「株を持っていると、よく眠れないのです。ですから、私がデイトレードを選んだのは自然な成り行きです」、とデービッド・ベイカー氏は言う。「ベテラン・トレーダーから手法を学びましたが、これは小さな利益を素早く取る、スカルピングでした。一回の利益が少ないですから、スカルピングに要求されるのは、頻繁な売買です。」
ベイカー氏が本格的にトレードを始めたのは、大学2年生の時だ。株の儲けで、授業料、アパート代、食費などを全てまかなったというから、生まれつきの才能があったのかもしれない。とにかく株が最優先だったから、午前中の講義には一切出席しなかった、とベイカー氏は回顧する。
天才少年、と呼ばれるようになるまでスカルピングの腕は上がったが、ある日ベイカー氏は口座資金の半分を失う大損を出した。「この損で、しばらくトレードが出来なくなりました。資金が不足したからではありません。ここが買いだ、と分かっていても引き金を引けなくなってしまったのです。そんなわけで、3カ月ほどマーケットを離れました。」
ベイカー氏が、たった一日で50%もの資金を無くした原因は、適切な損切りをしなかったことだ。「買いが成立してから一分もたたないうちに、株価が急ピッチに下げ始めました。もちろん、そこで損切りしていれば小さな傷ですんだのですが、私はそこで買い足しました。下げ止まるかのように見えたのですが、また下げが始まりました。完全に私は動転してしまい、結局パニック売りです。」
3カ月ほど相場を休んだ、とベイカー氏は言うが、正確には違ったトレード方法を求めて、トレーダーの話を聞いたり、様々な本を読みあさりペーパートレードに没頭した。「一つの株と長く付き合うことは有益です。同じ銘柄を毎日寄付きから大引けまで追っていると、その株が持つ習性や癖が分かるようになります。ある証券会社の株ですが、同様なトレードパターンを60日間も繰り返したことがあります。チャートはどの銘柄にも使えますが、一銘柄を知り尽くすことで、他のトレーダーに大きな差をつけることができます。」
ベイカー氏の好きなチャートパターンは何だろうか?「私は5分足チャートを使ってデイトレードをしています。寄付き直後の激しい動きが済んだ後、高値圏で株価が横ばいすることがあります。値幅が大き過ぎる横ばいはダメですが、ひじょうにきついレンジでの横ばいは注目です。3本4本の横ばいでは大した結果を望むことはできませんが、40分以上の長さなら、強力なブレイクアウトが期待できます。最初の上放れで買うと騙されることが多いですから、直ぐ飛びつくのではなく、ブレイクアウトを十分に確認することが肝心です。」
(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)