先ず、下のチャートを見てほしい。
何回か50日移動平均線を割ることもあったが、これは先日25年ぶりの高値を記録した、金の日足だ。長い冬眠だっただけに、金投資者はさぞ喜んでいることだろうが、コインには裏と表があるように、喜んでいる人の影には苦々しく思っている人たちもいる。
結婚式シーズンが近づいているが、CBSニュースは、若いカップルが高い指輪の値段に驚かされるだろう、と報道している。異常な速度で金が上昇だから、指輪、ネックレス、ブレスレットなども値上がっているわけだ。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、金を使った宝石価格は、去年同時期と比較すると10%から20%高くなっている。
「商品市場で金が25%上がったからといって、小売店も同様に25%値上げするわけではありません」、とティファニー社のマーク・アロン氏は言う。「金属価格の上昇は、たしかに小売店での値上げにつながりますが、マーケットでの価格が上がる度に小売店も値上げしていたのでは、売上が低下してしまいます。ですから、他社に負けない魅力的な値段を設定することが鍵です。」
こんな意見もある。「大手宝石店は、今のところ目だった値上げをしていません。ほとんどの大幅値上げは、独立系や小型小売店で起きています。例えば大手ティファニーですが、巨大な購買力がありますから、ある程度までの金価格上昇に耐えることができます。もちろん限度がありますから、更なる金の上昇は、ティファニーだけでなく、他の大手宝石店を値上げに踏み切らせることでしょう」、とモーニングスター社のキム・ピキオラ氏は述べている。
宝石は生活必需品ではない。結婚指輪なら話は別だが、消費者は高くなった宝石を避けることだろう。カリフォルニア州バークレー市で宝石店を経営する、アナ・フレクサー氏の話を聞いてみよう。
「当店には、ティファニーのような店で高価な宝石を買えない方々や、格安品を求めるお客様が訪れます。ですから、派手なものが選ばれることはなく、最低限の要素を満たす宝石が中心です。以前は、指輪やイヤリングを誕生日プレゼントとして購入する方が多かったのですが、最近の値上がりでデジカメなどが選ばれるようになってしまいました。
指輪の場合ですが、お客様の指にフィットするように、サイズを調整する必要があります。これには金を足すことになるので、40ドル余分に費用がかかります。前なら20ドルで済んだのですが、金価格の急上昇で、当店でも最小限の利益を確保するために値上げすることになりました。たったこの20ドルの差が売上に悪影響ですから、小売店経営者には厳しい状況です。」
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の統計によると、2005年度、アメリカでは180億ドルの金を使った宝石の売上があり、これは2004年度を5%上回った。全世界を見ると、売上の三分の一はインドと中国で占められている。重さで換算すると、589トンの売上があったインドが世界最大の金宝石市場だ。(アメリカは353トン)
アジア太平洋地域での売上は、今年も好調になる、と予測しているティファニー社は更なる中国市場開拓を計画している。現に、第1四半期、ティファニーの売上は米国内でやや減少したが、海外での売上は予想以上に増大した。特に伸びたのは、二桁台の成長を記録した日本での売上だ。
ジョン・ネイダー氏(金アナリスト)は、「金価格は上昇することはあっても、現在の価格から大きく下げることはないでしょう」、と言う。また、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のジョン・キャルノン氏は、海外では金を自国の貨幣より重要視する傾向が見え始める、と指摘しているから、まだしばらく金人気は続きそうだ。