第1四半期、米国GDP(国内総生産)は5.3%の伸びを見せたが、こんな好調もこれで終わりだ、と言うアナリストたちがいる。最近のデータによれば、製造業は冷えこみ始め、住宅市場も下向きだ。たび重なる金利引き上げ、それにオイルやガソリンなどのエネルギー価格上昇は、消費者の家計に重圧となっている。
「第1四半期のGDPは強い数値でしたが、5%台の数字を見るのは、これが最後になると思われます」、と語るのはグローバル・インサイト社のアナリスト、ナリマン・ベラベッシュ氏だ。「低迷がハッキリし始めた不動産、個人消費の低下は米国経済を減速させることでしょう。」
ドイツ銀行の、ジョセフ・ラボグナ氏は、こんな見方をしている。「+5.3%という第1四半期の結果は目覚しい成長率です。しかし、だからといって将来の見通しに楽観的になることはできません。まだ推測の段階ですが、今期のGDPは2%以下の伸びになる可能性があります。非農業部門の新規雇用者数、小売売上は下降の兆しが見えますから、米国経済の成長率は急ピッチで下がることでしょう。」
発表されたGDPを見る限り、個人消費、設備投資、そして輸出には問題がないようだが、一つ忘れている事実がある。第1四半期と、去年第4四半期の個人所得が下方修正されたのだ。アナリストたちは、最終的な手数料収入やボーナスの結果が反映されて、第1四半期は大きな上方修正になることを予想していたが、実際に公表された数字は最初に出されたものより510億ドルも下回っていた。連銀の役員たちは人件費の大きな増大を心配していたから、個人所得の下方修正は好ニュースだ。これで、少しインフレ懸念が薄れたことだろう。
2005年、消費者のサラリーは4.2%の上昇を記録した。インフレ率の3%と、1.8%増えた就業者数を考慮すると、2005年度のサラリーは事実上2004年度より少なくなったことになる。「最近までの様子を振り返ってみると、家庭収入の増大は株のキャピタルゲイン、ボーナス、それに不動産の手数料などといった特殊な収入が主でした。しかし、これらの収入が下がり始めている今日、個人所得の上昇を期待することはできません」、とロンバード・ストリート・リサーチのガブリエル・スタイン氏は述べている。
もう一つ、家庭の重要な財源になっていたのが不動産ローンの借り換えだが、これも既にあてにできない。金利引き上げ政策で不動産ローンの金利も上昇し、おまけに住宅市場は下降が始まっているから、銀行も以前のようにローンの借り換えに積極的でない。最新のデータによれば、新築住宅価格は去年より0.9%高いだけだから、インフレ率にも追いついていないわけだ。
米国は不況に襲われるのだろうか?2007年、アメリカが不況になる可能性は50/50とロンバード・ストリートのアナリストは言うが、ほとんどのアナリストは企業による積極的な設備投資、それに輸出部門の成長で極端な経済減速は避けられると予測している。「米国経済の行方を決定するのは今期と来期の結果にかかっています」、とRBSグリーンウィッチのスティーブン・スタンレー氏は強調している。