新規雇用の増大、5年ぶりの低失業率、生産性の向上、米国経済は好調だ。しかし、なぜか人々の顔色がすぐれない。表面だけを見れば、3月分の消費者信頼感は107.2と発表され、2月分の102.7を上回った。それなら、皆さん機嫌が良いはずだが、どうもそうではないらしい。
「たしかに消費者信頼感指数は上昇しましたが、この指数には二つの要素が含まれています」、と経済コラムニストの、マーシャル・ローブ氏は言う。「先ず、現状に対する消費者信頼感は、最近5年間で最高の133.3でした。もう一つの消費者信頼感は、3カ月から6カ月先を考慮した場合の指数ですが、これは去年の93.7から89.9の冴えないレベルに落ち込んでいます。」ようするに、米国消費者は現在の状態には満足しているが、将来にかなり不安を感じているようだ。
「これは不思議な現象です。現在のアメリカ経済が、強いことに間違いはありません。しかし、消費者は将来を楽観視できないのです。何故そんななに心配なのでしょう?こんなことが考えられます。不動産ブームが終わり、実際に住宅価格が下がっている地域があります。ですから、以前のように消費者はリッチな気分になれないのでしょう」、とゴールドマン・サックスのロバート・ホーマッツ氏は語っている。
更に、ホーマッツ氏の説明によれば、住宅価格が下落し始めると、消費者は前のように金を使わなくなるという。極端に消費が冷え込んでしまえば企業収益に響く。だから、最終的には株式市場にも悪影響になるわけだ。
バンク・オブ・ニューヨークの、マイケル・ウールフォーク氏は、こんな意見を述べている。「消費者が将来に対して悲観的な大きな理由の一つは、短期金利を上げ続ける連銀の金利政策です。住宅担保ローンの利子も当然上がっていますから、2年前のように簡単な資金繰りができません。金利引き上げは、はたしていつ終了するのでしょうか?強い経済、ほぼ完全に近い雇用状況を考えれば、連銀は金利を5%以上に引き上げるでしょう。(現在4.75%)」
消費者が不安になる、もう一つの理由として、ウールフォーク氏はエネルギー価格を指摘している。「クルードオイルは、1バレル68ドルですが、これは80ドルから90ドルに跳ね上がる可能性があります。サウジアラビア、イラン、イラク、ベネズエラ、ナイジェリア、それにボリビアなどの内政が安定しない産油国を考慮すれば、オイルが突然急騰しても、決して不思議ではありません。」
将来の不安材料なら、まだまだある。増え続ける国家予算赤字に貿易赤字。破綻しそうな社会保障給付金制度。それに、ニューヨークを襲ったような大々的なテロ事件が、またアメリカ国内で発生するかもしれない。どちらにしても、今のアメリカ人に一番痛いのは、ウールフォーク氏が挙げた金利上昇だ。貯蓄率0%のお国柄だから、何を買うにもクレジットカードが使われる。もちろん、クレジットカードの金利は極めて高い。やはり、アナリストが言うように、今年の後半は個人消費が低迷しそうだ。