世界的なカカオ豆不足だ、と経済コラムニストのケビン・カー氏は言う。カカオ豆は、ココアやチョコレートに欠かせない原料だが、アジア太平洋諸国でチョコレートの人気が急上昇している。毎年25%の割合でチョコレート需要量が増えているようだが、最も伸びているのが毎年30%増の中国だ。
既にチョコレート製造業者は砂糖の値上がりに直面しているが、今度は肝心なカカオ豆生産者が、アジアでの需要に追いつきそうもない。オイル、ガソリン、セメントなどの大量消費で知られる中国だが、いよいよチョコレートも主要消費リストに入ったようだ。
カカオ豆の60%は西アフリカで生産されるが、政府からの補助金が大幅に削られ、カカオ豆以外の農作物に切り替える農業経営者が続出している。また、ブラック・ポッド病と呼ばれる菌がまん延し始め、カカオ豆の生産量に大きな悪影響を与えそうだ。
これだけ需給がアンバランスなのだから、カー氏は商品市場でのカカオ買い、そしてハーシーズ(HSY)のようなチョコレート会社への投資を提案している。
需給という言葉で思い出すのが、2005年8月、メキシコ湾岸州を襲ったハリケーン・カトリーナだ。破壊された家屋数は30万にも及ぶから、住宅建築会社が忙しくなる。柱や床には木材が使われるから、注目は材木先物市場だ、という声が多かった。
それから6カ月の月日が流れたが、材木市場が急騰した、というニュースは未だに聞こえてこない。なぜ材木は上がらなかったのか?ナショナル・フューチャーズ・アドバイザリー・サービスのジョン・パーソン氏はこう語る。「メキシコ湾岸州の再建は長期計画です。一斉に全ての地域で建築が始まるわけではありませんから、急激に木材の需給バランスが崩れることは起きません。また、直ぐに家を建てたくても、多くの被害者は保険会社や政府との交渉に難航し、いつ資金が手に入るかが分からない状態です。」
ハリケーンが材木市場に影響を与えなかったのだから、材木市場を動かす一番の要因は何だろうか?「北米で木材需要を左右するのは住宅着工数です」、とランダム・レンクス社のジョン・アンダーソン氏は言う。米国住宅市場は冷えこみが始まり、木曜に発表されたデータによれば、2月の住宅着工数は7.9%減だった。
不動産が下向きになった今日、積極的に材木を買うトレーダーは少ない。アナリストのジム・ワイコフ氏の説明を聞いてみよう。「現在の材木市場はベアマーケット、と言うことができます。しかし、もし300ドルを割ったとしても、そこから更に大きな下落は無いと思います。どちらかと言えば、これからは300ドルと380ドルの間で動く、横ばい相場になりそうです。」
カカオ、材木、どちらも商品市場で売買できるが、株式市場と商品市場の決定的な違いは何だろうか?著名トレーダー、ラリー・ウィリアムズ氏の言葉を記しておこう。「私たちは株が無くても生きて行けます。しかし、大豆、オイルなどの商品には本物の需要と需給が存在します。大袈裟な表現をすれば、商品市場は本物のマーケットです。」