「米ドルが死んだことを知らないのは、米ドルだけだ」、と言うのはグランディック・レターでエディターを務める、ピーター・グランディック氏だ。ウィズダム・ファイナンシャルの、エマニュエル・バラリー氏(マーケット・ストラテジスト)はこう付け加える。「最近のドル下落で、通貨の代用となる金は、いっそう投資者たちに注目されることになるでしょう。」
金はバラリー氏が指摘するように、代替通貨して昔から利用されてきただけでなく、インフレ対策投資として人気がある。4月半ばからドルの下げ足が速まり、ユーロに対しては1年ぶり、そして円に対しては7カ月ぶりの安値を記録した。こんな不安定なドルを背景に、金は今年に入ってから、既に1オンスあたり150ドルを超える上昇だ。
先日、連銀のバーナンキ議長は金利引き上げ政策を一時停止する考えがあることを述べ、この発言もドル売りを呼ぶ原因となった。中東には、イランの原子力プロジェクト問題もあるから、万が一に備えての投資として、金人気がさらに上がっている。「世界中にドルが溢れています。人々は紙幣を捨てて、金と銀に交換しています。ドルはもはや信頼できる通貨ではありません。金こそが本物の通貨です」、と投資戦略家のピーター・スピナ氏は言う。
直接、金貨や金地金を買う他に、金の先物、金鉱株、金専門ミューチュアルファンド、そして金専門の上場投信を通して金投資をするのが一般的だ。
25年ぶりの高値を記録している金だが、いったいいくらで2006年を終了するだろうか。1月、金は519ドルで取引が始まり、現在約680ドルの値段が付いている。いくらなんでも行き過ぎの声もあるが、アナリスト達の予想は1000ドルだ。「資金の一部を、金に回す投資家が増え続ける一方ですから、800ドル台が達成されると思います。しかし、こんな状況ですから1000ドルを突破してもおかしくありません」、とジョン・パーソン氏(ナショナル・フューチャーズ)は語る。
893ドルが金の記録した史上最高価格だが、この数値を鵜呑みにするのは間違いだ、とバラリー氏(ウィズダム・ファイナンシャル)は言う。「今日の金価格と、25年前の最高価格を、ただ比較するだけではダメです。正確に比べるためには、インフレ率を考慮しなくてはいけません。ですから893ドルは単に893ドルではなく、実際には2195ドルに相当します。」
強気なアナリストが多いが、スティーブ・カプラン氏(トゥルー・コントラリアン・ドット・コム)の反対意見も記しておこう。「金が現在のレベルから100ドル下方修正する、と言うアナリストはほとんどいません。まるで争うように、アナリストは金価格を上方修正しています。こんな時ほど天井が形成されているものです。」