株番組を見ていると、「持ち株を処分した方が良いでしょうか?」、という視聴者からの質問が最近多い。世界的に嫌な相場が続いているから、投資者たちが不安になっても仕方が無い。もちろん、デイトレーダーがこんな質問をするわけがないから、正確に言い換えれば、長期的に見た場合、現在株を売ることは正解だろうか?
「もし、今売らなかったらどうなるでしょうか?先ずそれを検討してください」、と言うのは以前ファースト・コール社でアナリストを務めたポール・エリオット氏だ。今売らなかったらどうなるのか?投資アドバイザー、ギャリー・カルトバウム氏を引用しよう。「200のグループを追っていますが、10銘柄中7から8銘柄がテクニカル的に貧弱です。特に最近気になるのが、マーケットの指標になる大手銀行です。天井が形成され、下げが始まっていますから、明らかに悪材料です。チャートパターンに好転の兆しが現れるまで、買いは控えなければいけません。」
ニューヨーク大学教授、アズワス・ダモダラン氏の意見を聞いてみよう。「今株を処分するべきか、という質問の裏側にあるのが、ひょっとしたらこの辺が底だろうか、という質問です。米国の金利上昇が株安原因になった、と説明する人が多いですが、これはあまりにも短絡的です。金利の上昇は既に2年近く続いていますから、昨日今日に始まった話ではありません。世界的な株安は、一つの要素だけでは起きません。
それでは、株式市場の下げは終わりに近いでしょうか?この疑問にも、簡単に回答することはできません。繰り返しになりますが、下げ原因は一つだけではありませんから、米国の金利安定が世界的な株高になる、と断定するのは無理です。」
どうも歯切れの悪い意見だが、ダモダラン氏は投資者に五つの助言がある。
1、株はなぜ下がるのか、といった質問には理論的な回答など無い。だから、専門家の意見を聞くのも無駄だ。
2、現在口座残高が減っているなら、十分に株の危険性が理解できたはずだ。次の上げ相場で、「株は安全だ」、などといった極論が出たら、今日の体験を思い出そう。
3、下げ相場の始まりが確認できたら持ち株を売ろう、と言う人が多いが、次の事実を覚えておいてほしい。確認ができた時は、既に大きく下がっている。逆に底が確認できた時も、既に大きく上がっているものだ。
4、大衆と逆に動くのは正しい。しかし、これほど難しい投資方法は無い。
5、アナリスト、それにアドバイザーたちが使っている水晶の玉は曇っている。プロの意見は当てにならない。
これが助言?あまりにも悲観的だ。「もし、今売らなかったらどうなるでしょうか?先ずそれを検討してください」、と指摘したポール・エリオット氏に戻ろう。「現在の株式市場を見ていると、たしかに不安になってしまいます。しかし、今は売る時ではありません。ほとんどの投資者は、必ずと言っていいくらい売った後に後悔しています。住宅を買いたい、新しい家具がほしい、そんな時だけに株は売るべきです。」これもあまりスッキリしない。三者で参考になるのは、カルトバウム氏だけだ。