喧嘩しないで、お兄ちゃんと仲良く分けなさい!皆さんも子どもの頃、母親からそんな注意をされたことがあると思う。一つしかない物を自分だけで独占しないで、他の人と共有し、わかち合うことの大切さを、子どもに教えようとしているわけだ。
共有、わかち合う、道徳的な観念だが、今日のアメリカ社会を見ると、共有者の人数が多くなるほど、共有されている物がいい加減に扱われる傾向がある。(アメリカだけの現象ではないかもしれない。)一番分かりやすい例は公衆トイレだ。緊急事態でどうしようもない場合は仕方ないが、とにかくアメリカの公衆トイレは汚い。
ジョージ・メイソン大学のラッセル・ロバーツ氏(経済学部教授)は、こんな発表をしている。「私的所有物(私有財産)は、不正使用されたり、破壊されることは、先ずほとんどありません。壊されたり、乱暴に扱われるのは、皆が使用する公共物です。逆説的な言い方をすれば、全ての人が自由に使える物は、誰の物でもありません。自分の物ではないわけですから、とうぜん大切にしよう、などという気持ちは起きません。」
ヨーロッパには、公衆トイレとプライベート・トイレ(私有物)がある。アメリカと同様に、公衆トイレは汚れているが、私有物であるプライベート・トイレは清掃が行き届き、とてもきれいだという。たしかにプライベート・トイレは有料だが、明確な所有者が存在するため、常に気が配られているわけだ。
山火事も、私有地ではなく、政府の所有する森林地帯で発生しやすい。キャンプファイヤ、不注意な花火などが山火事の原因になるが、たいがいそんなことは公立公園内で起きる。しかし、同じ森林地帯でも、私有地となると話は全く違う。政府の所有する森林は単なる木だが、私有地の森林は材木になる貴重な財源だ。将来の商品だから、キャンプファイヤや花火の餌食になるわけにはいかない。だから警備員を雇って、いつも怠りなく監視をするわけだ。
とここまで書いてくると、全ての公共物を私有化することは有意義のように思える。現に、この私有化のアイディアがアフリカの象を救っている。政府の所有するジャングルで、象を狩猟することは禁じられている。しかし、高い値段で売れる象牙を狙って、密猟者たちが後を絶たない。そこで、こんな解決方法が実施された。ジンバブエ、ウガンダ、そしてケニア政府は、村民たちに象狩猟ライセンスを1頭あたり1万ドルで販売する権利を与えた。
結果的には、この象殺し許可証販売が、密漁を大幅に減少させた。何故だろうか?理由は、村民たちに1万ドルの1部が手に入るからだ。もう象は昔のように、単なる象ではない。家庭を支える重要な収入源になったわけだから、勝手に密猟者たちに殺させるわけにはいかない。もちろん、収入になるからといって、無闇に象の頭数を減らしてしまったら商売にならない。今や象は村民の私有物なのだ。