米国投資者は1月、236億ドルの資金を、外国株専門のミューチュアルファンドに投入した。この金額は、米国株専門ミューチュアルファンドに流入した資金の約3倍に相当し、海外の株に異常な人気が集まっている。滅多に外国株のことなど気にすることがなかった米国投資者だけに、正に投資姿勢が大きく変わったわけだ。
メリマン・キャピタルのポール・メリマン氏は、「個人投資家は、明らかに外国株の追い回しを始めました」、と語っているが、これは単に現状を説明した言葉ではなく、正確には警告だ。メリマン氏や、他のウォールストリート関係者は、1999年の再来を心配している。派手な動きに魅せられて、1999年後半、多数の個人投資家がインターネット株に押し寄せた。しかし2000年、インターネットバブルが弾け、個人投資家たちは大打撃を受けた。
「仕方ないことなのですが、大上昇の後、膨大な資金がマーケットに入ってきます。大きな動きが既に展開されてしまった後ですから、更なる大きな上げ期待が裏切られる可能性が高くなります」、とニール・バートン氏(ファイナンシャル・リサーチ・コープ)は言う。1月に外国株へ向かった236億ドルは、米国史上最高の金額だ。
外国株とは全く比較にならないが、米国株専門ファンドへ移った資金も増加している。12月は流出額が流入額を上回る状態だったが、1月、米国株式ファンドは、82億ドルの新たな資金を獲得した。2005年全体を振り返ってみると、米国投資者は1046億ドル相当の外国株専門ファンドを購入し、312億ドルのアメリカ株専門ファンドを購入した。
モーニングスター社の調べによれば、平均的な外国株専門ファンドは過去3年間、毎年29.2%の利益があった。(米国株専門ファンドは+20%)特に中南米だけに焦点を絞ったファンドの結果が目覚しく、ここ三年間で毎年+64.2%の成績を出している。2006年度だけの様子を見ると、外国株ファンドの平均は+7%、そして米国株ファンドは+4.6%だ。
今年も好調な海外市場だが、先日モルガン・スタンレーは日本株と新興成長市場への投資を控えることを推奨した。あまりにも海外の株価が割高になってしまった現在、米国株の方が魅力的、ということらしい。もちろん、外国株を運用するファンドマネージャーは、モルガン・スタンレーの意見に反対だ。アジアへの投資を専門にする、マーク・ヘッドレー氏はこう語る。「外国株を無視し続けてきた米国投資家が、やっと海外投資の可能性に気がつきました。感情的になった投資家が、外国株に殺到しているわけではありません。これは自然な投資分散です。」
ヘッドレー氏に同感するファンドマネージャーは少なくない。1999年のインターネット株ブームと、今回の外国株ファンド人気は性質が違う。1999年の場合は、投資対象がインターネット銘柄だけに限定されていた。全く投資資金の分散などなかったわけだから、投資者たちは大きな傷を受けた。現在の海外株人気は個別銘柄ではなくファンドだ。集まった資金で、ファンドマネージャーは多くの銘柄を買うわけだから、一銘柄が暴落しても大きな穴を開けることはない。それに長期投資が目的のファンドだから、個別銘柄を追うように、毎日の値動きを気にする人は少ない。アメリカ人の目は、海外にまだ向いたばかり。外国株人気は、しばらく続きそうだ。