株価は、欲と恐怖によって動かされる。よく聞く言葉だが、トレード心理の研究で有名なブレット・スティーンバーガー氏は、もう一つトレーダーに大きな影響を与える要素を指摘している。「欲と恐怖より危険な感情、それは自信過剰です。自信過剰になったトレーダーは、必要以上に大きなリスクを平気でおかし、自ら損を招いているのです。」
エレン・ランガー氏のリサーチによると、成功という経験は、たとえそれがコインの裏表を当てるようなものであっても、私たちに自信を与えるという。本当に自分の技術によって良い結果を出しているのなら問題は無いのだが、単なる偶然や運で勝ちが続く時が怖い。ギャンブルの場合、全くの素人が3回連続でブラックジャックに遭遇することがある。単に幸運に恵まれただけにすぎないのだが、本人は自分の技術が勝ちを呼び込んだ、と勘違いしてしまう。これが自信過剰を生み、無謀な賭けにつながるわけだ。スティーンバーガー氏の話に戻ろう。
「トレーダーとギャンブラーの行動に違いはあるのでしょうか?数々の実験は、両者に違いが無いことを証明しています。テレンス・オディーン氏は、こんな結果を発表しています。トレーダーに自信があればあるほどトレード回数が頻繁になり、損額は一般のトレーダーより大きくなります。もちろん、頻繁な売買は手数料の払いすぎにもなります。ロンドン・ビジネス・スクールからのレポートも、オディーン氏の結論と一致しています。トレーダーが自信を持てば持つほど取引回数が増え、そして損額も自信に比例して増大していくのです。
自信を得るためには、正しいマーケット分析と適切な判断が不可欠になります。こんなデータがあります。これは、インベスターズ・インテリジェンス社からですが、株式市場はほとんどの場合、はっきりしたトレンドが無く、レンジ内で推移しています。しかし、7割以上のトレーダーたちは、マーケットの動きには関係なく、「強気」、「弱気」といった方向性を決めつけて常にマーケットを見ています。
この「強気」と「弱気」について、ハーシ・シェフリン氏はこう語っています。「トレーダーが最も強気になるのは、マーケットが天井に達した時だ。トレード経験が浅いほど、天井で積極的に買う傾向がある。」同じ現象は、オプション市場にも観察できます。マーケットが下がると思ったらプットを買い、上がると思うならコールを買います。5日連続でマーケットが下落すると、プット買いが極端に増えます。しかし、これは完全に間違いであり、5日めの下げではコール買いが儲かる、という統計があります。
自信を持つことは大切ですが、自信過剰はトレードに悪影響です。良いトレード方法を思いついた時は、先ずその成功率を調べてください。過去のデータを使って、バックテストをするのです。実績の裏づけがある方法だけでトレードすることが肝心です。」