コンピュータが、ファンドマネージャーを失業させる時代が来るだろうか?「多くのマーケット関係者は、株式投資で良い成果を出そうと努力していますが、ほとんどの場合、時間と資金を無駄にしているだけです。しかしコンピュータには、私たち人間の持つ弱みが無いだけでなく、人間が犯す間違いを利用することもできるのです」、とマネー誌のインタビューでジョージ・サウター氏(バンガード社、チーフ・インベストメント・オフィサー)は力説する。
マネー誌によれば、サウター氏の意見を支持する、ウォールストリート関係者が確実に増加している。現在チャールズ・シュワブ(大手総合オンライン証券会社)には、9種類のクアント・ファンドと呼ばれるミューチュアルファンドがある。このファンドと、従来のミューチュアルファンドの決定的な違いは、売買判断から実際の売買までが全てコンピュータが行うことだ。まだシュワブのクアントファンドの歴史は浅いが、9種類のうち5つが3年間の実績があり、そのうちの4つは上位25%に入る成績を上げている。
ストラテジック・エクイティ・ファンドは、バンガード社が運用するクアント・ファンドだ。過去3年間の実績を見てみると、年間平均で27%の利益を出している。中型株投資が中心になり、このカテゴリーではトップクラスの成績だ。先月バンガード社は、小型株専門のクアント・ファンドも開始した。こんな他社の成功に刺激され、ジャニス・キャピタル、それにアライアンス・バーンスタインもクアント・ファンド運用に乗り出した。
インターネット株が棒上げ状態だった90年代、投資家たちは利益の少ないミューチュアルファンドに不満の声を上げていた。しかし、そんな熱狂的なマーケットも過ぎ去り、地味なマーケットが展開される今日、クアント・ファンドは平均以上の利益を上げている。ファンド調査会社のリッパーによれば、過去5年間、従来のミューチュアルファンドは年間で平均+4.3%だが、クアント・ファンドは+6.1%だ。
最近5年間だけの記録で判断するのは早すぎるかもしれないが、サウター氏は、「コンピュータは、人間特有の危険を犯すことなく、コンスタントに利益を上げることができます」、と述べている。また、コラール・ゲーブル氏(投資アドバイザー)は、「クアント・ファンドは、機関投資家の間に急激に広まっていくことでしょう」、という見方をしている。
サウター氏の言う、「人間特有の危険」を説明しよう。一般のミューチュアルファンドは、マネーフロー、一株利益、売上などを徹底的に調べてから投資判断をするが、経営陣に直接会って話を聞くことも重要な調査のひとつだ。しかし、クアント・ファンドは経営陣に会うことは無い。必要なのは数字だけだから、ファンドマネージャーのように、経営陣の人柄を気にすることはありえない。
シカゴ大学教授、リチャード・テーラー氏はこんなことを言う。「コンピュータには、今日は行けそうだ、などといった偏見を持つことはありません。まったく感情はありませんから、ダメなものを即座に損切ることができます。」バンガードのサウター氏は、こう付け加えている。「コンピュータに、高いボーナスや年俸を払う必要はありません。クアント・ファンドが主流になれば、ファンド会社の人員は現在の三分の一程度に減ることでしょう。」