先ず、ドル/円の週足チャートを見てほしい。
2005年一月、101.67円の安値をつけたドルは、そこが起点となって上昇が始まった。2005年12月の121.39円を境に、急激なドル売りがあったが、長期的なアップトレンドは崩れていない。なぜドルが買われたのだろうか?大きな理由は、14回連続の短期金利引き上げだ。
このままドルの上昇は続くのだろうか?アメリカが抱える、巨額な貿易、財政赤字を考慮すると、どうしてもドルに対して強気になれない、と多くの経済学者たちは言う。膨大な赤字のおかげで、大量のドルが外国人たちの手中にある。赤字の穴埋めをするには、どこかから金を借りる必要がある。だから国債を発行することになるのだが、米国内には大した国債需要が無いから、必然的に外国人を頼ることになる。
11月、財務省から発表されたデータを見ると、外国人で最もアメリカの国債を保持するのは日本だ。その額は6830億ドルにおよび、そして2位の中国へと続く。外国人からの投資を得るためには、低金利ではダメだ。現在の米国金利引き上げサイクルは外国人には魅力的だが、一般米国消費者には嬉しくない。住宅ローン、自動車ローン、それにクレジットカード金利が上昇し、これはアメリカ経済を減速させる要因になる。ここでアメリカ経済が失速すると、外国人も困ってしまう。米国へ品物を輸出しても、消費者がパンク状態では話にならない。
約15%のドル下落を予測する、ムーディーズ社のジョン・ロンスキー氏はこう語る。「ドル上昇が続く、と安心するのは大きな間違いです。ドル大幅下落の危険性があります。」スタンダード・アンド・プアーズ社の、デービッド・ワイス氏は、次のように述べている。「2005年、アメリカの貿易赤字は、2004年の6680億ドルを上回る8170億ドルでした。こんなに膨大な赤字を抱える国の通貨が、これ以上上昇することはありえません。」
もし本当にドル高が終わる可能性があるなら、個人投資家はどう対処したら良いのだろうか?経済コラムニスト、ジョン・ワゴナー氏の意見を聞いてみよう。「インタレスト・レート・オブザーバーのジェームズ・グラント氏は金投資を勧めています。通貨の価値が下がる時は、金に資金が流入するからです。
もし直接金投資ができないのでしたら、ドルが下がると値上がりするミューチュアルファンド、Rydex Weakening Dollar fundがあります。このファンドは、ドルが1%下がると約2%上昇する仕組みになっています。ドルには弱気だが、ユーロが上がる、と思うのでしたらEuro Currency Trustが適しています。」
しかし、最後にワゴナー氏はこう付け加えている。「米国の貿易赤字は今日始まったことではありません。もうかなり長いこと、経済学者たちはドル急落を警告しています。この警報が現実となるのは、まだ先のことかもしれません。経済学者の無視を勧めているのではありません。ごく一部の投資資金は、常に金などに回しておくことが大切だと思います。」