アメリカ政府は、インフレに関する情報を正確に公表しているだろうか?そんな質問をするのは、「ザ・キッチンテーブル・インベスター」の著者、ジョン・ワシック氏だ。最近激しく推移する金と国債市場を見ていると、政府は何か重要なことを隠しているのではないだろうか?それがワシック氏の疑問だ。
インフレを測る物差として一般的なのが消費者物価指数(CPI)だが、先ずこの指数をよく理解する必要がある。ワシック氏に説明してもらおう。「消費者物価指数の23%は、住宅価格で占められています。労働省によって住宅の値段が推定されますが、税金、住宅ローンの金利、それに実際に買った時点での価格などは無視され、推定価格はかなり低めに割り出されています。屋根を新しくしたり、増築などすれば住宅価格は上昇するのが普通ですが、労働省は一切そのようなことを考慮していません。
アナリストのジム・フロイト氏によれば、もし政府が正確に住宅価格を反映させると、消費者物価指数は現在の数値より1.5ポイント高くなるそうです。
住宅価格と同様に、医療費と大学教育費が、正しく物価指数に表れていません。カリフォルニア州メンローパーク市にある、カイザー・ファミリー・ファウンデーションの調べによると、2005年度、医療保険代は9%上昇しています。この上昇率は、個人所得上昇率の3倍以上にあたり、インフレ率を2.5倍も上回っています。
大学の授業料も大きく上がっています。2005ー2006学年度を見ると、私立大学は6%、そして州立大学の授業料は7%の上昇です。
エネルギー価格も忘れてはいけません。クルードオイルは、今年既に12%の上昇です。アメリカがイランを攻撃する可能性が報道され、オイル価格はとうとう70ドルを突破してしまいました。ただでさえ供給量が足りないのですから、まったく悪いタイミングでニュースが出たものです。
いったいどこに政府が発表したインフレ率3.6%を見ることができるのでしょう?もし、あなたが手術を受け、大学の授業料を払わなければならないなら、インフレ率が3.6%でおさまるはずがありません。
適切な対策がなければ、インフレによって、あなたの投資は確実に目減りします。一般的には、金鉱株、金貨、それに金塊がインフレ対策に利用されますが、ほとんどの場合、投資者たちは極めて悪いタイミングで買ってしまいます。たしかに、金は1オンス600ドルを記録しました。しかし、20年前、金は800ドルを超えていたのです。ですから、熱狂的なブームに乗って20年前に金を買った人たちは、いまだに損をしているのです。感情的になってはいけません。今日の金ブームにも注意が必要です。」
なぜ米国政府は、実際より低い消費者物価指数を発表するのだろうか?理由の一つは、引退者に支払われる社会保障給付金だ。この金額は消費者物価指数を基準に決めるから、インフレ率は低い方が政府にとって都合が良い。特に高齢化が進み、引退者の数は増える一方だから、ますます低い物価指数が要求されるわけだ。