「猿の惑星」に今日の株式市場を例えることができる、とポール・ファーレル氏(経済コラムニスト)は言う。9500万のナイーブな投資者が人間、そしてウォールストリートの支配者たちが猿だ。猿たちは、「ハリケーンは経済活動を刺激する」、「貿易赤字は悪材料にならない」などと発言し、投資者はいつも支配者たちの意見に左右されてしまう。氏の話を続けよう。
「猿たちは、人間が株式市場で大きな財産を築くことができるように、適切な情報を絶えず提供している、と言います。しかし、相変わらずアメリカ人の貯蓄率はゼロに近い状態です。政府も、投資者たちに無知のままでいてほしいようです。2004年、議会はミューチュアルファンドの改革法案を検討していましたが、けっきょくこの法案は成立しませんでした。法案には投資教育も含まれていましたが、議会はその必要性を認めなかったわけです。
投資者の無知ぶりが、最も顕著だったのが90年代のブルマーケットです。猿たちは、まるで羊飼いのように、いとも簡単に投資者たちを荒れ狂うインターネット銘柄に導きました。そして、バブルが弾けるのですが、人間は猿たちのように進化していませんから、ベアマーケットに対する準備などあるはずがありません。多くの投資者は50%を超える損を出しましたが、ウォールストリートの支配者たちは、平均サラリー50万ドル(5700万円)の高給を得ていたのです。」
ウォールストリートは、投資者たちを食い物にしている、といった観があるが、猿の餌食にならないようにするためにはどうしたら良いだろうか?ファーレル氏の話に戻ろう。
「正しい知識や情報が無いことを問題にする前に、私たち投資者が、自ら進んで無知な投資者のままでいることを選んだ事実に先ず目を向けてください。私たちには仕事があります。子どもや、両親の面倒を見なければいけない人たちもいることでしょう。人それぞれ違った境遇ですが、誰もがリッチな老後生活を望んでいます。そのためには、投資知識を身につけなければいけないのですが、私たちは投資の勉強をしようともしません。こんな怠け者の私たちですから、猿たちが私たちをコントロールすることなど簡単です。
猿たちは、投資者が無知であり続けることを好みます。正しい投資知識で武装などされたら、ウォールストリートに反乱が起き、猿による支配体制が崩れてしまいます。ウォールストリートの支配者たちは、自分たちの富を増やすことだけで頭がいっぱいです。私たちは、いつまでも無知のままではいけません。私たちの手で、新しい「猿の惑星」エピソードを書きたいものです。」