ワールドカップはドイツ経済を救うことはできない、とコラムニストのマシュー・リン氏は言う。「多くのドイツ国民は、ワールドカップに大きな期待をよせていますが、スポーツ・イベントが一国の経済を復興させることはできません。熱狂的なファンが去った後、ドイツの人々は何も変わっていないことに気がつくことでしょう。」
ウォルト・ディズニーは、スポーツチャンネルESPNを通して、64試合中の52試合を生で放映する。アナリストの予想によれば、1億ドル以上のコマーシャル収益がディズニーに入るようだ。もしそれが実現なら、2002年のワールドカップ広告収益2500万ドルを大幅に上回ることになる。
広告収入が期待できるのはディズニーだけではない。ヤフーは、公式ワールドカップページを作成し、既にマクドナルドやプロクター・アンド・ギャンブルなどの大手企業が広告を出している。また、アマゾン・ドット・コムはグーグルに料金を払って、キーワードになる「ワールドカップ」を買った。だから、グーグルでワールドカップを検索すると、必ずアマゾンの名前が目につくことになる。さて、リン氏の話に戻ろう。
「たとえワールドカップが大成功に終わっても、ドイツ経済の現状は改善されません。11%の失業率、割高な人件費、政治的リーダーの不在、高齢化する社会、とにかく難問だらけです。(ドイツは国家予算の約40%を、社会保障や生活保護、そして国民年金に割り当てている。)
西ドイツが、ワールドカップで優勝したのは1954年のことでした。歴史家たちのコメントによれば、これは第二次世界大戦以来、ドイツが初めて世界の檜舞台に踊り出た華々しい瞬間です。国中で勝利を祝い、敗戦から立ち上がろうとしていた人々に、大きな希望と力を与えたことは言うまでもありません。
1974年、ドイツで初めて開催されたワールドカップで、ドイツは見事に優勝しています。これも1954年の時と同様に、ドイツ国民に自信をもたらせた、と言われています。
勝利は一時的に国民のプライドを高めますが、長期的経済トレンドを変えるだけのインパクトはありません。最近の標準で今日のドイツ経済を診断すると、決して悪くないという答えが得られます。専門家の意見によると、今年ドイツの国内総生産は1.8%の伸びになるようです。イギリスやアメリカから見ればガッカリな数値ですが、1.8%増はドイツにとって2000年以来最高の成長です。
競技場の準備はできました。世界の目がドイツに注がれます。皆さん、ゲームを楽しんでください。最後に、一つ付け加えておきましょう。ワールドカップでの優勝が本当に国家経済を豊かにするなら、ブラジルが世界で最も金持ちの国になっているはずです。」