世界で最も力がある銀行は日銀だ、とジム・ジューバック氏(経済コラムニスト)は言う。ヨーロッパ、アジア、米国株式市場が5月11日から大きな下方修正となったが、どうやらこれは日銀が原因らしい。ジューバック氏の意見を聞いてみよう。
「なぜこんなに株が売られたのでしょうか?5月17日、ダウ指数は214ポイントにのぼる大きな下落を展開しました。アメリカは悪性なインフレに陥る可能性がある。だから連銀は予想以上に金利を引き上げることになるだろう、といったことが株不調の原因と説明されています。
5月17日の朝、発表された消費者物価指数は+2.3%でした。危険信号の2.5%に近い数値だったので、6月の会議で短期金利が引き上げられる可能性が、35%から50%に上昇しました。もし6月に利上げが実施されると、17回連続ということになります。金利上昇は株に悪影響と言われますが、先週マーケットが売り込まれる以前時点で見ると、ダウ指数は2004年6月以来12%の伸びを記録していました。
金利が上昇すると、国債の値段が下がるのですが、国債マーケットが崩れることはありませんでした。例えば5月18日ですが、ダウはマイナス77ポイント、そしてナスダック市場は2005年11月以来の安値に落ち込みましたが、10年物国債は0.75%上がって利回りは5.07%に下がりました。
金の価格も、おかしな動きを見せました。インフレ対策として人気の金ですが、高まるインフレ懸念が売り材料になりました。5月10日、1オンス700ドルで取引されていた金は、5月19日657ドル50セントで終了しました。もし投資者が本当にアメリカのインフレを心配しているなら、この下げは納得できません。おかしな動きはドルにも見られます。連銀議長のバーナンキ氏が、インフレ抑制に失敗しているなら、ドルは更に売られたはずです。しかし事実は、5月10日ドルは110.6円、そして5月18日110.7円とほとんど変化がありません。
ここで注目されるのが日銀です。ここ2カ月間で、日銀は日本国内の銀行から約16兆円の現金を吸い上げ、貨幣供給量は10%減りました。なぜこんなことをしているのでしょうか?デフレに苦しんだ経済も上向き始め、インフレの傾向が見えてきたためです。この現金吸い上げ終了までまだ少し時間がかかりますが、終了と同時に日銀は、金利を引き上げることでしょう。
海外の機関投資家は、安い金利で日本から金を借りて、世界の市場で株を買っていました。過去12カ月で7割の伸びを見せたムンバイ市場には、100億ドルの資金が海外から流れ込んでいます。これだけの金額では、巨大なニューヨーク市場を動かすことは無理ですが、小さなムンバイを上昇させるには十分な額です。この好調なマーケットを継続させるには、新しい資金が必要ですが、積極的に日銀が現金を吸い上げている今日、日本からの資金をあてにすることができません。これが、結局ムンバイ市場が月曜に大きく下げた理由です。」
新興成長市場が好調だったのは、正に日本のおかげだったわけだが、これからは無謀な投機が減ることだろう。危険度の高い国が避けられ、安全な投資が中心になりそうだ。