同じニュースなのに、なぜマーケットは違った反応を示すのだろうか?オイル価格上昇で、ダウ指数が大きく下げるかと思えば、時によっては原油の上げは無視されて、ダウ指数がラリーを展開することがある。テロ事件ニュースも同様だ。米軍トラックの破壊ニュースでマーケットが下げることもあれば、爆破事件がマーケットに全く影響しない日もある。
「多くの投資者は、適切にニュースを解釈することができません」、と語るのはマキシム・グループのバリー・リットホルツ氏だ。「ニュースで肝心なのはデータですが、投資者はヘッドラインばかりに注意を払ってしまいます。また、アナリストなどの意見を重要な情報だとカン違いしている人もいますから、どうしても投資判断が狂ってしまいます。」
それでは、どうしたらニュースを正しく活用することができるだろうか。リットホルツ氏の話を続けよう。「ニュースに関する、三つの問題点を頭に入れてほしいと思います。先ず、ニュースは決して新しい情報ではありません。当たり前だ、と言われるかもしれませんが、ニュースは過去の出来事をレポーターが調査して報道するものです。
過去の出来事は、たしかに興味深いですが、投資は将来を見通して行うものです。予想以上の収益、新製品発表などのニュースをよく耳にしますが、ほとんどの場合、株価は既に好材料を織り込み済みです。ですから、私はマーケット開始前にニュースを読まないことにしています。株価に反映済みの古い材料で、間違った投資判断を下したくないからです。ウォールストリートジャーナルを読むのは、帰りの列車内だけで十分です。
次に指摘したいのは、私たちが実際に使えるニュースが報道されることは滅多にありません。CNBCやCNNのニュースを聞いていると、まるで全てが重要に思えてしまいますが、今日のニュースは娯楽的要素が強いので注意が必要です。有益な情報が流されないわけではありませんが、直ぐ投資に役立つ物を期待するのは無理です。
三番目に挙げたいのは、ニュースもビジネスだ、という事実です。視聴者、購読者を獲得するには、大衆受けするニュースを中心に報道する必要があります。ですから、考えられないようなタイミングで信じられないニュースが飛び出します。最も顕著な例は、バブル崩壊直前にアトランティック誌が発表した、ダウ36000ドルの超強気論です。マスコミは大衆と同様に、天井で強気なり底で弱気になります。極論すれば、ニュースは逆指標として利用するべきです。」
もう一つ、リットホルツ氏はこんなことを付け加えている。「どんなにインパクトのあるニュースでも、簡単にマーケットのトレンドを変えることはできません。古い例ですが、日本軍による真珠湾攻撃で、たしかにマーケットは大きな下げを記録しましたが、これはダウントレンドという状況で起きた下げですから、上げ基調が下げ基調に転換したわけではありません。ケネディー大統領の暗殺も下げにつながりましたが、これはアップトレンド上のマーケットで起きた事件ですから、良い押し目買いの機会をつくる結果となりました。」