金の1オンスあたりの価格が700ドルを突破した。こんな高レベルに達するのは、1980年10月以来初めてだ。「世の中が不安定になるほど、金は値上がりします」、と金ディーラーのジョン・ナドラー氏は言う。5月だけでも、金は既に29ドルも上昇している。インフレ懸念、イランの原子力プロジェクト、下降が止まらないドル、それにミューチュアルファンドによる買いが主な金急騰の原因だ。
シティグループの調べによると、4月末における商品市場の総ロングポジションは、オイルが300億ドル、ガソリンも300億ドル、そして金が第3位の130億ドルだ。「多数の人たちが、ドルベースの口座を保有していますから、とにかく口座を守ることが最優先されています。ですから投資者は、上昇する金を追いかけることを、全く気にしていません」、とナドラー氏は述べている。
上記した、イランの原子力問題も、なかなか思ったような解決方向へ進んでいない。AP通信によれば、マフムード・アフマディネジャード(イラン大統領)が米国政府に送った書簡には、何ら新しい事項が見つからなかったという。書簡は公表されていないが、ブッシュ大統領のイラク攻撃を非難する、いつもと変わらない陳腐な内容だったようだ。また、国連もイラン問題に対して大きな助けにならない。イギリス、フランス、それにアメリカは対イラン貿易制裁に賛成だが、中国とロシアの同意が得られない。
マシュー・パリー氏(エコノミー・ドット・コム)も、最近の派手な金の値動きに驚く一人だが、こんなことを言う。「700ドルを突破ですから、ここから更なる大きな上昇は見込めないと思います。もしイラン情勢が好転し、インフレの抑制にもめどがつけば、金は600ドル以下に落ちることでしょう。既にかなりの高レベルに達している金ですが、更に上昇するためには、こんなシナリオが考えられます。もしアメリカがイランに対して軍事力を行使するなら、金は爆発的な上げを記録することでしょう。こんなシナリオが現実化すれば、金は1000ドルを突破するはずです。」
金属市場で買われているのは金だけではない。銀7月限は+4.3%、銅7月限は+2%、そしてめざましいのが、1オンスあたり1239ドル50セントの新高値をつけたプラチナだ。
月曜に発表された供給量を見てみると、金は2万3484オンス減って763万オンス、銀は59万2836オンス増えて総供給量は1億2400万オンス、銅は326トン減少して1万4876トンだ。