どの株番組でも同じことが討論されている。はたして、本格的なベアマーケットが始まったのだろうか?「中国と米国経済は、やや減速気味の傾向があります。インフレをかなり心配している人たちが多いですが、私はそれほど気にしていません」、と言うのはヘッジ・ファンド・マネージャーのマーク・バウチャー氏だ。「アメリカと中国の経済成長が急ピッチで下がるのではなく、ゆっくりしたペースで修正するなら、世界経済のソフトランディングが可能です。」
これから先、株式市場は何回かの下げを展開することになりそうだが、バウチャー氏は投資者が注目すべき点をいくつか挙げている。「2006年度の投資を成功させるには、国債の監視を忘れてはいけません。下は長期国債ファンド(TLT)の月足ですが、注意を払わなくてはいけないのが、82付近を走るサポートラインです。もしこのラインが崩れるようなら、株式市場は厳しい状況に陥ることでしょう。」
「更なるドルのブレイクダウンは、株式市場に悪影響です。ユーロ・カレンシー・トラスト(FXE)の日足で分かるように、ユーロが大きく上げています。127.49で先週の取り引きを終えましたが、135を超えるような事態が起きると、株式市場にはかなりマイナス材料になります。」
「長期的なトレンドを判断する方法の一つとして、200日移動平均線が利用されますが、最近話題の金、オイル銘柄、そして新興成長市場が200日移動平均線あたりまで修正することも必要です。下げた後、直ぐ反発するのではなく、しばらく横ばいをしてエネルギーをためるようであれば、いっそうマーケットに好ましい環境が出来上がります。
投資者が現在しなくてはいけないことは、守りを固めることです。ここから積極的な空売りを実行するのは、もはや遅すぎます。もちろん、ヘッジという意味での空売りなら別です。
あまりに報道が誇大化されていますが、マスコミが言うような悪性インフレに、アメリカが陥る危険はありません。最近のデータを検討すると、インフレは既にピークに達したような気配が見え始めています。ですから、国債が長期サポートを維持し、ドルの下落が止まるなら、株式市場は2002年から出した利益を全て無くすほどの修正で済むことでしょう。」
マスコミが言うほどの、深刻なインフレはアメリカに存在しない。最悪な状態は既に過ぎ去っている。そんなバウチャー氏の言葉を聞くと楽観的な感じがしてしまう。しかし、氏の見方はきびしい。最後の部分で分かるように、バウチャー氏は、2002年からの上昇を帳消しにする下げを予測している。もし国債とドルが更に崩れるなら、株式市場は悪性なベアマーケットになりそうだ。