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税金のプロが犯した税金のミス

まだ1カ月以上残っているが、そろそろ税金の確定申告が気になる頃だ。たとえ給料以外の収入が無い人でも、所得税申告書に、間違い無く書き込むのは骨が折れる。住宅ローンの利子、教会などの団体への寄付、それに医療費やベビーシッターに払った金などは所得から控除できるから、やはり専門家からのアドバイスが欲しくなる。そんな要望にこたえてくれるのが、H&Rブロックだ。

スーパーマーケットの隣、ショッピングセンターの中、そんな人通りの多い場所にH&Rブロックは事務所を構える。個人納税者にアドバイス、申告書の作成、そして書類の提出までやってくれるから利用者の数は多い。

金曜(24日)、ニューヨーク証券取引所に上場されるH&Rブロックは、8.65%の大幅下落になった。報道によれば、H&Rブロックは2004年度と、2005年度の決算報告書をやり直さなくてはいけない。何故か?報告書には会計ミスがあり、そのためH&Rブロックは税金を3200万ドル(37億4400万円)過少支払いしていた。

税金の専門家が、税金の間違いを起こしていたのでは話にならない。これでは、株を投げたくなっても仕方ないだろう。CBSニュースや多くの報道機関が指摘していることは、H&Rブロックが抱えている法的トラブルが、今回の税金過少支払いにつながったものと見られている。

H&Rブロックは、誤解されやすいローンプログラムが問題になり、集団訴訟されていた。誰でも税金の払い戻しは、今直ぐにでも受け取りたいと思うものだ。こんな客の気持ちを利用して、H&Rブロックは客にローンをすることで高金利を稼いでいた。もう少し説明しよう。

例えば、Aさんには3000ドルの払い戻しが見込めるとしよう。このAさんに対して、H&Rブロックのアドバイザーは、こんな提案をする。「国から払い戻しの小切手が送られるには数ヶ月かかります。しかし、この金額全部を2、3日中に受け取る方法があります。」こんなふうに持ちかけられたら、興味を持つ人が多いことだろう。

ようするにH&Rブロックが、Aさんに3000ドルを貸して利子を取るわけだが、金利は超割高の40%から700%だ。これが集団訴訟になった経緯なのだが、2005年12月21日、H&Rブロックは訴訟解決策として、6250万ドルを支払うことに同意した。

これで一件落着、と思ったがH&Rブロックの法的トラブルは消えない。2月15日、カリフォルニア州検事総長事務局は州法と連邦法違反で、H&Rブロックを訴えた。検事総長事務局によれば、高金利ローンのほとんどは低所得家庭がターゲットになり、そしてこれはローンであるにもかかわらず、H&Rブロックは払い戻し、という表現を使っていた。

H&Rブロックが大きく下げた理由のもう一つは、この税金ミスニュースと前後して発表された、ガッカリな第3四半期の収益だ。どちらにしても、確定申告まで1カ月と少し。こんな状況では、H&Rブロックの客は大きく減ることだろう。

「ミューチュアルファンドは馬ではありません」、と投資者に警告するのは、経済コラムニストのチャック・ジャフィー氏だ。ナスダックとニューヨーク証券取引所に上場されている個別銘柄数は6500以上あるが、ミューチュアルファンドの数も、それに負けない。証券マン=ファンドセールスマンの今日この頃だから、長期投資の主流はミューチュアルファンド、と言っても言い過ぎではない。

ジャフィー氏が指摘するのは、あまりにもつまらない情報を基に、米国投資者はミューチュアルファンドを選んでいることだ。もっと説明してもらおう。

「結論を先に言っておきましょう。大切なことは、ピッチャーの投げるボールだけに集中することです。皆さんは、ツール・ド・フランスで7回優勝した、ランス・アームストロング選手の名前を聞いたことがあると思います。アメリカン・センチュリー・インベストメントは、アームストロング選手と組んで、リブ・ストロングファンド、という新ミューチュアルファンドを発表しました。

アメリカン・センチュリーはコマーシャルの中で、投資者にアームストロング選手の強いイメージを徹底的に強調します。それだけではなく、癌患者や教育施設のために、アメリカン・センチュリーは毎年寄付することもほのめかされています。なかなか説得力の高いコマーシャルです。しかし、既にバランスのとれたファンド投資をしている人なら、わざわざリブ・ストロングファンドに資金を移す必要はありません。

リブ・ストロングファンドは5月から購入することができますが、若い投資者の獲得が焦点になっています。このファンドだけあれば、アームストロング選手のように首位でゴールインできる。ようするに、他のファンドと組み合わせなくても、完璧に老後の資金が貯まる、というわけです。

アメリカン・センチュリーは、たしかに優秀なファンド会社の一つです。リブ・ストロングファンドは好成績なファンドになる可能性もありますが、その逆になることもありえます。現在コマーシャルを通して、アメリカン・センチュリーがしていることは、投資者から信用を獲得することです。そのために利用されているのが、自転車王のアームストロング選手です。

アームストロング選手はチャンピオンですが、投資のチャンピオンではありません。ですから、ミューチュアルファンドと、アームストロング選手を結びつける理由は全く有りません。もし万が一、ウォーレン・バフェット氏がコマーシャルであるファンドを推薦するなら、そのファンドは間違いなく買いです。」

有名人を起用してのコマーシャルは、何も今始まったばかりではない。映画スターが「おいしい」、と言えばそのコーヒーの売上が上がるように、知名度が高い人の力は絶大だ。余談になるが、フィデリティーは誰を使ってミューチュアルファンドを宣伝しているかご存知だろうか。中年世代に圧倒的な人気の、ポール・マッカートニー氏だ。

高い授業料

トム・ディロンさん(19才)には、既に5万2000ドル(608万4000円)の借金がある。そしてこの金額は、最終的に15万ドル(1755万円)を超えることになるらしい。ディロンさんは、コネチカット大学薬学部に通う学生だが、15万ドルは、大学と大学院授業料のために借りる学生ローンの総額だ。

1月31日、連銀は14回連続の短期金利引き上げを実施した。2004年の6月から金利上昇が続いているわけだが、これは学生ローンにも影響を及ぼしている。連邦政府が出資する学生ローン金利は、7月1日、6.8%に引き上げられる。その結果、利率はここ5年間で最高のレベルに達する。これで学生は、高い授業料に閉口するだけでなく、金利の返済にも悩まされるわけだ。

高額な学生ローンの借金は、大学卒業後の社会生活に、様々な弊害を起こす原因になる。例を挙げれば、学生ローンの返済を優先させるため、老後のための投資ができない。結婚資金が貯まらず、独身生活が長引く。住宅購入が困難になる。子どもの教育資金用の貯蓄ができない。

バージニア・カレッジ・セービング・プランの、ダイアナ・キャンター氏はこう語る。「卒業後は社会人として、旺盛なチャレンジ精神が必要なのですが、多額な学生ローンの支払いがあるため、どうしても消極的な生き方になってしまいます。自分で商売を始めて起業家になりたい、という願望があっても、月々の借金支払いを済ませると、手元には大した額の金が残りません。ですから、少ない資金を守ろうという気持ちが生まれ、起業家の夢を捨てることになるのです。」

ヘザー・ブシェイ氏(エコノミスト)の調べによれば、1981年、学生が毎年夏休みに仕事をすれば、授業料の三分の二を稼ぐことができた。だから、夏休み以外にもパートで働けば、学生ローンを利用する必要は、全く無かったわけだ。今日の学生は、毎日フルタイムで働いても、州立大学の一年分に相当する授業料しか貯めることができない。

こうなると両親が当てにされるが、住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードの支払いなどに追われ、子どもの教育費まで手が回らない。多くのファイナンシャル・プランナーは、こんなアドバイスを親たちにする。「子どもは学生ローンを利用することで、授業料を借りることができます。しかし、老後の生活代は借りることができません。子どもの教育は重要ですが、自分たちの老後用投資を犠牲にしてはいけません。」

在学中に学生ローンを気にする学生は、ほとんどいない。ローン=借金、という公式が現実味を帯びるのは、大学の卒業後だ。返済が立て続けに遅れるようなことが起きれば、連邦政府は給料を差し押さえることができる。運悪く自己破産のような事態に陥っても、学生ローンは帳消しにならない。とにかく払い終わるまで、連邦政府は借り主を追いかけるわけだ。

貿易赤字、財政赤字、自動車ローン、住宅ローン、学生ローン、そしてクレジットカード。正にアメリカは赤字大国だ。

ビジネスマン、キャリアウーマンなら会議でレポートを発表しなければならない時がある。同僚や上司を前にして、説得力のある力強い発表をしたい、と思うのは誰でも同じだ。しかし、ビジネス・コミュニケーションのコーチとして知られるカーマイン・ガロ氏によれば、たとえどんなに内容が素晴らしくても、10の悪い癖のおかげで、プレゼンテーションは台無しになってしまう。さっそく、10の悪い癖を紹介しよう。

1、ノートやメモを読むだけの発表
出席者と効果的なコミュニケーションをするには、持参したノートを単に読み上げるようなプレゼンテーションをしてはいけない。時々メモに目を落とすのは問題ない。だが、一字一句全て朗読してしまっては、聞き手を退屈させるだけだ。プレゼンテーションの名人、スティーブ・ジョブズ氏(アップル・コンピュータ最高経営責任者)は、メモが無くても発表できるように、長時間かけてプレゼンテーションの練習をしていることを覚えておいてほしい。

2、出席者と視線を合わせることを避ける
相手と視線を合わせること無しで、有効なコミュニケーションをすることは不可能だ。多くのプレゼンターは壁、天井、床、机などを見ることはあっても、肝心な聞き手の目を見ることができない。発表時間の90%は、出席者と視線を合わせることが必要だ。もちろん、相手を睨むのは逆効果になってしまう。

3、不適切な服装
見るからに安物と分かるスーツ。ほこりをかぶった靴。シワの目立つシャツ。服装はイメージを作り上げる重要な要素だ。

4、目ざわりな動作
意味も無く手をブラブラさせたり、やたらと右へ左へと歩き回るのは聞き手に不愉快になることが多い。できればプレゼンテーションをビデオに撮って、自分の動きを復習しよう。

5、準備不足
ここで言う準備不足は内容ではなく、プレゼンテーションの練習不足のことだ。ただレポートを、何度も黙読するだけでは意味が無い。実際に声を出して、身振り手振りをまじえて練習することが大切だ。スティーブ・ジョブズ氏を挙げたが、シスコの最高経営責任者ジョン・チェンバーズ氏も、プレゼンテーションの練習熱心で有名だ。

6、直立不動
兵隊のように直立したまま、全く動かない人がいる。これでは堅苦しい。適切なジェスチャーは、プレゼンテーションに弾みを付けることを覚えておこう。

7、スライドに書かれていることを全部読み上げてしまう
当たり前のことだが、聞き手も読むことができる。しかしプレゼンターは、そんな常識を忘れ、自分でスライドに書かれていることを全て読み上げてしまう。スライドの利用は効果的だが、それはグラフや表に使われるべきであり、あまり多くの文字が入っているものは避けたい。

8、長時間話し過ぎ
18分を過ぎると、聞き手は注意力が散漫になる。30秒で話せることを、5分もかけて説明するのは馬鹿げている。

9、刺激的要素が足りない
聞き手をエキサイトさせることができないプレゼンテーションは失敗だ。聞き手は初めと終わりを覚えている傾向があるから、話の切り出しと締めくくりには、刺激的な内容を盛り込もう。

10、結論に創造的刺激が無い
できれば意外な結論で、聞き手をアッと言わせたい。意外性は、聞き手の心に長く残るものだ。

米国投資者を狙う10の罠

2006年、アメリカの投資者には、どんな罠が待ち受けているのだろうか。北米証券業管理職協会が発表した、10のよく使われる手口を紹介しよう。

1、親近感を利用したセールス
同じ大学を卒業した。同じ教会に出席している。子どもが同じ小学校に通っている。様々な理由を使って、セールスマンは投資者に接近する。例えば、1995年にABC大学を卒業された皆さんに限り、1年目の保険料20%割引で生命保険に加入できる、といったものだ。こんな場合は、次の質問に答えてほしい。もし、母校の名前が記されていなくても、この生命保険に加入するだろうか?

2、頻繁すぎる売買回数
証券会社に口座を100%任せると、こんなことが起きやすい。手数料稼ぎのために、必要以上の売買がされるわけだが、おかしい、と思ったら直ぐ証券会社に問い合わせることだ。担当者だけでなく、上司にも状況を説明することを忘れないようにしよう。客の口座で、証券会社が頻繁すぎる売買をすることは禁止されている。

3、株式指数に連動する定期預金
株が好調なら利子も上がるが、反対なら利子はゼロだ。普通の定期預金は元本が保証されているが、この定期預金には元本保証が無い。

4、インチキなオイル投資
ここには膨大なオイルが眠っている、といった売り文句で投資者を募るが、最初からオイルなど無いから完全な詐欺だ。オイル投資には、いい加減な話が多いから注意したい。

5、個人情報泥棒
使っている銀行や証券会社から、パスワードやユーザーネームなどの個人情報確認のメールが来たら気をつけよう。金融機関は、メールで個人情報を求めることは無い。

6、外国の銀行からの誘い
高い定期預金利子が約束されているが、海外からの勧誘は先ず断るのが無難だ。こんな質問をしてみよう。何故わざわざ私に、外国から誘いが来たのだろう?

7、暴騰銘柄を保証する株ニュースレター
どうしてそんな貴重な情報を他人に教えたいのだろうか?信じられないような成績が自慢されていたら、インチキはほぼ間違いない。

8、損を取り返してあげます
投資詐欺にあった人のために、資金を取り返してあげます、と被害者に近づく詐欺師が多いので気をつけたい。

9、高金利約束手形への投資
金利が高ければ高いほど、投資が危険になることを覚えておこう。手形は、どの金融機関が発行したものだろうか。元本は保証されているだろうか。よく調べよう。

10、現金自動支払機への投資
ショッピングセンターなどに現金自動支払機を設置して、1回の引き出しで約2ドルから4ドルの手数料を得るのが目的になる投資だ。業者が現金自動支払機の取り付けから集金までやってくれるのだが、場所はかなり遠方であることが多い。だから実際に自分で設置された機械を見に行くことはないから、これも詐欺投資の可能性が高い。

裸で空売り

米国株の空売りが、最近やりにくくなった、と言うトレーダーの声が増えている。たしかに、アップティックルールという規制があるから、株価が下落している時には空売りができない。逆に株価が上昇している時には、買い制約など無いから、アップティックルールは評判が悪い。

しかし今回、空売りがスムースにいかないのは、アップティックルールが原因ではない。問題はnaked (裸)shorting(空売り)だ。順を追って説明しよう。

チャートソフトウェアで有名なだけでなく、デイトレーダーに人気の、トレードステーション証券に全米証券業者協会(NASD)から「空売りルール違反」の通達があった。取調べの対象になったのは2004年度に起きた、約200件におよぶ不法な空売りだ。その結果、トレードステーション証券には罰金が科されるようだが、金額などの詳しい内容は、まだ全米証券業者協会から発表されていない。

トレードステーション証券だけが狙われたわけではない。NASDは去年から、証券会社における、違法な空売りを広く捜査中だという。ここで明確にしておかなければいけないのは、正当な空売りに対するNASDの見方だ。「空売りは、株式市場の抑制と均衡を保つ重要な要素の一つだ。例を挙げれば、空売りは不正な企業を暴露する有効な手段になる。」

空売りを成立させるには、対象になる株を、ブローカーから先ず借りなければならない。それが済んだ時点で、はじめて空売りが可能になる。しかし、トレードステーション証券が行ったnaked (裸)shorting(空売り)は、肝心な最初の部分を飛ばしている。ようするにnaked shortingというのは、実際に株を借りずに、トレーダーたちの空売りを許可することだ。naked shortingは、需給バランスを崩す要因になるから、株価を必要以上に下落させてしまう、と批判するアナリストも多い。

トレードステーション証券だけに限らず、ほとんどの証券会社は、シティグループやゴールドマン・サックスのような大手証券会社から空売り用の株を借りる。トレードステーションの話によれば、2004年度に起きたとされる違反取引は、ベア・スターンズから正規に株を借りた後で発生したようだ。

もしそれが事実なら、悪いのはトレードステーションではなく、ベア・スターンズの方になる。名前は公表されていないが、内部事情に詳しいマーケット関係者は、こう語っている。「ゴールドマン・サックスやベア・スターンズにとって、空売り用の株を貸すことは良い収入になります。ですから、naked (裸)shorting(空売り)と分かっていても、それを無視することが多いのです。」

お分かりいただけただろうか。最近空売りがスムースにいかないのは、取調べや罰金を恐れて、大手証券会社が、空売り用の株を貸すことに慎重になったからだ。

空売りに関する、こんな報道もある。オーバーストック・ドット・コムの最高経営責任者、パトリック・バーン氏はロッカー・パートナーズ(ヘッジファンド)を訴えた。理由は、違法なnaked (裸)shorting(空売り)を利用して、ロッカー・パートナーズは、オーバーストック・ドット・コムの株価暴落を企んでいる、というものだ。

相場師「森玄」が登場する「赤いダイヤ」は、小豆をテーマにした梶山季之氏の人気小説だ。壮烈な仕手戦物語を読むのは楽しいが、商品市場には暗い話が多い。単に財産を失っただけでなく、自殺してしまった人たちもいる。おかげで、商品市場はギャンブルよりも始末が悪い、というイメージが中々消えない。

こんな事実がある。2005年、米国株式市場の尺度になるS&P500指数は4.9%の上昇だった。しかし、大豆は+12.1%、砂糖+22.1%、それに退屈な綿でさえ5%の伸びを記録した。株よりも成績が良いなら、商品市場へのうまい参加方法はないものだろうか?そんな質問をする、株投資者たちが最近増えている。

好調な商品市場の一因は、世界経済の急伸だが、特に中国の成長が際立っている。2005年度、アメリカのGDP(国内総生産)は+3.5%だったが、中国はほぼ10%増の+9.9%だ。これだけの急成長だから、中国が需要するオイル、鉄、銅、綿などの原燃料が大幅に増えている。

需要が急騰しているなら、生産を増大させれば良いわけだが、オイルや金属はそう簡単にことが運ばない。新しい油田や鉱山の開発には、かなりの年月と多額な費用が必要になる。だから、既に3年間に及ぶ上げが展開されているエネルギー、金属市場だが、アナリストたちはまだ強気な姿勢を崩さない。

最も直接的に商品市場へ参加する方法は、商品先物口座を開設することだ。株と違って、商品先物は期限付きだから、もしトウモロコシの12月限を買った場合なら、必ず期限前に売ってポジションを整理することが必要だ。もう一つ注意したいのは、先物取引には、口座資金以上の損を出す可能性がある。トウモロコシの先物を1枚買うには、たった338ドルの資金が口座にあれば良い。しかし、トウモロコシが1セント下がっただけでも、口座資金は50ドル減ってしまう。正にこれが、商品市場に悲惨な話が多い主要原因だ。

直接商品を買うのは、あまりに危険が高すぎる。そこで注目されているのが、商品先物専門のミューチュアルファンドだ。株にもミューチュアルファンドがあるように、プロに資金を任せて利益を上げることが狙いになる。エネルギーや金属にアナリストが強気であることを上記したが、それらに焦点を合わせたファンドに次のようなものがある。

USグローバル・グローバル・リソーシズ:先月の成績は+5.8%。5年間では+329%。
RSグローバル・ナチュラル・リソーシズ:先月は+2.2%。5年間では+211%。
IVYグローバル・ナチュラル・リソーシズ:先月は+7.6%。5年間では+194%。
ヴァン・エック・グローバル・ハード・アセット:先月は+3.9%。5年間では+168%。 

商品ファンドの欠点は、多くの会社が、ヘッジファンドのように高額な最低資金(10万ドル)を要求することだ。それでは、一般投資家はどうしたらいいだろうか?投資コラムニストの、ジョン・ワゴナー氏はこんな提案をする。「株価収益率を考慮すると、これは危険性の高い投資であることを、最初に断っておきます。商品先物が取引される、シカゴ商品取引所は、ニューヨーク証券取引所に上場されているので、株を買うことができます。ですから、これは商品ブームをテーマにした、投資方法の一つです。」

人気上昇中、天候先物市場

先ず天気予想。月曜のニューヨークは晴れ時々曇り。最高気温は37度、そして最低気温は28度だ。まるで真夏のような温度だが、アメリカは華氏だから、摂氏に直すと最高は2度、そして最低はマイナス2度になる。これで寒さを感じていただけるだろう。

昔の子どもたちは、ゲタを蹴り上げて天気を占った。首尾よく歯を下に着地なら晴れ。ひっくり返って、歯が上になってしまったら雨だ。天気に興味があるのは、子どもだけではない。大人だって、高価なレーダーや人工衛星を使って、正しい予測に力を入れている。

天気予報を単に聞き流すだけでなく、これを使って儲けることができないだろうか?意外と知られていないのが、天候相場の存在だ。ギャンブルのような話かもしれないが、1999年以来、シカゴ・マーカンタイル取引所では、天候をベースにした先物が取引されている。2000年には、たった87枚(コントラクト)しか出来高がなかったが、2001年は131枚、2002年は4446枚、そして2005年は86万7000枚に上昇した。

金額に換算すれば、2004年22億ドルだった取引高は、2005年360億ドルに達し、約16倍の成長ぶりだ。ファースト・エナーキャストの、アグベリ・アメコ氏は、こう語っている。「天候に左右されない企業はありません。多かれ少なかれ、皆なんらかの影響を受けます。ですから、天候の先物はリスク回避対策として有効です。」

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)によれば、米国経済の20%が、直接天候に結びついているという。農業従事者にとって、天候は致命的なダメージを与えることがある。ビルの建設も、竜巻などに襲われたら大変だ。先週のように、大雪が続けば小売店の売上は下がる。ハリケーンのおかげでオイルが急騰したが、シカゴ・マーカンタイル取引所のアラン・ショーンバーグ氏は、エネルギー業界にとって、天候先物は必需品だ、と指摘する。

取引されている天候先物は、気温(華氏)が基本になる。アメリカ国内の市だけでなく、対象になるのは世界29市の気温だ。気温指数にはHDD(暖指数)と、CDD(冷指数)の二つがある。1ポイントが20ドルに相当し、もしHDD指数の11月限が208なら、この価値は4160ドルになる。

ヘッジファンドも、天候先物を利用している。予想以上に冷え込んだ12月、春のような1月、そして今月は大雪だから、天然ガス市場が大荒れになった。12月13日、天然ガスは15ドル55セントの高値を記録したが、今日の値段はたったの7ドル15セントだ。普通なら口座に大きな穴が開いてしまうが、天候先物が適切に危険を回避してくれたわけだ。

ベテラン先物トレーダー、ケビン・カー氏は、こんな見方をしている。「個人トレーダーは、いつもホットなマーケットを探しています。きっと天候先物市場は、多くの個人トレーダーを集めることになるでしょう。」アメコ氏(ファースト・エナーキャスト)も、5年以内に天候先物市場は、天然ガス市場と同程度の規模になることを予測している。誰にも身近な天候、はたして株のような人気商品になる日が来るのだろうか。

連銀はあと何回金利を引き上げるつもりなのか?議会で証言するバーナンキ氏(連邦準備理事会議長)に向けられた、率直な質問だ。「あと2回で終了です」、とは言わなかったが、バーナンキ氏はこう回答した。「短期金利に関しては、二つの間違いが起きる可能性があります。一つは上げ過ぎてしまうこと、もう一つは中途半端な上げで止めてしまうことです。」

ケンタッキー選出の、ジム・バニング上院議員が指摘したことだが、長期にわたる行き過ぎな金利引き上げで、連銀は米国を不景気にしてしまったことが何度かある。だから今回も同様な悪結果になるのでは、とバーナンキ氏に疑問を投げた。「実は、私も同じ心配をしているのです」、と言ってくれたら面白かったが、実際は全面的に前議長グリーンスパン氏の方針を肯定して、更なる利上げが必要であることを示唆した。

ほとんどのアナリストやエコノミストは、3月27、28日の連邦公開市場委員会で、短期金利は4.75%に引き上げられることが確実と読んでいる。それほど米国経済は強く、悪性インフレの危険があるのだろうか?最近の状況を見てみよう。

1月の小売売上は2.3%の上昇を記録し、アナリストが予想していた+0.9%を大幅に上回った。クリスマスセールが期待された12月は、たった0.4%増という冴えない結果だった。度重なる金利引き上げが効き始め、いよいよ経済は冷えこみ方向、と結論したエコノミストも多かったが、1月の売上がそんな見方を打ち消してしまった。また、1月の小売売上を去年の同時期と比べると、なんと10%の上昇だ。個人消費は衰えるどころか、更に弾みがついたわけだ。

2005年第4四半期GDP(国内総生産)は、予想外に少ない+1.1%だった。しかし、アナリストたちはこの数字が、2月28日に上方修正される可能性があると言う。最初に発表された数値には、明らかに全てのデータが含まれておらず、+2%以上の修正になることもありえるようだ。2006年第1四半期のGDPは、既に2005年度の第4四半期を上回ることが予測されているから、上方修正の有無はどうでもいいことかもしれない。

バーナンキ氏も議会で、米国経済は着実健全に成長している、と証言しているから、3月の利上げは間違いなし、そして5月の利上げは、ほぼ確実といったところだろう。ここで注目されるのが、去年の終わり頃2006年度後半に経済冷えこみを予想していた多くのアナリストが、見方を上向きに変更してきたことだ。そのため株式市場に対する考え方もやや強気になり、極端な悲観論が聞こえなくなっている。

バーナンキ氏が言うように、米国経済が健全な伸びを示しているなら、株は買える。現に、利上げが悪影響になる金融銘柄が先を見越したように積極的に買われている。バーナンキ氏の証言も終わり、上記したように次の連邦公開市場委員会は3月27日だから、まだ1カ月以上先の話だ。おまけに決算シーズンも終了しているから、投資者たちは割り切って買うことができる。もちろん、1カ月という条件があるから長期投資に向いたマーケットではない。売り叩かれた金鉱株、オイル株の反発狙い。あるいは、エネルギー価格下落で好調な運送運輸株買い。面白そうな1カ月になりそうだ。

現金より貴重な個人情報

個人情報泥棒、という言葉がよく聞かれるようになった。他人の個人情報を利用して、その人になりすまして貯金を下ろしたり、商品を購入する犯罪だ。以前は、ハンドバッグの中に入っているクレジットカードや運転免許証が狙われたが、インターネットが普及した今日、わざわざ実物品を盗む必要がなくなった。

モンスター・ドット・コムは、アメリカで最大のオンライン求人サイトだ。一々各会社に履歴書を郵送しなくても、ここを使えば手軽に複数の会社に履歴書が送れる。ABCニュースの報道によれば、現在モンスター・ドット・コムのデータベースには5千万以上の履歴書があり、この数は毎日5万以上の割合で増えているという。

履歴書には名前、住所、それに電話番号が記入されている。だから、必然的に個人情報泥棒たちは、オンライン求人サイトに目をつける。 ワールド・プライバシー・フォーラムの創始者、パム・ディクソン氏はこう語っている。「オンラインの求人サイトが、詐欺師による被害を受ける確率はほぼ100%です。個人情報を狙う詐欺師にとって、求人ウェブサイトほど魅力的なものはありません。人によっては、運転免許証番号や社会保障番号まで履歴書に記入しますから、オンライン求人サイトは貴重な情報で溢れています。」

個人情報を盗まれた、今年28才になる男性の話を紹介しよう。「オンラインで履歴書を送ってから数日後ですが、希望していた会社から電話がありました。いかにもビジネスマン、といった感じの声でした。私を海外に先ず派遣したいので、さっそく国外の指定した銀行に口座を開くように指示されました。恥ずかしい話ですが、私はマネーローンダリング(資金浄化)の犯罪組織に利用されていたのです。」

犯人グーループは、まだ逮捕されていないが、この事件後モンスター・ドット・コムのミッシェル・パール氏は、次のような発表をした。「求人内容に、小切手の現金化や銀行口座開設が条件になっているものに関しては、厳しい審査を行うことにしました。常に犯罪者たちの一歩先を行けるように、新しい個人情報泥棒対策を検討していく計画です。」

身内の者が個人情報を悪用する犯罪も増えている。家族に恥ずかしい思いをさせたくない、という理由で名前が公表されていないので、「Aさん」と呼ぶことにしよう。Aさんが個人情報を盗まれた、と知ったのは自動車ローンを銀行から断られた時だった。理由はAさんが抱える15万ドルの借金だ。

「15万ドル!?私は借金などしたことはありません。しかし、銀行員から証拠になる書類を見せられた時、私は溢れる涙を止めることができませんでした。15万ドルの借金をしたのは、私の母だったのです。まだ私が8才の頃、母は私の社会保障番号を使って、何枚ものクレジットカードを手に入れていたのです。どう考えても、こんなことをした母が信じられません。」

ABCニュースによれば、子どもは絶好のターゲットだという。上記Aさんの実例が示すように、子どもが個人情報を盗まれたことを発見するのは、かなりの年数が経過してからだ。このような被害を防止するために、現在議会では18才以下の未成年者に発行された社会保障番号の監視法案が検討されている。

さて、ここでまたAさんに戻ろう。母親のおかげで傷ついてしまったクレジットレポート(信用報告書)。これを直すには、かなりの年月がかかる。だが、壊れた母親との関係を修復するには、それ以上の年月がかかることだろう。

巨額な現金は悪材料!?

もう急成長は望めない、といった収益懸念。それにヤフーやマイクロソフトの巻き返しなどを主な理由にして、グーグル叩きが流行っている。「ここまで大きく下げた後、グーグルの悪口を言うのは不公平かもしれません。私自身、グーグルに関しては間違った見方をしていた一人です。なにしろ、グーグルの新規公開株を避けるように勧めていたのですから」、と語るのはハルバート・ダイジェストのマーク・ハルバート氏だ。

既に多くの意見が発表されているが、ハルバート氏は、もう一つグーグルには注目することがあると言う。さっそく説明を聞いてみよう。「ほとんど話題にならないことですが、グーグルは80億ドル以上の現金を持っています。それは良い事だ、と皆さん言われますが、これだけ多額な資金があれば、グーグルは積極的な買収などで、収益を更に向上させることができます。ようするに、膨大な現金はグーグルの大きな武器になるはずです。」

問題は最後の部分、「武器になるはずです」だ。ここでハルバート氏は、1986年、アメリカン・エコノミック・レビューに発表された論文に触れる。ハーバード大学名誉教授、マイケル・ジェンセン氏が書いたものだが、巨額な現金は企業経営に悪影響する、と結論している。ハルバート氏の話に戻ろう。

「ジェンセン教授は、企業が必要以上の現金を抱えると、企業経営の効率が鈍ることを指摘しています。豊富な現金が手元にあると、会社は正しいビジネス環境を把握することができなくなります。反対に、いつも現金を必要とする会社は、絶えず金融市場やビジネストレンドに注意を払っていますから、つまらない間違いを犯すことはありません。」

ここで思い出すのが、ガッカリな決算発表後に、グーグルの財務責任者が語った言葉だ。「思っていたより税率が高くなってしまい、税金の支払いが収益に悪影響となりました。」これだけ金がある会社だから、事前に超一流の会計士を何人も雇うことで、こんなつまらないミスは防げた。あるアナリストも言っていたが、これは明らかにグーグルの落ち度であり、適切な現状把握努力を怠っていたようだ。

ジェンセン教授は、もう一つこんなことを挙げている。企業の現金は大切に使われるべきものだが、金があり過ぎると、経営者は馬鹿らしいプロジェクトに手を出すようになるという。これを防ぐには、どうしたら良いだろうか?手っ取り早いのは、有り余る余剰資金を配当金として、投資者に還元してしまうことだ。

ところでグーグルは、次にどんな計画をしているのだろうか?ハルバート氏を引用しよう。「バロンズ紙によれば、グーグルはNASAからの協力を得て、無重力環境でのスポーツを考えているようです。ひょっとしたら、これは大ヒットするかもしれません。しかし、それはジェンセン教授が警告する、馬鹿らしいプロジェクトかもしれません。」なるほど、どちらにしても、まだグーグルから目が離せないようだ。

「お金を貯めるためには、つまらないミスを避けることが大切です」、とパーソナル・ファイナンスの専門家、スージー・オマーン氏は言う。「今年、投資をする計画が無くても、これから挙げる事項を守って、経済的なヘマを犯さないようにしてください。」

1、クレジットカードの借金を返済するために、自宅を担保にして金を借りないこと。
これは最悪の場合、自宅を失う結果になる可能性がある。クレジットカードは物件などを担保にして金を借りるわけではないから、金融機関は借り主に強制的に何かを売らせて、借金を取りたてることができない。しかし自宅を担保にして金を借りてしまうと、状況は一変してしまう。毎月きちんとローンの返済をしていれば問題は無いが、もし返済が大幅に遅れると、金融機関に家を取り上げられてしまう。

2、自分の401K(確定拠出型年金)から金を借りないこと。
401Kには課税前の収入が割り当てられるが、ここから借りた金は課税後の収入で返済することになる。そして、最終的に退職して401Kから金を引き出すと、これは課税対象になる。だから、401Kから金を借りることは、税金を二度払うようなものだ。

3駐車違反やスピード違反の罰金は直ぐ払うこと。
財政難の市が多い今日この頃、罰金は市町村の重要な財源になっている。たった25ドルの駐車違反の罰金を無視していると、市はさっそく違反者を小売業信用調査所に報告する。正にブラックリストに載るわけだから、自動車ローンや不動産ローンに申し込んでも、許可が下りない事態が発生してしまう。

4、子どものために生命保険を買わないこと。
生命保険の目的は一つ。それは扶養家族のためだ。父親だけが働いている家庭なら、父親が生命保険を買うことは納得できる。だが、収入が無い子どもに頼っている家族など存在しないのだから、子どもを生命保険に加入させることは金の無駄だ。

5、学生ローンは月々着実に返済すること。
たとえ個人破産のような苦しい状態に陥っても、学生ローンが免除されることはない。また、月々の支払いが遅れると、給料が差し押さえられることがあるから、十分に注意したい。

6、金利支払いローンを使って住宅を購入してはいけない。
金利を払うだけの住宅ローンだから、普通の住宅ローンのように借りるのが難しくなく、資金的に余裕のない人たちが、よくこのローンを利用する。このやり方で30年ローンなら、ようするに30年間利子だけを支払う。元本は全く減っていないわけだから、30年後にまとめて元本を払うことになる。よく不動産セールスマンは、10年後には、あなたの収入は増えているはずだから、その時点で金利支払いローンから普通のローンに乗り換えれば良い、と客を説得する。言うまでもないが、10年後のことは誰にも分からない。ひょっとしたら失業しているかもしれない。住宅を買うなら、一般的なローンだけを使うことだ。

7、資金の10%以上を一つの銘柄だけに集中させないこと。
思い出してほしいのは、破綻したエンロンだ。多くの社員は401Kで、自社株だけを買っていた。もちろん、会社の破綻と同時に401Kの価値はゼロになった。どんなに有望に見える銘柄でも、それだけに全資金を投入するのは極めて危険だ。

以上7項目を紹介したが、共通して言えることは、常識的判断の重要さではないだろうか。

「トウモロコシの先物は爆発的な上昇になる可能性があります」、とCKフューチャーズのクリス・クラフト氏は言う。一般教書演説でブッシュ大統領が約束したように、米政府は代替エネルギー開発予算を22%増やす。そこで注目されるのが、クラフト氏が強気のトウモロコシだ。

食用以外の使い道として、トウモロコシからガソリンに替わる、エタノールを造ることができる。製粉化されたトウモロコシは水と混ぜられ、発酵プロセスへと進んで行く。発酵されたトウモロコシは度重なる加熱工程を経て、最終的に純度99.5%のエタノールに姿を変える。

面白そうだ。ひょっとしたらクラフト氏の見方どおり、トウモロコシは大幅上昇になるかもしれない。しかし、アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのケビン・ハセット氏は、こんなことを語る。「コーネル大学とカリフォルニア州立大学バークレー校の研究によると、トウモロコシからエタノールを造るために必要なエネルギーは、エタノール自身が持つエネルギーを29%も上回っています。」これでは非効率的だ。もう少しハセット氏の話を聞いてみよう。

「オイルやガソリンがどんなに値上がりしても、エタノールは経済的な代替エネルギーになることはありません。トウモロコシからエタノールを造るには、大量なオイルが要ります。将来、新テクノロジーがオイル無しでエタノール製造を可能にするかもしれませんが、現代の技術では単なる国家予算の無駄使いです。もう一つの問題は大気汚染です。エタノールとガソリンがミックスされると、ガソリンだけで走る車以上に排気ガスがひどくなります。ですから、環境を破壊するエタノールは、私たちの社会に必要ありません。」

割高な製造そして環境汚染、こんなエタノールになぜ米国政府は金を使うのか?ハセット氏を引用しよう。「アイオア州やイリノイ州などの、トウモロコシ生産州から選出された議員が原因の一つです。政治家にとって代替エネルギー予算は、自州に現金を引き込む最大なチャンスです。また、エタノール開発の大手ADM社(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)からの政治献金も忘れてはいけません。2002年、イリノイ州選出デニス・ハスタート氏(下院議長)、トム・ハーキン上院議員(アイオア州選出)などの著名議員は、ADM社からの献金を受け取っていました。」

OPIS社のオイル・アナリスト、トム・クローザ氏の話を付け加えよう。「誰も語らないことですが、エタノール製造者は信じられない利益を手に入れています。エタノールを1ガロン造るには1ドル15セントのコストがかかり、これは多ければ2ドル70セントで販売されます。1バレルは42ガロンですから、単純計算すると(2.70 - 1.15=1.55, 155x42=65.1)、1バレルあたりの利益は65ドル10セントです。もちろん、輸送費や保険などを考慮すると儲けは50ドルから60ドルになると思われます。」

ここで、もう一度ハセット氏に戻ろう。「10年以上も政府からの資金援助があったにもかかわらず、いまだに経済的なエタノールは開発されていません。エタノールは詐欺のようなものです。トウモロコシ生産州が、国民から税金を奪い取っているだけです。」

4.68%、4.58%、そして4.55%。どれが30年物国債利回りだろうか?正解は、一番低い4.55%が30年物、4.58%が10年物、そして最も高い4.68%が2年物国債利回りだ。普通なら、長期な物ほど利回りが高くなるから、現在のアメリカ国債市場には、逆イールド現象が起きているわけだ。

利回りの逆転現象は、不景気の前ぶれになる、と一般的に言われる。短期金利で金を借りて、長期金利で消費者に金を貸す銀行には、明らかに逆イールド現象は悪影響だ。しかし、ジョン・スノー氏(財務長官)、それに連銀を去ったばかりのグリーンスパン氏によれば、逆イールド現象は悪化する米国経済を示すものではなく、海外からの旺盛な投資結果だ、ということになる。

新連邦準備理事議長、バーナンキ氏も、海外からの膨大な余剰資金が、いまだかつて無い勢いでアメリカ国債市場に流入している、と同様な見解だ。

2年物と10年物利回りが逆転したのは2005年12月、5年ぶりの出来事だ。2000年に起きた逆イールド現象は、たしかに不景気の警報となり、連銀の積極的な金利引下げ政策が始まった。過去30年間を振り返ると、利回り逆転現象が米国経済冷え込み警告にならなかったのは、1998年(アジア経済危機)の時だけだ。

「歴史的に見れば、現在の利回りは危険信号です。もちろん心配になりますが、これが不景気の前ぶれかは、まだ分かりません」、と投資戦略家のピーター・カーディロ氏は言う。ワイス・ペック・アンド・グリーア社のトム・ジラード氏は、こう語る。「金融機関が高利益を上げることは、今後さらに難しくなります。ですから、銀行は積極的にローンをすることができなくなるでしょう。」

アクション・エコノミクス社のマイケル・エングルンド氏は、現在の利回り状況を気にする必要は無いと言う。「長期国債と短期国債の利回りを単純に比較するのは間違いです。正しい状況を把握するためには、利回りの平均値を使う必要があります。月平均値で利回りを比べると、イールド逆転現象は、まだ起きていません。」

JPモルガンの、アンソニー・カリダキス氏を引用しよう。「これは典型的な逆イールド現象です。だからと言って、それが米国経済の減速を予測しているわけではありません。今回の逆転は、米国経済のファンダメンタルズが原因ではなく、テクニカル的要素が引き起こしたものです。ですから必要以上に、利回りだけに注意を払うのは間違いです。」

経済は冷え込む、冷え込まない、と意見は分かれるが、多くのアナリストはデービッド・ゴールドマン氏(キャンター・フィッツジェラルド社)に賛成だ。「国債市場は、連銀に明確なメッセージを送っています。連銀は短期金利を上げ過ぎました。マーケットは、金利の引き下げを要求しています。」

1999年12月31日、マイクロソフトは52ドル53セントで取引を終了した。2001年4月30日の終値は30ドル48セント、そして現在26ドル台で推移している。「もうマイクロソフトはダメなのでしょうか?」、とそんな質問をする投資者が増えている。たしかに、2005年度のグーグルやアップル・コンピュータの急成長を見たら、心配になっても仕方ないだろう。

投資アドバイスコラムで知られるマット・クランツ氏は、こんなことを述べている。「2001年3月以来、マイクロソフトは比較的に高額な配当金を払い続けてきました。それに、2003年2月には1株が2株に分割されています。単に株価だけでなく配当金も考慮すると、マイクロソフトは2001年から2%伸びたことになります。」

5年間で2%。これではどんなに気の長い人でも悲観的になってしまう。やはり、マイクロソフトは見込みがないのだろうか?「先ず、リスク・リワード比を検討する必要があります」、とクランツ氏は指摘する。「配当金も含めて、1986年から今日までのデータを基に、マイクロソフトの幾何平均値を計算してみました。その結果分かったことは、マイクロソフトのリスク値は51.8です。この数字が意味するのは、株価が94.1%の上昇、または9.5%の下落が今年有りえるということです。」

次に考慮したいのは収益率だ、とクランツ氏は言う。「多数の投資者は、株価収益率(PER)を使って、株が割安か割高かを計ります。現在の株価収益率を確かめるだけでなく、過去5年間の株価収益率と比較してみることも大切です。アナリストの意見を総合すると、マイクロソフトは向こう5年間、毎年12%の収益増が予測されています。妥当な数字だと思います。現にマイクロソフトは過去4年間、毎年13.6%の伸びを記録しています。このアナリストが割り出した12%を使って計算すると、マイクロソフトは44ドルになるまで買えます。」

なるほど、なんとなく買っても良さそうな雰囲気だが、爆発的な上昇は無さそうだ。もう一つ、クランツ氏の見方を付け加えておこう。「最も保守的な投資を1、そして最も危険な投資を5とすれば、マイクロソフトは2です。ですから、かなり保守的な投資になりますが、マイクロソフトは今年、ウインドウズの新バージョンを発表します。これが発端となって、収益上昇に大きな弾みが付くことも考えられます。

スタンダード・アンド・プアーズ社のアナリストは、好調なサーバービジネスと、順調な家庭向け娯楽製品売上を理由に、今年マイクロソフトの収益は10%上昇することを予測しています。現在、投資者に人気があるのは小型株です。もし人気が大型銘柄に移るような事態が起きれば、アナリストはマイクロソフトに買い推奨を出すことでしょう。」

1月31日を最後に、連銀を去ったグリーンスパン氏が、早くも話題になっている。火曜日の夜、リーマン・ブラザーズは著名な投資家たちを集めて、マンハッタンで内密な会議を開いた。そこにグリーンスパン氏は、来賓講演者として招待されていた。

報道によれば、グリーンスパン氏は米国住宅市場に関しては悲観的だが、全般的にはアメリカ経済について強気な見方をしている。更に氏は、ウォールストリート関係者が予想している以上に、連銀は金利引き上げを継続する可能性があることを語ったようだ。

ブルームバーグからは、次のようなグリーンスパン氏の言葉が発表されている。「執拗に低い長期金利が、連銀の経済対策を妨げている。長期国債利回りが不動産ローンの金利、そして住宅ローン借り換え金利を決定するが、現在の利率はまだ低レベルであり、相変わらず住宅ローンの借り換えが続いている。」

こんなニュースを聞いた投資者たちは、さっそく国債を売った。その結果、10年物国債は5/32下落となり、利回りが4.59%に上昇した。しかし、この4.59%という利回りは、2004年6月、連銀が短期金利引き上げを開始した頃と同じ水準だ。

全く予期しなかったグリーンスパン氏の発言は、新連邦準備理事議長、バーナンキ氏を無視した軽率な行動だ、という非難の声が上がっている。「バーナンキ氏がどう思ったかは分かりませんが、これは内密な会議ということですから、誰かがマスコミに漏らしたわけです。ですから一概に、グリーンスパン氏を責めることはできないと思います」、とムーディーズのジョン・ロンスキー氏は言う。

ミラー・タバックの投資戦略家、トニー・クレシェンジ氏は、こんな感想を述べている。「マンハッタンの会議におけるグリーンスパン氏の発言は、決して新しいものでありません。1月31日、連邦公開市場委員会後に公表された声明文と、ほぼ内容は一致しています。2月15日には、バーナンキ氏が新議長として初めて議会で証言をします。注目するなら、グリーンスパン氏ではなく、この証言の方です。」

内密の会議で、グリーンスパン氏は金利引き上げがまだ継続される可能性を語ったが、何パーセントまで上昇するかは明言しなかった。ジョン・ロンスキー氏の見方によれば、短期金利は5%まで上がり、そこで金利引き上げサイクルは終了するらしい。ということは、5月が最後の金利引き上げになるわけだ。

もう一つロンスキー氏の意見を記しておこう。「予期せぬ下落となった第4四半期のGDP(国内総生産)は、第1四半期、5%から6%の大きな伸びを記録することでしょう。」金利不安を割り切って、株投資者たちの積極的な買いを期待したい。

ここで質問。リーマン・ブラザーズは、講演料として、いったいいくらグリーンスパン氏に払ったのでしょうか?
解答:25万ドル(約2950万円)、と推定されている。

没収された品物はどこへ行く?

世界貿易センターが襲われた2001年9月11日を境に、空港での持ち物検査が厳しくなった。塵も積もれば山となる、の言葉どおり、今日までアメリカの国際空港で没収された物品は膨大な量になる。腐る物や、危険な薬品類は直ぐ処分されることになるが、ハサミ、ライター、ポケットナイフなどには価値があるから、捨ててしまうのはもったいない。かと言って全て保管したのでは、いくら場所があっても足りない。当然な成り行きとして、没収品は売られることになる。

実際に販売を担当するのは州政府だ。ペンシルバニア州で没収品販売の責任者を務める、ケネス・ヘス氏はこう語っている。「売れ残る物は一つもありません。去年の12月には、1万7000ドル以上の売上がありました。それに、毎月5000ポンド(2265キロ)近い品物をイーベイでも販売しています。」なんと、オンラインオークションのイーベイが利用されていたわけだ。ならイーベイは買いかな?おっと、これでは話がそれてしまう。

ヘス氏は5000ポンドという重さを使った表現をしているが、氏の手元に空港から届くのは、ハサミやポケットナイフが詰まった箱、箱、そして箱だ。「2004年のことですが、スイス・アーミー・ナイフが500個入った箱を、イーベイで売ったことがあります。カリフォルニアに住む買い手が、595ドルで競り落としましたが、これは没収されたナイフに付けられた最高記録です。」

「品物は全て売り切れます」、とアーカンソー州のジェームズ・スミス氏も言う。「物によっては2回、3回のオークションが必要になることがありますが、必ず売れます。もともとタダで手に入れた物ですから、何度もオークションにかけたからといって、州が損をすることはありません。」スミス氏がオークションを利用するようになったのは、次のようないきさつがある。「最初は、没収品を公立の小学校や図書館、それに市役所などに寄付していました。皆さん喜んで受け取ってくれましたが、今ではハサミと言っても断られるだけです。どうやら、アーカンソー全州民にハサミが行き渡ったようです。」

メリーランド州は、インターネットを一切使用しない、昔ながらのやり方で販売している。没収されたハサミやナイフは、箱に詰め込まれ(約22キロ)、ジェサップ市にある物置に運ばれる。そこで一箱50ドルで販売されるわけだが、この方法で毎月5箱から20箱ほど売れるようだ。箱の中にはハサミより少し貴重な物を混ぜて、お客さんたちに、良い買い物をした、と思ってもらえるように工夫がされている。

さて、今年も没収品ビジネスは繁盛するだろうか?2005年12月22日、機内持ち込み品規制が緩和された。そのため、刃の長さが4インチ(約10センチ)までなら機内に持ち込むことができるようになった。更にドライバー、レンチなどの工具(17.8センチまでの長さ)も許可され、空港での没収品は減りそうだ。

私有化の利点

喧嘩しないで、お兄ちゃんと仲良く分けなさい!皆さんも子どもの頃、母親からそんな注意をされたことがあると思う。一つしかない物を自分だけで独占しないで、他の人と共有し、わかち合うことの大切さを、子どもに教えようとしているわけだ。

共有、わかち合う、道徳的な観念だが、今日のアメリカ社会を見ると、共有者の人数が多くなるほど、共有されている物がいい加減に扱われる傾向がある。(アメリカだけの現象ではないかもしれない。)一番分かりやすい例は公衆トイレだ。緊急事態でどうしようもない場合は仕方ないが、とにかくアメリカの公衆トイレは汚い。

ジョージ・メイソン大学のラッセル・ロバーツ氏(経済学部教授)は、こんな発表をしている。「私的所有物(私有財産)は、不正使用されたり、破壊されることは、先ずほとんどありません。壊されたり、乱暴に扱われるのは、皆が使用する公共物です。逆説的な言い方をすれば、全ての人が自由に使える物は、誰の物でもありません。自分の物ではないわけですから、とうぜん大切にしよう、などという気持ちは起きません。」

ヨーロッパには、公衆トイレとプライベート・トイレ(私有物)がある。アメリカと同様に、公衆トイレは汚れているが、私有物であるプライベート・トイレは清掃が行き届き、とてもきれいだという。たしかにプライベート・トイレは有料だが、明確な所有者が存在するため、常に気が配られているわけだ。

山火事も、私有地ではなく、政府の所有する森林地帯で発生しやすい。キャンプファイヤ、不注意な花火などが山火事の原因になるが、たいがいそんなことは公立公園内で起きる。しかし、同じ森林地帯でも、私有地となると話は全く違う。政府の所有する森林は単なる木だが、私有地の森林は材木になる貴重な財源だ。将来の商品だから、キャンプファイヤや花火の餌食になるわけにはいかない。だから警備員を雇って、いつも怠りなく監視をするわけだ。

とここまで書いてくると、全ての公共物を私有化することは有意義のように思える。現に、この私有化のアイディアがアフリカの象を救っている。政府の所有するジャングルで、象を狩猟することは禁じられている。しかし、高い値段で売れる象牙を狙って、密猟者たちが後を絶たない。そこで、こんな解決方法が実施された。ジンバブエ、ウガンダ、そしてケニア政府は、村民たちに象狩猟ライセンスを1頭あたり1万ドルで販売する権利を与えた。

結果的には、この象殺し許可証販売が、密漁を大幅に減少させた。何故だろうか?理由は、村民たちに1万ドルの1部が手に入るからだ。もう象は昔のように、単なる象ではない。家庭を支える重要な収入源になったわけだから、勝手に密猟者たちに殺させるわけにはいかない。もちろん、収入になるからといって、無闇に象の頭数を減らしてしまったら商売にならない。今や象は村民の私有物なのだ。

パリと石炭

ブッシュ大統領の、一般教書演説には何も新しいものがなかった。だから狙いは石炭銘柄だ、と人気マーケット・コラムニスト、ジム・ジューバック氏は言う。正確には、大きな声で「石炭!」と強調している。「もうかなり上がってしまっている、と思われるかもしれませんが、エネルギーセクターの中で、石炭が長期的に一番有望です。」

なぜ石炭なのか?一般教書演説を振り返ってみると、大統領は石油に替わるエネルギー開発のために、2006年度予算を22%増やすことを約束した。「政治家が、具体的なパーセンテージを示した時は要注意です」、とジューバック氏は指摘する。さっそく氏に、22%増が持つ意味を説明してもらおう。

1、環境を破壊しない石炭エネルギー開発のために、更に2億1800万ドルが支給される。
2、石炭から炭酸ガスを取り出す研究のために、更に5400万ドルが割り当てられる。
3、ハイドロゲン燃料開発予算が、2億3600万ドル増額される。
4、更に8300万ドルが、太陽エネルギー開発に支給される。
5、風力エネルギー開発予算が、3900万ドル増える。
6、工場の廃棄物を、エタノールに変える研究予算が5900万ドル増額される。

こう説明されると、多額な金がエネルギー開発に向けられる、と思ってしまうが、「これだけの金額では、13兆ドルに及ぶアメリカ経済に何の影響も与えることはできません」、とジューバック氏は語る。

もう一つ注目すべき点として、ジューバック氏はこんなことを挙げている。「大統領は中東からの石油輸入量を7、5%減らすことを目標にしていますが、2025年までにそれを実現することを目標にしています。ひじょうに長期的な計画です。ですから、現状のエネルギー開発ポリシーが直ぐ変わることはありません。ようするに、今までやってきたことが、これからも続くだけの話です。現状維持が継続する限り、エネルギーセクターで最も伸びるのは石炭株です。」

石炭を利用した発電所には、高質な蒸気タービンが必要になる。ベア・スターンズ社の調べによれば、蒸気タービンの需要が爆発的に増大するという。単に石炭を利用した発電所だけでなく、オイルを使った発電所も含めると、向こう5年から10年以内に、40%の発電所が新タービンに取り替える必要があるようだ。

40%、大きな数字だ。どの銘柄を買ったら良いだろうか?タービンならゼネラル・エレクトリック(GE)、と多くの投資家は考えるが、このセクターのアナリストはアルストム社を推奨している。聞いたことがない銘柄だが、上場されているのはパリの証券取引所だ。業績不振に悩んだアルストム社は、2003年、パトリック・クロン氏を最高経営責任者に抜擢し、収益状況が大きく好転した。

アルストム社はあらゆる種類の発電所にタービンを販売しているが、主要マーケットは石炭を使った発電所になる。ベア・スターンズのレポートによれば、アルストム社は蒸気タービン業界のリーダーであり、収益も向こう5年間、毎年20%以上の成長が期待できるようだ。取引されているのはパリの証券取引所。少し買うのが面倒になるが、面白そうな銘柄だ。

先ず、ドル/円の週足チャートを見てほしい。

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2005年一月、101.67円の安値をつけたドルは、そこが起点となって上昇が始まった。2005年12月の121.39円を境に、急激なドル売りがあったが、長期的なアップトレンドは崩れていない。なぜドルが買われたのだろうか?大きな理由は、14回連続の短期金利引き上げだ。

このままドルの上昇は続くのだろうか?アメリカが抱える、巨額な貿易、財政赤字を考慮すると、どうしてもドルに対して強気になれない、と多くの経済学者たちは言う。膨大な赤字のおかげで、大量のドルが外国人たちの手中にある。赤字の穴埋めをするには、どこかから金を借りる必要がある。だから国債を発行することになるのだが、米国内には大した国債需要が無いから、必然的に外国人を頼ることになる。

11月、財務省から発表されたデータを見ると、外国人で最もアメリカの国債を保持するのは日本だ。その額は6830億ドルにおよび、そして2位の中国へと続く。外国人からの投資を得るためには、低金利ではダメだ。現在の米国金利引き上げサイクルは外国人には魅力的だが、一般米国消費者には嬉しくない。住宅ローン、自動車ローン、それにクレジットカード金利が上昇し、これはアメリカ経済を減速させる要因になる。ここでアメリカ経済が失速すると、外国人も困ってしまう。米国へ品物を輸出しても、消費者がパンク状態では話にならない。

約15%のドル下落を予測する、ムーディーズ社のジョン・ロンスキー氏はこう語る。「ドル上昇が続く、と安心するのは大きな間違いです。ドル大幅下落の危険性があります。」スタンダード・アンド・プアーズ社の、デービッド・ワイス氏は、次のように述べている。「2005年、アメリカの貿易赤字は、2004年の6680億ドルを上回る8170億ドルでした。こんなに膨大な赤字を抱える国の通貨が、これ以上上昇することはありえません。」

もし本当にドル高が終わる可能性があるなら、個人投資家はどう対処したら良いのだろうか?経済コラムニスト、ジョン・ワゴナー氏の意見を聞いてみよう。「インタレスト・レート・オブザーバーのジェームズ・グラント氏は金投資を勧めています。通貨の価値が下がる時は、金に資金が流入するからです。

もし直接金投資ができないのでしたら、ドルが下がると値上がりするミューチュアルファンド、Rydex Weakening Dollar fundがあります。このファンドは、ドルが1%下がると約2%上昇する仕組みになっています。ドルには弱気だが、ユーロが上がる、と思うのでしたらEuro Currency Trustが適しています。」

しかし、最後にワゴナー氏はこう付け加えている。「米国の貿易赤字は今日始まったことではありません。もうかなり長いこと、経済学者たちはドル急落を警告しています。この警報が現実となるのは、まだ先のことかもしれません。経済学者の無視を勧めているのではありません。ごく一部の投資資金は、常に金などに回しておくことが大切だと思います。」

キーワードはボラティリティ

ウォールストリートの投資戦略家たちは、滅多に短期投資を語ることはない。そんな中で、ジョン・マークマン氏は例外だ。効果的な短期投資をするための秘訣を、マークマン氏はこう説明する。「先ず、銘柄数を絞らなくてはいけません。現在、ファンダメンタルズが好転している企業だけに、焦点を合わせることが肝心です。無料サイトにあるようなチャートではなく、信頼できるチャートも必要です。次に勇気、そして、損を出しても直ぐ気分転換ができなくてはいけません。」

長期株投資では順調に利益を上げているのだが、短期投資はどうも上手くいかない、という人が多い。なぜだろう?マークマン氏を引用すれば、短期投資で良い結果が出ないのは、長期投資用の情報を使って投資するためだ。もっと話を聞いてみよう。

「私たちが、通常考慮する買い材料は長期的な要素です。これは短期投資に適用できません。長期投資で重要なことは、将来の収益伸び率を検討して、現在割安な銘柄を選択することです。しかし、短期投資の場合は、どの銘柄に異常に積極的な買い手が集まっているかを見つけ出す必要があります。単に今日、買い人気があるだけではダメです。少なくとも、向こう2週間以上買いが続きそうな銘柄を選ばなくてはいけません。」

なるほど、私たちが短期投資で失敗するのは、使う情報が間違っていたわけだ。価値のある株を安く買う、という考え方ではなくて、現在需要の高い銘柄だけに狙いを絞る。こう言ってしまえば簡単に聞こえるが、具体的には、どうやってそんな銘柄を探すのだろう?また、マークマン氏に登場してもらおう。

「割安株ではなく、キーワードはボラティリティ(変動性)です。タイミングは、割安株専門のファンドマネージャーから、成長株狙いのファンドマネージャーに株が移動する時点です。」買い条件として、氏は次の数項目を挙げている。

・マーケット全体の流れが上向きであること。
・銘柄の属するセクターが強いこと。
・小型と大型株を比べて、現在どちらの需要が高いかを調べること。
・新高値を記録し、ここ数日間の利食いが起きていること。
・株価上昇は、出来高の増大を伴っていること。
・できれば、高値圏で横ばいが続き、そこからブレイクするものを選ぶこと。
・ファンダメンタルズもしっかりしていた方が、大きな伸びが期待できる。

さっそく上記事項に当てはまる銘柄を調べてみた。上位5つを記しておこう。もちろん、これは買い推奨ではなく、単なる一アイディアだ。
1、ファニチャー・ブランズ・インターナショナル(FBN)
2、シカモア・ネットワークス(SCMR)
3、ザーリンク・セミコンダクタ(ZL)
4、レイジーボーイ(LZB)
5、スティルウォーター・マイニング(SWC)

これは参考までにだが、銘柄を探すにはバーチャート・ドット・コムが役に立つ。His Vol(ヒストリカル・ボラティリティ)をクリックして、上から順番にチャートをチェックしていくと面白いだろう。

 

グーグルの敵は税金!?

第4四半期収益は+82.4%。しかし、一株利益がアナリストの予想に満たなかったため、水曜、グーグルは401ドル78セント、7.14%安で取引を終了した。こう書くと暴落のように聞こえるが、寄付きは389ドル86セントだから、開始ベルと同時に買った人は一日で約3%の利益を得たことになる。

グーグルの意外な決算に慌てたのは投資者だけではない。目標株価500ドルで分かるように、多くの証券会社はグーグルに買い推奨を出していたから、寄付き直後さっそく押し目買いを訴えるアナリストが続出した。「この下げ幅は正当化できるものではありません。明らかに狼狽売りです。グーグルは確実に広告収入を伸ばしているだけでなく、ライバルのヤフーからも市場を奪っています。今日の下げは買いのチャンスです。」これがアナリストたちの言い分だ。

この下げで、一人のアナリストが見直された。名前はスコット・デビット。スタイフェル・ニコラス社のアナリストだ。実はデビット氏、先月18日にグーグルの売り推奨を発表していた。その日グーグルは444ドル91セントで終了だから、水曜の引け時点で+9.6%だ。正に読みが当たったわけだが、決算発表後、氏は次のようなメモを顧客に送っていた。

・同業者ヤフーに見られた収益の伸び悩みはヤフーだけに限られた問題ではなく、サーチエンジン業界全体に当てはまる。今回発表されたグーグルの決算は、この見方が正しかったことを証明している。

・グーグルの急成長期は、既に過ぎ去ったと思われる。長期的に展望すれば、サーチエンジンは高成長分野だ。これからもグーグルがリーダーの地位を保つことが予測されるが、株価はしばらく横ばいになるだろう。

・現時点でグーグル買いを薦めることはできない。買うなら300ドル台の中間あたりが妥当と思われるが、実際の買いタイミングやグーグルの収益見通しは、後ほど発表したいと思う。

・グーグルの売り推奨、そして正当株価400ドルに変更はない。

デビット氏に賛成するアナリストは、こう語っている。「これから、本格的な春がやって来ます。季節的要因になりますが、春そして夏はサーチエンジンの利用者が減る傾向があります。ここで振り返ってほしいのは、グーグルが決算を発表する前の株価430ドルです。ファンダメンタルズ的な立場から分析すると、430ドルを正当化するには、毎年グーグルの売上は108%上昇する必要があります。」

アナリストの意見だけではなく、肝心なグーグル側の話を聞いてみよう。「予想以下に終わった一株利益ですが、これは税金の支払いが大きな原因です。普通なら30%ほどの税率なのですが、海外業務の拡張にともない、今回の税率は41.8%に上がってしまいました」、と最高財務責任者は説明している。

早速あるアナリストが、通常の税率で一株利益を計算し直したら、1ドル82セントという結果が出た。予想されていたのは1ドル77セントだから、確かに税金がグーグルの利益を削ってしまった。だからといって、グーグルに同情するアナリストはいない。「税金はビジネスコストの一部です。適切に税率の予測ができなかったのは、完全にグーグルの落ち度です。」

あまりにも出来すぎた話だ。ウソに決まっている、と思うのだがインフォマーシャルには説得力がある。単なるテレビショッピングとは違って、30分間ジックリと一つの商品を見せられるのだから、騙されたつもりで買ってしまう人も多いことだろう。

ケビン・トルードー氏、と聞いても、ほとんどの人は誰のことか分からない。しかし、頻繁に放映される深夜過ぎのインフォマーシャルのおかげで、アメリカ人なら一度は氏の顔を見たことがあるはずだ。「製薬会社が、私たちの健康を考えていると思ったら大間違いです。真実は正反対です。製薬会社には、本当に効く薬を開発するつもりなど、全くありません。」今晩も氏は、テレビの画面を通じて消費者に訴える。

2005年、トルードー氏は2200万ドル(25億7000万円)を投じて、2000時間の放映時間を買った。いったい氏は、何をインフォマーシャルで売っているのだろうか?製薬会社を非難するくらいだから、健康に関するものであることに間違いはない。トルードー氏が毎晩売り込んでいるのは、あらゆる病気を治す方法を説明した本だ。既に500万冊を売り切り、6カ月連続でベストセラー、売上は上々だ。

自然療法だけで、癌や糖尿病は治る。磁気マットレスに寝ることで、多発性硬化症(MS)は治療できる。鬱病を克服したいなら、毎日トランポリンの上で飛び跳ねろ。白い服を着用することで、多くの病気から身を守ることができる。こんな形で、さまざまな治療方法が延々と続く。

はたして、この本は信用できるのだろうか。ABCニュースは、こんな報道をしている。トルードー氏には前科がある。先ず一回目は銀行から金を騙し取る詐欺、そして二度目は顧客のクレジットカード悪用だ。刑期を済ませ出所すると、トルードー氏は記憶力のエキスパートとして、インフォマーシャルに登場する。だが、内容が連邦取引法に違反していたため、番組は中止になった。

もちろん、そんな事で諦めるトルードー氏ではない。直ぐにテレビに復帰して、貼るだけで痛みが消えるテープ、そして癌を治すカルシウムの発売を開始した。言うまでもなく、これも法律違反だから、番組はキャンセルされ、氏には200万ドル(2億3400万円)の罰金が科せられ、二度と同じ商品を売ることを禁止された。

現在ベストセラーになっている本は、たとえ内容がデタラメでも、連邦取引法に違反しない。いい加減な治療方法かもしれないが、トルードー氏の販売しているものは本(情報)であり、米政府は言論の自由を認めている。専門家の話によれば、本の90%はデタラメであり、残りの10%は既に常識となっている情報だという。

500万冊も売れた本だから、とうぜん被害者が出始めている。ある女性は、自然療法が原因で突然ひどい発作に襲われ、ある腫瘍に悩む男性は、本のおかげで腫瘍が更に大きくなってしまった。9割9分の苦情は、自然療法に効き目が無いことを訴えるものだが、同時に、こんなインフォマーシャルを信じた自分が馬鹿だった、とも付け加えられている。

一つ書き忘れたことがある。トルードー氏が売っているのは本だけではない。本の購入者には氏のホームページが紹介され、499ドル(5万8000円)でライフタイムメンバーになれるそうだ。ライフタイム?何か死刑を言い渡されたような雰囲気だ。

2006年1月31日、連邦準備理事会議長、アラン・グリーンスパン氏の18年にわたる務めが終わった。物価上昇率を低く抑えたことが、氏の最も大きな業績だ、とアナリストたちは言う。就任早々ニューヨーク株式市場を襲った暴落、二回の不景気、インターネット株に浮かれた90年代後半、そして不動産市場の冷え込みが顕著になった今日、グリーンスパン氏はバーナンキ氏に議長の座を譲る。

連邦準備理事会議長が、さも米国経済の船長であるかのように説明する人たちがいるが、議長にそこまで大きな力はない。ロジャー・イボットソン氏(エコノミスト)の言葉を借りれば、連邦準備理事会議長は電車の運転手に似ている。だから大雑把な言い方をすれば、議長にできることはスピードを上げること、そして下げることの二つしかない。もちろん電車だから、ブレーキを踏んだからといって、直ぐにスピードが落ちるわけではない。

電車は、あらかじめ敷かれたレールの上を走る。ここで右折したいと思っても、レールが無ければ運転手にはどうすることもできない。ようするに、連邦準備理事会議長にできることは、線路上を走るアメリカ経済のスピードを、短期金利を操作することで、減速させたり加速させることだ。繰り返しになるが、高速で走る電車に急ブレーキをかけても直ぐ止まらないように、過熱した経済も一度や二度の金利引き上げでは冷えこみを期待することはできない。

単に金利を調整するだけの話なのだが、経済に大打撃を与えることもある。グリーンスパン氏の前任、ポール・ボルカー氏は良い例だ。インフレ鎮圧に成功した、とボルカー氏を称賛する人もいるが、その結果アメリカは深刻な不況に陥り、失業率は大恐慌以来の高水準に達した。この辛い経験が、連邦準備理事会議長を船長と同一視することになったのかもしれない。

さて、ここで、引退するグリーンスパン氏に関する雑学的質問をしよう。

1、グリーンスパン氏の好きな野球チームはどれ?
A、ボストン・レッドソックス
B、サンフランシスコ・ジャイアンツ
C、ワシントン・ナショナルズ
D、ニューヨーク・メッツ

2、連邦準備理事会議長になる前、グリーンスパン氏はある企業のコマーシャルに出演したことがあるが、それはどこの会社?
A、IBM
B、アップル・コンピュータ
C、CBS(テレビネットワーク)
D、ディズニー

3、氏が40年代、バンドで演奏した楽器は何?
A、クラリネット
B、トロンボーン
C、トランペット
D、バス楽器

正解:1、以前はメッツファンだったが、現在はナショナルズファン(C)。
2、アップル(B)。
3、Aのクラリネット。ピアノも弾くことができるそうだ。

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