「トウモロコシの先物は爆発的な上昇になる可能性があります」、とCKフューチャーズのクリス・クラフト氏は言う。一般教書演説でブッシュ大統領が約束したように、米政府は代替エネルギー開発予算を22%増やす。そこで注目されるのが、クラフト氏が強気のトウモロコシだ。
食用以外の使い道として、トウモロコシからガソリンに替わる、エタノールを造ることができる。製粉化されたトウモロコシは水と混ぜられ、発酵プロセスへと進んで行く。発酵されたトウモロコシは度重なる加熱工程を経て、最終的に純度99.5%のエタノールに姿を変える。
面白そうだ。ひょっとしたらクラフト氏の見方どおり、トウモロコシは大幅上昇になるかもしれない。しかし、アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのケビン・ハセット氏は、こんなことを語る。「コーネル大学とカリフォルニア州立大学バークレー校の研究によると、トウモロコシからエタノールを造るために必要なエネルギーは、エタノール自身が持つエネルギーを29%も上回っています。」これでは非効率的だ。もう少しハセット氏の話を聞いてみよう。
「オイルやガソリンがどんなに値上がりしても、エタノールは経済的な代替エネルギーになることはありません。トウモロコシからエタノールを造るには、大量なオイルが要ります。将来、新テクノロジーがオイル無しでエタノール製造を可能にするかもしれませんが、現代の技術では単なる国家予算の無駄使いです。もう一つの問題は大気汚染です。エタノールとガソリンがミックスされると、ガソリンだけで走る車以上に排気ガスがひどくなります。ですから、環境を破壊するエタノールは、私たちの社会に必要ありません。」
割高な製造そして環境汚染、こんなエタノールになぜ米国政府は金を使うのか?ハセット氏を引用しよう。「アイオア州やイリノイ州などの、トウモロコシ生産州から選出された議員が原因の一つです。政治家にとって代替エネルギー予算は、自州に現金を引き込む最大なチャンスです。また、エタノール開発の大手ADM社(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)からの政治献金も忘れてはいけません。2002年、イリノイ州選出デニス・ハスタート氏(下院議長)、トム・ハーキン上院議員(アイオア州選出)などの著名議員は、ADM社からの献金を受け取っていました。」
OPIS社のオイル・アナリスト、トム・クローザ氏の話を付け加えよう。「誰も語らないことですが、エタノール製造者は信じられない利益を手に入れています。エタノールを1ガロン造るには1ドル15セントのコストがかかり、これは多ければ2ドル70セントで販売されます。1バレルは42ガロンですから、単純計算すると(2.70 - 1.15=1.55, 155x42=65.1)、1バレルあたりの利益は65ドル10セントです。もちろん、輸送費や保険などを考慮すると儲けは50ドルから60ドルになると思われます。」
ここで、もう一度ハセット氏に戻ろう。「10年以上も政府からの資金援助があったにもかかわらず、いまだに経済的なエタノールは開発されていません。エタノールは詐欺のようなものです。トウモロコシ生産州が、国民から税金を奪い取っているだけです。」