なぜトレーダーはトレンドに逆らうのだろうか?株価は抵抗線を突破して、明らかなブレイクアウトなのに、どうして素直に買えないのだろうか?もっと悪いのは、こんなことも起きる。思惑が外れて、持ち株が下げ始める。株価はサポートラインで下降が止まらず、結局ブレイクダウンしてしまう。迷わず損切らなくてはいけないのだが、こんな時に限ってヘンな理屈が頭を支配する。「今売るのは馬鹿げている。マーケットメーカーの罠にはまってはいけない!そろそろ反発が来るに決まっている。」ここで、ぜひ耳を傾けたいのが投資心理研究の第一人者、ブレット・スティーンバーガー氏の言葉だ。
「基本に戻ってください。出来高の重要性を、もう一度見直してほしいと思います。出来高は、トレーダーや投資者が持つ株価に対する意見の表明、と言い換えることもできます。例えば狭い値幅で動いていた株が、大きな出来高を伴って上放れしたとしましょう。これは、トレーダーが株価の一段高を受け入れた、という意思表示です。もう一つ例を挙げましょう。骨董品を、オークションで売ることを考えてください。買い人気がついて、値段が上がっている時は、価格がまだ正当な水準に達していないことを示します。
株式市場にも、オークションに似たルールが適用されます。売り手と買い手がぶつかり合って、その時点における正当株価が決定されるわけです。株価が大きな出来高を伴って、一方的に上げが続く時は、明らかに買いが優勢なわけですから、売りと買いのバランスが完全に買い方に傾いています。その逆に、出来高を増大させて一方的な下げなら、売り手にバランスが傾いているわけです。」
出来高の重要性について、著書「マインド・オーバー・マーケット」の中で、ジェームズ・ダルトン氏はこう記している。「出来高ほど、マーケットの状況を正確に表す指標は存在しない。たとえ上げ基調が明らかなマーケットでも、出来高の増大を伴わないなら、その上げ基調を深追いしてはいけない。」スティーンバーガー氏の話に戻ろう。
「ブレイクダウンなのに損切れなかった、と言うトレーダーに私は、よくこんな質問をします。ブレイクダウンをした時、出来高はどう動きましたか?ほとんどの回答は、値動きだけに気を取られていたので、出来高は見ていなかった、というものです。出来高は、株価に対するトレーダーや投資者の意見です。ブレイクダウンに大きな出来高が伴っているなら、これはトレーダーが株価の下げを認めた、ということです。完全に状況が変わったのですから、ここは素直に損切らなければいけません。」
トレンドに逆らうのに似ているが、ブレイクアウトを期待して買う人たちがいる。売り手と、買い手の株価に対する考え方が明確になる前に買うわけだから、これも賢明なやり方ではない。先を読むことは無意味ではないが、実際に行動を起こすのは、確かなシグナルが出てからだ。そうでないと、長い横ばいに巻き込まれることもあるから気をつけたい。