「ウィークエンド・アナリスト」、という言葉がある。毎日仕事に忙しい人でも、週末なら経済欄に目を通す時間がたっぷりある。先週の主なニュースや、アナリストの発表を振り返って投資戦略を練るわけだ。はたして、米国個人投資者たちは、どんなニュースに目を留めるだろうか。さっそく、新聞や経済サイトを見てみよう。
嫌でも目につくのが、AT&Tのベルサウス買収記事だ。今後も電話業界では、頻繁な吸収合併が起きるだろう、という内容だから投資ヒントになる。直接AT&Tを買ってみよう、と思う人もいるだろうが、それでは面白みに欠ける。もっと良いアイディアはないだろうか?
更に調べて行くと、投資者たちはハリー・ドマッシュ氏(投資アドバイザー)の記事にぶつかることだろう。とかくAT&Tのような巨大電話会社ばかりが注目されやすいが、投資者たちは小さな電話会社の存在を忘れている、とドマッシュ氏は指摘する。
大手電話会社は、ニューヨークやシカゴなどの都市マーケットを独占する。多くの企業が、大都市やその周辺に所在するわけだから、都市マーケットが重要であることは理解しやすい。資金的に大手と競争ができない小型電話会社は、農村や人口の少ない田舎が主な市場だ。利用者が少ないわけだから、大手にとって田舎のマーケットは全く魅力が無い。それが事実なら、小型電話会社に投資する意味があるのだろうか?
ドマッシュ氏を引用すれば、小型電話株には成長株に期待できない要素がある。それは高配当金だ。人口の少ない地方マーケットでビジネスを展開する小型電話会社は、市場の拡張には最初から興味が無い。だから自然とキャッシュフローが良くなり、自社株の買い戻しや、高い配当金の支払いが可能になる。
ドマッシュ氏が勧めるのは、6%以上の配当金を払う小型電話会社に狙いを定めることだ。なぜ6%以上を選ぶのだろうか?6%以上の配当金があれば、たとえ悪いニュースが発表されても、株価が回復しやすいからだ。ドマッシュ氏はこう説明する。20ドルで取引されている電話会社があるとしよう。6%の配当なら、年間で支払われる配当金は、一株当たり1ドル20セントになる。さてこの電話会社、運悪く予想を下回る四半期の決算を発表した。失望売りが続出して、株価は20ドルから15ドルに転落してしまう。ここで単純計算をすると、15ドルの株が1ドル20セントの配当を払うということは8%の配当利回りだ。この数値は新たな買い手を呼ぶことになり、下がった株価が回復することになる。
実際の銘柄だが、ドマッシュ氏は5つを挙げている。アラスカ・コミュニケーションズ(ALSK、配当利回り7.5%)。シチズンズ・コミュニケーションズ(CZN、配当利回り7.5%)。コモンウェルス・テレフォン(CTCO、配当利回り6.3%)。アイオワ・テレコミュニケーションズ(IWA、配当利回り9.1%)。バラー・コミュニケーションズ(VCG、配当利回り11.6%)。念のために記しておくが、これは買い推奨ではなく、一つの投資アイディアだ。
全体的に言えることは、今週末は株警戒論が多い。これは米国株だけでなく、海外市場も含めてだ。特に、ファンドマネージャーのマーク・ブシェー氏は、持ち株を最低限に減らすことを強く勧めている。金曜、米国株式市場は反発を見せたが、出来高は平均以下だった。以前ならアップル・コンピュータやグーグルなどのリーダー株があったが、現在のマーケットに強いリーダーは存在しない。それに半導体セクターの低迷も気になる。必要以上に、慎重な銘柄選択が重要になりそうだ。