業績が目覚しく伸びているなら、最高経営責任者の高額年俸やボーナスは納得できる。しかし、最近の傾向を見ると、経営者の手腕は年俸を決定する要素になっていない。こんな皮肉を言う人たちがいる。「高給を得るために、優れた業績を上げる必要はありません。最高経営者に求められているのは、鼓動する心臓を持っていることです。」
どの最高経営責任者が、並外れた正当評価額以上の年俸を手に入れているのだろうか?経済コラムニスト、マイケル・ブラッシュ氏はこう語っている。「毎日出社してくるだけで、多くの最高経営責任者は多額な収入を得ています。調査会社のポール・ホッジソン氏は、先日発表したレポートの中で、不法に高い年俸を受け取る、5人の最高経営責任者を暴いています。」
ホッジソン氏の言う「年俸」には、サラリー、ボーナス、ストックオプション、それに数々の特典(社有機、専用ドライバーなど)が含まれている。年俸の正当性を判断する手段として、ホッジソン氏は2001年から2005年までの株価成長を使っている。この期間、S&P500指数は+1%の低迷だったが、挙げられている5人の最高経営責任者の株は、同セクター企業の株と比較すると成績が一様に悪い。ブラッシュ氏の話に戻ろう。
「ファイザー社(製薬会社)の株価は、最高経営責任者、ヘンリー・マッキンネル氏の年俸とは正反対の動きです。この5年間で、株は35%の下落ですが、マッキンネル氏は7800万ドル(約89億円)の収入がありました。AFLーCIO(米労働総同盟産業別組合)のブランドン・リース氏は、株が下がっただけでなく、こんな馬鹿げた金額を最高経営責任者に払っているのだから、株主はハンマーで2度殴られたようなもの、と憤慨しています。」
株主からの非難に対して、ファイザー側はこう回答している。「製薬会社の業績を正確に評価するには、5年間という期間はあまりにも短すぎる。新薬品の開発、マーケティングにはかなりの時間を要するから、長期的な観点で会社成績を判断する必要がある。たしかに最近の株価は低迷しているが、1993年以来、ファイザー株は年間平均で13.3%の伸びがある。しかし同期間、S&P500指数は+10.6%だから、ファイザー株はマーケット以上の成績を上げている。」
残りの4人も記しておこう。メルク(製薬会社)のレイモンド・ギルマーチン氏(去年5月辞任)、AT&T(電話会社)のエドワード・ウィタカー氏、ベルサウス(電話会社)のF.デュアン・アッカーマン氏、そしてセイフウェイ(スーパーマーケット)のスティーブン・バード氏だ。
大した手腕の無い最高経営責任者に、なぜ高額な年俸を払い続けるのだろうか?ブラッシュ氏によれば、会社役員と最高経営責任者は、あまりにも親しい関係にありすぎることだ。役員は株主の利益を守らなければいけないのだが、現在役員の頭にあるのは、自分たちの利益を確保することのようだ。