せっかく上手くいっていた投資が、著名アナリストの悲観的な意見で、大きく下げてしまうことがある。小さな損なら取り戻すことができるが、一つの銘柄であまりに大きな穴を開けてしまうと、精神的なダメージから立ち上がるのも大変だ。「致命的な傷を負わないために、危険信号をいち早く察知することが大切です」、と言うのは「アナリストを首にしろ!」の著者、ハリー・ドマッシュ氏だ。少し話を聞いてみよう。
「最近、プラトロニクス社は30%という極めて大きな下げを記録しました。直接的な原因は、6月で終了する四半期の収益が、下方修正されたためです。しかし、12月締めの決算報告書をよく調べた人なら、今回の下方修正がある程度予期できましたから、大きな損を出すことはなっかたことでしょう。」
決算報告書と言われても、いったいどこを見たら良いのだろうか?会計士のような専門的な知識が無くても、危険シグナルを見つけることは可能なのだろうか?ドマッシュ氏の話に戻ろう。
「先ず指摘したいのが粗利益です。会社が製品を売ると儲けになりますが、粗利益はリサーチや開発コスト、それに税金などが考慮されていません。粗利益が上昇する原因には、生産コストの低下、または製品の値上げの二つがあります。理由はどちらでも構いません。重要なのは、粗利益の大幅上昇は、収益の上方修正につながります。
粗利益減少は、製造コストの上昇やマーケットシェア維持を狙った製品の値下げが原因で起きます。これら二つの要素は、将来の収益懸念になりますから、粗利益の異常な減少は危険信号です。
粗利益は、損得計算書を利用することで、簡単に計算することができます。粗利益を比較するときは、季節的な要因を考慮して、前年度の同時期と比べることが重要です。(粗利益=業務粗利益/売上)
プラトロニクス社を使って説明しましょう。2005年度、12月締め四半期の粗利益は45.5%でした。2004年の同時期は53.1%でしたから、プラトロニクス社の粗利益は7.6ポイント(53.1ー45.5)の下落です。粗利益が2ポイント以上下げているときは要注意です。」
粗利益の次に気をつけたいのが売掛金勘定だ。どんなに売上が伸びていても、実際に相手側からの支払いを受け取らなければ何の意味も無い。顧客との良い関係を保つために、故意に長めの支払い期間を与える場合もあるが、相手側に支払い能力が欠けていることもある。だからドマッシュ氏は、バランスシートを検討して、売掛金勘定が売上に占める比率を確かめることを勧めている。もしこの比率が、前年度を20%以上上回るようなら注意したい。
もう一つの警報はキャッシュフローだ。「純利益が上昇しているにもかかわらず、キャッシュフローが減っているなら、空が曇り始めたと思ってください」、とドマッシュ氏は言う。決算報告書は味気無いかもしれないが、粗利益、売掛金勘定、そしてキャッシュフローの動きには、目をとめる価値がありそうだ。