、過去30年間、工場の近代化に巨大な金額を投入し、エネルギーの消費率の良さは、たぶん日本が世界で一番だ。
世界で最もエネルギーの無駄使いが多い中国は、こう語っている。「オイル高は中国経済を減速させる可能性があるが、それは現在の中国が直面している最も重要な問題ではない。今、中国が懸念しているのは、強すぎる経済をオーバーヒートさせないことだ。」