連銀はインフレのコントロールに失敗した、そんなアナリストたちの声が聞こえるようになった。たしかに、インフレ対策として人気のある金が、ここ8カ月で38%上昇している。「金は炭坑内のカナリアに例えられますから、これは警報シグナルとしての意味があります。金価格の動きを観察することで、現在デフレ懸念なのか、それともインフレ懸念なのか、といった大衆心理を理解することができます」、とエコノミストのブライアン・ウェスベリー氏は言う。
先回のFOMC(連邦公開市場委員会)で、値上がるガソリンやオイルなどの商品価格がインフレ原因の一つに数えられていたが、バンク・オブ・アメリカのピーター・クレッツマー氏は、こんな見方をしている。「1990年以来、商品価格とインフレには、はっきりとした相関関係がありません。金の上昇が始まったのは8月からですから、連銀が金利引き上げ政策を開始してから1年も経っています。1980年から1999年の間に、消費者物価は119%上がりましたが、金は逆に64%の下落でした。ですから、最近の金人気は、悪質なインフレ到来を予測しているわけではありません。
今日の商品価格は、世界的に需要が伸びているオイル、ガソリン、セメント、それに工業用金属に影響されています。オイル高、ガソリン高が話題になりますが、商品価格を示すCRB指数は1月に天井となりました。商品価格が経済全体を占める割合は、労務コストに比べたら小さなものです。ですから、インフレを予測する上で、最も重要なのは労務コスト分析です。」
と言われても、急騰する金価格は気になる。ひょっとしたら、アナリストが言うように、連銀はインフレを抑制できないかもしれない。やはり、万が一のためにインフレ対策投資をした方が良さそうだ。では何に投資するのか?ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェストの、マーク・ハルバート氏の意見を聞いてみよう。
「インフレ連動債券を考えてみることを勧めます。インフレ対策として金が一般的ですが、金投資ではインフレ連動債券のように利子収入を得ることはできません。簡単にインフレ連動債券を説明しましょう。支払われる利子ですが、これは国債や社債のように利率は固定されていますから変動することはありません。10年債を買えば、向こう10年間毎年同額の利子が受け取れるわけです。
単に利子だけでは国債と変わりありませんが、名前が示すように、この債券が持つ大きな特色は、インフレに連動することです。毎年2回、投資者に対する支払額は、消費者物価指数に合わせて調整されます。物価指数が上がれば当然支払いが増え、指数が下がれば支払いが減ることになります。年に2回の調整は、5月1日と11月1日に行われます。先回は、ハリケーンの影響でオイルやガソリンの急騰がありましたから、消費者物価指数は予想以上に上がり、投資者への支払いも増えました。」
よし、さっそくインフレ連動債券を買ってみよう。だが、ハルバート氏はこんな忠告を付け加えている。「今直ぐ買うのはうまい方法ではありません。ハリケーンのように、消費者物価指数を大きく上昇させるような出来事は最近起きていませんから、今は様子を見るべきです。毎年2回の調整日に注意して、物価指数に影響を及ぼしそうな事件が起きた時が買いのタイミングです。」