木曜のFOMC(連邦公開市場委員会)で、短期金利が5.25%に引き上げられることが確実視されている。これが実現すれば、2004年6月から17回連続の引き上げだ。それほどインフレを恐れているなら、いっそのこと0.5ポイント上げて、一気に金利を5.5%にしてしまえばよい、とそんな声が最近聞こえるようになった。
マーケットウォッチ・ドット・コムの報道によれば、以前連銀は0.5ポイントずつ金利を動かすことが通常だった。0.25ポイント刻みは、前連銀議長グリーンスパン氏が始めたものだ。既に0.25ポイントずつ、16回立て続けに金利が引き上げられているが、米国の歴史上、これほど執拗な金利引き上げサイクルは無かった。
エコノミスト、マイケル・グレゴリー氏はこう語る。「過去二回の金利引き上げサイクルを振り返ってみると、両方とも最後の利上げは0.5ポイントでした。交響曲を例にあげれば、曲の最後はドーンと派手ですから、観客は拍手のタイミングが分かります。利上げも同様です。また0.25ポイントの引き上げなら、マーケット関係者はこれが最後かどうかの判断ができません。予期せぬ0.5ポイントの上げなら、これは金利引き上げ終了のシグナルです。」
ベアスターンズの、ジョン・ライディング氏もグレゴリー氏の見方を支持する一人だ。「0.5ポイントの利上げは、生温い連銀のやり方に不満な、タカ派を納得させることもできるでしょう。たとえ完全に引き上げサイクルが終わりにならなくても、0.5ポイントの利上げなら、連銀はしばらく経済活動の様子を見ることになるでしょう。」
「今こそ連銀は慎重になるべきです」、とパシフィック・インベストメントのポール・マカリー氏は言う。「行き過ぎな金利引き上げは、米国経済を不景気に導くことになります。既に住宅市場には冷えこみが見られます。更なる金利引き上げは、個人消費を大きく減退させることになるでしょう。それだけではありません。米国での利上げは、結果的にヨーロッパ、日本、中国、そして他の国々での金利引き上げにつながり、世界的に経済が落ち込む可能性もあります。ただでさえ、株式市場は神経質な状態ですから、ヘッジファンドが大きく売ってくることも十分に考えられます。」
ハーバード大学教授、マーチン・フェルドスタイン氏はこう付け加える。「連銀が現在直面する問題の一つは、既にアメリカ経済には下向きの兆しが見える、という現実です。ですから連銀は、インフレばかりに注意を払うのではなく、先ず適切にアメリカ経済の現状を把握して、経済成長減速を想定した金利政策を実施しなくてはいけません。」
最後にアメリカとヨーロッパが一体となって金利を引き上げたのは2000年のことだった。そして、世界経済は8年来の低成長を経験することになった。しかし今回は、日本、中国、インドも利上げに参加することになるから、マカリー氏の懸念が的中しそうだ。