世界貿易センターが襲われた2001年9月11日を境に、空港での持ち物検査が厳しくなった。塵も積もれば山となる、の言葉どおり、今日までアメリカの国際空港で没収された物品は膨大な量になる。腐る物や、危険な薬品類は直ぐ処分されることになるが、ハサミ、ライター、ポケットナイフなどには価値があるから、捨ててしまうのはもったいない。かと言って全て保管したのでは、いくら場所があっても足りない。当然な成り行きとして、没収品は売られることになる。
実際に販売を担当するのは州政府だ。ペンシルバニア州で没収品販売の責任者を務める、ケネス・ヘス氏はこう語っている。「売れ残る物は一つもありません。去年の12月には、1万7000ドル以上の売上がありました。それに、毎月5000ポンド(2265キロ)近い品物をイーベイでも販売しています。」なんと、オンラインオークションのイーベイが利用されていたわけだ。ならイーベイは買いかな?おっと、これでは話がそれてしまう。
ヘス氏は5000ポンドという重さを使った表現をしているが、氏の手元に空港から届くのは、ハサミやポケットナイフが詰まった箱、箱、そして箱だ。「2004年のことですが、スイス・アーミー・ナイフが500個入った箱を、イーベイで売ったことがあります。カリフォルニアに住む買い手が、595ドルで競り落としましたが、これは没収されたナイフに付けられた最高記録です。」
「品物は全て売り切れます」、とアーカンソー州のジェームズ・スミス氏も言う。「物によっては2回、3回のオークションが必要になることがありますが、必ず売れます。もともとタダで手に入れた物ですから、何度もオークションにかけたからといって、州が損をすることはありません。」スミス氏がオークションを利用するようになったのは、次のようないきさつがある。「最初は、没収品を公立の小学校や図書館、それに市役所などに寄付していました。皆さん喜んで受け取ってくれましたが、今ではハサミと言っても断られるだけです。どうやら、アーカンソー全州民にハサミが行き渡ったようです。」
メリーランド州は、インターネットを一切使用しない、昔ながらのやり方で販売している。没収されたハサミやナイフは、箱に詰め込まれ(約22キロ)、ジェサップ市にある物置に運ばれる。そこで一箱50ドルで販売されるわけだが、この方法で毎月5箱から20箱ほど売れるようだ。箱の中にはハサミより少し貴重な物を混ぜて、お客さんたちに、良い買い物をした、と思ってもらえるように工夫がされている。
さて、今年も没収品ビジネスは繁盛するだろうか?2005年12月22日、機内持ち込み品規制が緩和された。そのため、刃の長さが4インチ(約10センチ)までなら機内に持ち込むことができるようになった。更にドライバー、レンチなどの工具(17.8センチまでの長さ)も許可され、空港での没収品は減りそうだ。