July 2006 のトップ・ストーリー一覧

暑い、とにかく今年の夏は異常に暑い。クーラーは飛ぶように売れ、さきほどニュースでは最後の一台を争う客の姿を報道していた。「全米が猛暑に襲われています。オフィスや家庭で、いっせいにクーラーを使いますから、間違いなくエネルギー消費量が大きく増えます。また、この熱波は農作物や家畜に被害を与える可能性があります」、と商品市場アナリストの、ジム・ワイコフ氏は言う。

ファースト・エナキャスト社のベン・スミス氏によれば、約85%の確率で、気温が上がると天然ガスの値段も上がる。「特に最近数年間の様子を見ると、天然ガスが発電用に使われる量が増大していますから、極端に暑い日が続くと、天然ガス市場は直接影響を受けます」、とスミス氏は付け加える。

アメリカで使われる20%の電気は、天然ガスによって生産されている。マネー・アンド・マーケッツ・ドット・コムの、ショーン・ブロドリック氏はこんなことを言う。「皆が同時にクーラーのスイッチを入れますから、送電網にかかる負担は膨大なものです。現に、ニューヨークやカリフォルニアでは、あちこちで停電が発生しています。」

米国の酷暑を喜んでいるのは、天然ガス投機者たちだ。7月初旬、天然ガスは5ドル47セントを記録し、2年ぶりの安値をつけた。しかし、異常な暑さが買い材料になって、先週木曜、値段は7ドル25セントまで急ピッチに回復した。ここが天井だろうか?「8月もこの暑さが続くことが、既に予報されています」、とベン・スミス氏は言う。

DTN社のアナリスト、ダリン・ニューソム氏は、「むこう30日から45日間で、天然ガスは8ドル50セント付近まで上がる可能性があります」、と述べている。

天然ガスの次に注目されるのがトウモロコシだ。インフォーマ・エコノミクスが発表した先週のレポートによれば、異常な熱波で、トウモロコシの質が四週間連続で下がっている。トウモロコシの質は、パーセンテージを使って、毎週農務省から報告されるが、一月前は高品質の71%、先々週は62%、そして先週は59%だ。

まだトウモロコシの減産は予想されていないが、DTNのニューソム氏はこんな見方をしている。「8月11日まで、農務省はトウモロコシの生産量予想を発表しません。しかし、異常な暑さによる被害を無視することはできません。トウモロコシは、数週間前に既にラリーを展開しましたが、中西部に降った雨で値段が下がりました。このように、トウモロコシ市場は天候に非常に敏感です。最悪の事態は既に去ったかもしれませんが、この暑さが続く限り、トウモロコシは以前の高値レベルに戻ることが考えられます。」

更に、あまりの暑さで家畜の食欲が減り、体重の減少も報道されている。現在、ライブキャトル(生牛)の先物は88セントで取引されているが、ニューソム氏は92セントから95セントを予測している。

(上記は、ダウジョーンズ社からの報道を要約したものです。)

もしオイルが、1バレル100ドルになったら、世界経済は大打撃を受けるだろうか?そんな記事が、ビジネス・ウィーク誌に載っている。現在、約75ドル近辺で取引されているから、あと30%ほどの上げで100ドルだ。さっそく記事の要点を見てみよう。

現在の高い原油価格は、世界経済に大した影響を及ぼしていない。1970年代と1980年代のオイル危機の時とは、全く様子が違っている。しかし、オイルが100ドルに達した場合はどうだろうか?心理的な影響は言うまでもないが、もっとも経済的に被害を受けるのはアジア、そしてもっとも被害が少ないのはヨーロッパだ。

エスカレートする中東での紛争、それに8月、9月はアメリカのハリケーン・シーズンだから、1バレル100ドルの可能性を否定することはできない。こんなシナリオが考えられる。中東での紛争が更に広がり、ペルシャ湾からの供給量が減少するなら、オイルは間違いなく100ドルを突破する。

「メキシコ湾岸州に、去年のような大型ハリケーンが訪れるなら、原油は100ドルを記録するかもしれません」、とPFCエネルギーのアナリスト、サアド・ラヒム氏は言う。「BP、シェブロン、エクソンなどの製油所がメキシコ湾岸州にありますから、ハリケーンによる被害は需給関係を崩すことになるでしょう。」

1970年代と、1980年代のオイル危機は生産者側が問題になったが、今日のオイル高は生産者ではなく需要者側が作り上げたものだ。特に新興市場、中国を筆頭にして、アジア諸国でのオイル消費量は飛躍的に伸びている。輸出を主体にした経済で、アジア国民の収入が上がり、トヨタやGMの車が道にあふれるようになった。車があっても良い道路が無くては話にならない。政府は積極的に高速道路の建設に乗り出しただけでなく、高層ビル、電力発電所、と次々に新プロジェクトを展開している。もちろん、これら全てにはオイルが必要だ。

原油が100ドルになると、現在1ガロン(3.785リットル)あたり3ドルのガソリンは、5ドルに跳ね上がることが予測される。そうなれば、既に冷えこみの見られる米国経済は更に減速し、特に大手小売のウォルマートやターゲットの売上が下がることだろう。

海外のオイルに依存するアジアが、100ドルオイルで最も悪影響を受ける、と上記したが、全てのアジア諸国が同様な被害を被るわけではない。いまだにエネルギー消費の非効率的な工場が多い、タイ、マレーシア、そしてインドが大きな打撃を受けそうだ。

しかし、設備投資に力を入れてきた日本には、さほど影響は見れないことだろう。ほぼ100%のオイルを輸入する日本は、過去30年間、工場の近代化に巨大な金額を投入し、エネルギーの消費率の良さは、たぶん日本が世界で一番だ。

世界で最もエネルギーの無駄使いが多い中国は、こう語っている。「オイル高は中国経済を減速させる可能性があるが、それは現在の中国が直面している最も重要な問題ではない。今、中国が懸念しているのは、強すぎる経済をオーバーヒートさせないことだ。」

韓国経済には一貫性がある、と経済コラムニストのウィリアム・ぺセック氏は言う。いったい、どんな一貫性だろうか?氏の話の要点を紹介しよう。

政府の役人には不本意なことだと思うが、韓国経済は期待を裏切り続けている。最近の実例を見てみよう。第1四半期、韓国の国内総生産は+1.2%を記録したが、第2四半期は、たったの+0.8%だった。これは2005年以来、最も弱い成長率だ。

勤勉な国民、高い生活水準、それに数々の難問を乗り越えてきた歴史を考慮すれば、韓国はもっと大きな成長を遂げていてもおかしくない。しかし、上昇するクルードオイル価格、そして世界的に上げ始めた短期金利が、韓国経済を不安定なものにしている。

2005年、54%の上昇を展開した株式市場も、今年は7%のマイナスだ。北朝鮮の核問題やミサイルを下げ要因に挙げる人もいるが、韓国政府は経済の活性化に苦戦しているから、投資者は積極的になれない。

韓国が、直ぐに不況やスタグフレーションに陥る可能性は先ず無い。しかし、アジア諸国の経済成長減速の前線に立つ韓国は注目だ。リーマン・ブラザーズのエコノミスト、ロブ・スバラマン氏はこう述べている。「アジア経済は、成長率下降の周期に入ったようだ。先日発表された韓国からのデータも証拠の一つだ。」

3月31日付けの資料によれば、中国は10%、そしてインドは8.4%のペースで経済が成長している。15年間の低迷を経験した日本も、安定した経済成長だ。全体的に見れば、アジア経済は、9年前の経済危機からは信じられないほどの成長を遂げている。

たしかに強いアジア経済だが、三つの問題がある。筆頭がオイルだ。今年に入って、クルードオイルは27%跳ね上がっている。韓国のように、ほぼ100%オイルを輸入しなければならない国にとって、オイル高は物価高を引き起こす。今までアジアの国々はオイル高に耐えてきたが、いよいよ物価高がアジア全域に広がりそうだ。

金利上昇も、経済に向かい風になるだろう。アメリカ、ドイツ、そして日本での金利引き上げ政策は、消費者信頼感を下げるはずだ。たとえば韓国だが、上昇するオイル価格と金利が原因になり、消費者信頼感は10カ月ぶりの低レベルに落ち込んでいる。

そして、三つめは米国消費者だ。中国、インド、そして日本は米国に大量な製品を輸出している。まだ現実化していないが、米国経済が冷え込んでしまえば、言うまでもなくアジア経済に悪影響だ。今アジアは、重要な局面に直面している。言い方を換えれば、経済の底力を実証する時が来たようだ。

米国不動産は、完全に買い手市場になった、とトップ・セールスマンたちがCNNのインタビューに答えている。住宅市場の低迷が顕著になり、とにかく家が以前のように売れない。実際の数値を挙げよう。現在アメリカには、去年の同時期を39%も上回る、370万件の住宅が売りに出されている。専門家の見方によれば、これを全部売り切るには、6.8カ月の時間が必要だ。(去年は平均で4.4カ月だった。)

「今年ここまでを振り返ってみると、株式市場で目立つのは、商業用不動産に投資をしているファンドです」、と経済コラムニストのティム・ミドルトン氏は言う。「REIT(リート)と呼ばれる、不動産投資信託が好調です。平均で12.8%の利益があり、二桁の上昇率は最近7年間で6回あります。」一般住宅は冴えないが、商業用物件は、まだ伸びるのだろうか?ミドルトン氏の話を続けよう。

「不動産投資信託も、そろそろ危ない、という声を聞くようになりましたが、今日のような環境でも、不動産を完全に諦めることはありません。連銀の金利政策が、アメリカを不景気にしてしまう、と心配する人たちが大勢います。T・ロウ・プライスのファンド・マネージャー、デービッド・リー氏によれば、たとえ金利が上昇しても、商業用不動産は十分な成長が見込めるようです。

金利引き上げ=不況、と直ぐ思ってしまいがちですが、ここ10年、20年を振り返ると、深刻な不景気は無くなり期間も短くなっています。それだけ、連銀の対処方法が適切になっている、ということができると思います。

もう一つ指摘したいのは、株式市場が不調なため、既に現金化された大量な資金の存在です。不動産投資信託のニュースレターを発行しているバリー・ビノカー氏の調べによると、1000億ドルを超える資金が、商業用不動産に流れ込む可能性があるようです。」

大きく分けると、不動産投資信託にはオフィスビルや倉庫、工場などに投資するもの、小売店ビルに投資するもの、そしてアパートやマンションに投資するタイプがある。好調なのがオフィスビルとアパートだ。今年すでに20%以上の利益が出ている。逆に不調なのは小売店ビルで、今年ここまでの利益は3%から10%ほどだ。

主な不動産投資信託を記そう。

Vanguard REIT Index (VGSIX):過去5年間の平均年間利益は18.9%。
iShares Cohen & Steers Realty Majors (ICF):過去5年間の年間平均利益は20.5%。
T. Rowe Price Real Estate (TRREX) :過去5年間の年間平均利益は21.1%。
Cohen & Steers Realty Shares (CSRSX):過去5年間の年間平均利益は20.7%。
Phoenix Real Estate Securities (PHRAX) :過去5年間の平均年間利益は20.6%。








金買いを勧める不動産専門家

金が26年ぶりの高値、739ドル20セントを記録したのは5月12日のことだった。その後を見てみると、6月14日、569ドル90セント、7月17日、663ドル70セント、そして7月24日が615ドル10セント、と激しい動きを展開している。

ロバート・キヨサキ氏、といえば不動産で有名だが、こんなことを語っている。「私は今、金市場に買い手として参加しています。ここが底値でしょうか?まだ下がるかもしれません。しかし、500ドル台に下落するような事態が起きれば、迷わずに更に買い足すまでです。」

不動産の専門家が、なぜ金投資を推薦するのだろうか。ここで、キヨサキ氏は面白い話を持ち出している。さっそく聞いてみよう。

「1996年のことですが、私は金鉱採掘会社を中国に創立し、銀鉱採掘会社を南米で始めました。最終的に、両社ともカナダの証券取引所に上場されました。会社を始めた理由は、金と銀は安すぎる、と思ったからです。当時、金は1オンス当たり275ドル、銀は1オンス約5ドルでした。もちろん、私の見方が間違っていたら、会社は倒産したことでしょう。

私は、金と銀に無謀な賭けをしたのではありません。勝算はありました。1996年、原油は1バレル10ドルでした。これも、あまりにも安い値段です。また、ドルが極端に強かったですから、もし原油が上昇しドルが下がるなら、私は金と銀が上がることを直感しました。

今日の情勢を見てください。膨大な貿易赤字を抱えるアメリカ、いまだに続くイラクでの戦争、不安定なドル、そして上昇するオイル、と金銀買い材料ばかりです。

現在の状況は、1996年より悪い状態です。ドルの需要が減っているのですが、連銀はドルの供給量を増やしているようです。ご存知のように、低需要を無視して供給量を増大させると、その商品の価値は下がります。もし連銀が、本当にドルを下げたくないなら、バーナンキ議長は金利を真のインフレ率以上に引き上げる必要があります。

このまま連銀がドルの供給を増やし続けると、インフレは悪化し、ドルは大きく下落すると思います。だからと言って、金利引き上げ政策の継続は、アメリカ経済を弱らせ、不況を引き起こすことになるでしょう。もちろん、金利引き上げ継続は、ドルの下げにブレーキをかけることになりますから、金銀には悪材料です。しかし、ドルを救うことができても、高金利が経済に良いわけがありませんから、株式市場は低迷することになります。」

歴史的に見ると、オイルを1バレル買うには、2.2グラムの金があれば十分だったが、今日1バレル買うには、3.4グラムが必要になる、とキヨサキ氏は言う。「これは、オイルが高すぎるのでしょうか、それとも金が安すぎるのでしょうか?私にとって、答えは明確です。金が安すぎるのです。」

上場投信のススメ

Exchange Traded Funds、略してETFs、上場投信のことだ。以前はS&P500に投資するスパイダー(SPY)、それにダウ銘柄に投資するダイヤモンド(DIA)くらいしか聞かなかったが、今やアメリカン証券取引所に上場されているETFs数は160を超えた。

なぜ上場投信は長期投資者だけに限らず、デイトレーダーにも人気があるのだろうか?長期投資の主役は、いまだにミューチュアルファンドだ。しかし、ミューチュアルファンドは高いものだと申し込みの際に5%以上の手数料、そして毎年管理手数料もかかる。管理費は直接口座から引き落とされることはないが、ファンドに集まった運用資金から引かれるから、その分だけ配当金が減るわけだ。

ミューチュアルファンドに加入すると、投資金額に相当する株数が、ファンド会社から投資者に発行される。もし解約者が無く、申し込みだけだと、浮動株数は増え続けることになる。上場投信は株と同様に売買できる。上場されているわけだから、発行株数が変化することはない。手数料も、オンライン証券会社を利用すれば、ミューチュアルファンドより、ずっと割安だ。

デイトレーダーが上場投信を選ぶ理由は何だろうか?例えば上記したスパイダー(SPY)だが、以前ならS&P500指数の取引をしたければ、先物用口座が必要だった。しかし、スパイダーの登場で、証券会社の口座だけで指数取引が可能になった。

デイトレード用の銘柄には、一日の出来高が大切な要素になる。その点、スパイダーの一日平均出来高は9300万株もあるから、人気株グーグルの690万株を大きく上回っている。ダウ指数に連動するダイヤモンド(DIA)も900万株ほどあるから、デイトレードに支障は無い。

数日間株を保持する、スイングトレーダーにも上場投信は人気だ。オーバーナイトで株を持つスイングトレーダーにとって、格下げなどで起きるギャップダウンは悪夢だ。現に7月19日、収益関連ニュースでヤフーは2割近い下げで寄り付いた。

個別銘柄では、ヤフーのような極端な被害を起こす可能性があるが、スパイダーやダイヤモンドのように指数に連動する銘柄には、寄付きでの暴落は大きなテロ事件でも起きない限りありえない。それに個別銘柄は、アナリストによる格上げ格下げが頻繁だが、スパイダーを格上げ格下げするアナリストはいない。

上場投信には、160以上の種類があるから、きっと好きなものが見つかるはずだ。短期国債に興味があるならiShares Lehman 1-3 Year Treasury Bond Fund (SHY)、新興市場ならiShares MSCI Emerging Markets (EEM)、ナスダックのバイオテクノロジーならiShares Nasdaq Biotechnology(IBB)、日本株ならiShares MSCI-Pacific Ex-Japan (EPP)、とにかく豊富に揃っている。

詳しい上場投信の種類は、アメリカン証券取引所のホームページへ行って、左側のETFsのところをクリックしてほしい。ETFsの下にはHOLDRSがある。これも上場投信と全く同様だ。半導体セクターを追っている人なら、HOLDRSの人気銘柄、セミコンダクタHOLDRS(SMH)を利用すると良いだろう。

「強気!?本気ですか?どこのマーケットの話ですか?」、という反応ならまだ良い。下手に強気論など吐こうものなら、変人扱いされるだけだ。悲観論が浸透してくると、好材料が無視され、投資者は悪いニュースだけに耳を傾ける。おまけにテレビでは、イスラエルによるレバノン爆撃が繰り返し報道され、第三次世界大戦の可能性まで討論されている。

こんな状況だから、インターネット株バブルが崩壊した6年前と現在を比較する人が多い。たしかに、JDSユニフェーズは140ドルから2ドル、そしてルーセントは50ドルから2ドルまで下落したように、多数の銘柄が叩き売られた。「血の海」、という言葉でマスコミは株式市場を表現したくらいだから、口座に大きな穴を開ける投資者が続出した。

「今、持ち株を全て売る必要はありません。大切なことは、口座を大きな被害から守ることです」、とティム・ハンソン氏(フール・ドット・コム)は強調する。少し話を聞いてみよう。

「マーケットが下げ始めると、人気株を中心に投資していた人たちが、一番大きな被害を受けます。逆にコントラリアンと呼ばれる、大衆と反対の投資をしていた人たちは、うまく下げマーケットを切り抜けています。代表的な例では、資金を減らさないことを第一にしているウォーレン・バフェット氏です。

人気株を追わないバフェット氏の投資方法は地味ですが、着実に利益を上げています。もちろん完璧に氏を真似ることは無理ですが、私たちが実行できる簡単な一ルールがあります。それは、長期間にわたって、配当金を払い続けている銘柄を狙うことです。

プロクター・アンド・ギャンブル、P&Gを先ず好例としてあげることができます。P&Gは1890年以来、ずっと配当金を払い続けています。そうです、1890年からです。1990年からではありません。P&Gといえば、退屈銘柄の筆頭のように思う人もいますが、過去15年間、毎年14.5%の利益をあげています。ですから、15年前1万ドルだった資金は、今日7万5000ドルになっています。

他には、ホーメル・フーズ(HRL)が1928年以来、そしてマクグロー・ヒル(MHP)が1937年以来、配当金を払い続けています。過去15年間の成績は、ホーメルが年利で12%、マクグロー・ヒルが年利で16%のリターンですから、S&P500指数など比較になりません。」

バブルが崩壊したのは2000年だから、ここでP&Gを月足で2000年から見てみよう。

0722pg.gif

次はホーメル・フーズ。

0722hrl.gif

そしてマクグロー・ヒル。

0722mh.gif

それでは、比較する意味で、人気株のヤフーを載せておこう。

0722yhoo.gif

弁護士を目指して、ボストン大学の法学部に入ったところまでは良かった。しかし、講義は退屈でたまらない。けっきょく数カ月で中退、という経歴を持つのはデイトレード・チーム・ドット・コムの創始者、アンディー・スワン氏だ。

スワン氏がトレードを始めたのは、全米がブルマーケットで沸いていた1998年だった。以前から株には興味があったから、さっそくオンライン証券会社に口座を開設した。「初めて買いのボタンをクリックした瞬間から、私はトレードの魅力にとり付かれてしまいました。トレードの回数が増えるほど、自分のトレード知識不足を痛感しましたから、ありとあらゆる本を読みました。」

デイトレードが主体の、スワン氏が読みあさった本の9割9分はテクニカル分析に関するものだ。もともと理数系に強いスワン氏、数式が頻繁に出てくるテクニカル・アナリシスは性格とうまく合ったようだ。

さて、スワン氏のトレードは順調に進んだのだろうか?「ひじょうに強いマーケットでしたから、素人でも簡単に儲けることができました。あの頃は、今のようなデイトレードの資金規制がありませんでしたから、約1年で2000ドルで始めた口座が4万8000ドルになりました。本当に夢のようなマーケットでしたが、私も大衆といっしょになって、こんな相場が永久に続くと信じていました。」

2000年、米国株式市場は頂点に達し、インターネット株を筆頭にして大幅な下落が始まる。具体的な金額は分からないが、スワン氏も多大な被害を受けた。「ダウントレンドの恐ろしさを身をもって経験しました。しかし、下げ相場で利益を上げる方法があることも学びました。たしかに苦しい経験でしたが、トレード技術を向上させることができたのです。」

損を出すのは面白くない。しかし、スワン氏はこう忠告する。「特にトレードを始めて間もない人が陥りやすいことですが、損をすぐに取り戻そうと躍起になってはいけません。誰でも、次の取引で一気に挽回しよう、と思うものですが、これが更なる損を呼びます。焦りは良い結果に結びつきません。前回のトレードに関係なく、冷静にルールに従ってトレードすることが大切です。」

スワン氏が、最も好んで利用する指標は何だろうか?「MACD、ストキャスティクス、CCI、色々な指標がありますが、これらを利用しても、他のトレーダーに大きな差をつけることはできません。ですから私は、マーケットを幾何学的な立場から分析するようにしています。」

デイトレードを志す人たちに、スワン氏はこう勧める。「先ず徹底的にペーパートレードをして、トレード技術を身につけてください。一日で大きく儲けよう、といった態度は捨ててください。口座の残高ばかりに注意を払うのではなく、トレーダーが集中しなければいけないのは株の値動きです。」

あらゆる本を読みあさったスワン氏、おすすめは「テクニカル・アナリシス・オブ・ザ・ファイナンシャル・マーケッツ」(ジョン・マーフィー著)だ。

「トレーダーは、投資者から何を学ぶことができるか?」、というコラムを見つけた。ジェームズ・ブラムリーという現役投資顧問が書いたものだが、少し中を覗いてみよう。

最も効果的なトレード方法は何か、と聞かれたら、どう答えるだろうか?人によってトレードスタイルが違うから、これが究極の手法だ、と断言できるものはない。しかし、あえて言うなら、優れたトレード方法は大衆が殺到する前に、売買シグナルを点滅させるものでなくてはいけない。

大衆という言葉を、「一般個人投資家」に置き換えると分かりやすい。トレーダーがいつも頭に入れておきたいのは、次の質問だ。「どんな事が起きたら、投資家が動くだろうか?」トレーダーと同様に、投資家が株を買う目的は利益を上げることだ。

それでは、投資家が買い銘柄を選択する場合、一番重要な要素は何だろうか?正解は収益だ。過去の収益が順調に伸びていることも大切だが、将来の見通し予想も重要だ。ご存知のように、大手証券会社のアナリストによる収益上方修正は、その銘柄に個人投資家たちを殺到させる。

企業収益に敏感な投資家の習性を、トレーダーは利用しなくてはいけない。必然的に、好決算が続く銘柄に個人投資家は集中するから、トレーダーはそれらの銘柄リストを用意すると良いだろう。

これ以外にも、ブラムリー氏はいくつかの点に触れているが、収益性に優れた銘柄リスト作成について説明しよう。

手っ取り早いのは、msn.comに行ってデラックス・ストック・スクリーナー(無料)を使って銘柄を選び出すことだ。500以上の条件が揃っているから、かなり細かく銘柄を選択することができる。いちいち自分で条件を設定するのが嫌なら、既存のスクリーナーを利用すると良いだろう。先ず、Try It Now!の下をクリックして、ページが変わったらI See The Chartをクリックしよう。

デックス・ストック・スクリーナーが分かりにくければ、もっと簡単に銘柄を選ぶ方法がある。このページを参照してほしい。Top Rated Stocks、というタイトルが示すように、ファンダメンタルやテクニカル要素を考慮して、トップクラスの株が選べるようになっている。個人投資家が参考にするのは、Overall Ratingの下にあるTop Rated 50だ。銘柄数は50だけだから、一つ一つチャートを調べても、さほど時間はかからないと思う。

msnが嫌いな人は、ヤフー・ファイナンスを使ってみよう。ここにも既存のスクリーナーがあるから、きっと気にいったチャートパターンを見つけることができるだろう。一番上の、Strong Forcasted Growthが収益性に優れた株探しには、最も適しているだろう。

買える理由を探してみよう

悪いニュースなら山ほどある。中東問題、北朝鮮のミサイル、オイル、短期金利、それに不安な企業収益、これだけあったら株は買いにくい。その他にも、下降が続く住宅市場、そして個人消費減少の兆しも見えるから、株はますます買いにくい。

周期的な理由もある。ストック・トレーダーズ・アルマナックの資料によれば、過去18年間、8月はS&P500指数にとって最悪な月だ。ダウ指数やナスダック指数にとっては最悪な月ではないが、8月は二番目に悪い月だから、どちらにしても良い話ではない。

「特に夏は、買い手に不利なマーケットです」、と言うのはレッグ・メーソンのトム・シュレーダー氏だ。「弱いマーケットですが、この状態は秋まで続くものと思われます。」

正に先週のマーケットは弱さが顕著だった。三日間でダウ指数は400ポイント近い下げだったから、強気な人でも心配になったことだろう。「短期的に見た場合ですが、マーケットは明らかに売られすぎです。小さな反発が何度か起きることでしょうが、全体的な流れは変化しないでしょう。ですから、8月、9月は下げ相場です」、とハリス・プライベート・バンクのジャック・アブリン氏もシュレーダー氏に賛成だ。

と書いてくると、「秋まで休め!」、と言っているように思われるかもしれないが、現在のような状況でも株を買っている投資者は当然いる。どんな理由で買っているのだろうか?理由のいくつかを見てみよう。

こんなオイル高では株は買えない、という投資者が多い。たしかに、インドや中国でのオイル消費量が大きく増大し、中東問題もオイル価格に悪影響だ。しかし、BPの最高経営責任者、ロード・ブラウン氏はオイル価格は現在の75ドル台から40ドル台への下落を予想している。

インフレも株を買えない理由の一つだが、ここ12カ月間で、消費者物価指数は4.1%の上昇だ。動きの激しい食品とエネルギーを除けば、上昇率はたった2.4%になり、オイル価格が安定すれば、物価指数は3%以下に下がる可能性が十分にある。

それでは、アナリストは実際にどの銘柄を推薦しているのだろうか?半導体装置の大手、アプライドマテリアルズ(AMAT)が割安だという。現在の株価収益率はかなり低いから、超格安ということらしい。

鉄道のバーリングトン・ノーザン(BNI)を推すアナリストも多い。高いオイルが、この銘柄の買い材料だ。輸送手段としてトラックと鉄道を比べると、鉄道の方が圧倒的にエネルギーコストの面で優勢だ。現に最近の四半期を見ると、バーリングトン・ノーザンの輸送量は19%増えている。

P&G(PG)やゼネラルエレクトリック(GE)も買い候補に挙げられているが、アナリストの言うことには一つの共通点がある。「マーケットの低迷が続き、魅力的な株価に達している銘柄が目立つようになった。長期投資者にとって、割安な株を拾うことのできる環境が揃いつつある。」

常識と株式市場

株価には、あらゆる情報が既に織り込まれている。だから、ニュースを聞いてから行動したのでは遅すぎる。この考え方は、1970年代前半に発表された、ユージーン・ファマ教授の「効率的市場仮説」が基盤になっている。皆さんの中にも、ファマ教授の仮説を、直接経験された方がいると思う。XYZ社の新製品が華々しく市場に登場し、アナリストも続々と買いを薦める。これなら行ける、と意気込んで買ってみるが、株価はサッパリ上がらない。それどころかズルズルと下げ始め、けっきょく安値引けになってしまう。

常識的に考えれば、新製品発表、アナリストの買い推奨なら、株価は上昇しないといけない。しかし、逆の結果になってしまうということは、アナリストは企業と組んで、個人投資家たちを罠に落とし入れようと企んでいるのだろうか?もちろん、答えは「ノー」だが、投資心理の研究で知られる、ブレット・スティーンバーガー氏は、こんなことを言う。「株式市場は、私たちの頭脳とは配線のされ方が違うのです。」配線のされ方が違う?もっと氏の説明を聞いてみよう。

「人間は誘導的、そして帰納的な思考をする傾向があります。同じ現象が何度も繰り返されると、私たちは物事の規則性に気がつきます。例をあげれば、澄み渡っていた青空に暗い雲が広がり始めると、私たちは雨を予測します。初めて暗い雲を見た時は雨を予測しませんが、これが何度も繰り返されると、暗い雲=雨という公式が私たちの頭の中に定着します。ですから、雲ひとつ無い空を見て、雨を予想する人は滅多にいません。

さて、株式市場の方ですが、人々が傘をさすとアッという間に晴天、海岸で日焼け止めローションを塗っていると、突然大雨といった有り様です。正に、極端な状況から極端な状況へと動きます。

マーケットは配線のされ方が違います。ですから常識が通用しません。男の子を持つ親なら、子どもの身長は160センチから190センチくらいまで伸びることを予想するでしょう。どちらにしても、自分の身長を50センチも上回ることは予測しないはずです。しかし、子どもの身長が株式市場のルールでコントロールされるなら、2メートル以上の身長、そして1メートル10センチにも満たない身長が頻繁に起きるのです。」

こんな話を聞くと、悪材料は買い、好材料は売り、と思ってしまうが、あるデータを紹介しよう。1989年以来、S&P500指数を三日連続で下げた後買うと、次の5日間での利益は平均週間利益を約4倍上回る。逆に、三日連続上昇後S&P500指数を買うと、次の5日間での利益は±0だ。

上げが続く時は買いが入りやすい。下げが続くと売りが殺到する。常識が通用しないマーケット、同じ状況が継続する時は、注意が必要だ。

不要な感情はなぜ起きる?

感情的になるな、冷静さを失うな。成功しているトレーダーは、感情をコントロールできる。しかし、損の多いトレーダーは感情に支配されている。よく聞く言葉だ。たしかに、頭に血が昇ると見えるものも見えなくなってしまう。ある程度の緊張感はトレードにプラスだが、極端に興奮してしまったら、トレードはうまくいかない。トレーダーを、感情的にさせる要因は何だろうか?ビッグトレンド・ドット・コム社長、プライス・ヘッドレー氏の話を聞いてみよう。

「トレード心理の専門家、マーク・ダグラス氏も指摘していますが、ほとんどのトレーダーや個人投資家は、マーケットの次の動きを予測できる、と思っていますから、どうしても「勝ち」「負け」の結果だけを重要視してしまいます。そのため、「確率のゲーム」、というトレードが持つ基本的要素を見失い、不要な感情をトレードに引き込むことになります。」

少し説明しよう。教科書に載っているようなチャートパターンが目の前に現れると、トレーダーは絶対に勝てる、と錯覚してしまう。こうなるとトレードに力が入りすぎ、まかり間違って株価が逆に動こうものなら大ショック、ということになってしまう。だからヘッドレー氏は、勝率の高いパターンだけを選んで、株は「確率のゲーム」と割り切れ、と言っているわけだ。氏の話に戻ろう。

「不要な感情は、「恐怖」「不安」といった言葉に置き換えることもできます。損を出したらどうしよう、といった損に対する恐怖が、トレーダーを襲う最も一般的な不要な感情です。誰でも損をするのは嫌です。しかし、損に対する感情が異常に強くなると、体が凍ってしまい売買が執行できなくなります。よするに、引き金を引けない、という状態です。これでは絶好の買いタイミングを逃し、既に持ち株がある場合なら、損切りが出来ずに、ズルズルといたずらに損額を増大させます。

損を出したくない、という理由だけで引き金が引けなくなるのでしょうか?真の原因は、自分のトレード手法に自信が持てないからではないでしょうか?100%勝てる手法は存在しません。あなたとプロの違いは、プロは損切りが早く、資金管理が上手いだけです。

もし、あなたも中々引き金を引けない一人なら、トレードの勝ち負けばかりに気を取られていることを理解してください。ペーパートレードから始めて、自分の計画に沿ってトレードすることを身につけてください。繰り返しますが、トレードで最も大切なのは資金管理です。損を立て続けに出しても、一回一回の損額が小さければ、トレードで生き残ることができます。」

ヘッドレー氏は、更に三つの不要な感情について触れているが、忠告することは同じだ。勝敗ばかりを気にするな。忠実に自分の計画に従ってトレードしろ。そうすれば、自然と自信も生まれてくる。

海の日ですね。皆さんは、どんな休日をお過ごしでしょうか?海と言えば自然、そして自然から環境問題を想像する方々もおられると思います。そこで、環境問題に貢献する銘柄を探していたら、ある記事を見つけました。環境とは全く関係ありませんが、二行目にはこう書かれています。「経済情報を、弾丸よりも速く提供する新サイト登場」なかなか勇ましい紹介です。さっそくアクセスしてみました。

ホームページの名前は「インスタントブル・ドット・コム」です。紹介記事を書いたのはビジネスウィーク誌で、星四つ(最高評価は星5つ)ですから、決して悪い評価ではありません。とにかく使いやすい、これ一つでほとんどの情報を得ることができる、とべた褒めする一方、情報量が多すぎる、と批判的な一文も付け加えられています。

実際にインスタントブル・ドット・コム(正式開始は7月18日)に行っていただくと分かりますが、クリック一つで、主な経済サイトや掲示板からの情報が得られる仕組みになっています。ですから、ダウジョーンズ、ロイター、APなどからのニュースだけでなく、人気ブログ、ヤフーファイナンス、そしてグーグル・ファイナンスからの情報が簡単に取得できます。

「ユニークなテクノロジーが駆使され、特別なソフトウェアをダウンロードする必要は無い。使用料金もタダ」(ビジネスウィーク誌)、ということですから、興味のある方は一度試してみてください。

次の話題はゼネラルモーターズ(GM)と、トヨタが提携する、という噂です。既にGM、ニッサン、ルノーの三社提携の可能性は報道されていますが、本当にトヨタはGMに興味があるのでしょうか?これもビジネスウィーク誌からですが、「トヨタ情報通の話によれば、トヨタはGM、ニッサン、ルノーのような形での提携は考えていない。しかし、戦略的な立場から見て魅力的な方法での提携を考慮している。」

トヨタのスポークスマン、スティーブン・カーティス氏は「単なる憶測にすぎない」、とコメントしていますが、月曜のGMの寄付きが注目されます。

もう一つ、今週の相場を大きく影響するのは、イスラエル、レバノン問題です。爆撃が続くかぎりマーケットも下げ続ける、という見方が圧倒的に多いですから、こんな状態では積極的な買い手が現れる可能性はありません。「悪化する中東情勢が、原油価格を押し上げています。しかし今のところ、オイル供給に支障はありません」、とケン・カム氏(ファンド・マネージャー)は述べています。

どちらにしても、「今週も高ボラティリティが顕著になるだろう」(スティーブン・サックス氏、ライデックス・インベストメント)、ということですから決算シーズンと重なって、荒れ模様な週になりそうです。

海外援助は、貧困を撲滅することができるだろうか?撲滅が大袈裟なら、海外援助は本当に貧困救済に役立っているのだろうか?世界には、飢えや伝染病に苦しむ人たちが大勢いる。お腹が異様に飛び出た、骨と皮だけになった子どもたちが、砂漠をさまよう姿は痛ましい。

海外援助に熱心なスターが多い。U2のリード・シンガー、ボノ氏はABCニュースのインタビューで、こう語っている。「西側政府が一致協力すれば、世界から貧困を一掃することができます。私たちには十分な財源とノウハウがありますから、どんなに極端な貧困問題も解決できるはずです。」

女優のアンジェリーナ・ジョリー氏も、ボノ氏の意見に賛成だ。「あともう少し援助資金を増やすだけで、状況は目覚しく好転すると思います。」

「まったく馬鹿らしい理由で、毎日2万人の子どもたちが餓死しているのです。どうして私たちは、こんな悲惨な状況を直視しないのでしょうか?」、と訴えるのは「The End of Poverty 貧困の終わり」の著者、ジェフリー・サックス氏だ。氏は単に問題を提起するだけでなく、実際に西側諸国に積極的に呼びかけ、500億ドルにのぼるアフリカへの救済資金獲得に成功している。

アンジェリーナ・ジョリー氏も、サックス氏が作ったアフリカのモデル・ビレッジを訪れて、貧困問題解決の可能性を強く感じたようだ。

しかし、ジャーナリストのジューン・アルンガ氏は、「たしかにサックス氏の努力は称賛にあたいするが、長期的な解決策にならない」、と言う。なぜだろうか?アルンガ氏の説明を聞いてみよう。

「私はケニアで生まれ育ちました。アフリカを救おう!、とアメリカ政府は多額な支援金を送ってきますが、私にはそれが不思議でたまりません。ケニアだけではなく、アフリカは泥棒政府の集まりです。援助金は、本当に必要な人々に届くことはありません。政府の役人たちは海外からの援助金を盗み、スイスの銀行に隠してしまいます。もちろん、その金は豪華なマンション、一般庶民には触れることもできない高級車、そしてファーストクラスでの贅沢な旅行に使われるのです。」

ABCニュースによれば、アフリカ政府の役人たちが盗んでいるのは金だけでない。飢餓に苦しむ人々に行くはずの、食料品にも手をつけているのだ。

ケニアは、海外からの援助は要らない、とインター・リージョン・エコノミック・ネットワークのジェームズ・シクワティ氏は強調する。「人々は必死に働いています。服、靴、家具、とあらゆる物を売ってやりくりしていますが、いつまでたっても貧困から抜け出すことができません。その大きな原因の一つは、政府は個人による土地所有を認めないからです。」

50年前、東アジアの国々もアフリカのように貧しかった。しかし、今日の東アジアは繁栄している。東アジアも海外から救済資金を受け取ったが、東アジアには経済促進に役立つ法律が設定された。一部の階級だけが恩恵を受ける特権社会が崩れないかぎり、アフリカの貧困に終わりは来ないことだろう。

割安株は割高?

バリュー株という言葉がある。簡単に言ってしまえば割安株のことだ。成長率、収益、資産性などを分析して正当な株価を算出し、もし現在の株価が、算出された株価を下回るようなら、割安というわけだ。

なぜバリュー株が出現するのだろうか?こんな質問を、一般のアメリカ個人投資家にすると、次のような答えが返ってくる。「バリュー株は、大きく叩き売られた株のことです。以前は人気株だったかもしれませんが、予想を裏切る決算やアナリストの悲観的なコメントで、株価が異常な水準まで落ち込んでいます。ですから、そんな株には、誰も見向きしません。」なかなか的を得た説明ではないだろうか?

割安株を狙う投資者は多い。しかし、バリュー株を専門に投資する、デルファイ・マネージメントのスコット・ブラック氏はこう語っている。「最近、割安株を見つけることが、とても難しくなっています。」決して調子が良いとは言えない今日の株式市場、特に半導体や小売銘柄の下げがひどい。これだけ売られたら割安、と思ってしまうが、どうやらそうではないらしい。

何故バリュー株が、なかなか見つからないのだろうか?USAトゥデイのマット・クランツ氏の説明を記そう。「バリュー株が本当に割安かを確かめるには、成長株と比較してみる必要があります。スタンダード・アンド・プアーズ社スモールキャップ600バリュー株指数には17.2の株価収益率(PER)があります。そして、スタンダード・アンド・プアーズ社スモールキャップ600成長株指数のPERは17.1です。ほぼ同一の株価収益率ですから、これではバリュー株に魅力がありません。

スタンダード・アンド・プアーズ社以外にも、ウィルシャー・アトラス社が割高なバリュー株を指摘しています。2000年末、大型バリュー株の株価収益率は、大型成長株の株価収益率を15.1ポイント下回っていました。今日、両者の違いはたった5.8ポイントだけですから、これではバリュー株投資家たちが積極的に動けません。」

今年の成績を見てみると、ラッセル3000バリュー株上場投信は+6.6%、そしてラッセル3000成長株上場投信はマイナス1.8%だ。この数値が意味するのは何だろうか?クランツ氏の話に戻ろう。

「割安株が買われ始めると、とうぜんの結果として株価が上がります。これは更なる買い手を集めることになり、株価の上昇が続きます。今年だけで、人気バリュー株のヒューレットパッカードは+13.7%、オフィスデポは+15.5%、そしてJCペニーは24.1%の上げです。」ようするに現在のアメリカ市場では、バリュー株が成長株化し、成長株がバリュー株化しているようだ。

皆さんが既にご存知のように、株を分析するにはファンダメンタル・アナリシスとテクニカル・アナリシスの二つがあります。どちらが優れている、劣っているということではありませんが、デイトレードにファンダメンタル・アナリシスは役にたちません。その理由を見てみましょう。

ファンダメンタル・アナリストが丹念に調べるものに、決算報告書があります。この会社は儲けているのだろうか、それとも損を出しているのだろうか?もし儲けているなら、利益は増え続けているのだろうか、それとも減少の傾向にあるのだろうか?もし損を出している場合なら、損額は増大しているのだろうか、それとも損出に減少の兆しがあるのだろうか?

ZZZという会社があったとしましょう。先回の収益減少は一時的なものであり、今期は好決算が期待できます。この情報だけで、デイトレードができるでしょうか?答えは「ノー」です。もし、あなたと同様なファンダメンタル情報を持つ人たちが、寄付きで一斉に買いを入れたらどうなるでしょうか?たぶん、ギャップアップ(窓)を起こすことになると思いますが、ここでいきなり買っていいのでしょうか?

そんな時は、PER(株価収益率)に注意を払えばよい、と言うファンダメンタリストもいます。たしかに、PERは割高割安を測るために使われますが、これもデイトレードでは役にたちません。勢いのある人気株には、平均以上のPERがありますから、割高という結論になってしまい、とうぜん対象銘柄から外されてしまいます。

野村証券のホームページで「株価収益率」を検索すると、こんな回答が出てきます。「株価と企業の収益力を比較することによって株式の投資価値を判断する際に利用される尺度である。一般的には、市場平均との比較や、その会社の過去のレンジとの比較で割高・割安を判断する場合が多い。どのくらいの株価収益率が適当かについての基準はなく、国際比較をする場合には、マクロ的な金利水準は基より、各国の税制、企業会計の慣行などを考慮する必要がある。」

興味深いのは「どのくらいの株価収益率が適当かについての基準はなく」、の部分です。アナリストたちは、よくPERを引き合いにして、「割安だから買いだ」、といった意見を述べます。しかし、現実は適当な基準は無いわけですから、絶対的なモノサシではありません。米国が急騰するインターネット株に浮かれていた90年代、アナリストはこんな事を言っていました。「インターネット株は、従来のPERを当てはめることができない。たしかに、現在のPERは高すぎるように見えるが、将来の収益を考慮すれば、現在の株価は決して割高ではない。」

「鎌田さんは、なぜアナリストによる格上げや格下げを話題にするのですか?ファンダメンタルズはトレードに不要なんでしょう?」、といったメールをよくいただきます。その通りです。トレードにファンダメンタル的な情報は必要ありません。私が興味があるのは、格上げや格下げが作り上げるチャートパターンです。

格下げはギャップダウンを起こしますが、直ぐ一転反発することがあります。ファンダメンタルズでは買えないが、テクニカル的には買えることがあるわけです。ファンダメンタル分析を馬鹿にしているわけではありません。長期投資にファンダメンタル分析を欠かすことはできません。現に、ファンダメンタルを重視したwww.fool.com、という人気サイトもあります。肝心なことは、自分に合った投資方法や、トレード方法を見つけることだと思います。

ダウジョーンズ社の調べによれば、過去3回のワールドカップを振り返ると、優勝国の株式市場は、平均で10%の上昇があった。反対に決勝戦で敗れた国家の株式市場は、平均で25%という大きな下落があった。イタリアには嬉しい話だが、フランスには嫌なニュースだ。

しかし、こんな意見がある。「イタリアの勝利は、世界経済にプラス材料だ。」なぜだろうか?先ず、ルーベン・ヴァン・リーウェン氏(ABNアムロ社)の見方から紹介しよう。「ワールドカップ優勝が、国民に与える好影響を無視することはできません。間違いなく、イタリア人に大きな自信と希望をもたらせたはずです。まさかイタリアが勝つとは、全く思ってもいませんでしたが、これは世界経済にとって最高のシナリオです。」イタリア人が狂喜するのは誰にでも分かる。たぶん、リーウェン氏の指摘するように、イタリア経済が刺激されるかもしれない。だが、それが世界経済にどう関係するのだろう?

2002年、日本で開催されたワールドカップで優勝したのはブラジルだった。「優勝以来、ブラジルの株式市場は260%も上昇しています。ブラジルに敗れたドイツの株式市場は、今日まで51%の伸びですから、ひじょうにおだやかな成長速度です」、とゴールドマン・サックスのジム・オニール氏は言う。

2002年以来、イタリアの株式市場も、ドイツと同様に今日まで51%の上げを記録している。優勝という快挙があったにもかかわらず、月曜のイタリア市場は、たった0.4%の上昇を示し、今年全体では+2.5%という状況だ。一方、負けたフランスの月曜は+0.6%、そして今年ここまでの成績は5.7%増だから、イタリアを上回っている。

ここで一つ付け加えておこう。月曜のイタリア市場は+0.4%だったが、買いを集めた、ある銘柄がある。答えは、サッカーチームのユベントスF.Cだ。一日で6.9%の上げだから、投資家はサーカー銘柄に焦点を合わせたわけだ。

本題の質問に戻ろう。なぜイタリアの勝利は世界経済に好都合なのか?リーウェン氏の説明を、もう一度聞いてみよう。「イタリアはヨーロッパの中で、主要経済国家の一つに数えられていますが、「ヨーロッパの病人」というあだ名でも呼ばれています。2005年の国内総生産は、0.1%増という惨めな成長です。

イタリアがここまで弱ったのは、柔軟性を欠く労働市場が問題になり、世界での競争についていけなくなったためです。ワールドカップでの勝利は、イタリア人の自信をよみがえらせ、政府は積極的に経済復興に向けて動きだすことでしょう。企業の設備投資も進むことになりそうですから、労働市場問題も改善されていくでしょう。」

ヨーロッパの病人イタリアが健康になれば、個人所得や個人消費も上がる。ひょっとしたら、多大な貿易赤字を抱えるアメリカが、イタリアの回復を一番期待しているのかもしれない。

週末、ゆっくりと新聞や雑誌を読む投資家が多い。面白そうな銘柄探しだけが目的ではないが、チャットルームでは、ニューヨークタイムズの記事が話題になっていた。「なぜコンピューターは、多くのファンドマネージャーが知らないことまで知っているのか?」、というのがタイトルの直訳になる。どう考えても、ファンドマネージャーを称賛しているとは思えない。報道したのはズービン・ジェルベ氏、要点を拾ってみよう。

マトリクスなどの映画で分かるように、私たち人間は人工知能によって運命を左右されることを好まない。それなら何故、大切な投資資金をコンピューターに任せるのだろうか?答えは、それが効果的だ、という現状があるからだ。

クアントファンドと呼ばれる、コンピューターが選び出した銘柄を中心に投資するミューチュアルファンドが存在する。過去3年間を見てみると、一般のファンドを上回る成績を上げ、投資者たちの関心を集めるようになった。

1985年、バンガード・グループはクアントファンドを開始した。2002年、40億ドルだった投資資金は、2005年末、200億ドルに膨れ上がっている。現在、ミューチュアルファンドが抱える総資金は9兆5000億ドルと言われるから、クアントファンドが運用する金額は微々たるものだ。しかし、バンガードの実例は人工知能を無視できないものに変えた。

クアントファンドには2種類ある。銘柄の選択から、売買までの全てをコンピューターが行うもの。もう一つは、データをコンピューターに分析させて、有望な投資銘柄リストを作る。そして、最終的な銘柄選択と売買タイミングは人間が決定する。バンガード・ストラテジック・ファンドが前者に当たり、今年の成績は+5.9%だ。後者の例としては、クアント・フォーリン・バリューファンドがあり、今年+11.1%の成績を上げている。

クアントファンドの強みは、何と言ってもスピードだ。膨大な情報量を、迅速正確に分析できるから、人間は絶対に勝つことができない。たとえば、チャールズシュワブ社は、コンピューターを駆使して、約3000銘柄のファンダメンタルズとテクニカル要素を分析して、各銘柄にAからFまでの評価付けをしている。その結果、ファンドマネージャーは評価の高い銘柄を簡単に選ぶことができるから、リスクの減少に結びつくわけだ。

コンピューターには感情が無いのもクアントファンドの良さだ。ダメなものは直ぐ損切ってくれるから、難平買いをして、大きな穴を開けるようなことは無い。それに、コンピューターは給料やボーナスも不要だからファンド会社は経費を節約できる。

もちろん、人工知能には大失敗もある。コンピューターが政治的要素を分析できなかったばかりに、大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネージメントが1998年に破綻したことを覚えている方々もいることだろう。モーニングスター社の、グレッグ・カールソン氏はこう語っている。「全自動で、どんな時代にも適用できるクアントファンドなどありえません。既に起き始めていることですが、人間が絶えず新しい情報をコンピューターにインプットしていかないと、人工知能は使いものになりません。3年前のプログラムでは、今日のマーケットで利益を上げることはできません。」

株価は決して適切に動くことは無い、と言われる。予想以上に良い決算が発表されると、株は異常なレベルまで買い煽られ、著名アナリストによる格下げは、株価を一日で半減させてしまうこともある。こんな投資者たちの行動が証明していることは、圧倒的な買いは好材料発表直後に起きやすい、という事実だ。

コントラリアンと呼ばれる、逆張り投資家がいる。人の反対を行くやり方だが、だからといって全ての悪材料で買うわけではない。コントラリアンが興味があるのはニュースそのものよりも、感情的になった大衆が作り出す値動きだ。

「逆張りを中心にしたニュースレターで、ターンアラウンド・レターがあります。成績ですが、1988年から今日までを見ると、毎年平均で14.7%の利益を上げています」、と語るのはハルバート・ファイナンシャル・ダイジェストのマーク・ハルバート氏だ。比較のために一つ記しておこう。同期間、ウィルシャー5000指数(米国に上場されている株を全て含む総合指数)は、年平均で11.8%の伸びがあった。ハルバート氏の話を続けよう。

「最近問題になっているのが、経営陣によるストックオプションの行使です。公平な行使は、現行の株価を基準にして行われなければいけませんが、報道されたように、大手企業の経営陣たちは、日付をさかのぼらせてオプションを行使していたのです。

7月号のターンアラウンド・レターも、不公平なストックオプションの行使を批判しています。しかし、エディターのジョージ・パットナム氏によれば、不正な行使は許されるべきではないが、今回のストックオプション問題は、短期的に企業イメージを傷つけるだけにすぎない、とのことです。

多くのアナリストは賛成しませんが、パットナム氏は更にこう述べています。「経営陣による、不正なストックオプション行使のニュースは、株価を大きく下落させることになった。しかしながら、コントラリアンの立場から検討すると、これは買いのチャンスだ。」

ようすに今回のスキャンダルで、極端なレベルまで売り叩かれた銘柄の中に買いチャンスがある、とパットナム氏は言っているわけですが、実際にはどの株が良いのでしょうか?パットナム氏は、まだ買い推奨を出していませんが、現在検討中の銘柄として8銘柄あげています。さっそく紹介しましょう。アポログループ(APOL)、ブロードコム(BRCM)、ホームディポ(HD)、マカフィー(MFE)、メダレックス(MEDX)、マイクロソフト(MSFT)、オープンウェイブ・システムズ(OPWV)、そしてビテッセ・セミコンダクター(VTSS)です。」

おびただしい数のニュースレターがあるが、ハルバート氏によればターンアラウンド・レター以外にAPOLを推奨するのは2紙、BRCMは1紙、HDは14紙、MFEは2紙、MEDXは1紙、MSFTは16紙、OPWVは3紙、そしてVTSSは0紙、ということだ。

40%の失敗

トレーダーなら、必ず一度や二度は悪夢のような日がある。ほとんどの人たちは、そこで挫折してしまうが、その苦しみを乗り越え、更に成長したアメリカの現役トレーダーを紹介しよう。

ジョン・エミリー氏は、カリフォルニア州に住むデイトレーダーだ。「トレードを始めて2年ほどたった、1999年の春でした。大した儲けや損も無く、とにかく何とか泳いでいる、といった状態だったと思います。ですから、ここで一発勝負してやろう、といった気持ちがあったことは確かです。」

エミリー氏、どうやら焦り気味だったようだが、話を続けよう。「私は単純なトレード方法を使っていました。チャートには20にセットした移動平均線を入れました。株価には、移動平均線に戻る習性がありますから、あまりにも大きく上に離れている時は売り、逆に極端に下に乖離している場合は買いです。

出来高もトレードには大切な要素ですから、銘柄は取引の頻繁にある、S&P500指数に属する銘柄を選びました。それからもう一つ、当時の私はファンダメンタルズ的なことにも注意を払っていました。売上や収益がしっかりした会社だけが買える、と信じていましたから、どんなに割安に見えても、ファンダメンタルズの悪い会社には手を出しませんでした。

さて、問題の1999年の春ですが、アナリストたちはこんなことを言い始めたのです。「ルーセント、ノーテル・ネットワーク、PMCシエラ、そして同業種の会社では在庫がだぶつき始めている。この状況は更に悪化することが予想されるから、売上の下降原因になるだろう。」

もちろん、私はアナリストの言葉を重要な情報として扱いました。ルーセント、ノーテル・ネットワーク、PMCシエラなどの、インターネット装置を製造する会社では在庫が増え続けている、というのですから売り材料です。当然の成り行きですが、私はルーセントやノーテルの売りチェンスを待つことにしました。

繰り返しになりますが、株価が20日移動平均線より、かなり上にあるものを売るのが私のやり方です。1999年4月、ついにルーセントの空売りチャンスが訪れました。株価は大きく20日移動平均線から乖離して、明らかに割高レベルです。買われ過ぎ、と判断した私は先ず48ドル近辺で空売りました。思ったように直ぐ下げなかったので、マーケット終了間際に更に空売りを入れました。

翌日です。ルーセントは、1株を2株に分割するストック・スプリットを発表しました。分割と聞いただけで買い材料になった頃ですから、もちろんルーセントには買いが殺到しました。ルーセントは在庫問題がある!私は更に空売り株数を増やしました。

そしてその翌日、口座にある空売り株数を見て、私は本当に怖くなりました。いままで、こんなに大きく空売ったことなどありません。相変わらず株価は上げています。恐怖はパニックに変わりました。完全に耐え切れなくなり、私は成り行きで全株買い戻しました。口座資金は40%減、膨大な投資資金が消え去りました。」

往々にしてあることだが、ひにくなことにエミリー氏が買い戻した直後、株は下げ始めたという。もう少し我慢できれば利益になった、というからいっそう気分が悪くなってしまう。この大失敗で氏が学んだのは、リスク管理の重要性だ。

世界の中央銀行として知られるスイスの国際決済銀行は、最近出された年次報告書の中で、世界的なスタグフレーションの可能性を警告している。景気沈滞下でのインフレがスタグフレーションだが、本当にそんな心配があるのだろうか?

インフレ退治に躍起な連銀は、既に17回連続で短期金利を引き上げた。アナリストやエコノミストは、口を揃えてこんなことを言う。「連銀自身、いつ金利引き上げをストップさせるべきかが分かっていません。たぶん、アメリカ経済冷えこみが顕著になるまで、金利を上げ続けることでしょう。それだけではありません。ヨーロッパやアジアにもインフレ懸念がありますから、各中央銀行も連銀と同様に、経済下向きの確認ができるまで金利を上げることでしょう。」

「ケインズの経済学では、下向きな経済状況で起きるインフレ、ようするにスタグフレーションを説明することができません」、と経済コラムニストのジム・ジューバック氏は言う。ケインズの経済学によれば、需要が供給を大きく上回ると物価が上昇し、その結果労働者の賃金も上がる。賃金が上がれば、企業は値上げを実施するから、それが更なるインフレの原因になる。金利引き上げ政策は、需要の減少を引き起こすから、理論的にはインフレを抑制することができる。しかし1970年代、アメリカはスタグフレーションを現実に経験した。ジューバック氏の話に戻ろう。

「1973年から1975年にかけて、アメリカの実質国内総生産(GDP)は減りました。もう少し期間を長くして、1973年から1977年で見ると、実質GDPは年間平均で1.3%の成長がありました。注目したいのは、同時期のインフレ率は8.8%もあったのです。

そんな状況下で、株式市場はどう動いたでしょうか?イボットソン社のデータによれば、1973年から1979年までのS&P500指数の平均年間上昇率は3.2%、そして国債は3.5%でした。言うまでもありませんが、インフレ率は8.8%ですから、株も国債も目減りしたわけです。

1970年代のスタグフレーションは、なぜ起きたのでしょうか?これは、ミルトン・フリードマン氏(1976年、ノーベル経済学賞受賞)が言うように、貨幣供給量(マネー・サプライ)が問題になります。商品やサービスに対する需要が減っても、貨幣供給量が貨幣需要を上回るとインフレが起きてしまいます。

世界の銀行は、インフレの兆しが見えていたにもかかわらず、あまりに長期間にわたって貨幣供給量を増やし続けてしまいました。正にフリードマン氏や通貨主義者が述べるインフレシナリオです。確実にスタグフレーションがやって来る、と断言はできませんが、世界の中央銀行は通貨供給量をコントロールする一手段として、金利引き上げを継続することになりそうですから、経済の下降は避けられないのではないでしょうか。」

今も使える銘柄選択条件

マーティン・ツバイクという名前を聞いたことがあるだろうか?「ツバイク ウォール街を行く」、という本が出版されてから、もうかなりの月日がたつが、この本に紹介されている株式投資方法は今日も有効だ、とハリー・ドマッシュ氏は言う。「2年ほど前、2004年8月11日のことですが、私はツバイク氏の方法を使って、実際に株を選んでみました。合計で17銘柄ですが、1年後の8月には一銘柄あたりの平均伸び率は40%でした。(S&P500指数は+15%)先月6月23日時点では、一株の平均上昇率は43%です。(S&P500指数は16%増)」

ツバイク氏は、投資心理を測定するプット・コール・レシオの考案者としても有名だ。ありとあらゆる経済指標と、株式市場の関係を徹底研究したツバイク氏、いったいどう銘柄を選んでいるのだろうか。もう少しドマッシュ氏に説明してもらおう。

「コンスタントに利益を上げている会社なら業種は気にしない、とツバイク氏は言いましたが、氏が最も重要視するのは長期成長率です。4年から5年を振り返って、年間利益が毎年15%以上増えていることが必要です。単に会社の総収益だけでなく、同様に一株利益も毎年15%以上の伸びがなくてはいけません。

長期的な成長率を確かめた後は、短期的な様子を見てみましょう。たとえ毎年15%以上の伸びがあったとしても、5年前は+70%、4年前は+25%、3年前は+20%のように勢いを失っている会社はダメです。最近の決算報告書に載っている一株利益は、過去5年間の平均一株利益の75%以上あることが必須です。

会社の総収益と、一株利益を見比べてみることも大切です。総収益が大きく上がっているにもかかわらず、一株利益があまり変わらないことがあります。これは何を意味するのでしょうか?こんな現象は、マージンが減っている時に起きます。逆に、総収益は変わらないのですが、一株利益が増えることがあります。これは、コスト削減による場合が多いですから、将来的には一株利益も下がることでしょう。

どんなに良い株でも、割高なものを買ってはいけません。割高割安を測るには株価収益率(PER)を用います。S&P500指数に属する銘柄の平均PERより50%以上高い株は避けるべきです。

マーケット全体と株を比較することも重要です。過去6カ月の動きを調べて、マーケットの上昇率を上回る株だけに焦点を合わせてください。

負債比率にも注意を払ってください。ツバイク氏は具体的な数値を本の中で示していませんが、業界平均より高い負債率を持つ会社は避けた方が無難です。

それから、最近の決算報告で、アナリストの予想に満たなかった企業も外してください。」

それでは、上記条件を全て満たす銘柄を記そう。もちろん、これは買い推奨ではなく、投資一アイディアであることをお断りしておきたい。

CarMax(KMX)、Ceradyne(CRDN)、First Community Banc(FCBP)、Holly(HOC)、Manulife Financial(MFC)、Nara Bancorp(NARA)、Nicholas Financial(NICK)、O’Reilly Automotive(ORLY)、Prosperity Bancshares(PRSP)、Remington Oil & Gas(REM)。

ジョージ・ソロス氏のようなトレードをしたければ、先ず自分の直感を信じることだ、とフォーレックス・キャピタル社でアナリストを務めるボリス・シュロスバーグ氏は言う。「今日の天気だけを基にして旅行計画をたてるでしょうか?今、晴れていても一週間後は大雨かもしれません。」

株や先物も天候のように変わりやすい。皆さんも既に経験済みと思うが、上昇基調だったマーケットが突然崩れたり、横ばいだった株が、いきなりブレイクアウトすることがある。「目の前に見えるものだけに頼ってトレードしろ。意見は無視だ。そんなアドバイスがありますが、それは間違っていると思います」、とアナリストの肩書き意外にも、トレーダーの顔を持つシュロスバーグ氏は付け加える。もっと説明してもらおう。

「ある銘柄の15分足チャートを見ているとしましょう。もし安値が切り上がっているなら、ほとんどの人たちは上昇の継続、という結論を出すはずです。しかし往々にしてそんな予想は外れ、株価は逆にブレイクダウンしてしまいます。それでは、今度はこのブレイクダウンの起きたチャートを見て株価を予測してください。既にお分かりと思いますが、下げが顕著なチャートを目前にすると、大半のトレーダーは下げの継続を予想します。

トレードで成功するには、値動きの根本的な理解が必要です。相場のことは相場に聞け、と昔から言われているように、マーケットに対する意見を持つことの危険性が強調されています。へたな考えはトレードの邪魔、というわけですが、それは真実ではありません。どんなトレーダーでも相場観があります。意見を持つなと忠告されても、意見無しでトレードに臨むことなどありえません。トレーダーが大きな損を出すのは相場観の責任ではなく、適切な損切りをしなかったからです。

相場のことは相場に聞け。たしかに名言かもしれません。しかし、私はあえて反対します。大切なのは、先ず自分の直感や、マーケットに対する考えを信じることです。チャートだけを頼りにトレードしている、と主張する人でも、結果的には無意識に「買い」「売り」という形で自分の意見を表明しています。ですから、株式市場は意見に支配されている、と極論することもできます。

よく聞くことですが、「値動きに騙された」という表現があります。なぜ騙されるのでしょうか。ある程度、値動きにバラつきが生じても、適切な見方や相場観があれば騙されることはありません。確固とした考えがなければ、トレードに大きく役立つチャートに裏切られるだけです。」

それでは、どうしたら確固とした相場観を持つことができるのだろうか?シュロスバーグ氏は「ソロスの錬金術」(ジョージ・ソロス著)の一読をすすめている。

次世代のオイル市場になるはずだ、とアラロン・トレーディングのフィル・フリン氏は断言する。正確に言えば、オイルマーケットのような巨大市場になる、ということなのだが、いったい何の話だろうか?

生活必需品の一つとして数えられるオイルだが、水はそれ以上に重要だ。マーケットウォッチ・ドット・コムのマイラ・サフォング氏によれば、地球上に存在する水の99%は飲むことができない。そして、毎日アメリカで使われる水の量は、ガソリン消費量を1000倍近く上回っている。ガソリンは市場で取引されているが、貴重な水にはマーケットが無い。なぜだろうか?

マーケットアナリスト、ジム・ワイコフ氏はこんなことを言う。「新鮮な水は人間にとって、オイル以上に価値があることは間違いありません。しかし、オイルは天から降ってくるようなことは決してありません。」

ガソリンの値段は、1ガロン(3.785リットル)あたり約3ドル(343円)だ。「米国水道協会のデータを基に計算したのですが、コーラを一缶買うお金があれば、水を1万5000缶も買うことができます」、とサフォング氏は水の安さを強調する一方、こんなことも指摘する。「ただ同然の水ですが、人々は毎年、何十億ドルという金額をボトル入りの水に使っています。」

最新のデータによれば、毎日アメリカでは約4080億ガロンの水が消費されている。ガソリンの消費量は3億8200万ガロンだから、水の需要量が圧倒的に多い。「次世代のオイル市場になるはずだ」、と断言したフィル・フリン氏の話に戻ろう。

「水は始めであり終わりである、と言えるくらい貴重な物です。にもかかわらず、水にはオイル先物のような市場がありません。多くのアナリストは、水先物市場の現実化に否定的な見方です。アメリカの人口が3億に達しようとしているように、世界の人口も増え続けています。飲める水は減少していますから、人々は水を求めて争うのではないでしょうか?水先物市場が現れるのも、もはや時間の問題だと思います。」

ジム・ワイコフ氏は、水とオイルのこんな共通点をあげている。「水はオイルのように生活必需品だけでなく、テロリストも目をつけています。経済的ダメージを狙って、テロリストはオイル設備を攻撃します。こんなことが起きてほしくありませんが、専門家たちの意見によれば、テロリストは水道システム汚染を計画しているようです。」

「水先物市場は、決して新しいアイディアではありません」、と言うのはスタンフォード・ワシントン・リサーチグループのデボラ・コイ氏だ。「貴重な水ですが、そう簡単に水先物市場は実現しないと思います。」パシフィック・インスチチュートのピーター・グリーク氏もコイ氏に同意する。「オイルでいっぱいになったタンカーには価値がありますが、タンカーを水で満たしても何の価値もありません。輸送料金の方が水より高くつくことでしょう。」

バーナード・サバイコ氏(エコノミスト)の言葉を付け加えておこう。「水の先物市場が実現したとしましょう。だれでも水の重要性を認めていますから、買い手ばかりになるのではないでしょうか。これでは売り手が不在ですから、マーケットとしてなりたちません。」

週末話題の金鉱銘柄

金が高値を記録したのは、もう20年以上も昔の話だ。1オンス850ドルの頂点は1980年、そして1999年には、253ドルに低迷していた。こんなありさまだから、金は投資対象から外れ、長いこと話題にもならなかった。そして2005年、金が爆発した。12月500ドルを突破、翌月1月550ドル、4月600ドル、5月はピークの715ドル、現在600ドルに戻している。

激しい金の上昇が合図になり、金鉱株も人気を取り戻した。金鉱株といえば、米国投資者が真っ先に思いつくのが、ニューヨーク証券取引所に上場されているニューモント・マイニング(NEM)だ。バロンズ紙の報道によれば、コロラド州デンバーに本拠地を置くニューモント・マイニングは、単に優れた経営陣を有するだけでなく、過去4年間で膨大な鉱脈を発見している。

鉱脈を掘り当てる最高の方法は、実際に存在する金鉱の隣接地を調査するのが良い、と言われている。ニューモント・マイニングの保有する金鉱の3割以上はネバダ州、そして6割は海外の先進国にあり、その総面積は3240万エーカーだから、ほぼイギリスに匹敵する。

金の値段が上がると、金鉱株も上昇する。ここ5年間の動きを見てみると、金は122%の上げ、ニューモント・マイニングはそれを上回る186%の上昇だ。同期間、S&P500指数は、たったの+7%だった。更に強調したいのは、2001年から2004年半ばまでの値動きだ。この間、金は+45%、ニューモント・マイニングは+135%の伸びを展開し、最高経営責任者ウェイン・マーディー氏の手腕が称賛される結果となった。

今年の様子だが、金は14%増、しかしニューモント・マイニングはマイナス2%だ。「最近のニューモント・マイニングの値動きは、決して将来を予測しているわけではありません」、と経済コラムニストのロンダ・ブラマー氏は言う。説明を聞いてみよう。

「以前のような強さが見られないニューモント・マイニングですが、これは投資者にとって買いチャンスです。もちろん、金自体がベアマーケットに陥ってしまえば別ですが、今年ニューモント・マイニングには大きな収益の伸びが期待できます。三つの低コスト金鉱からの生産が本格的に始まり、現在53ドルほどの株価は75ドルから80ドルあたりを狙えると思います。

金は大豆やトウモロコシなどの商品とは違います。個人投資者だけでなく、機関投資家も含めて、インフレ対策として金は買われます。それに、不安定な株式市場や為替市場も金買いの原因となります。ニューモント・マイニング社長ピエール・ラソンデ氏は、18カ月以内に金が過去の最高値850ドルに挑戦することを予測しています。」

いつも金の上昇率を超えてきたニューモント・マイニング、今回も同様なことが繰り返されるのだろうか?RBCキャピタルのスティーブン・ワーカー氏は76ドル、そしてシティグループのアナリストは75ドルをニューモントの目標株価に設定している。

精神衛生に良い銘柄

乱高下するマーケット、胃の調子が悪くなった。そんな声が聞こえてくる。高い変動率はトレーダーには嬉しい。しかし、安定した投資を求める人には精神的に良くない。何かうまい解決策がないものだろうか?「インフレ懸念、それに金利情勢がマーケットを不安定にしています。重要なのは、連銀がどんな発表をしても、大きな影響を受けない株を選ぶことです」、と経済コラムニストのフレッド・フレイリー氏は言う。そんな銘柄が本当にあるのだろうか?説明を聞いてみよう。

「バンジージャンプのような値動きには、そう簡単に慣れることはできません。もちろん、激しい値動きは口座残高を大きく上下させる原因にもなります。どうしたら、こんなことを防ぐことができるでしょうか?当たり前なことを言うな、と腹を立てる方もいるかもしれませんが、乱高下しない株に投資すれば良いのです。

安定したポートフォリオを作るには、ボラティリティ(株価変動率)を制限しなくてはいけません。荒波の中で船を安定させるのはバラストです。適切なボラティリティのある銘柄を選択することは、極端な口座残高の変動を避けることができますから、動転せずにおちついて投資をすることができます。」

ボラティリティの低い銘柄をフレイリー氏は推薦しているわけだが、永久に横ばいしてしまったら面白くない。弱い相場で下げ渋ってくれるのは良い。しかし、強い相場が来たらそれなりに上昇してほしい。そんな銘柄があるなら買ってみたいものだ、と思っている投資者のために、フレイリー氏が提案する銘柄の中から二つ紹介しよう。

1、ウォルマート・ストアーズ(WMT 世界最大手小売業者)
「ウォルマートはイメージチェンジに力を入れています。企業は活性化され、海外への進出にも積極的になり、収益は更に上昇することでしょう」、とシティグループのデボラ・ワインスイック氏は言う。

チャートを見ていただくと分かるが、5月6月の下げ相場の中で、逆にウォルマートは上げている。正に底力が証明されたわけだ。ウォルマートは48ドルほどで現在取引されているが、ワインスイック氏は60ドル、そしてバッキングハム・リサーチ社は62ドルを目標株価にしている。

2、シェーリングプラウ(SGP 製薬会社)
既に悪い材料は出尽くし、株価は底値近辺だ。一番痛かったのは、大評判だった薬品クラリティンの特許権を失ってしまったことだ。新薬の開発が遅れていたから、2000年には60ドルだった株価は、現在20ドル以下でウロウロしている。

そして今日、シェーリングプラウには回復の兆しが見えている。プルーデンシャルのアナリスト、ティム・アンダーソン氏によれば、メルク社と共同で開発した抗コレステロール薬、バイトリムの売上は順調に伸びている。また、リストラの結果、約1億ドルの経費が節約できるようだ。アンダーソン氏は22ドル、そしてメリルリンチは24ドルをシェーリングプラウの目標株価に設定している。

本マガジンは客観的情報の提供を目的としており、投資等の勧誘または推奨を目的としたものではありません。各種情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負いかねます。

発行:株式会社ブレイクスキャン 監修:株式会社デイトレードネット