まだ購入するつもりですか?そんなヘッドラインが目に飛び込んで来た。エコノミスト誌の報道によれば、現状では、住宅を買うよりも借りた方が割安になるという。2002年、世界住宅指数は生温い状態だったが、今この指数は多くの国々で沸騰している。更に付け加えれば、既に住宅市場の冷えこみが始まった国もある。
最も極端な下落を見せたのはオーストラリアだ。2003年、住宅価格は19%の上昇だったが、2005年第4四半期、この数値は+2.7%に落ち込んだ。コモンウェルス・バンク・オブ・オーストラリアの発表によれば(実際に売れた価格ではなく、契約書にサインした時点での価格が使われている)、2005年、平均住宅価格は7%の減少となり、地域別ではシドニーが16%の大きな下げとなった。最近また利上げが実施されたばかりだから、住宅市場は更に冷えこみそうだ。
イギリス住宅市場も、去年の夏から下向きになっている。2月終了時点で過去1年間を計ると+10%の結果なのだが、2005年7月から2006年2月で見るとマイナス20%だ。特定地域の物件だけが下げているのではなく、イギリス全体が不調のようだ。
今年に入りスローダウンが報告される米国住宅市場は、2005年、平均住宅価格は11.2%の上昇だった。特に伸びたのは、+20%のカリフォルニア州とワシントンDC地区だ。前連邦準備理事議長、アラン・グリーンスパン氏は不動産バブルを懸念していたが、全米不動産業協会の調査によれば、25%の物件は投資目的で買われ、オーナーが住むために購入されたわけではない。
ヨーロッパ大陸に目を移そう。フランスの平均住宅価格は16%増、そしてスペインがプラス17%だ。イタリア、スウェーデン、それにベルギーは10%以上の上げだったが、ドイツは下げている。ユーロ地域全体では、平均住宅価格は12.5%の上昇になり、ヨーロッパ中央銀行の金利政策に影響しそうだ。
オーストラリアとイギリスで住宅市場が冷え込んでいるのは、住宅価格が上がり過ぎ、初めて購入する人たちには困難な水準になってしまったためだ。しかし、借りる場合なら家賃はわずかに上がった程度で、地域によっては下がっている所もある。
エコノミスト誌は「家賃利回り」、という耳慣れないものを計算しているが、アメリカ、イギリス、スペイン、ニュージーランド、それにオーストラリアでは、家賃利回りが3.5%に満たない。これでは不動産ローンの利子以下だから、事実上家賃収入は利益になっていない。特にシドニーの家賃利回りは1%ということだから、オーナーは赤字に近い状態らしい。
それでは、サンフランシスコで80万ドルの住宅を購入して、毎月2000ドルで貸したとしよう。毎年家賃を3%の割合で値上げしていくと、7年後(固定資産税、不動産ローンも考慮)オーナーは12万ドル余分に支払っていることになるから、買うよりも借りた方が割安と結論することもできる。低金利時代なら別だが、金利が上昇しているアメリカやヨーロッパでは、住宅が割高になったようだ。