ダウジョーンズ社の調べによれば、過去3回のワールドカップを振り返ると、優勝国の株式市場は、平均で10%の上昇があった。反対に決勝戦で敗れた国家の株式市場は、平均で25%という大きな下落があった。イタリアには嬉しい話だが、フランスには嫌なニュースだ。
しかし、こんな意見がある。「イタリアの勝利は、世界経済にプラス材料だ。」なぜだろうか?先ず、ルーベン・ヴァン・リーウェン氏(ABNアムロ社)の見方から紹介しよう。「ワールドカップ優勝が、国民に与える好影響を無視することはできません。間違いなく、イタリア人に大きな自信と希望をもたらせたはずです。まさかイタリアが勝つとは、全く思ってもいませんでしたが、これは世界経済にとって最高のシナリオです。」イタリア人が狂喜するのは誰にでも分かる。たぶん、リーウェン氏の指摘するように、イタリア経済が刺激されるかもしれない。だが、それが世界経済にどう関係するのだろう?
2002年、日本で開催されたワールドカップで優勝したのはブラジルだった。「優勝以来、ブラジルの株式市場は260%も上昇しています。ブラジルに敗れたドイツの株式市場は、今日まで51%の伸びですから、ひじょうにおだやかな成長速度です」、とゴールドマン・サックスのジム・オニール氏は言う。
2002年以来、イタリアの株式市場も、ドイツと同様に今日まで51%の上げを記録している。優勝という快挙があったにもかかわらず、月曜のイタリア市場は、たった0.4%の上昇を示し、今年全体では+2.5%という状況だ。一方、負けたフランスの月曜は+0.6%、そして今年ここまでの成績は5.7%増だから、イタリアを上回っている。
ここで一つ付け加えておこう。月曜のイタリア市場は+0.4%だったが、買いを集めた、ある銘柄がある。答えは、サッカーチームのユベントスF.Cだ。一日で6.9%の上げだから、投資家はサーカー銘柄に焦点を合わせたわけだ。
本題の質問に戻ろう。なぜイタリアの勝利は世界経済に好都合なのか?リーウェン氏の説明を、もう一度聞いてみよう。「イタリアはヨーロッパの中で、主要経済国家の一つに数えられていますが、「ヨーロッパの病人」というあだ名でも呼ばれています。2005年の国内総生産は、0.1%増という惨めな成長です。
イタリアがここまで弱ったのは、柔軟性を欠く労働市場が問題になり、世界での競争についていけなくなったためです。ワールドカップでの勝利は、イタリア人の自信をよみがえらせ、政府は積極的に経済復興に向けて動きだすことでしょう。企業の設備投資も進むことになりそうですから、労働市場問題も改善されていくでしょう。」
ヨーロッパの病人イタリアが健康になれば、個人所得や個人消費も上がる。ひょっとしたら、多大な貿易赤字を抱えるアメリカが、イタリアの回復を一番期待しているのかもしれない。