ブッシュ大統領の、一般教書演説には何も新しいものがなかった。だから狙いは石炭銘柄だ、と人気マーケット・コラムニスト、ジム・ジューバック氏は言う。正確には、大きな声で「石炭!」と強調している。「もうかなり上がってしまっている、と思われるかもしれませんが、エネルギーセクターの中で、石炭が長期的に一番有望です。」
なぜ石炭なのか?一般教書演説を振り返ってみると、大統領は石油に替わるエネルギー開発のために、2006年度予算を22%増やすことを約束した。「政治家が、具体的なパーセンテージを示した時は要注意です」、とジューバック氏は指摘する。さっそく氏に、22%増が持つ意味を説明してもらおう。
1、環境を破壊しない石炭エネルギー開発のために、更に2億1800万ドルが支給される。
2、石炭から炭酸ガスを取り出す研究のために、更に5400万ドルが割り当てられる。
3、ハイドロゲン燃料開発予算が、2億3600万ドル増額される。
4、更に8300万ドルが、太陽エネルギー開発に支給される。
5、風力エネルギー開発予算が、3900万ドル増える。
6、工場の廃棄物を、エタノールに変える研究予算が5900万ドル増額される。
こう説明されると、多額な金がエネルギー開発に向けられる、と思ってしまうが、「これだけの金額では、13兆ドルに及ぶアメリカ経済に何の影響も与えることはできません」、とジューバック氏は語る。
もう一つ注目すべき点として、ジューバック氏はこんなことを挙げている。「大統領は中東からの石油輸入量を7、5%減らすことを目標にしていますが、2025年までにそれを実現することを目標にしています。ひじょうに長期的な計画です。ですから、現状のエネルギー開発ポリシーが直ぐ変わることはありません。ようするに、今までやってきたことが、これからも続くだけの話です。現状維持が継続する限り、エネルギーセクターで最も伸びるのは石炭株です。」
石炭を利用した発電所には、高質な蒸気タービンが必要になる。ベア・スターンズ社の調べによれば、蒸気タービンの需要が爆発的に増大するという。単に石炭を利用した発電所だけでなく、オイルを使った発電所も含めると、向こう5年から10年以内に、40%の発電所が新タービンに取り替える必要があるようだ。
40%、大きな数字だ。どの銘柄を買ったら良いだろうか?タービンならゼネラル・エレクトリック(GE)、と多くの投資家は考えるが、このセクターのアナリストはアルストム社を推奨している。聞いたことがない銘柄だが、上場されているのはパリの証券取引所だ。業績不振に悩んだアルストム社は、2003年、パトリック・クロン氏を最高経営責任者に抜擢し、収益状況が大きく好転した。
アルストム社はあらゆる種類の発電所にタービンを販売しているが、主要マーケットは石炭を使った発電所になる。ベア・スターンズのレポートによれば、アルストム社は蒸気タービン業界のリーダーであり、収益も向こう5年間、毎年20%以上の成長が期待できるようだ。取引されているのはパリの証券取引所。少し買うのが面倒になるが、面白そうな銘柄だ。