「ミューチュアルファンドは馬ではありません」、と投資者に警告するのは、経済コラムニストのチャック・ジャフィー氏だ。ナスダックとニューヨーク証券取引所に上場されている個別銘柄数は6500以上あるが、ミューチュアルファンドの数も、それに負けない。証券マン=ファンドセールスマンの今日この頃だから、長期投資の主流はミューチュアルファンド、と言っても言い過ぎではない。
ジャフィー氏が指摘するのは、あまりにもつまらない情報を基に、米国投資者はミューチュアルファンドを選んでいることだ。もっと説明してもらおう。
「結論を先に言っておきましょう。大切なことは、ピッチャーの投げるボールだけに集中することです。皆さんは、ツール・ド・フランスで7回優勝した、ランス・アームストロング選手の名前を聞いたことがあると思います。アメリカン・センチュリー・インベストメントは、アームストロング選手と組んで、リブ・ストロングファンド、という新ミューチュアルファンドを発表しました。
アメリカン・センチュリーはコマーシャルの中で、投資者にアームストロング選手の強いイメージを徹底的に強調します。それだけではなく、癌患者や教育施設のために、アメリカン・センチュリーは毎年寄付することもほのめかされています。なかなか説得力の高いコマーシャルです。しかし、既にバランスのとれたファンド投資をしている人なら、わざわざリブ・ストロングファンドに資金を移す必要はありません。
リブ・ストロングファンドは5月から購入することができますが、若い投資者の獲得が焦点になっています。このファンドだけあれば、アームストロング選手のように首位でゴールインできる。ようするに、他のファンドと組み合わせなくても、完璧に老後の資金が貯まる、というわけです。
アメリカン・センチュリーは、たしかに優秀なファンド会社の一つです。リブ・ストロングファンドは好成績なファンドになる可能性もありますが、その逆になることもありえます。現在コマーシャルを通して、アメリカン・センチュリーがしていることは、投資者から信用を獲得することです。そのために利用されているのが、自転車王のアームストロング選手です。
アームストロング選手はチャンピオンですが、投資のチャンピオンではありません。ですから、ミューチュアルファンドと、アームストロング選手を結びつける理由は全く有りません。もし万が一、ウォーレン・バフェット氏がコマーシャルであるファンドを推薦するなら、そのファンドは間違いなく買いです。」
有名人を起用してのコマーシャルは、何も今始まったばかりではない。映画スターが「おいしい」、と言えばそのコーヒーの売上が上がるように、知名度が高い人の力は絶大だ。余談になるが、フィデリティーは誰を使ってミューチュアルファンドを宣伝しているかご存知だろうか。中年世代に圧倒的な人気の、ポール・マッカートニー氏だ。