4.68%、4.58%、そして4.55%。どれが30年物国債利回りだろうか?正解は、一番低い4.55%が30年物、4.58%が10年物、そして最も高い4.68%が2年物国債利回りだ。普通なら、長期な物ほど利回りが高くなるから、現在のアメリカ国債市場には、逆イールド現象が起きているわけだ。
利回りの逆転現象は、不景気の前ぶれになる、と一般的に言われる。短期金利で金を借りて、長期金利で消費者に金を貸す銀行には、明らかに逆イールド現象は悪影響だ。しかし、ジョン・スノー氏(財務長官)、それに連銀を去ったばかりのグリーンスパン氏によれば、逆イールド現象は悪化する米国経済を示すものではなく、海外からの旺盛な投資結果だ、ということになる。
新連邦準備理事議長、バーナンキ氏も、海外からの膨大な余剰資金が、いまだかつて無い勢いでアメリカ国債市場に流入している、と同様な見解だ。
2年物と10年物利回りが逆転したのは2005年12月、5年ぶりの出来事だ。2000年に起きた逆イールド現象は、たしかに不景気の警報となり、連銀の積極的な金利引下げ政策が始まった。過去30年間を振り返ると、利回り逆転現象が米国経済冷え込み警告にならなかったのは、1998年(アジア経済危機)の時だけだ。
「歴史的に見れば、現在の利回りは危険信号です。もちろん心配になりますが、これが不景気の前ぶれかは、まだ分かりません」、と投資戦略家のピーター・カーディロ氏は言う。ワイス・ペック・アンド・グリーア社のトム・ジラード氏は、こう語る。「金融機関が高利益を上げることは、今後さらに難しくなります。ですから、銀行は積極的にローンをすることができなくなるでしょう。」
アクション・エコノミクス社のマイケル・エングルンド氏は、現在の利回り状況を気にする必要は無いと言う。「長期国債と短期国債の利回りを単純に比較するのは間違いです。正しい状況を把握するためには、利回りの平均値を使う必要があります。月平均値で利回りを比べると、イールド逆転現象は、まだ起きていません。」
JPモルガンの、アンソニー・カリダキス氏を引用しよう。「これは典型的な逆イールド現象です。だからと言って、それが米国経済の減速を予測しているわけではありません。今回の逆転は、米国経済のファンダメンタルズが原因ではなく、テクニカル的要素が引き起こしたものです。ですから必要以上に、利回りだけに注意を払うのは間違いです。」
経済は冷え込む、冷え込まない、と意見は分かれるが、多くのアナリストはデービッド・ゴールドマン氏(キャンター・フィッツジェラルド社)に賛成だ。「国債市場は、連銀に明確なメッセージを送っています。連銀は短期金利を上げ過ぎました。マーケットは、金利の引き下げを要求しています。」