米国の将来が心配だ、そんな声が聞こえてくる。アメリカの高校三年生を対象に、経済知識がテストされたのだが、結果があまり芳しくない。問題は合計で30。一問紹介しよう。
子どもの誕生祝いとして、ケリー夫妻に現金が手に入りました。さっそく、それをもとにして、ケリー夫妻は子どもの大学教育のために投資することにしました。次のどの方法が、最も資金を大きく増やすことができるでしょうか?(投資期間は18年)
A、国債 44.8%
B、定期預金 34.8%
C、普通預金 6.3%
D、株 14.2%
数値は、生徒が実際にどう選択肢を選んだかのパーセンテージを示し、正解はDの株。
テスト結果は不合格。平均正解率は52.4%と発表され、初めてこのテストが実施された、1997年の57%を下回った。もっとも2年前は52.3%だったから、わずかながら向上した、と冗談を言うこともできる。「高校生の経済知識不足は深刻な問題です。社会保証給付金制度が不安定な今日、国民は積極的に401K(確定拠出型年金)などを活用して、自分の判断で投資をしなければいけません。テスト成績を見る限り、今の高校生には一般的な投資知識が欠乏しています」、とニューヨーク州立大学のルイス・マンデル教授は語っている。
今回のテストについて、連邦準備銀行で行われた記者会見の要点を記しておこう。
・テストに参加したのは、37州の合計5775人の高校三年生。
・白人生徒の平均正解率は55%、黒人生徒は44.7%、そして中南米系生徒が46.8%だった。黒人生徒と白人生徒の成績が、こんなに離れたのは今回が初めてになる。
・家庭収入が、年間8万ドル以上ある生徒の平均正解率は55.6%、そして家庭収入が年間2万ドル以下の生徒は48.5%の平均正解率だった。これほど二者間の数値が開いたことは、今までに一度も無い。
・2004年、20%の高校三年生は財産管理や、パーソナル・ファイナンスに関する授業を受けたが、2005年、このパーセンテージは17%に減少した。驚くべきことは、これらの授業を受けた生徒達のテスト結果は、受けなかった生徒のテスト成績に劣っている。授業以外に、株投資クラブ(実際の資金を使うのではなく、株ゲームのような形で他の生徒と競う)に参加していた生徒のテスト結果は、クラブに属していない生徒の成績を上回った。
・性別で比べると、結果には歴然とした違いは無い。男子生徒の平均正解率は52.6%、女子生徒は52.3%だった。
上記の問題に、正しくD(株)と答えられた生徒は14.2%にすぎなかったが、こんなに正解率が低かったのはテスト史上初だという。また、経済知識を欠いているのは高校生だけではない。先月、ファイナンシャル・サービス・フォーラムで報告された統計によれば、43%の社会人が投資知識の乏しさを認めている。情報化社会、という言葉が使われるようになってかなりの年月が経つが、経済情報は相変わらずうまく活用されてないようだ。