海外援助は、貧困を撲滅することができるだろうか?撲滅が大袈裟なら、海外援助は本当に貧困救済に役立っているのだろうか?世界には、飢えや伝染病に苦しむ人たちが大勢いる。お腹が異様に飛び出た、骨と皮だけになった子どもたちが、砂漠をさまよう姿は痛ましい。
海外援助に熱心なスターが多い。U2のリード・シンガー、ボノ氏はABCニュースのインタビューで、こう語っている。「西側政府が一致協力すれば、世界から貧困を一掃することができます。私たちには十分な財源とノウハウがありますから、どんなに極端な貧困問題も解決できるはずです。」
女優のアンジェリーナ・ジョリー氏も、ボノ氏の意見に賛成だ。「あともう少し援助資金を増やすだけで、状況は目覚しく好転すると思います。」
「まったく馬鹿らしい理由で、毎日2万人の子どもたちが餓死しているのです。どうして私たちは、こんな悲惨な状況を直視しないのでしょうか?」、と訴えるのは「The End of Poverty 貧困の終わり」の著者、ジェフリー・サックス氏だ。氏は単に問題を提起するだけでなく、実際に西側諸国に積極的に呼びかけ、500億ドルにのぼるアフリカへの救済資金獲得に成功している。
アンジェリーナ・ジョリー氏も、サックス氏が作ったアフリカのモデル・ビレッジを訪れて、貧困問題解決の可能性を強く感じたようだ。
しかし、ジャーナリストのジューン・アルンガ氏は、「たしかにサックス氏の努力は称賛にあたいするが、長期的な解決策にならない」、と言う。なぜだろうか?アルンガ氏の説明を聞いてみよう。
「私はケニアで生まれ育ちました。アフリカを救おう!、とアメリカ政府は多額な支援金を送ってきますが、私にはそれが不思議でたまりません。ケニアだけではなく、アフリカは泥棒政府の集まりです。援助金は、本当に必要な人々に届くことはありません。政府の役人たちは海外からの援助金を盗み、スイスの銀行に隠してしまいます。もちろん、その金は豪華なマンション、一般庶民には触れることもできない高級車、そしてファーストクラスでの贅沢な旅行に使われるのです。」
ABCニュースによれば、アフリカ政府の役人たちが盗んでいるのは金だけでない。飢餓に苦しむ人々に行くはずの、食料品にも手をつけているのだ。
ケニアは、海外からの援助は要らない、とインター・リージョン・エコノミック・ネットワークのジェームズ・シクワティ氏は強調する。「人々は必死に働いています。服、靴、家具、とあらゆる物を売ってやりくりしていますが、いつまでたっても貧困から抜け出すことができません。その大きな原因の一つは、政府は個人による土地所有を認めないからです。」
50年前、東アジアの国々もアフリカのように貧しかった。しかし、今日の東アジアは繁栄している。東アジアも海外から救済資金を受け取ったが、東アジアには経済促進に役立つ法律が設定された。一部の階級だけが恩恵を受ける特権社会が崩れないかぎり、アフリカの貧困に終わりは来ないことだろう。