もう急成長は望めない、といった収益懸念。それにヤフーやマイクロソフトの巻き返しなどを主な理由にして、グーグル叩きが流行っている。「ここまで大きく下げた後、グーグルの悪口を言うのは不公平かもしれません。私自身、グーグルに関しては間違った見方をしていた一人です。なにしろ、グーグルの新規公開株を避けるように勧めていたのですから」、と語るのはハルバート・ダイジェストのマーク・ハルバート氏だ。
既に多くの意見が発表されているが、ハルバート氏は、もう一つグーグルには注目することがあると言う。さっそく説明を聞いてみよう。「ほとんど話題にならないことですが、グーグルは80億ドル以上の現金を持っています。それは良い事だ、と皆さん言われますが、これだけ多額な資金があれば、グーグルは積極的な買収などで、収益を更に向上させることができます。ようするに、膨大な現金はグーグルの大きな武器になるはずです。」
問題は最後の部分、「武器になるはずです」だ。ここでハルバート氏は、1986年、アメリカン・エコノミック・レビューに発表された論文に触れる。ハーバード大学名誉教授、マイケル・ジェンセン氏が書いたものだが、巨額な現金は企業経営に悪影響する、と結論している。ハルバート氏の話に戻ろう。
「ジェンセン教授は、企業が必要以上の現金を抱えると、企業経営の効率が鈍ることを指摘しています。豊富な現金が手元にあると、会社は正しいビジネス環境を把握することができなくなります。反対に、いつも現金を必要とする会社は、絶えず金融市場やビジネストレンドに注意を払っていますから、つまらない間違いを犯すことはありません。」
ここで思い出すのが、ガッカリな決算発表後に、グーグルの財務責任者が語った言葉だ。「思っていたより税率が高くなってしまい、税金の支払いが収益に悪影響となりました。」これだけ金がある会社だから、事前に超一流の会計士を何人も雇うことで、こんなつまらないミスは防げた。あるアナリストも言っていたが、これは明らかにグーグルの落ち度であり、適切な現状把握努力を怠っていたようだ。
ジェンセン教授は、もう一つこんなことを挙げている。企業の現金は大切に使われるべきものだが、金があり過ぎると、経営者は馬鹿らしいプロジェクトに手を出すようになるという。これを防ぐには、どうしたら良いだろうか?手っ取り早いのは、有り余る余剰資金を配当金として、投資者に還元してしまうことだ。
ところでグーグルは、次にどんな計画をしているのだろうか?ハルバート氏を引用しよう。「バロンズ紙によれば、グーグルはNASAからの協力を得て、無重力環境でのスポーツを考えているようです。ひょっとしたら、これは大ヒットするかもしれません。しかし、それはジェンセン教授が警告する、馬鹿らしいプロジェクトかもしれません。」なるほど、どちらにしても、まだグーグルから目が離せないようだ。